2025年のサマーソニックにはBE:FIRST、MAZZEL、BMSG POSSE、HANAとBMSG所属アーティスト4組が出演する。デビュー前にSUPERSONICに出演して以降、BE:FIRSTが5年連続で出演するなど、同フェスとBMSGは蜜月関係を築いているように見える。


両者の関係は、2018年にSKY-HIが出演したことから始まる。さらに遡れば、SKY-HI自身の初のフェス体験は、グリーン・デイとビースティ・ボーイズがヘッドライナーを務めた2004年のサマソニなのだ。クリエイティブマン代表取締役社長・清水直樹さんとSKY-HIに、この5年間のストーリーと今年のサマソニへの想い、グローバル展開などについて話を聞いた。

※この記事は2025年6月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.31』に掲載されたものです。

サマソニらしさがBE:FIRSTに与えた影響

―清水社長は2017年にSKY-HIさんの曲をラジオで耳にしたあと、COUNTDOWN JAPAN17/18で実際にライブを見て「来年のサマソニに出てほしい」と思ったそうですが、どこに惹かれたんでしょう?

清水:車内でラジオを聴いてる時に、いきなりラップが聞こえてきて。「こんなに日本語が矢継ぎ早にはっきり聞こえてくるアーティストいたっけ?」と思って調べたらSKY-HIでした。それでライブを観て、「サマソニに出てもらったら面白いことが起こるんじゃないか」と思ったんです。『8 Mile』の影響もあって、黒人のなかに白人として入っていくエミネムと、アイドルをやりながらヒップホップのシーンに飛び込むSKY-HIが重なって見えたんですよ。肌の色だけではない差別がいろいろなところにある中で、彼はラッパーとしても実力で這い上がってきたわけだよね。

【対談】SKY-HI × クリマン清水社長、サマーソニックと音楽の夢を語り合う

クリエイティブマン代表取締役社長・清水直樹さん(Photo by Mitsuru Nishimura)

―SKY-HIさんはサマソニからオファーがあって、どう思いましたか?

SKY-HI:自分が初めて行ったフェスが2004年のサマソニだったので、すごく感慨深かったです。その年は1日目にグリーン・デイとSUM 41が出ていて、わかりやすい(パンクな)ラインナップでしたが、同じ日のMARINE STAGEに稲葉浩志さんも出ていたのが面白くて。2日目はビースティ・ボーイズがヘッドライナーで、N.E.R.DやNasも出てました。
自分は中学時代にバンドを始めて、ラップやダンスもやりながらジュニアでもあって、10代半ばから引き出しとの戦いが始まってたんですよね(笑)。でも、自分の趣味嗜好が特別だとは思ってなくて、一緒に行った友達とグリーン・デイの話もするし、RHYMESTER、ファレル(・ウィリアムス)、エミネム、ニルヴァーナ、EXILEの話もしてたんです。ただ、そういう嗜好を丸ごと包括してくれる場所はあまりなかった。

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「サマーソニック2004」ポスター

―そこから始まり、今やBMSGとサマソニは蜜月関係が築かれているように思うんですが、距離はどういうふうに縮まっていったのでしょう?

清水:コロナ禍にサマソニをやるのか、SUPERSONICをやるのか迷っていた時に、BMSGを立ち上げてオーディションを始めるタイミングのSKY-HIと食事をしたんです。そこで、「オーディションで生まれたグループはサマーソニックへの出演を最初のゴールにしよう」っていう話になって。僕たちはコロナ禍のなか、どうにか海外アーティストを呼んでフェスを開催しようとしていて、SKY-HIは新しいことを始めようとしていた。「本当にできるのか」って話をお互いしながら、一緒に突き進んだ感じがします。僕としては、そこからのBMSGの物凄い活躍を、ずっと体感している感覚がありますね。

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SKY-HI(Photo by Mitsuru Nishimura)

―結果的に、BE:FIRSTはデビュー前の2021年にSUPERSONICのオープニングアクトを務め、それが初の有観客ライブとなりました。

SKY-HI:本当に感謝してもしきれないです。

清水:逆にこっちが感謝してるけどね。コロナ禍というリスクがある中でライブをやるのは日本のアーティストとしては怖さがあったと思うので。
何か言われるかもしれないというリスクを負って出てくれたことはずっと忘れないです。

SKY-HI:BE:FIRSTはオーディション時から「世界で通用するボーイズグループ」という目標があって、そこでいう”世界”って何なのかを、ずっと本人たちとすり合わせながら戦っているんですが、あのタイミングでSUPERSONICに出させていただいたことで、「世界で活躍するっていうのは、この人たち(他の出演者)と同じ棚に並べられて評価されるってことなんだ」って肌で感じられたのが、どんどん効いていったと思います。以降、ありがたいことに毎年サマソニに出させていただくたび、目線がシュアになっているし、どんどんサマソニらしいライブや立ち振る舞いをしてくれるようになっている。今は初めてのワールドツアーを周っていますが、海外のオーディエンスも盛り上がっているし、現地メディアの反応も良い。その土台は、サマソニでの経験によって築かれた部分が大きいと思います。

BE:FIRSTとSKY-HI、SUPERSONIC出演時のライブ動画

清水:5年連続で出ているアーティストは他にいないんですよね。ここ数年は、もう最初から「BE:FIRSTは出るものだ」っていうイメージが定着してきてる。ファンの方もそう感じているだろうし、僕も出演が決まる前から「今年はどこに出てもらおうかな」って自然と考えるようになっているんです。去年から今年にかけてのドームツアーも一緒にやらせてもらったし、成長のスピードを間近で見てきた。ケータリングエリアで海外のアーティストと同じ空気を吸ってるだけでも得るものはあると思うし、そういうサマソニならではの経験をしてほしいって思い続けた、そんな5年間だった気がします。

SKY-HI:BE:FIRSTは、2022年のサマソニでは自分たちのライブのあとにポスト・マローンを観たり、2023年は大阪のサマソニを終えたあとに東京に戻ってケンドリック・ラマーを観たりするなかで、SOTAを筆頭にちゃんと悔しさを感じてくれるところが好きですね。しかも無謀な悔しさじゃなく、本質的な部分での違いや”届いてなさ”をちゃんと感じられる。
今年のラインナップだと「ヘッドライナーはアリシア・キーズなんだ」っていうだけでなく、アリシアに「あいつらヤバいね」って言われないとダメなんだって思ってくれるようなところに、嬉しさと頼もしさを感じます。そういう感覚は、サマソニの現場に育ててもらったところがあると思います。

清水:可愛いところもあるよね。去年だったらタイラ、今年はカミラ・カベロに会いたがってたり(笑)。

SKY-HI:ちゃんとただのファンですよね(笑)。そこも信頼できます。純粋に音楽が好きなんですよね。ワールドツアーで行ったLAに滞在した時も、空いてる日は自分たちでタイムテーブルを組んでコーチェラに行ってましたし昼から夜まで踊ってたみたいです。音楽が完全に仕事になると、アーティストって1個死ぬものがあると思っていて。遊びの延長なのか、部活の延長なのか──何でもいいんですが、仕事じゃない部分が根強く残ってると、音楽が仕事になっても好きであり続けられるんじゃないかなって。そこは自分としても大事にしたいし、BE:FIRSTが同じように大事にしてくれているのは、仲間としてすごく嬉しいです。

清水:サマソニをはじめ様々なフェスに出るなかで、悪い意味で場馴れするのではなく、それぞれのフェスのオーディエンスをしっかり掴んでいけてるよね。


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BE:FIRST、2024年のサマソニ出演時のライブ写真(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

―フェスごとのオーディエンスを見据えて、セトリもMCも変えていますよね。

SKY-HI:そうですね。特にサマソニは濃いストーリーがあって、前年の話をMCでしたりするので一体感が生まれますよね。あと、洋楽ファンやヒップホップを好きな人が多いので、そこでどう戦うべきかっていうこともしっかり考えてくれています。

清水:去年のBE:FIRSTについては、これまでの4年間のストーリーを踏まえて「次はMOUNTAINのトリをやってもらおう」って、けっこう前から考えてました。だから、今年のMARINEでのステージは、この5年間の集大成みたいなものだと思っています。

BMSG勢の展望、バンコク進出の手応え

―BE:FIRSTの出演日と同じ日のMOUNTAINには、2023年のオープニングアクト以来となるMAZZELが出演します。あの年のMOUNTAINは、MAZZEL、SKY-HIさん、BE:FIRSTという、プチBMSG FESのような流れでした。

清水:MAZZELはMCのうまさとかも含めて、この1年で一気に伸びた印象がすごくあるんですよね。

SKY-HI:一昨年のデビュー直後のタイミングで出させていただいて、すごく感謝してます。プチBMSG FESみたいにしてくださったおかげで、オープニングアクトだったのに多くの方が観に来てくれた。MAZZELは、誰も負けたとも失敗したとも思ってないのに、折に触れて「今ならもっとできる」って気持ちを見せてくれるのが嬉しいです。
ワンマン以外の場に出ていったとき、BMSGのアーティストの中でも今トップクラスにワクワクさせてくれるのがMAZZELです。今は試験管に水が溜まっていて、あと一滴何かが加われば一気に溢れ出すような状態。今年のサマソニが、そのきっかけになるかもしれない。

―HANAも初出演しますが、昨年はオーディション中、サマソニでちゃんみなさんのステージを観てましたよね。

SKY-HI:「私たちも出たいよね!」って言ってましたね。今のは若干MOMOKAの真似してみたんですけど(笑)。

―似てました(笑)。それがさっそく叶うわけですね。

SKY-HI:「THE FIRST」と「No No Girls」には似ているところがあるというか、HANAも根底が音楽オタクなんですよね。個人差はありますが、歌と踊りをやりたいっていうよりは音楽が好きで、そのうえでアートフォームとして集団で歌って踊ることを選んでいる人たちの集まり。サマソニのような懐の広い場所に入ったときの喜びや気合の入り方は、すごいものがあると思います。結成当初から注目度が高いなかで、期待を裏切ることなくここまで来たことに誇らしさを感じていますし、でもその状態に胡坐をかくメンバーでもないので、素晴らしいライブになることは疑ってないです。


清水:僕は去年のサマソニ、ちゃんみなの心配ばかりしていました(笑)。

―妊娠中の大きなお腹でのライブでした。

清水:「今年は休んでもいいよ」って言ったんですが、ちゃんみなが「出たい」って言ってるってことは、おそらく歴史に残るようなことをやるんだろうなと。ちゃんみなは毎回爪痕を残すんです。去年はMARINEの2番手でしたが、今年は大阪のAIR STAGEのサブヘッドライナーでかなり楽しみです。そのちゃんみなが選んだHANAの初サマソニは、やっぱり期待感から始まりますよね。

ちゃんみな、2024年のサマソニ出演時のライブ映像

―SKY-HIさんも参加するBMSG POSSEは、去年に引き続きPACIFICに出演します。

清水:POSSEは一人一人の個性が際立っているし、今回は何をやってくれるんだろうっていう期待がありますよね。PACIFICは年々面白いステージになっています。タイのジェフ・サター、韓国のイ・ヨンジも出ますし、いい意味で雑多なステージです。

SKY-HI:サマソニは昔から韓国のR&Bやヒップホップのアーティストを呼んできたイメージがあります。

清水:そうだね。うちはR&Bやヒップホップが好きだし、インディーロックも好きで。PACIFICはそういったものを凝縮したステージにしつつ、今後はもっとアジアに照準を合わせていくことになるのかなって。

―ジェフ・サターの名前が出ましたが、タイからは他にも12人組ボーイズグループのBUSも出ます。サマソニ・バンコクとの関連もあるとは思いますが、タイのアーティストの存在感が強くなっていますよね。

清水:まず、バンコクでサマソニをやることが決まった時のタイの熱量がすごかったんです。記者会見に首相が来てくださって、タイのトップアーティストがこぞって出演してくれた。長くやっているとサマソニのパワーを自分で忘れかけることもあるけど、アジアの人たちにとっては、ずっと憧れのフェスなんですよね。そのパワーを再認識して、「アジアでどんどんサマソニを動かしていこう」という新たなビジョンが生まれた。いろいろなプレゼンを受ける中で、優れたT-POP(タイのポップミュージック)のアーティストを知ることができるのも嬉しい。視野がどんどんグローバルになっていきます。少し前には、インドネシアの経済大臣から「バリ島にサマソニを誘致したい」という連絡があり、実際に現地へ行ってきました。音楽フェスではあるけど、国を挙げて誘致される存在になってきています。

―今年はBE:FIRSTがサマソニ・バンコクに出演します。

SKY-HI:ワールドツアーを通じて、リップシンクに頼らないことや、ダンスのスキルが非常に高いにもかかわらず、「ダンスのための音楽」ではなく「音楽のためのダンス」をやっていることに対して、デビュー時よりも強い手応えを感じました。改めてBE:FIRSTのパフォーマンスのポテンシャルとクオリティを実感できたので、サマソニ・バンコクでは本質的な勝負をしてくれるだろうと期待しています。

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「Summer Sonic Bangkok 2025」ラインナップ

サマソニの見どころ、アリシアへの敬意

―日本のサマソニに話を戻すと、BE:FIRSTが出演する日、フェス全体のキュレーションについてはどんなことを意識しましたか?

清水:この日はトリがアリシアっていうこともあって、終盤は女性アーティストで固めたかった。東京はサブヘッドライナーがaespa、大阪はちゃんみな。その前がカミラ・カベロ。あとはラテンの繋がりも意識して、BE:FIRSTとの間にJ・バルヴィンが入ったという経緯ですね。

―カミラ・カベロとJ・バルヴィンという、ラテンのトップスターが複数出演するのも今年の大きなトピックですよね。さらに東京2日目はコロンビアのトップスター、FeidがBEACH STAGEをキュレーションすることも発表されました。

清水:Feidは海外のフェスだとヘッドライナー級なので、本来BEACH STAGEのヘッドライナーでは呼べないんですよね。でも、いろんなレーベルやマネジメントと「日本でもラテンを盛り上げたい」という話をしている中で、Feidが手を挙げてくれて、「自分がキュレーションしているフェス企画をそのままサマソニでやれないか」と。手弁当で経費も自分たちで持つとまで言ってくれているんです。Feidが声をかけてTainyやボンバ・エステーレオの出演が決まり、ルチャリブレと呼ばれるメキシコのプロレスも入れようか、という話にまで広がっていて。例えば前後編みたいな形で数組ずつやって、J・バルヴィンとカミラもいるから、最後に全員で共演できたら面白いよね、という話もしています。ラテンはずっと「やらなきゃいけない」と思ってるうちに、ギャラの問題でバッド・バニーやロザリアは呼びづらくなって。でも今年はもうやらなきゃってタイミングで、アーティスト側から「日本でもラテンはいけるはずだ」と言ってくれたのが大きかったです。

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Feidが自身の誕生日を祝してプロデュースするスペシャル・キュレーション企画「Feliz cumpleaños Ferxxo(フェリス・クンプレアニョス・フェルチョ)」にはTainy、Bomba Estéreo、Perro Negroも出演

―東京1日目のBEACHは、JUJUさんをフィーチャーした「Billboard Live & JUJU's BEACH PARTY」が行なわれます。

清水:JUJUが去年3月、ジャネット・ジャクソンとTLCのライブを観に来た時に、星野源さんがBEACHでキュレーションをした話をしつつ、「今度ボーイズIIメンとSWVのライブもあるよ(※今年5月開催)」と言ったら、「楽しそう!」となって、BEACHで何か楽しいことをしない?と勧めてみました。彼女の好きな90s HIPHOPや、当時住んでいたニューヨークのアーティストを入れる話が進むなかで、それならBillboard Liveにも(企画に)入ってもらった方がいいと思ったんです。うちとJUJUとBillboard Liveの三者で相談した結果、コモンとディゲブル・プラネッツ、そしてジャム&ルイスが入ることになった。AIちゃんも出ます。

SKY-HI:面白いラインナップですね。

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「Billboard Live & JUJU's BEACH PARTY」

―星野さんの一昨年のBEACH、昨年のMIDNIGHT SONICのキュレーションに相当の手ごたえがあったんですか?

清水:まず、アーティスト発信でそういうことができる場を作れたことにすごく意味があると思ってます。自分たちが考えるものとは違うものが生まれるのも楽しいですよね。毎年できるかはわからないけど、そういう場所としてBEACHが使えるのはワクワクしています。いずれアーティストからプレゼンしてくれるかもしれないし。

SKY-HI:BEACHの良いところは、どのアーティストが出ても海が主役になるっていうか。昔、ちゃんみなと一緒にBEACHでジョージ・クリントンを観たんですが(2018年)、自分にとってパーラメントはヒップホップのネタ元としてもお世話になった、お兄ちゃんのお父さんみたいな存在。でも、下の世代のみな(ちゃんみな)も純粋に「イエイ!」って感じで楽しんでて。周りには子連れも多くて、いろんな世代が混在しているBEACHの偉大さを感じたんですよね。ラテンでBEACHっていうのはめっちゃ良いと思うし、今後はサーフミュージックのキュレーションとかも絶対良さそう。

―SKY-HIさんが今年のサマソニで見たいアクトというと?

SKY-HI:やっぱりアリシア・キーズですね。ジョージ・クリントンのことを「お兄ちゃんのお父さん」って言いましたが、アリシア・キーズは自分のなかで「1学年上のマドンナ」みたいな存在なんです。ジェイ・Zでもコモンでも、イケてるラッパーはみんなアリシアが好きみたいな。どんな偉大なラッパーと共演しても主役になれる。

清水:時代を超えてるよね。21サヴェージも「大好きなアリシアがヘッドライナーなら、俺はMOUNTAINでもいいよ」って言ってくれたし、若い世代にとってもそういう存在なんですよ。ビヨンセでもないしリアーナでもないけど、同じレベルにいる人だと思う。ただ、アリシアだけは自然体で、ずっとそこにいる気がする。

SKY-HI:歌声や音楽も含めて、包容力が尋常じゃないですよね。アリシアが若手からどんどん大きくなっていった時代に、ラップミュージックでサバイブしていた人たちが彼女から感じていた慈愛のようなものには、形容し難いものがあるんじゃないかな。そういう熱は伝播していくから、日本でも「アリシア・キーズはそういう人だ」っていう認識が自然に染み込んでいる。21サヴェージの出演決定には驚きましたけど(※取材前々日の5月24日に突如発表)、MOUNTAINのどこに出るんですか?

清水:優里の前。そこしかなかったんだよ。大阪は優里の前にBABYMONSTERが出るんだけど、東京のMOUNTAINは一枠空いてた。そこで21サヴェージから話があって、「空いてるのは東京のこの枠だけだよ」って伝えたら、「バンコクも出たい」って。こういうことが起こるのがフェスの妙ですよね。

変わらないために変わり続ける

―25年ものあいだサマソニを開催する中で、大事にすることは変わってきましたか?

清水:運営はいろいろな人が関わっていますが、ブッキングはずっと僕がやってきて。レディングなど様々な海外フェスに行く中で、「洋楽がたくさん観られるフェスを日本でもやりたい」と思ってサマソニを始めました。当初は数万人の洋楽ファンのためのイベントだったのが、今では東阪合わせて20万人を超えるほど巨大化してきました。プレッシャーはありますし、うまくいく年とそうでない年も当然あります。その中で変わらなかったのは情熱なんですよね。最後まで手を抜かず、「まだ何かできることがあるんじゃないか」と考え続けていると、今回の21サヴェージみたいなことが起きる。

今年は世界的にバズっているsombrも出演します。彼が「出たい」と言ってきたのもギリギリのタイミングで、その時点ではそこまでバズってなかったけど、ライブを観たらすごく良かったので、どうにかSONIC STAGEに組み込みました。そうしたら状況が驚くほど伸びて。2018年に(アルバム・デビュー以前の)ビリー・アイリッシュが出演したときも、まだここまでバズってはなかったし、2009年のレディー・ガガに近いんですよ。最初はガガをDANCE STAGEという4~5000人規模のステージの中盤にブッキングしていたんですが、年明けにはとんでもない状況になっていて。「この枠じゃ無理だ」となり、大阪はメインに変更。東京はMOUNTAINの空きがなかったので、夜中のMIDNIGHT SONICに出てもらいました。最後まで考え続けるべきだということを、今年の21サヴェージとsombrの出演が証明していると思います。

―フェスの企画やブッキングといえば、SKY-HIさんは2023年にダンス&ボーカルの垣根を超えるべく、様々なアーティストが出演するD.U.N.K. Showcaseをスタートさせましたが、どんな面白さや大変さを感じていますか?

SKY-HI:D.U.N.K.は「フェス」というより「場所」を作ってる感覚に近いです。ダンス&ボーカルは芸能界との距離が近いぶん、いろいろな煩わしさが伴うこともありますが、まずは音楽面で無邪気にやりたいことをやれる場所を作ることが大事だった。でも続けていく中で、変わらずにいるためには変わり続けなきゃいけないと強く感じるようになりました。

D.U.N.K.の初回でやった垣根を越えたダンスコラボは、最初は革命的だと言っていただけましたが、それを契機にみんながやるようになってくれて、ものの半年くらいでいろいろなところで見かけるようになって。そのこと自体は喜ばしいのですが、D.U.N.K.自体が最初に目指したような存在であり続けるには、何が必要なんだろうと考えた。そこで、もっとカルチャーに重きを置こうと思って、Aile The Shotaにキュレーションを頼み、ダンス界のレジェンドを招いた企画をD.U.N.K.の中に作りました。きっと、そういうことを考え続け、やり続けることが、「変わらずに変わっていく」ということなんだと思います。

清水:「変わらないために変わり続ける」って、サマソニにとっても大事だなって。今の話を聞きながら思いました。最初の頃と比べると出演アーティストの傾向はだいぶ変わってきているんですよ。K-POPが入ったり、DJがヘッドライナーになったり。でも、そうやって変わり続けたからこそ、25年間変わらずに続けてこられた。これからは、その言葉を使わせていただきましょう(笑)。

SKY-HI:(笑)サマソニは、結果的に変わってきたって感じですよね。懐が広いフェスと言いますか。世界のポップミュージックの中心がどんどん移り変わるわけだから、それに合わせて変化するほうが、ポップミュージックを扱うフェスとしては自然だと思います。

清水:そうだね。でも、SONIC STAGEみたいに「ここはずっと変わらないな」っていう場所もあったりね。

SKY-HI:やっぱり高校の頃の音楽好きな友人っぽいんだよな。アップカミングなアーティストにも詳しいし、めっちゃニッチなものまで知ってて。今キてるアーティストも当然聴いてる。そんな友人(※実はその友人は現在BMSGで働いていて、ずっと友人関係は変わらず仕事も一緒にしている)と一緒に行ったのが2004年のサマソニでした。

清水:私もそういう友人だと思っていただければ(笑)。

SKY-HI:そういうことですね(笑)。

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【対談】SKY-HI × クリマン清水社長、サマーソニックと音楽の夢を語り合う

SUMMER SONIC 2025
2025年8月16日(土)・17日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園
https://www.summersonic.com/

【対談】SKY-HI × クリマン清水社長、サマーソニックと音楽の夢を語り合う

SONICMANIA
2025年8月15日(金)
会場:幕張メッセ
開場/開演:開場19:00・開演 20:30
https://www.summersonic.com/sonicmania/

【対談】SKY-HI × クリマン清水社長、サマーソニックと音楽の夢を語り合う

SKY-HI
Digital Single 「At The Last」
配信中
・Streaming & Download:https://sky-hi.lnk.to/AtTheLast
・Music Video:https://youtu.be/bULsva1ctEo
・Website : https://atthelast.skyhi.tokyo
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