6月から10月にかけて、計2つのツアーを一気に駆け抜けた2人組ロックバンド・なきごと。6月から計8会場を周った「初心にかえる man to man ワンマンツアー」は、水上えみり(Vo・G)いわく、今までのなきごとをもっともっと知ってもらうためのツアー。
一方、8月末から計3会場を周った「これからもよろしくお願いし man to man ワンマンツアー」は、10月4日に結成7周年を迎えたばかりの今のなきごとを伝えるためのツアー。10月12日、後者のツアーファイナルとして行われたLIQUID ROOM公演は、水上いわく、「なきごととは何か?」を考え続けた日々の一つの集大成のライブになったという。今回は、怒涛の勢いで駆け抜けた2025年夏の、さらに言えば、結成以降の7年間の一つの集大成となったLIQUID ROOM公演の模様をレポートしていく。

【画像】なきごと、リキッドルーム公演(全6枚)

1曲目は、2025年1発目の楽曲「愛才」。晴れやかに響くカラフルなサウンドの上に、観客の鮮やかなクラップが重なる。そして水上は、「歌える?」「いいね!」と呼びかけ観客と豊かなコミュニケーションを重ねながら、次々とコール&レスポンスを成立させていく。続いて「シャーデンフロイデ」へ。憂いや切なさを帯びながらも力強く躍動していくバンドサウンドに呼応するように、観客が天高く拳を突き上げ、熱烈な手拍子を重ねていく。まだライブは始まったばかりだというのに、既にしてとてつもない一体感と高揚感だ。

「ユーモラル討論会」を経て、最初のMCパートへ。水上は、超満員のフロアを前に、「隣の人の幸せを守ってあげてください。そしたら私はあなたの幸せを守るぜ!」「初めて出会ってくれた人もいると思うけど、ちゃんと届けるから!」と力強く告げ、その流れで「知らない惑星」へ。
水上の声と言葉がそうであるように、岡田安未(G・Cho)が奏でるギターも非常に雄弁だ。「マリッジブルー」では、水上がハンドマイクでステージを往来しながら手を上下にバウンスさせ、同じように手をバウンスする観客を「お上手!」と称する。そして、「ギターソロ!」という水上の合図を受け、岡田がステージの縁へ繰り出し、ギターを高く突き上げながら渾身のソロをかます。

なきごと、7年間の集大成を見せたリキッドルーム公演、2つのツアーの輝かしい大団円

(Photo by 南雲直人)

サポートメンバーの紹介を経て突入した「Summer麺」では、観客が何度もジャンプを繰り返しながら〈汗だくになって〉いく。次の「0.2」では、観客による高速クラップと怒涛のコールに呼応するように、水上の情熱的な歌にさらに熱が入る。ただ単に熾烈にぶつかり合うばかりではない。「またたび」では、親しみ深い歌と温かな包容力を誇るサウンドを通して、ステージとフロアを一つに繋いでみせた。あまりにも見事な前半戦だった。

なきごと、7年間の集大成を見せたリキッドルーム公演、2つのツアーの輝かしい大団円

(Photo by 南雲直人)

ここで、再びMCパートへ。水上は、初めてのことがたくさんあった2025年の中でも特に大きなトピックスとして、7月9日(なく日)にメジャーデビューしたことを挙げ、「今まで出会ってくれて本当にありがとうございます」「応援してくれる、直接音を聴きに来てくれるあなたが愛おしくてたまりません。本当にどうもありがとう」と丁寧に感謝を告げた。超満員のフロアから送られ続ける温かな拍手。
続けて水上は、「まだまだ叶えたい夢がある。その夢を叶える時に、あなたがそばにいてくれたら。そういう想いを込めて」と告げ、「短夜」へと繋ぐ。一人ひとりの観客へ向けて歌い届けられる、力強く揺るぎない〈あなた〉への深い想い。次の「退屈日和」でも、本来の歌詞の文脈を超えて〈退屈だ きみがいない毎日は〉という言葉が一人ひとりの観客へのメッセージのように響いていた。

「安酒にロマンス」では、水上が「まだまだいける?」「お手を拝借!」とクラップを煽り、続く「グッナイダーリン・イマジナリーベイブ」では、台に上がってギターを弾き倒す岡田もクラップを求める。ステージとフロアの境界が溶けてゆくかのような熱き応酬はまだまだ続く。「まだまだまだまだあなたに伝えたいことがあって、ずっと大切にしてきた曲をやります」という水上の前置きを経て「メトロポリタン」へ。続けて「たぶん、愛」へ。水上と岡田が〈近いようで〉という歌詞に合わせて互いの背中を重ね合った一幕が忘れられない。

ここで水上が、再び、目の前の一人ひとりの"あなた"への想いを語る。「あなたがいるから幸せを感じる。
またステージに立ちたいと思う」「今を最大限分かち合いたい。あなたと一緒に生きてるって思い合いたい」。そう語った水上は、これまでの7年間を通していろいろなところで見た景色があるからこそ書けた曲だという「明け方の海夜風」へと繋ぐ。アコギをかき鳴らしながら届けられるファルセット交じりの歌がとても美しく、また、岡田のギターの調べが、まるで夜の海に吹き抜ける風のように優しく心に沁みる。

なきごと、7年間の集大成を見せたリキッドルーム公演、2つのツアーの輝かしい大団円

(Photo by 南雲直人)

続いて、「あなたには、なきごとがいるよ」「あなたはきっと大丈夫。そんな想いを込めて」という言葉を添えて、「ぷかぷか」へ。水上は、ラストサビ前の歌詞を〈いつでも君に会いにいくんだ〉と替えて歌い、「一緒に行ける?」と呼びかけ、並々ならぬ一体感の中で最後のサビへ。「あなたにしか受け取れない何かを、あなた自身に受け取ってほしくて」という言葉と共に披露した「生活」の間奏で、水上が「なきごと言ったっていいんだよ」と告げたシーンもとても感動的だった。本編ラストは「ドリー」。アンコールでは、「この人生を生きてこれてよかったと思えるくらい大切な曲」「あなたと、ただ隣で生きている。その愛しさ、尊さを、この曲に込めて」と告げた上で、最新曲「夢幻トリップ」を披露。深い慈愛に満ちた歌とサウンドがとても心地よく、間奏で水上が告げた「生きてるって当たり前じゃない。
だからこそ、今この瞬間を噛み締めるんだろうね」という言葉も胸に深く響いた。

水上が「過去最高かも」というほどの熱狂を叩き出した「憧れとレモンサワー」によって大団円かと思いきや、いつまでも鳴り止まない観客の声を受けてダブルアンコールが実現。「ほんとは出しきってんだからね」「ほんとにほしがりさんですね」。真のラストナンバーは「終電」。水上が「大好きなギターソロ、聴かせてちょうだい!」と叫ぶと、岡田がステージ下手へ回り込み、一際エモーショナルなギターソロを炸裂させる。最後は、水上がオフマイクで両手を胸に当て「ありがとうございました!」と、一人ひとりの"あなた"に改めて感謝を告げ、この日のライブ、および、計11本にわたる2本のツアーは輝かしい大団円を迎えたのだった。

なきごと、7年間の集大成を見せたリキッドルーム公演、2つのツアーの輝かしい大団円

(Photo by 南雲直人)

セットリスト
1. 愛才
2. シャーデンフロイデ
3. ユーモラル討論会
4. 知らない惑星
5. マリッジブルー
6. Summer麺
7. 0.2
8. またたび
9. 短夜
10. 退屈日和
11. 安酒にロマンス
12. グッナイダーリン・イマジナリーベイブ
13. メトロポリタン
14. たぶん、愛
15. 明け方の海夜風
16. ぷかぷか
17. 生活
18. ドリー
EN1. 夢幻トリップ
EN2. 憧れとレモンサワー
WEN1. 終電

ツアーセトリプレイリスト https://erj.lnk.to/ZtOXT6
編集部おすすめ