THE ORAL CIGARETTESがTVアニメ『桃源暗鬼』のオープニング主題歌「OVERNIGHT」をデジタルリリースした。楽曲冒頭から、濃厚で深みのある腰にくるグルーヴで従来のロック的表現の枠からはみ出しながらも、サビではストレートかつ、キャッチーなメロディで聴き手の心を掴む。
オーラルらしさはあるが、明らかに過去の彼らとは異なる。それは、今年2月にリリースされたアルバム『AlterGeist0000』を聴いたときの感触と同じだ。

本サイトでは実に5年3カ月ぶりとなるインタビューは、アルバム『SUCK MY WORLD』のリリースタイミング以来。そこで今回は、前作以降にメンバーそれぞれに起こった変化から今のオーラルへつながる鍵を探った。アニメタイアップということで、メンバーそれぞれのアニメや漫画の原体験についても聞いてみた。

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―前回のインタビューから5年3カ月が経ちました。前回は『SUCK MY WORLD』のリリースタイミングでした。

山中拓也(Vo, Gt) あれから5歳も年取ってるんですね。小学校卒業しそうな長さやないですか(笑)。

―そうですね(笑)。この間、コロナ禍を経験したこともあって、いろいろと変化があったと思います。そこで、メンバーそれぞれ音楽面と精神面でどんなところが変わったか話してもらえますか?

山中 音楽面に関しては、できることが増えたと思います。
コロナ禍で家での作業が増えたことで、DTMのレベルが確実に上がったことは自分でも感じています。頭の中で鳴ってる音楽をより具体的にパソコン内で再現できるようになったんですよね。知識量も増えたし、音楽に向き合う感覚もすごく深くなった。『SUCK MY WORLD』をつくってたときは、いい意味でも悪い意味でも、言い方がムズいけど……めっちゃスピってた。

THE ORAL CIGARETTESが語る「本音」の音楽 バンドが手にした深化の裏側

山中拓也(Vo, Gt)(Photo by Kenta Karima)

―ほう。

山中 自分がこの世に生きてる理由とか、この世で何をしなきゃいけないのかとか……あと、自分がなんで一度死にかけたのかとか、そういうことを考えてたのが『SUCK MY WORLD』の時期で。今は生きることに対してすごく前向きだし、肩の荷が下りましたね。

あきらかにあきら(Ba, Cho) 僕は精神面と音楽面が直結してて、「もっと楽しんでいいんだ」って思えることがかなり増えました。ライブでもフレーズを好きに変えたり、あんまり堅苦しく考えないようになりました。これまでは自分の中でけっこう縛りを設けてたんですよ。周りから求められてるわけでもないのに、「このバンドはこうあるべきだ」とか。今はかなり等身大でいられてるし、ラクになりました。
5年が経って、年齢的にもそういう時期に差し掛かってるっていうのもあると思うんですけど。

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あきらかにあきら(Ba, Cho)(Photo by Kenta Karima)

中西雅哉(Dr) 僕は、精神面ではすごく安定してるんですけど、ドラムに関してはネガティブな部分が多くて。でも、この5年間で住む場所を2回変えたり、コロナ禍が明けて初めてプライベートで海外にも行ったりしたことで、自分を取り巻く環境がめちゃ大事だということを実感するようになりました。

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中西雅哉(Dr)(Photo by Kenta Karima)

―具体的には?

中西 引っ越しを重ねるごとに自分が居やすい環境になっていって、今の家は理想なんですよ。僕は1日の大半をドラムのある部屋で過ごすんですけど、以前は隣の家とかに気を使って、窓も扉も全部ふさいで光すら入らないような環境で練習してました。でも、今はそれをやめて、部屋の中をライブハウスみたいにしようと思って、友達がデザインした絵を壁に貼りまくったり、自分がワクワクできる場所にして。そのお陰で、ネガティブだったドラムへのモチベーションも今はすごくいい方向に向いてきてるし、自分の環境を整えることの大切さをこの半年くらいで感じてます。

―ネガティブになってる時期があったんですか。

中西 時期というか、ずっとなんですよね。自分自身と向き合うとできないことに気づくことのほうが多い世界だから。歌もそうだけど、楽器って、できることとできないことの狭間で葛藤があるんですよ。僕も、自分の中の合格ラインを超えられない感覚がずっとあって。
進歩するためにはそういう壁の存在が必要だとは思ってるんですけど。でも最近は、僕の師匠の助けもあって、精神的な捉え方や見方が変わって、よりナチュラルになってきた感じがします。

―精神面でスランプに陥るドラマーの話はよく聞きます。

中西 けっこういますね。自分の場合は、自分に制限をかけたり、周りの環境を気にしすぎてたんだと思います。

―鈴木さんはいかがですか?

鈴木重伸(Gt) 僕は、「これはできたほうがいい」と思ってコロナ禍からDTMを学び始めました。最初はほんまに全然わからん状態だったんですけど、(山中)拓也とかまさやん(中西)からいろいろ教えてもらいながら学んでいって。それまでは、自分のやりたいことを明確にディレクションできてなかったんですけど、DTMをやり始めてから視野が広がったと感じてます。

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鈴木重伸(Gt)(Photo by Kenta Karima)

―それがアルバムづくりにも大きな影響を与えたんですね。

鈴木 そうですね。自分で「これだ!」と思ったフレーズでも、必ずしもギターで弾くのが正解じゃないこともあるっていうことに気づいたり。あとは、アルバムにおけるその曲の立ち位置を拓也に聞いたりする機会が増えたり、いろいろ考えられるようになってきましたね。
コロナ禍からずっとパソコンを触ってきて、ここ1、2年でようやくそこに技量が追いついてきた気がします。

―そうやって、精神的、音楽的に大きな変化をしたことによって、作品づくりに対する意識もかなり変わったと思います。今年1月にリリースされた最新アルバム『AlterGeist0000』は、『SUCK MY WORLD』でやり遂げようとしたこととどんな違いがあったんでしょうか。

山中 自分たちのアルバムってめっちゃわかりやすくて、「フェスで勝ち上がるためにこれをしなきゃ」っていう時期につくったものがあったり、「アリーナとかもっとでっかい会場でやれるくらい売れたい」っていう気持ちが全面に出たものがあったりして。その中で、『SUCK MY WORLD』はちょっと浮世離れしてるというか、そういうものからいったん距離を置こう、みたいな感覚があって、そういう意味では今の自分たちには絶対つくれないアルバムだと思います。ただ、『SUCK MY WORLD』も含めてこれまでのどの作品にもあったのは、音楽に向き合ってるようでどこか向き合っていない自分で。

―というと?

山中 自分はコロナ禍前までは承認欲求がめちゃくちゃ強くて、『SUCK MY WORLD』で少しそれは取れたんですけど、それでも「”こういうこと”をやってる俺ら」みたいな承認欲求は残ってて。でも、コロナ禍に人間関係の断捨離みたいなことをやったんですよね。

―人間関係の断捨離、ですか。

山中 たとえば、僕の住む場所が東京じゃなくなったり、自分たちの”島”を作る感覚に切り替えた瞬間があったんですよ。そうすると、いま自分たちがいるべき場所はどこなのか、自分たちはどこにいたいのか、というのがはっきり見えてきて。だから、『AlterGeist0000』をつくるときには、これまでのようなビジネス的な思考とか「こうしたほうがみんな喜ぶやろ」みたいな気持ちがなくなって、このアルバムでは完全になくなったんですよね。


―前作も突き抜けたと思っていましたけど、今話していたような意識の変化があったからか、『AlterGeist0000』はさらに突き抜けましたよね。今作の収録曲は、ライブよりも楽曲そのものに意識が向かってるような印象を受けました。ボーカルも含めて、曲をよくするためなら何をやってもいい、みたいな。

山中 あとは、リスナーやファンに対するリスペクトが上がったことも大きくて。たとえば、今回のアルバムで90年代後半~2000年代前半のヒップホップからサンプリングしたり、ラッパーの歌詞を抜粋してたりするのを、全部気づいてくれたんですよ。しかも、それぞれの曲で表現したいと思ってたことがライブでがっちりハマって、ファンの音楽偏差値が高くなってるのを感じて。コロナ禍にいろんな挑戦をして、「Enchant」って楽曲を出したときはすごい批判を喰らったんですよ、「こんな曲、オーラルで聴きたくない」みたいな。そのときは「まあ、そうなるよな」って思ったんですけど、そういった経験を経たからこそ今の状況があるのかなって。なので、『AlterGeist0000』をつくってみて、音楽に対する許容範囲の広さや貪欲さをファンから感じられたのはすごくよかったし、みんなに見せてもらえる光景が僕らの期待を超えていたので、それはすごくありがたかったです。それによって、こっちの選択肢がさらに増える状態を作ってもらえたと思います。

―自分たちのやりたいようにやっても、ファンがすべて受け止めてくれるというのは自信になりますね。

山中 ちゃんと受け止めてくれるし、批判もしてくれるんですよ。
しかも、今は批判するにしても、「昔のオーラルのほうがよかった」みたいな話にはならなくて、「こういうカルチャーから引用するんやったら、ここをもっとこうしてほしかった」みたいな具体的な意見が送られるようになって。それはめちゃくちゃいいことやなと思いました。

―中西さんはライブ中に後ろから会場全体を俯瞰していて、どんなことを感じましたか。

中西 ライブハウスツアー中、「DIKIDANDAN」とか「DUNK feat.Masato (coldrain)」みたいな曲ももちろんすごい力を持っていたんですけど、「OD」をやったときのフロアからの圧が、「この曲でこんなに来る?」ってくらいの勢いで。がっつり盛り上げる曲ではないけど、こういう曲でもボトムとして押し返すパワーが必要だと思わされたし、それは学びでした。

―「OD」は、歌詞でエミネムやレッチリの名前を引用していますけど、楽曲自体もちょっとエミネムっぽいですよね。

山中 さっきも話してましたけど、これはシゲ(鈴木)がDTMを使えるようになったのがすごく助かってて。表現したいことに対する具体的なやり取りが今回からできるようになったんですよね。たとえば、シゲ特有のフレーズ感って、意外とエミネムとかのサウンドと通ずる部分があって、エミネムのトラックを分解して聴いていくと意外とロックサウンドが多かったりするし、それをどうやってTHE ORAL CIGARETTESに落とし込めるか、自分がエミネムやレッチリから受けた影響をどう活かすかっていうのがすごくやりやすくなったんですよ……レイジ(・アゲンスト・ザ・マシーン)のTシャツを着てこんなこと言うのもどうかと思うんですけど(笑)。

―あはは!

山中 昔、シゲと一緒に住んでたときにも「こういう曲、聴いてみて」とかやり取りしてたけど、今は当時よりも深く音楽の話ができるようになったし、すごく助けてもらってますね。

―「OD」にも登場しますけど、歌詞にFワードって以前から使ってましたっけ?

山中 「BUG」という楽曲でも使ってて、別にFワードを使うのが正義だとも思ってないけど、アルバム1曲目の「Bitch!!」も「そこまで言わなきゃ伝わらんやん」っていうことがあるんですよ。それって日本人がめっちゃ弱い部分やなって思うんですよね。最近も、BMSGとNENEちゃんの間でビーフがありますけど、俺はああいうことがもっとあってもいいなと思ってて。それは、お互いのことをディスり合えばいいということじゃなくて、バンドが政治のことを話すと叩かれたりするけど、本来ロックは自分の表現したいことを表現すべきやと思うんですよね。だから、表現における制限を、スタッフとしっかり話し合いながら、一つひとつ取り払っていくことは大事やなと思ってます。そこまでして、わざとパンチのあるワードを自分は使ってるんですよ。

―そういった自分たちの変化もありつつ、様々な仲間たちが楽曲制作に参加していることから受ける刺激も大きいのでは。

山中 若い子から受ける刺激はめちゃくちゃデカいです。実は、表立って名前が出ているわけではないけど、デモを聴いてもらって、「拓也くん、こっちのビートのほうがよくない?」みたいなやり取りをした後輩もたくさんいるんですよ。そうやって、音楽的にリスペクトできる後輩が増えてきたのはシーンにとってもすごくいいことやと思うし、縦の関係が大事やっていう人もいるけど、俺は音楽に縦はないと思ってるから、年齢関係なくリスペクトできるヤツと一緒に楽曲をつくっていきたい。ヒップホップとかジャンルの垣根もどんどん壊していって、そこで何ができるのかっていうのは、自分が小さい頃から憧れてた世界線のひとつでもあるから、今後もそういうことをどんどんやっていきたいですね。

メンバーが語る、アニメや漫画の原体験

―それでは、新曲「OVERNIGHT」についても聞きたいんですが、今回はアニメのタイアップ曲です。過去にもオーラルはいくつかアニメのタイアップに携わってきたと思うんですが、みなさんが喰らったアニメや漫画の原体験ってなんですか?

山中 ちっちゃい頃に夢中になった漫画ってめっちゃピュアに好きだったじゃないですか。大人になると、細かな描写とか作画なんかも踏まえて好きになるけど、そういう意味では、今と昔とで影響を受けたり、好きになる部分って全然違うなと思ってます。なので、ちっちゃい頃でめっちゃ覚えてるのは、地元にある西部図書館で「ルパン三世」のビデオを全部観たことなんですけど、「喰らった」レベルで言うと、俺は今敏さんのアニメがヤバいなと思ってて。あの世界観が完全に好きで、今さん関連の本は全部買ったし、作品も擦り切れるほど観てますね。

―ああ、今さんはいいですね。あきらさんはどうですか?

あきら 最近喰らったので言うと、手塚治虫『火の鳥』ですね。こないだ、ちょうど六本木で「火の鳥」展をやってたから観に行ったんですけど、原画がバーっとあってほんますごかったです。あの時代から未来予知みたいな発想があっただなんて、久しぶりに喰らいました。「人間とは……」って考えさせられました。

―幼い頃に好きだったのは?

あきら 『ユニコ』。あ、これも手塚治虫さんですね。たぶん、あのかわいい感じのキャラデザが好きなんだと思います。

山中 知らんかった。そうやったんや。

あきら 僕も別のグループで西部図書館に行ってました(笑)。

山中 みんなの西部図書館(笑)。

―中西さんは?

中西 僕は、(宮崎)駿さんと鳥山明さん。この間、30年ぶりくらいに『ドラゴンボール』のアニメを最初から全部観直したんですけど、やっぱり大人になっても「カッコいいもんはカッコいい」って思ったし、何十年経ってもこの作品が世界的に愛されてる理由が改めてわかりました。駿さんは物心つく前から母親に与えられてて、それは自然と自分の中に根付いてると思います。

―物心つく前から宮崎駿が根付いてるってどんな感じなんですか?

中西 テレビは見せてもらえないけどジブリはいつでも観ていいっていう家で、そういう環境だと穏やかな子に育つんじゃないかって。物事を俯瞰できて、どちらの立場も理解できる、中立な子。

―あはは! 

山中 そうなんや(笑)。(中西は)割と穏やかじゃないときもあるけどな(笑)。

中西 (笑)僕は物心ついたときからずっとトトロを観ていて、1週間ずっと観続けたトトロをレンタルビデオ屋に返しに行くと、またトトロをレジに持っていってたくらい好きだったみたいです。

―なんですか、そのかわいいエピソードは。

山中 だって、まさやんはひとりトトロしますからね(笑)。ひとりでセリフ全部言うっていう。

―ええ!?

山中 マジでヤバいっすよ。インディーズの頃、車の移動中に助手席でずっとやってましたからね(笑)。

―それはいろんな意味ですごいですね(笑)。

中西 だから、必然的に久石譲さんの音楽も好きになって、そこから音楽的にもいろいろと広がっていきました。

―鈴木さんは?

鈴木 僕、漫画が大好きなんですよ。携帯に1000冊超えるぐらい入ってて。バナー漫画と呼ばれるようなものでも一度読んでみるし、本当に片っ端から読んでます。でも、学生の頃はテレビを好き放題見させてもらえる家じゃなくて、漫画も3つ上の兄貴がバイトで買ったやつが少しあるぐらいで、そういうカルチャーに触れる機会はなかったんですよね。最近、イッキ見したのは『コードギアス』で、めちゃくちゃハマりました。もちろん、ジブリ作品も好きなんですよ。僕も久石譲さんが好きだし。でも、僕の10倍くらいの知識量をまさやん(中西)から見せつけられたときに、「ああ、これを”好き”っていうんやったら、僕は好きって言っちゃあかんな……」って(笑)。

―若い頃にたくさん触れられなかった分、大人になってから取り戻してるんですね。たしかに、『コードギアス』は半端ない作品だと思います。

鈴木 『コードギアス』は何度も泣きましたね。僕、映画館があまり好きじゃなくて、理由はタバコが吸えないからってだけなんですけど(笑)、でも『コードギアス』だけはまさやんと一緒に観に行きましたね。

THE ORAL CIGARETTESが語る「本音」の音楽 バンドが手にした深化の裏側

Photo by Kenta Karima

深みの理由、日本人であることを活かす作曲スタイル

―それでは楽曲についてお聞きします。「OVERNIGHT」はどういうところからアプローチしたんですか?

山中 最初に、原作を全部買って読みました。その上で、共感できる部分や新鮮に感じたメッセージをピックアップして、それをどういうメロディーに乗せるか考えました。

―具体的には?

山中 曲をつくる前に、頭の中で10分ぐらいのオープニング映像をつくるんですよ。「こういう映像で始まってほしいな」って。そこから、「じゃあ、こういう空気感で始めよう」みたいな感覚でつくっていきました。

―曲の冒頭から顕著なんですけど、音の作り込みに今のオーラルの音を強く感じました。それでいてキャッチーさもしっかりあるし、『AlterGeist0000』と同様、音の深みが増していますよね。口に入れた瞬間に感じる味だけじゃなくて、喉越しまで計算されているような。この深みについて何か思うところありますか?

山中 コロナ禍がめちゃくちゃでかかったです。

―やっぱり、そこなんですね。

山中 さっき話したこと以外にも、コロナ禍をきっかけにいろんなアーティストと曲をつくらせてもらったり、作曲家さんとプロジェクトを立ち上げたりして、学びがめちゃ多かったんですよ。あと、ライブ会場でバンドマンと会えない分、個々に連絡を取り合って曲の話をするようになって。たとえば、「あの曲、◯◯のアルバムのあそこのオマージュやろ」とか、コロナ禍をきっかけにそういう会話をするようになって、それがすごく勉強になったし楽しくて、もっと音のことを知りたいって思うきっかけになったと思います。あと、今回の制作にも関わってくれてる辻村有記くんから学んだものも大きくて。彼とはコロナ禍に曲をつくったりもしたし、今回もそのおかげやと思います。

―コロナ禍を経て、世界におけるアニメの立ち位置はだいぶ変わっていて、今や国内よりも海外のほうが売上が多くなっています。そんな状況下でアニメのタイアップ曲をつくるとなると、アプローチの仕方も多少変わるんじゃないかと思いました。これまでは、普段あまりロックを聴かない人たちを意識する感じだったのが、今や世界に向けて発信するような感覚になるんじゃないかと。今回、楽曲制作においてそういうことを意識することはありませんでしたか?

山中 ありましたね。海外でバズってる日本のアニメ曲がたくさんあるのも理解してるし、今は2軸必要やなと思っていて。要は、海外の最新の音楽を追っていないと、「君たち、まだそれやってんの?」という目で見られることがあるから、ディグは怠らないように、最近よく使われてる音とかをしっかりチェックするようにして。でも、そういった流行に寄りすぎると、日本人であること、日本のアニメであることの意味がなくなるので、日本人であることをいかに活かすかという別の軸も意識してました。

―具体的には?

山中 メロディーの譜割りやフロウには日本人らしさをしっかり出したほうがいいって、米津(玄師)とか宇多田(ヒカル)さんを見てて思ったので、そういうところを意識しましたね。

―最近は、Creepy NutsやYOASOBIのように、日本のアニメから世界的ヒットが生まれるパターンもありますよね。日本だと未だに、ロックシーンは特に、「欧米が上」という刷り込みが拭いきれていない気もしますけど、今はそういう状況ではないんじゃないかと。そこは難しさでもあり、面白さでもあると思うんですけど、どう考えてますか?

山中 いろいろと文句をつけ始めたらキリがないけど、日本人であることで音楽的に下に見られてる感覚は拭えないと俺は感じます。ただ、そう思ってる人もいれば、逆にアニメのカルチャーをめちゃくちゃ好きになってくれて、「日本の文化は素晴らしい」と言ってくれる海外の人もいて。だから、俺らがもっと自信を持って海外に発信していかなきゃいけない。昔、日本人っぽいことが恥ずかしい時代ってあったじゃないですか。

―ありましたね。

山中 でも、そこも自信を持って出すべきやなって。人種は関係ないとは言いつつも、その国でしか出せないサウンドってあると思うし、米津とかが海外でアリーナ規模のライブをやれているのも、日本独特のものがあるからだと思うんですよ。だから、海外の真似事をしても意味がないっていうのはすごく意識してるし、日本らしさにも誇りを持ってます。

―今後、オーラルは音楽的にかなり深化が進んでいくことが予想されますが、バンドとしてはどこを目指していくんですか? 以前も「日本のロックシーンを引っ張りたい」というお話をされてましたよね。

山中 媒体さんが主催する大型フェスが増えて、今やロックも大衆的になったと思われがちやけど、タトゥーを隠さないといけなかったり、普通にお茶の間に出られない状態はまだ続いてると思うんですよね。モッシュダイブのカルチャーもあまり公にできない国だったりするし。だから、もっとシーンが影響力を持てるように自分たちで動いていかなあかんなと思ってはいます。SiMとかが海外フェスに出てるのもめっちゃいいことやと思うし、「みんなでやれることをやろうぜ」っていう団結力が生まれているのもすごくいい。その中心に自分たちもい続けたい気持ちはあるので、それは続けたい。あとは、超ピュアに「格好良い音源をつくりたい」っていう気持ちもある。今はそのふたつの想いがありますね。

―でも最近、国内のロックフェスの刺激が足りないと思うんですよね。大きなフェスがたくさんあるんだから、それぞれに独自の色がもっと出てもいいのにって。

山中 それも少しずつ変わってきてると思います。最近は海外のアーティストを呼んだりしているし、去年はジャイガ(「OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL」)にJin Doggが出たり、若い子がメインステージに立つようになったのもいい流れだと思うし。でも、自分たちでフェスを主催してみて感じるのは、やっぱりラインナップでお客さんを呼ばないと商業的に成り立たない部分があるんですよね。ヒッピー文化から生まれたウッドストックも最初は素晴らしかったけど、商業的に寄りすぎてボロボロになった、みたいな例もある。バランスを保つのが難しい現状があるなって。あと、俺らがいつまでそこにいるのかについても考えるんですよ。「このバンド、いつまでメインでやってんねん」みたいに固定されてしまうのはよくないし。だから、どこかのタイミングで自分たち単体の動きに移行して、フェスには時々顔を出す形になってもいいんじゃないかとも思う。シーンの活性化には若い子の力が絶対必要なので。

鈴木 バンドの後輩が増えたり、そういうバンドと一緒にライブができるのはもちろん楽しいけど、ソロのアーティストでもロック的な反骨心を持ってる子はいて。そういう気概を持つ人がフェスのラインナップにどんどん入ってくるのはいいなと思いますね。

―フェスシーズンのあとは、秋から2マンツアーが始まります。

山中 これは、去年「PARASITE DEJAVU」(「PARASITE DEJAVU 2024 ~2DAYS OPEN AIR SHOW in IZUMIOTSU PHOENIX~」)の2日目が中止になったときのメンツなんです。自分たちのライブ活動休止期間にも彼らには助けてもらったし、リベンジツアーみたいな感覚もありつつ、ありがとうっていう気持ちもあって。なので、今回はあのとき一緒にライブができなかった自分たちの思いや空気感を各地のお客さんに味わってもらいたくて回るツアーです。すごく濃いものになるんちゃうかなと。

―確かに特別な空気になりそうですね。来年以降のビジョンも見えてるんですか?

山中 予定は立ててます。『AlterGeist0000』のツアーで見えた新しいものを、来年もまた広げていきたい。自分たちの動きをより強く押し出して、より良い音楽を生み出せるように、自分たちに試練を与えてレベルアップしたい。そういう1年にしたいと思ってます。

THE ORAL CIGARETTESが語る「本音」の音楽 バンドが手にした深化の裏側

THE ORAL CIGARETTES
シングル「OVERNIGHT」
配信中
配信サイトはこちら:
https://oral.lnk.to/OVERNIGHTPR

ALL MY LIFE TOUR 2025
9月17日(水)【大阪】Zepp Osaka Bayside w/coldrain *SOLDOUT
9月19日(金)【広島】BLUE LIVE広島 w/SPARK!!SOUND!!SHOW!!  *SOLDOUT
10月2日(水)【宮城】SENDAI GIGS w/go!go!vanillas *SOLDOUT
10月6日(月)【東京】Zepp Haneda w/SCANDAL *SOLDOUT
10月8日(水)【福岡】Zepp Fukuoka w/The BONEZ
10月14日(火)【北海道】Zepp Sapporo w/HEY-SMITH
11月18日(火)【愛知】COMTEC PORTBASE w/SiM *SOLDOUT

TVアニメ『桃源暗鬼』2025年7月11より毎週金曜23時
日本テレビ系「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」枠にて全国30局ネットで放送
先行配信:ABEMA(放送終了後、ABEMAにて国内最速配信 7月11日より毎週金曜24:00~)
配信:7月14日より毎週月曜よる24:00~各種配信プラットフォームにて順次配信
Anime Festa・アニメ放題・バンダイチャンネル・dアニメストア・Disney+・DMM TV・FOD・Hulu・J:COM STREAM 見放題・Lemino・milplus・Netflix・Ponta パス・Prime Video・TELASA・U-NEXT
7月17日より毎週木曜よる24:00~ 日テレ無料・TVer
 
アニメインフォメーションアニメ公式HP:https://tougenanki-anime.com
原作:漆原侑来(秋田書店「週刊少年チャンピオン」連載)
©漆原侑来(秋田書店)/桃源暗鬼製作委員会

THE ORAL CIGARETTES 6th AL『AlterGeist0000』発売中
ご購入はこちらから:http://lnk.to/AlterGeist0000_CD
配信はこちらから:https://oral.lnk.to/AlterGeist0000PR
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