今回、BABYMETALと5FDPにメールインタビューを行い、今作の裏側に迫った。5FDPはなぜBABYMETALに白羽の矢を立てたのか、SU-METALはどんな想いでこの楽曲と向き合ったのか、興味深い話を聞くことができた。
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―5FDPとの出会いはいつ頃ですか。最初の印象を教えてください。
SU-METAL 2015年にフェスで一緒になった時にお話したのが最初の出会いです。当時はまだメタルアーティストに慣れていなかったので、ちょっと怖いかなって思ったけど、すごく気さくにお話ししてくださって、優しい人で安心したのを覚えています。10年も前のことだったので、私たちのことを覚えていてくださって、今回声がかかったのは本当に嬉しいですし、あの時勇気を出して声をかけてよかったなと思います。
―5FDPから見て、BABYMETALはどんな印象でしたか。
5FDP 何度かすれ違ったことはあったけど、メタルの世界ではBABYMETALが出てきた瞬間に、みんなが注目してたと思う。日本から突然現れたトルネードみたいで、あの”カワイイメタル”のスタイルはめちゃくちゃ独特だったから、とにかく目立ってたよね。
―今回のコラボは、どうやって始まったんでしょう。
SU-METAL ベルギーのフェスに出た時に、5FDPさんのレーベルの方からオファーをもらったのがきっかけです。過去にリリースをした楽曲にゲストアーティストを迎えたコラボ企画をやられていて、今回声を掛けていただきました。
5FDP 自分にとって音楽って、昔からすごく視覚的なもので。曲を書くときって、頭の中で映画をつくってるような感じなんだよね。ハンス・ジマーとかエンニオ・モリコーネみたいに、音でストーリーを語れる作曲家にずっと憧れてたんだ。で、「The End」を書いたときに浮かんだ映像が、侍同士の対決シーンだったんだよ。ブリッジで和太鼓の音が入ってるんだけど、それもそのイメージから来てて。壮大な戦いのシーン、そしてそこに宿る日本のスピリット。その流れで「BABYMETALに日本語で歌ってもらえたら、このビジョンが完成する」って思ったんだよね。
―「The End (2025 Version) feat. BABYMETAL」の制作では、どんなやりとりや準備がありましたか。
5FDP この曲は前のアルバムに入ってたもので、もともとシングル候補だったんだよね。ただ、すでにナンバーワンを何曲か出してたし、1枚のアルバムから4曲以上シングルを切るのってあんまりやらないから、リリースのチャンスがないまま残ってたんだよ。でも今回、再リリースのタイミングで「ちゃんとこの曲をシングルとして出そう」ってなって。とはいえ、既発曲だから何か特別な要素を加えたいよねって話になって、そこにBABYMETALがハマった。あとはトラックをSU-METALに送って、「自由にやってくれたら嬉しい」って伝えただけ。細かい指示は一切してないけど、最初のテイクで完全に仕上げてくれたんだ。こっちの音にすごく自然に寄せてくれて、それでいてBABYMETALファンにも彼女の新しい一面を見せられたと思う。完璧な融合だったね。
SU-METAL 日本語で歌ってほしいというリクエストをいただき、オリジナルの英詞のメロディーをベースに、メロディーやリズムにハマる日本語歌詞をセレクトして、またオリジナルのメロディに寄り添ったフレーズを考えました。今まであまり挑戦したことのないミドルテンポで深い曲だなと思って、一つひとつの歌詞や音が際立つので、一つひとつをちゃんと歌う。
―SU-METALさんは実際に歌いながらどんな感情を抱きましたか?
SU-METAL 荒波の中で出口が見えなくて、見えない力に押さえつけられて立ち上がるのもやっとな状態で、でもどうにか足を一歩踏み出そうと顔だけは上げられたみたいな、目だけはまっすぐ前を捉えている。そんな感覚です。日本語詞は英語の歌詞の意味に合わせて考えていったのですが、元々あるものに響きが似ていて意味も似ている言葉を探すのは大変で、歌い方も色々試行錯誤を重ねました。
―完成した楽曲を改めて聴いてみて、特に印象的だった部分はありますか?
SU-METAL 2番から私の歌が始まるんですけど、本当にこの曲に自分の声が入ってる!っていう衝撃というか、感動がありました。
5FDP これは単なる”ちょい足し”のコラボじゃなくて、ちゃんとしたフィーチャリングなんだよね。SU-METALは自分のパートもあるし、ブレイクダウンでは大きな存在感があるし、彼女の声が曲全体にしっかり組み込まれてる。中でも印象的だったのは、ブレイクダウンの直前で、イヴァンの声と彼女の声が交差するところ。まるでお互いに呼応してるみたいな、映画のワンシーンみたいな強烈な瞬間。2つの世界がぶつかるような感覚だった。あと、ブレイクダウン自体もめちゃくちゃ気に入ってる。ギターソロの代わりに派手な”ダイブ・ボム”を入れてて、普通じゃ聴けないようなサウンドになってる。
SU-METALが挑んだ、”日本語詞×5FDPサウンド”の融合
―SU-METALさんは、日本語詞でオリジナルを再解釈し、楽曲を新たな次元へと引き上げました。その歌詞やボーカル表現について5FDPはどう感じましたか?
5FDP 正直、日本語は柔道用語くらいしか知らないんだけど(笑)、日本のファンの反応を見て、「あ、これはちゃんと伝わってるな」って確信できたよ。もちろん、日本語詞を英訳してもらって自分たちでも内容をちゃんと理解したけど、すごいのは、今この曲が全米のロックチャートでトップ10入りしてることなんだ。しかも、その半分は日本語の歌詞。こんなこと、今まであったかな? たぶん、これって音楽史上でも初の快挙なんじゃないかな。このコラボがどれだけ”壁”を超えたか、ほんとに特別な出来事だったと思う。
―今回のコラボを通して、5FDPはSU-METALのどんな新しい一面を発見しましたか?
5FDP 一番驚いたのは、彼女の適応力だと思う。スタジオで直接会ったわけじゃないけど、戻ってきた音源を聴いた瞬間に「これだ」ってなった。修正もいらなかったし、最初のテイクですでに全部完成してた。しかも、こっちの歌詞をただ訳すんじゃなくて、自分の言葉に置き換えて再構成してくれて、日本語としても自然でアーティスティックな仕上がりになってた。こっちは何も言わなくても、彼女が自分でそのレベルまで持っていってくれた。
―逆に、BABYMETALにとって5FDPとのコラボはどんな意味を持ちますか。
SU-METAL 今回のようなヘヴィで大人っぽい楽曲を歌うことが今まであまりなく、イヴァンのように深みと余裕とかっこよさを持ち合わせた声と一緒に歌うこの曲の世界にふさわしい声はなんだ?と、また新しい声を探す旅から始まりました。また新たなバリエーションができたと思っているし、大人な深みのあるBABYMETALを見つけられたと思っています。
5FDP 個人的にいちばんクールだなって思ったのは、”世界をまたいで音楽のボトルメールを送り合ってる”みたいな感覚だったこと。ほんとに、こういう国境を越えたコラボが実現する時代になったんだなって実感したよ。
―このコラボレーションを通じて新たに知った5FDPの魅力や、意外な発見はありましたか。
SU-METAL 自分たちの楽曲に他のアーティストの色が入ることに抵抗を感じるアーティストもいると思うのですが、私たちが日本語で歌う事に賛成してくれたことは嬉しい驚きでした。なので、全力でBABYMETALの色を出させてもらいました。
5FDPが語る、再録に込めた”20年の誇り”とアティテュード
―5FDPにお聞きしたいのですが、今回のベスト盤をリマスターではなく、再録という形で出すことにした理由は?
5FDP 実は……これ、あまり知られてないかもしれないけど、以前のレーベルが僕らのマスター音源を勝手に売っちゃったんだ。しかも、こっちに何の連絡もなくてさ。正直、それは「ナシでしょ」って思ったけど、音楽業界ではよくある話でもあるんだよね。
―再録する楽曲はどうやって選んだんですか? ベストアルバムという形もあったと思いますが。
5FDP すごくシンプルで、ファンが一番聴いてくれてる30曲を選んだだけ。たしかにヒット曲だけでも30曲あるから、そこから選ぶって手もあったんだけど、うちらはいつだってファンの声を大事にしてきたから、「実際にいま聴かれてる曲はどれか?」を基準にしたんだ。うちらをここまで導いてくれたのはファンだから、これはファンのためのアルバムにしたかったんだ。
―再録を通して、自分たちの音楽や歩みについて新しい気づきはありましたか。
5FDP うちは基本、前を向いてばかりのバンドなんだ。次のステップ、次のチャレンジを常に見てるから、過去を振り返ることってあまりない。でも、今回の再録を通して、久しぶりにバックミラーを覗くことになった。「ここまで来たんだな」って気づいたときは、ちょっとしたショックでもあった。20年もやってるから、最初は子どもだったリスナーが、今では自分の子どもと一緒に聴いてるって話もある。それってちょっと不思議な感覚でさ。でも、それだけ続けてきたんだなって改めて思った。嵐があっても、坂道が続いても、とにかく進んできた。人生の半分をかけて築いてきたものだけど、どの一歩も無駄じゃなかったと思ってるよ。
―コラボというのは5FDPにとってどういうものなんでしょう?
5FDP 過去にもいろんなすごいアーティストたちと一緒にやってきた。たとえば「Blue on Black」のカバーでは、Kenny Wayne Shepherd本人が気に入って逆に一緒に参加してくれたり、Brantley Gilbertや、あのQueenのBrian Mayまで入ってくれたりして。他にもTech N9ne、Judas PriestのRob Halford、In This MomentのMaria Brink、SepulturaのMax Cavalera、そしてDMXともコラボしたことがある。BABYMETALとの今回の曲も、まさにそういう流れの中にある。違う声が入ると曲の雰囲気がガラッと変わるから楽しいんだよね。ファンにとっても新鮮だし、うちらももともとコラボ好きなバンドだから、今後もこういう挑戦は続けていくつもり。
―20年の活動を振り返って、どんなことを感じますか。
5FDP 再録を通して一番感じたのは、「うちらって、もう完全に自分たちの音になってるな」ってこと。Five Finger Death Punchって、好き嫌いは分かれるかもしれないけど、「誰にも似てない」っていう点は誰もが認めてくれてると思う。振り返ってみると、ほんとに自分たちでこの道を切り拓いてきたなって思う。誰かのルールに従ったこともないし、流行に乗ったこともない。コントロールされたこともない。そこには、自分たちの音楽に対する”純度”みたいなものがあると思ってる。
―この20年間を振り返って、5FDPにとって一番の転機はどこだったと思いますか?
5FDP 正直に言うと、「ここが大きな転機だった!」っていうポイントはないんだよね。うちはすごく地道に積み上げてきたタイプのバンドで。完全にインディーでスタートしたし、1枚目のアルバムなんて俺のリビングで録ったようなものだった。ボーカルとミックスだけスタジオで仕上げて、完成品をそのまま小さなインディーレーベルに渡してリリースしたんだ。それからはもう、ひたすら一歩ずつ前に進んでいくだけだったよ。ライブもツアーも、全部自分たちの手で積み重ねて、少しずつ場所を広げていった。違いを生んだのは、やっぱりファンの存在だね。最初からずっと支えてくれたし、ライブに来てくれる人数もどんどん増えていった。でかいツアーサポートがあったわけでもないし、潤沢な資金があったわけでもない。200日以上ツアーを回りながら、小さい箱からアリーナ、スタジアムまで這い上がってきたんだ。だからうちらの「転機」って、ハードワークと粘り強さでできたストーリーなんだよね。今も進化の途中だし、この物語はまだ終わってない。
―このバンドのスピリットを、20年経った今あらためて言葉にするなら?
5FDP やっぱり、俺らの根っこにあるのは”アティテュード”なんだと思う。最初からずっと、”退路を断って前に進む”っていうマインドだった。もう後戻りできないくらいまで進んで、絶対に引かない。それが前提だった。この考え方は、俺自身が武道から学んだことでもある。武士道のルールに従って生きるっていうか、「絶対に諦めない」っていう精神。ありがたいことに、バンドメンバーもみんな同じ気持ちだったんだよね。性格も背景もバラバラだけど、こと音楽に関しては「迷わない」「疑わない」っていう姿勢は全員共通してた。どんな壁にぶつかっても、それを乗り越える方法を探す。回り道でも、正面突破でも、なんとしてでも越えていく。それが自分たちの道だった。この旅の本質はまさにそこにある。全部、自分たちのやり方でやってきたんだ。潤沢な予算があったわけでもないし、メジャーな後ろ盾もなかった。ただ、「絶対に成し遂げてやる」っていう意志と、止まらない推進力だけがあった。結果として、自分たちだけの音を築き上げて、ヒット曲を連発して、世界中のアリーナを満員にできた。それって、本当にすごいことだと思うし、その原動力はずっと変わらないあのマインドセット。”俺たちは五本の指。それぞれ違う方向を向いてるけど、試練のときは拳を握って突き進む”――これがまさに、”Five Finger Death Punch”って名前の真の意味なんだよ。
―BABYMETALは、直近では聖飢魔IIとの対バンやアジアツアーも行われています。5FDPとの制作と並行して得た刺激や影響はありますか?
SU-METAL 聖飢魔IIさんとの対バンで「エルドラド」で共演させていただいたのですが、この経験があったからミドルテンポで感情を乗せるとか、元々ある楽曲に自分の色を乗せること、そのバランスがうまく出来たのかなと思っています。聖飢魔IIのファンの方にとって大切なエルドラドを歌うことへのプレッシャーを感じていましたが、あの曲で会場がひとつになったのを感じてパフォーマンスしていてとっても楽しかったし、悪魔とも仲良くなれました。
―今後、BABYMETALはアメリカのアリーナ公演も予定されていますが、このコラボ楽曲をライブで披露するとしたら、どんなステージにしたいですか?
SU-METAL 5FDPさんのライブはお客さんの一体感がすごいイメージがあるので、ぜひ5FDPさんのライブにお邪魔してその一体感を体験してみたいです。みんなで一緒に歌ったりしたいですね!
FIVE FINGER DEATH PUNCH
『Best Of – Vol. 2』
配信中
https://ffdp.lnk.to/tebm
Track Listing:
1. Hell To Pay (2025 Version)
2. The End (feat. BABYMETAL) (2025 Version)
3. M.I.N.E (End This Way) (2025 Version)
4. Hard To See (2025 Version)
5. Got Your Six (2025 Version)
6. Cold (2025 Version)
7. Burn MF (2025 Version)
8. Never Enough (2025 Version)
9. Sham Pain (2025 Version)
10. Blue On Black (2025 Version)
11. I Apologize (2025 Version)
12. Trouble (2025 Version)
13. When The Seasons Change (2025 Version)
14. Cradle To The Grave (2025 Version)
15. My Nemesis (2025 Version)
16. Walk Away (2025 Version)
17. Wash It All Away (Live)
18. Wrong Side Of Heaven (Live)
19. Jekyll And Hyde (Live)


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