はじめに結論から書いてしまえば、破格のスケールと深度を誇る、圧巻のロックアクトだった。3人にとって、Zeppを掌握することなどもはや余裕なのだろう。楽曲が誇るスケールの雄大さ&深淵さに、やっとワンマンの会場の大きさが追いついてきたように思う。ホールやアリーナを沸かす未来も既にはっきりイメージできる。そんなライブだった。順を追って振り返っていく。
【画像】ブランデー戦記、初のZepp Shinjukuワンマン(全10枚)
1曲目は、「春」。蓮月(G・Vo)の歌は、どこか淡々としていてクールな印象を与えるが、次第に3人のバンドサウンドが熱き昂りをみせ、その熱がじわじわとフロアに伝播していく。ツアーの6本目ということもあってか、3人が鳴らすサウンドの渾然一体さは、かつてなく極まっている。間髪入れずに、「ストックホルムの箱」へ。観客は、熱烈なハンズクラップで3人のライブパフォーマンスを彩り、そして、蓮月のコードストロークに合わせて拳を高く突き上げる。
蓮月(G・Vo)
続けて、全てのパラメータを攻撃力に振り切ったようなエッジーな轟音のバンドセッションを経て、「僕のスウィーティー」へ。みのり(B・Cho)は、「歌える?」「もっと聞かせて」と観客にコールを求め、ステージの縁まで繰り出し、マイクをフロアに向けながら歌声を引き出していく。観客は、めいっぱいの歌声を重ね、また、まるでリミッターがぶっ壊れたかのように爆走するバンドサウンドに懸命に伴走していく。会場全体に満ちる壮大なエネルギーに、冒頭から何度も圧倒された。
みのり(B・Cho)
「The End of the F***ing World」では、天井のミラーボールがゆっくりと回転する中、夢現の境界を彷徨うようなドリーミーなフィーリングがもたらされていく。蓮月とみのりのコーラスワークも美しい。続けて、ボリ(Dr)の豪快なドラミングに、深いサステインの効いたギターのロングトーンが重なり、雄大なスケールを描き出していくバンドセッションへ突入。その流れを受けて、「Coming-of-age Story」へ。蓮月の歌を通して、この曲に宿る切実なエモーションが高い解像度をもってありありと伝わってくる。また、3人のバンドサウンドも、観客のエモーションと分かちがたく呼応し合うライブアンセムとしての輝きを放っていて、彼女たちのライブバンドとしての今まで以上の進化を強く感じた。
ボリ(Dr)
3ピースサウンドの引き算の美学が際立つ「Twin Ray」を経て披露されたのは、「悪夢のような」。
「黒い帽子」と「水鏡」という対照的な2曲を通して、バンド表現の幅と奥行きをさらに見せつけた後、MCパートへ。蓮月は、「ツアーファイナルということは、ただでは終われないですよね。新曲をやります」と告げ、未発表の新曲「赤いワインに涙が・・・」を披露。カントリーのテイストを強く打ち出したサウンド。
「ツアーファイナル、まだまだいけますか」という蓮月の問いかけから、ライブは怒涛の終盤戦へ突入。3人はここから、ロックバンドとしての野性をさらに遺憾無く解放していく。原点の一曲「Musica」では、蓮月がステージ中央に膝をつきながら渾身のギターソロを炸裂。「27:00」では、〈もっと感情的になってよ〉という歌詞に応えるように、観客が何度も拳を高く突き上げる。獰猛なバンドセッションから「Kids」へと雪崩れ込み、クライマックスへ向け、さらなる高揚が会場を満たす。その熱量は「土曜日:高慢」へと引き継がれ、何度も更新されてきたはずの熱狂のピークが再び更新されていく。圧巻の展開だ。
「私にとってすごく大切な曲をやります」。
セットリスト
1. 春
2. ストックホルムの箱
3. 僕のスウィーティー
4. The End of the F***ing World
5. Coming-of-age Story
6. Twin Ray
7. 悪夢のような
8. メメント・ワルツ
9. 黒い帽子
10. 水鏡
11. 赤いワインに涙が・・・
12. Musica
13. 27:00
14. Kids
15. 土曜日:高慢
16. Fix
17. ラストライブ
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