韓国を代表するロックバンドのNELLが、10月3日(金)にビルボードライブ横浜で2度目のアコースティックライブ「Still Sunset IN YOKOHAMA」を開催する。日本でのワンマンは今回で8回目となり、日本に事務所やレーベルをもたない韓国アーティストがこれだけコンスタントに来日しているのは珍しい。
アコースティックのアレンジ秘話をはじめ、K-POPアーティストへの楽曲提供についてや、バンド結成25周年を経た心境などについて迫った。

#NELL
1 MONTH TO GO!

韓国のロックシーンを代表するNELLが、7年ぶりのビルボードライブ公演『Still Sunset IN YOKOHAMA』開催
多数のヒット曲を持ち、名だたる韓国アーティストへの楽曲提供も手掛ける彼らが、アコースティック編成で贈る、特別な一夜をお見逃しなく。

:… pic.twitter.com/B6w8SEE9Y9— Billboard Live YOKOHAMA【ビルボードライブ横浜】 (@billboardlive_y) September 3, 2025

アコースティックの新たなエネルギー

―前回のビルボードライブ東京が2018年11月で、約7年ぶりにビルボードライブのステージへ立ちます。今回は横浜会場となりますが、ビルボードライブにはどんな印象がありますか?

ジョンワン:僕たちがライブをしてきた中で最もきれいな会場ですね。(東京会場は)窓から広がる夜景が本当に圧巻だったことを覚えています。それとテーブルがある場所で演奏をすることがほとんどなかったので、すごく新鮮でした。

ジョンフン:ビルボードライブで演奏していると、その日だけとてもハイクラスの人間になったと感じるほど会場が高級な雰囲気に包まれていて、僕たちが立ったステージの中で一番美しい会場でした。

―2018年のビルボードライブ東京が日本での初めてのアコースティックライブで、今年が2度目となります。韓国でもロック主軸のライブとアコースティックライブとを開催していますが、アコースティックはどんなタイミングで行うのでしょうか。

ジョンワン:アコースティックは編曲にかなり時間がかかるから準備が大変で、意を決しないとできないんですよ。気持ち的にはいつでもやりたいけれど、他のライブや曲づくりで物理的にアコースティックの編曲をする時間が取れないので。でも今年は思い切って準備することにしました。


韓国では今年5月にアコースティックライブをしましたが、今回ビルボードライブで見せたい内容や、日本ならではの選曲はありますか?

ジョンワン:今回は韓国で行ったライブを日本で実現することが目標なので、韓国ライブに劣らず上手く演ることが課題ですね。コードだけではなくメロディもけっこうアレンジしていて、どれも新鮮に届くんじゃないかと。ライブは音楽と同じくらい会場の雰囲気が重要だと思うので、ビルボードライブ特有の雰囲気が、同じ楽曲でも違ったものに聴こえるでしょう。その雰囲気にちゃんと似合うライブになるか実際に演ってみないと分かりませんが、自分たちでも気になるところです。

イベント名の由来である楽曲「Still Sunset」

―アレンジの話が出ましたが、どのようにアコースティックの編曲をしているのでしょうか。全員でスタジオに入って演奏しながら作っていくのですか?

ジョンワン:僕たちのスタジオはレコーディングができるので、普段から持っているアイデアを出し合いつつ、リアルタイムで録音しては聴いてを繰り返して、アルバムの編曲をするように進めています。ただライブのアレンジはステージ上のプレイヤーだけで再現しなければならないから、重ね録りをしないのがアルバム作りとは違いますが、全く新しい曲を編曲するのと同じ感覚です。

ジョンフン:正直アコースティックの編曲は、新曲を作るよりプレッシャーでもありますね。けれど実際に曲が生まれ変わった時、新たなエネルギーが生まれて胸が満たされますし、ライブをすればファンの皆さんも共感してくれるのでうれしいです。

ジェギョン:プレイヤー同士が集まってアレンジをするのはすごく楽しいですが、演奏内容が決まっているわけではないので、かなり頭を使わなきゃいけなくて大変です。ジョンワンが言ったように新曲を作るくらい大変だけれど、うまくできた時は嬉しいし、この曲をどう届けると良いかと思いを巡らせながら編曲していました。

―ライブから逆算して、いつ頃から編曲を始めるのでしょう。


ジョンワン:今年韓国でのアコースティックは5月でしたが、去年の夏ごろから企画の構想を始めて、この曲はこうすればいいな……という考えはある程度頭の中にあり、実際に楽器を持って編曲作業をスタートしたのはライブの3カ月ほど前だったと思います。

NELLが語る特別なアコースティックライブ、結成25周年の心境、K-POPとのコラボと韓国バンドシーン


―アレンジ作業で印象深かった曲はありますか?

ジェギョン:印象的に編曲できたと思うのは、「Love It When It Rains」です。元々は少しダンサブルで高揚感のある曲ですが、今回はボサノヴァっぽくアレンジしました。原曲は雨がしっかり降る感じだとしたら、アコースティックはやさしく降る雰囲気で、バーのようなところで聴くのによく似合いますね。

ジョンワン:「Counting Pulses」は後半の演奏をダイナミックにビルドアップしていくので、プレイヤー皆で息を合わせるのが、編曲よりも技術的に大変でした。僕らとセッションメンバーも含めて、一人一人がどんなダイナミック感を持っているのか、お互いを探りながら作るのに時間がかかりました。

ジョンフン:僕個人的には「Boy - X」を挙げたいですね。原曲も十分に強烈な感じですが、アコースティックに編曲しても、その味を活かしながらアレンジできているという点で、今回のセットリストでも特別な曲の一つではないかと思います。

K-POPとのコラボ、バンドシーンへの目線

―最近の活動についてお聞きします。韓国では毎月のようにフェスに出ていますが、8月はサマーソニック・バンコクにも出演されました。観客もたくさん駆けつけていましたが、これまでタイでライブをしたことはあるのでしょうか?

ジョンワン:初めてです。遊びにはよく行くのですが(笑)。
僕たちもすごく楽しく演れましたし、ライブも好きになってもらえたようなので、また機会があれば行きたいですね。

この投稿をInstagramで見るSummer Sonic Bangkok(@summersonic_bangkok)がシェアした投稿

―去年はラオスでのイベントライブにも出演していましたが、日本以外の海外公演はどんな感じなのでしょう。

ジョンワン:以前は地域ごとに違いがあると思っていましたが、時間が経つにつれ、音楽が好きな人たちは皆同じなんだと感じるようになりました。どんな国や地域でも純粋に音楽が好きな人たちが集まっていて、その人たちの前でライブをするのはとても幸せです。むしろ会場に到着した時のスタッフたちの雰囲気が、その地域ごとの特性を感じますね。

―例えばどんな特性ですか?

ジョンワン:日本は会場の雰囲気やスタッフたちがいちばん几帳面で丁寧に対応してくれますが、逆に韓国は何でも早く、何か抜けていることもあったり(笑)。僕らは台湾でもよくライブをしますが、早さも几帳面さも日本と韓国の中間という感じ。タイは全般的に余裕がある雰囲気でした。そうした地域ごとの特色を会場からも感じられるのが興味深いです。

―韓国では8月末から9月下旬まで、「SHADOWS」と銘打ったメディア・アート・エキシビジョンとコーヒーバーの企画を実施しています。こうした試みはこれまでもやっていましたか?

ジョンワン:僕たちが直接企画したのは初めてです。ライブ会場ではない空間で僕たちの音楽と、実際にライブで流している映像を近くで見られるのは面白いかなと。
一生懸命やっている僕たちの映像チームや他のスタッフたちの仕事ぶりにも、興味を持ってもらえる良い機会ではと考えました。

―NELLのライブは映像やライティングも芸術的に素晴らしいので、近くで見られるのは魅力的ですね。それと”コーヒーバー”で思い出したのですが、ジョンワンさんってコーヒーがお好きなのですか?

ジョンワン:コーヒーが特別好きなんじゃなく、カフェイン中毒です(笑)。

―というのは、以前日本のライブでご一緒したとき、本番が終わったあとジョンワンさんは必ずコーヒーを飲むという習慣を知ったので、どんな理由で習慣になったのか気になりまして。

ジョンワン:いつからか覚えていませんが、かなり前からですね。僕は交感神経がいつも活性化している状態なので(笑)、カフェインを飲むと集中度が上がりますし、常に覚醒しておくために飲んでいる気がします。

ジョンフン:以前は僕もコーヒー好きだったんですが、今はあまり飲まないですね。最近はコーヒーを飲んでもほとんどカフェインレスです、カフェインはトイレが近くなるから(笑)。

NELLが語る特別なアコースティックライブ、結成25周年の心境、K-POPとのコラボと韓国バンドシーン


―面白いエピソードをありがとうございました。そしてジョンワンさんは今年、NCTのドヨンさんに「Sand Box」を提供されました。曲提供をするのは久しぶりじゃないですか?

ジョンワン:そうですね、かなり久しぶりかな?

―YouTubeにレコーディングのビハインド映像も公開されていますが、驚いたのはジョンワンさんがドヨンさんのレコーディングに付きっきりで、熱心に歌唱指導をしていたことです。楽曲提供したアーティストが一緒にレコーディングまでするのは珍しいと思うのですが、いつも曲提供のたびにレコーディングに付いているのですか?

ジョンワン:僕がプロデュースする曲を他の人が歌う時は同じようにしていますね。
そのほうがラクだから。例えば曲を提供したアーティストが録った歌のファイルが送られてきた場合、修正する際に細かく説明する必要があったり、何度も音源ファイルをやり取りしないといけない。でも一緒にレコーディングすると、その場ですぐ「こんな感じでやってみよう」と伝えられるから、僕はこのスタイルが好きですね。僕に曲を依頼する人たちは、この僕の進め方も好きなようです。

―もちろん良い結果が出ますが大変ですよね。BTSのRMさんやSUGAさん(Agust D)とも、共同作曲と一緒に歌っている曲がありますが、彼らとも一緒に作業をしたのでしょうか。女性では少女時代のテヨンさんの場合も同じように?

ジョンワン:RMさんとSUGAさんとは、彼らがあまりにも忙しくて韓国にいる時間がほとんどなかったので、当時ファイルとメッセンジャーで会話しながら作りましたね。確かRMさんとの時は、BTSがヨーロッパツアーを廻っていたと記憶しています。女性であっても一緒だからテヨンさんも付きっきりでレコーディングしました。

―メンバーは、ジョンワンさんが他のアーティストをプロデュースする姿を目にすることはないわけですよね。今回ドヨンさんとのレコーディング映像はご覧になりましたか?

ジェギョン:はい、見ました。ジョンワンがすごく真剣に情熱的に教えていて、指示も的確だったから、さすがだなと。


ジョンフン:いつも通り情熱的な彼でした。ジョンワンがレコーディングで誰かと会話するスタイルを長い間見てきたので、当事者が誰であれ同じなんだと思います。付け加えるなら、僕たちに話すときより紳士的でした(笑)。

―ジョンワンさんはバンド以外のアーティストたちと音楽づくりを行うことで、何か影響を受けたり感じたりすることはあるでしょうか。

ジョンワン:お互い敬意を持って作業をするのは楽しくて、学ぶことも多いです。特にK-POPアイドルの場合は、想像を超えるほど忙しいスケジュールをこなしながらも、よく練習されていて本当に勤勉。そうした姿勢で居続けることは、ミュージシャンにとって最も重要です。僕らも長くやってきたけれど、若い彼らを見て学ばなければならないと思うし、刺激になっています。

―韓国のバンドシーンについても伺いたいのですが、最近は楽器を習う学生も増えていると聞いています。チャートを急浮上して大人気になったDAY6やガールズバンドのQWERらの活躍や、韓国ではアイドルバンドと見られがちだったFTISLANDやCNBLUEもここ数年はロックフェスでも活躍したり、HYUKOHやSilica Gelのように日本のフジロックやサマソニへの出演バンドも広がっている印象です。ロックが弱いと言われ続けた韓国で、バンドを取り巻く環境が変わってきているのでしょうか。

ジョンワン:確かに脚光を浴びるバンドは以前より多くなったなと。露出の頻度もどんどん上がってとても良い現象ですが、韓国は小規模のライブハウスが減ってきているんですよね。バンドシーンが本当に活気づくためには様々な規模のライブができるインフラが整わなければならないけれど、その改善には時間がかかる気がします。でも若い世代にとってバンドという存在自体が、以前より身近になっているのはとても嬉しいですね。

結成25周年の心境、日本へのメッセージ

―日本公演に関する質問ですが、初来日が2008年のサマソニ大阪で、ワンマンは2013年から今回で8回目です。これだけコンスタントに来日ライブをしている韓国バンドも珍しいです。日本のライブで印象的だった思い出を教えてください。

ジョンワン:個人的には一昨年の、大阪(BIGCAT)と東京(代官山UNIT)でのツアーがとても記憶に残っています。メンバーの交代があった時期でもあり、韓国では長らく立つことのなかった小規模ステージだったので、最初はちょっと心配したんです。ドラムもすぐ後ろにあってモニターも近いし。でも楽しかった。小さなライブハウス特有の激しさを感じられて、バンドを始めたころに戻ったような気持ちになりました。

ジェギョン:僕は赤坂BLITZ(2015年)のライブを思い出します。ライブ終わりにご挨拶した公演会社の代表が、僕たちも出演したことのあるサマソニを始めた方だと伺って、そんな方が僕たちのライブへ来てくださったことが印象的で、嬉しかったです。

ジョンフン:ジェギョンが話した2008年のサマソニ(大阪)が印象的でした。僕たちが出るステージで別アーティストの時間帯は観客で埋め尽くされていたのですが、僕らがステージに上がったとたん嘘のようにほとんどいなくなって(笑)。気にせず楽しくやろうと言って始めたら、数曲やるうち人が集まって来て盛り上がってくれた光景を覚えていますね。

2024年来日時の映像

―去年バンド結成25周年を迎えましたが、ベテランバンドとしてこの先への思いとは。

ジョンワン:音楽をすればするほど感じることは、長い時間が経っても同じ情熱を維持しながら、僕たちや音楽リスナーたちが十分に満足できるような、クオリティの高い音楽をずっと作り出すことが最も重要だと感じます。音楽を始めた頃のように、音楽への情熱を保ちながら体力も維持していくことが大切だと思いますね。

―日本で今後やりたいことはありますか?

ジョンワン:各国の情緒が一番よく出るのは”声”なので、機会があれば日本のボーカリストの方とも一緒に音楽づくりをしてみて、どんな色の音楽ができるのかという興味があります。弦楽器の共同作業にも興味がありますね。昔の日本の音楽を聴いてもアレンジや演奏面で本当に優れているなと感じるので、ベテランの弦楽器奏者やアレンジャーの方と一緒にやってみたいですね。

―日本のファンの皆さんへメッセージをお願いします。

ジェギョン:以前より日本へ頻繁に行けるようになって嬉しいし、今回は特別なライブになると思うので、新鮮な感動を受け取ってもらえたらと思います。

NELLが語る特別なアコースティックライブ、結成25周年の心境、K-POPとのコラボと韓国バンドシーン


ジョンフン:アコースティックライブ「Still Sunset」を5月に韓国で開催したとき、とても良い仕上がりで、来た方々もすごく楽しんでくれました。今回の横浜では、それ以上に最大限のものをお見せしたいと思います。そして今、ジョンワンが次のアルバムを一生懸命作っているので、楽しみにお待ちください。

NELLが語る特別なアコースティックライブ、結成25周年の心境、K-POPとのコラボと韓国バンドシーン


ジョンワン:いつも日本でのライブが終わったら、良い思い出だけが残ります。僕たちにとって海外であっても、僕らの音楽を訪ねて来てくれるファンがいる幸せを抱えて韓国へ戻ってくるんです。今回もそうだと確信しています。横浜のビルボードライブは初めて立つから僕たちもすごく楽しみで、素敵なひとときを皆さんと過ごせたらという思いです。

NELLが語る特別なアコースティックライブ、結成25周年の心境、K-POPとのコラボと韓国バンドシーン


NELLが語る特別なアコースティックライブ、結成25周年の心境、K-POPとのコラボと韓国バンドシーン

NELL JAPAN CONCERT 2025
Still Sunset IN YOKOHAMA

2025年10月3日(金)ビルボードライブ横浜
〈1st ステージ〉開場16:30 開演17:30
〈2nd ステージ〉開場20:00 開演21:00
詳細:https://www.mahocast.com/ce/c/59
編集部おすすめ