ソロ名義でのプロジェクトを、ダミアーノは”旅”と表現する。それはただの逃避ではなく、再び自分自身に出会うための道のりなのだろう。初のソロアルバム『FUNNY little FEARS』は、壊れた心の断片を拾い上げながら、痛みや恐れを受け入れる音楽として生まれた。続くニューバージョン『FUNNY little FEARS (DREAMS)』では、タイラやナイル・ロジャース、アルバート・ハモンドJr.といった異なる世代のアーティストと手を取り合い、ロックスター像を超えて、よりリアルなダミアーノを表現している。
ソロツアーも盛況だ。各国でソールドアウトしているこのツアーは、変化し続ける新たなダミアーノに遭遇する場として熱狂を生んでいる。10月27日の東京公演、29日の大阪公演が目前に迫る中、彼は多忙なツアーの合間を縫って、日本のファンのためにメールインタビューに応じてくれた。この”旅”がダミアーノにとってどれだけ意義のあるものなのか、彼の想いをぜひ受け取ってほしい。
Photo by Fabio Piemonte
ワールドツアーの手応えと日本への想い
―ワールドツアーが始まりましたね。母国イタリアを含むヨーロッパでは全公演がツアー開始の数カ月前に完売したそうですが、マネスキンのライブの反応とはどのような違いを感じていますか?
ダミアーノ:とても興味深いね。音楽的にはもちろんマネスキンのツアーとはまったく違うものなんだけど、ファンとのつながりや観客との絆は変わらずそこにあって、本当にありがたく、幸せだと思ってる。
―特にオーディエンスが盛り上がった瞬間、印象に残っている瞬間を教えてください。
ダミアーノ:正直言って、どの夜も忘れがたいんだけど、ひとつ選ぶならマドリードの公演は格別だったよ。1万5千人以上の観客の前で演奏したんだ。あんなに大勢の人たちが僕の曲を一緒に歌ってくれるなんて、クレイジーだった! ああいう瞬間を当たり前に感じることは、きっと一生ないと思う。ステージを降りたあとも、しばらく高揚感が収まらなかった。でも、日本もきっと最高のハイライトになると思う。日本はこれまでも僕にとって特別な場所だし、音楽もファンも抜群に素晴らしいから、また戻れるのがすごく楽しみなんだ。
9月22日のマドリード公演、後述の新曲「Talk to Me」をパフォーマンス
―「マネスキンのダミアーノ」ではなく、「ダミアーノ」としてステージに立つのはどんな気分ですか?
ダミアーノ:このソロアルバムを作り上げるまでの道のりは、本当に充実したものだった。
Photo by Fabio Piemonte
―ソロ作品はオーガニックなムードで、歌唱においてもこれまでにないあなたの一面が引き出されていました。ライブで実際に歌ってみて、自身のボーカリストとしての新たな発見を感じていますか?
ダミアーノ:そうだね、このソロプロジェクト全体が僕にとってひとつの”旅”になったと思う。とても刺激的な経験だった。自分の声には、これまで気づかなかったほど多くの表現の幅があることを実感したんだ。声の使い方を探っていくうちに、新しい音楽ジャンルにも自然と興味が広がっていった。このプロジェクトは、ソロツアーという枠を超えて、自分の声の中にあった知られざる側面や色合いを発見するきっかけになったんだ。
歌うという行為は、とてもパーソナルな営みだと思う。体の奥底、自分の内側の核(core)みたいな部分から出てくるものだからね。僕にとって、曲作りや歌うことはいつも浄化のような作用を持っていて、向き合ってきたさまざまなことを整理したり、乗り越えたりするためのプロセスなんだよ。
―ソロツアーでは、マーク・ロンソンやブルーノ・マーズ、キングス・オブ・レオン、チャペル・ローンといったアーティストのカバー曲も披露していますね。ライブの構成やストーリーにおいて、カバー曲はどのような効果を生んでいますか? それらの楽曲を選んだ意図も教えてください。
ダミアーノ:知ってのとおり、カバーをやるのは本当に大好きなんだ。バンドを始めた頃も、ローマの街角でカバーを演奏してたからね。正直言って、どの曲をカバーするか決めるときに、特にルールみたいなものはない。ひとつだけあるとすれば、「どれだけその曲を愛しているか」ってことだけ。原曲を歌っていた人が誰か、その曲を作ったアーティストが誰かとかは関係なくて、僕にとって大事なのは曲そのもの、つまり音楽そのものなんだ。ツアーでカバーをやるのも、まさにそういう気持ちの表れだね。それに、演奏する国へのリスペクトを込めたオマージュの意味合いもある。スペイン語や英語、もちろんイタリア語など、いろんな言語で歌うことで、その土地や観客とより深くつながれる気がするんだ。
マーク・ロンソン「Nothing Breaks Like a Heart」とキングス・オブ・レオン「Sex on Fire」のカバー
『FUNNY little FEARS (DREAMS)』でタイラと共演した経緯
―5月にリリースしたアルバム『FUNNY little FEARS』のタイトルに、ニューバージョンで「 (DREAMS)」というワードを加えた意図を教えてください。あなたの中でのアルバムの捉え方が、この数か月で変化してきたということでしょうか?
ダミアーノ:この10年間、僕の人生は一個人としても、アーティストとしても、本当にめまぐるしい渦の中にいたんだ。すべてがものすごいスピードで起きていった。16歳のときは街角で演奏していたのに、22歳でユーロヴィジョンに優勝していたんだからね。まるで稲妻のように速くて、信じられないような時間を過ごしてきたよ。その間、アーティストとして成長する一方で、人間としても変化していった。でも、ある日突然、心の中で何かが壊れたんだ。それはとてもパーソナルな出来事だったけど、内側が壊れると、自分のやることすべてが嫌になってしまう。そのとき、すべてを止めたいという強い衝動に駆られたんだ。たとえすべてを失うリスクがあっても、自分の中で何が起きているのかを理解したかった。そこから先は、自分ひとりで歩かなければならない道だった。
僕は意識的に、自分をコンフォートゾーンから遠ざけることを選んだ。
このソロプロジェクトは、僕自身の成長の一歩であり、ものすごく大切なもの。「Naked」という曲では、「自分がどういう人間なのかわからないときこそ、自分が何者なのかを知ることができる」というテーマを歌っている。今回の旅をひとりで経験したことで、恐怖(fears)を夢(dreams)に変えられた気がするんだ。自分と向き合い、成長し、乗り越えていくことができたから。
―ニューバージョンにも収録された「Talk to Me」は、豪華なコラボレーションが話題になりました。タイラとナイル・ロジャースに、どのような効果を求めてコラボレーションを依頼したのでしょうか。
ダミアーノ:ツアーを控えていた頃、新しいインスピレーションの波が訪れて、「Talk to Me」を書き上げた。何度も聴き返しているうちに、これはデュエットの曲だと感じるようになって、自然と女性ボーカルの声が頭の中に浮かんできた。そのときよく聴いていたのがタイラで、まさに彼女の声が、この曲の後半パートにぴったりだと感じたんだ。彼女は素晴らしいよね。「Water」は最高の曲だし、ボーカルも半端ない。その頃、僕は彼女からすごくインスパイアされていたんだ。それで、参加を快諾してくれた。さらに、ナイル・ロジャースがギターソロを加えてくれることになった。ナイル・ロジャースと一緒に仕事ができたのは本当に夢のようだったよ。正真正銘のレジェンドだからね! あまりにもクレイジーだし想定外すぎる展開で、二人がそれぞれの才能をこの曲に注いでくれたことに心から感謝している。「Talk to Me」は書き上がったときからすごく気に入っていた曲だったんだけど、ナイルが参加したことで一段階レベルが上がって、さらにタイラが加わって、もうひとつ上の次元に引き上げられた。とても特別な経験だったし、この曲に二人が参加してくれたことは僕にとって大きな意味があるんだ。
―アルバート・ハモンドJr.との「Cinnamon」も新規で加わった曲ですね。ザ・ストロークスの影響は、あなたの初期衝動にもつながる部分があると思いますが、いざ本人とコラボレーションすることで自分の原点を見つめ直す瞬間はありましたか?
ダミアーノ:彼もやはりレジェンドだから! 物心ついたときからずっとザ・ストロークスの大ファンなんだ。彼らは2001年当時と同じくらい、今もまったく色あせないバンドだと思う。あまり深く感傷的にはならないようにしているけど、自分が育ってきた頃に聴いていた音楽を作った、アイコニックで才能あふれるアーティストたちと、こうして一緒に作品を作れたのは幸せだったな。とても刺激的な経験だったし、アルバートがこの曲に参加してくれたことに本当に感謝している。
—『FUNNY little FEARS』は親密なラブソングが多く、制作過程においては実生活の恋愛の影響も大きかったようですね。今回のソロ活動の表現を通して、あなたの中の恋愛観や男性性といったものはどのように変化してきていると思いますか?
ダミアーノ:自分にとって一番大きかったのは、「心を開いてもいい」「弱さや情熱、本当の感情(real emotions)を曝け出してもいい」ということを、心から理解できたことだと思う。このアルバム全体が、僕にとって「本当の気持ちを表現すること」を学ぶ大きなレッスンだった。これまでとは違う形で自分の内側に耳を傾け、理解し、自分の中の本当の姿を見つけて受け入れる――そんなプロセスだったんだ。もちろん、恋愛関係のこともたくさん考えた。実際、このアルバムの多くの曲は僕の恋人との日々から生まれている。でも同時に、友人や家族との関係など、ほかの人間関係についても深く見つめ直すきっかけになった。だからこのアルバムを世に出したとき、「これが自分のいちばん誠実で本物の姿だ」と胸を張って言えることが、僕にとって最大の誇りだった。人間としてもアーティストとしても、今作こそが自分の最もリアルな姿なんだ。
―音源をリリースしツアーをしていく中で、あなたの中にあった”FUNNY little FEARS(おかしな小さな恐怖)”は無くなってきていますか? それとも、何か別の感情へと変わってきていますか?
ダミアーノ:その答えは、ニューバージョンのタイトルにもつながっているんだ。恐怖が消えたわけじゃないけど、確実に形を変えたと思う。”ファニーで小さな恐怖”と正面から向き合ったことで、それが”夢”へと変わり、すごく美しいものになった。
―あなたと日本のファンは、これまで特別な関係を築いてきました。皆が来日公演を心待ちにしていますが、どのようなスペシャルな時間を届けたいですか?
ダミアーノ:日本はいつだって僕にとって特別な場所なんだ。日本のファンは本当に情熱的で、いつも心から感謝しているよ。ツアーの中でも、日本に来ることはいつも大きなハイライトのひとつ。ライブ以外でも日本に滞在するのが大好きで、美しくて、訪れることができること自体を幸運に感じている。個人的にも、とても親密で特別な時間だと思っているし、日本に来てくれるみんなにも同じように感じてもらえたら嬉しい。アルバムにもツアーにも、自分自身のすべてを注ぎ込んできたから、しっかり感じ取ってもらえたらいいなと思っているよ。
Photo by Fabio Piemonte
ダミアーノ・デイヴィッド
『FUNNY little FEARS (DREAMS)』
発売中
再生・購入:https://sonymusicjapan.lnk.to/DamiamoDavid_FUNNYlittleFEARSDREAMSRS
ダミアーノ・デイヴィッド ワールド・ツアー2025 日本公演
2025年10月27日(月)東京・Tokyo Garden Theater
2025年10月29日(水)大阪・Zepp Osaka Bayside
OPEN 18:00 / START 19:00
詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/damiano-david_2025/
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