THE RAMPAGEのボーカリスト・川村壱馬のソロプロジェクト、零の3作目となる楽曲「Crisis」は、THE RAMPAGEの頭脳として川村が信頼を寄せるパフォーマー・山本彰吾との初めての共作だ。ダークで重いトラックに地を這うような川村の低音ラップが乗るバースを経て、ハイトーンでアタックの強いYAMASHO(山本)のラップにバトンが渡される。
現代社会への違和感や日々つきまとう苦しみはやがて希望に転換され、この世界における幸せと痛みの相互作用に帰結する。

【写真ギャラリー】零×YAMASHO

シリアスな問題提起を宿した「Crisis」は、零が何の枷もなくまっすぐに自らがやりたいことを追究するプロジェクトであることをも突き付けている。THE RAMPAGEのデビュー時からボーカルに加えてラップを担ってきた零と、2000年にはヒップホップユニット・MA55IVE THE RAMPAGEを立ち上げたYAMASHOに聞いた。なお今回の取材時に撮り下ろした写真の別カットを使用したインタビュー記事が、12月25日発売の「Rolling Stone Japan vol.33」にも掲載される。保存用として、そちらもチェックしてほしい。

―零の3rdシングルをYAMASHOさん(山本)と共作することになったのはどうしてだったんでしょう?

零:今年、僕の家で2人で飲んでて真剣な話になったときに、自分たちの周りで起こったことや経験談を踏まえながら生について話していて、とても悲しいし悔しいし、「そういう人を助けられるような曲を作りたいよね」という話になりました。以前からYAMASHOさんとは一緒に曲を作りたいという話になっていたので、「だったらこのテーマだよね」っていうことになったんです。

―「Crisis」は川村さんのワンバース目からとても緊張感のあるポエトリーリーディング的なアプローチのラップで、全体的にラップが際立った楽曲になっています。

零:最初、どんな感じの曲にするかYAMASHOさんと話して、僕がその話を踏まえて自分なりにビートを作って送って、何度かやり取りする中で土台ができていきました。その後にJUGEMくんに渡して、JUGEMくんのスタジオに僕とやましょーさんと入って、相談しながら何時間もかけて調整して最強アレンジメントにしてもらったという流れです。

―最初からこのダークで重いトラックだったんですか?

零:最初からそうでした。

YAMSHO:壱馬が作った土台をもとに、最近のドリルっぽいバージョンとかいろいろ作ってもらう中で、とことんシリアスにした方が良いっていう話になって。
そこで今の上モノのメロディーが出てきて「これはヤバい」って盛り上がって、僕のパートに音を追加したり、壱馬のパートの音を抜いたりして完成させました。土台の時点からある程度のリリックが作り始められるぐらい一気に世界観に没入できるトラックでした。零の2ndシングルの「My Precious One」とかも送ってくれてて、「こんなに短期間でここまでトラックが作れるようになるのはすごいな」と思っていたので土台作りは壱馬に任せたんですが、今回はさらに驚かされましたね。

―川村さんのワンバース目は日常の苦しみや社会への違和感が赤裸々にラップされています。ここまでシリアスなことを書く必要があると思ったんでしょうか?

零:そうですね。僕は一昨年に活動を止めたことがありますが、その時期も含めて人生の中で何度か経験したどん底に落ちたメンタルのことを思い出しながら、僕と同じくらいしんどい人や僕以上にしんどい人に寄り添えるようなリリックになればいいなと思って書いていきました。ここぞとばかりに社会のフラストレーションも書いていますが、自分のどん底のメンタルを吐き出すと同時に誰かに共感してもらえるようなリリックになったら、少しでも楽になってもらえる人がいるんじゃないかと。そのワンバース目を受けて、その次のYAMASHOさんのバースは第三者からの視点になっています。

YAMSHO:壱馬がライブの時にやっているラップには世の中に対して抵抗するパワーが宿っていて、でもライブだと短い時間のパフォーマンスに限られるので「もったいないな」って前から思っていました。とことんそういうリリックを書いてほしいと思ってて、それが壱馬自身の発散にもなるし、曲に昇華することで壱馬の考えが伝わる。あと、SNSで流れてくる意見に流されてしまっている人に「その意見は実は正解じゃないかもよ」ってちゃんと言ってあげることで考えるきっかけを与えるようなリリックにもなっていると思いました。韻も硬いし、日本語ラップが好きな人にも刺さると思います。
レコーディングの時も僕とスタッフさんで歌詞カードを見ながら興奮してる時間がありました。ここまでヒリヒリするバースワンになるとは、壱馬にやってもらって良かったです。

―SNS社会の右向け右な風潮や過剰なコンプラ社会といったものも詰まっていますよね。

YAMSHO:でも「そういうのはやめろ」っていうアプローチじゃなくて問いかけてるんですよね。それも一気に耳を超えて直接脳内に語りかけてる感じがして。それほどのワード力がある。レコーディングの時もそういう風に聞こえる録り方にこだわりました。

「残酷なリアルに寄り添えればいいなと思った」(零)

― THE RAMPAGEの最新アルバム『(R)ENEW』に収録されている「蜘蛛の糸」の川村さんのラップのバリエーションの多さに驚いたっていう話を以前聞かせてもらいましたが、川村さんの「Crisis」でのポエトリー調のアプローチをどう感じましたか?

YAMSHO:壱馬のルーツを知っているとこれだけ引き出しがあるのにも納得できます。「Crisis」は絶対にこのアプローチが良いなっていうのがお互い早くから見えていたのでレコーディングはめっちゃ早かったですね。

―2バース目のYAMASHOさんのラップは川村さんの低くて重いラップとかなりコントラストを付けていますよね。ハイトーンで勢いのあるフロウで。

YAMSHO:絶対それがいいなって思いました。
壱馬が「蜘蛛の糸」のように一人でいろんなラップをしていたら、このラップにはたどり着けなかったです(笑)。

―リリックについてはどんなイメージがあったんですか?

YAMSHO:壱馬のラップは、まず”言葉が入ってくる”ラップだと思ったので、僕はチクチクした棘のあるリリックをで耳にどんどん当てていくパターンの強いアクセントのラップがいいなと思いました。韻も踏みまくりましたね。多少言葉は粗くとも、人それぞれの正解があって、はっきりとした答えがないと思ってるタイプの人間としてのリリックを書きたいと思いました。あと壱馬は心を映したようなリリックだから、僕は景色やシチュエーションを写真のようにバーッってばら撒いてるリリックっていうイメージもありましたね。

―ワンバース目のどん底から、2バース目は視点が上がっていって、フックで希望みたいなものが提示される展開はグッとくるものがありました。

零:嬉しいです。YAMASHOさんとフックで救いのある曲しようという話をしていたんですが、別々で考えたのにばっちりハマったのが本当不思議だったんです。バースのさっき話しに出た視点の違いみたいなことは打合せもしてないけど完璧にハマって。やっぱり信頼できますね。

YAMSHO:英語を基本使わないっていうのも打合せなしだったもんね。

―YAMASHOさんのフックには〈鉄の扉この手でこじ開ける〉という救いの手を差し伸べるようなワードもあります。


YAMSHO:そういうことがなく突然……っていう想いがあって。「なんで言ってくれんかったんだろう?」って思うけど、「確かに言わんわな」とも思う。〈今も何処か誰か助け叫ぶ 耳を塞ぎ目を逸らして避ける どっちがマシか今天秤に賭ける〉っていうリリックもありますが、SOSの声を聞こえない振りしてその人を助けれるかそうじゃないか、どっちがいいかなんてすぐにわかるので、自分で鉄の扉を開けるしかないでしょうってことをこのバースの最後に言いたかったんです。

―そして最後に川村さんの問題提起が入ってくるという。

YAMSHO:これはもう完璧ですね。

零:そこのパートは俺の渾身ですね。他のバースにどうしてもハマらなくてどうしようか考えた末に最後に持っていきました。これは外せなかったです。

―最後にこのフックがあることで、エンパワーメント的な意味合いに加えて考えるきっかけを突き付けるような曲になるなと。

零:そうですね。このラインが一番強いかもしれないです。他にも〈狂ってるのは自分か社会か? 誰もわからないくせによ〉っていうのも強いですが、それはしんどい側の人の嘆きで、最後のラインはもっと高いところから投げかけてるようなイメージです。
すごく零っぽいアプローチっていうか。いろんなことに当てはまるリリックですね。SNSを見ると人の不幸を蜜の味として楽しんでる人がたくさんいるし、あと例えば同じ人を好きになってしまったらどっちかは辛い思いをしてしまう。そういう残酷なリアルに寄り添えればいいなっていう気持ちも込められています。

― 競技には勝ち負けが付きまといますし、枠の数が決められているものも多いですし。

零:そうなんです。勝負の世界における「誰かの痛みが必要なのか?」っていう嘆きでもありますし、力強い言葉として書いてもいますし、何か心当たりがある人に刺さって欲しいなっていう想いもあるし、本当いろんな意味があるので外せないリリックでした。このパートにエフェクトをかけてアレンジしてもらった時「これだ!」っていう確信がありました。

―1曲を通してシンプルなトラックにすごく細かいアレンジが効いてますよね。

零:そうですね。韻の重ね方などもディレクターさんとディスカッションしながら、自分たち主導で進めていったのでセルフプロデュースしたような曲になったと思います。人とスタジオに入るのも超久々だったしすごく良い経験になりました。


YAMSHO:確かに。今回はずっと2人でスタジオに入ってたけど、ランぺの時は基本ひとりだもんね。さっきも言ったけど、作り始めてからレコーディングが終わるまでめっちゃ早かったよね。

零:レコーディングもアレンジメントも早かったですね。

― それはやはり最初からお2人が見えていたビジョンが共通してたことが大きかったんでしょうか?

YAMSHO:例えばキャッチーなサビを作ろうとすると結構沼ると思うんですが、「この曲は絶対そういう曲じゃないよね」っていう話をしてフックを減らしたりして。「壱馬のバースの後にフックが来ちゃうと、サビだっていうことが際立っちゃって曲としてちょっと軽くなっちゃうよね」っていう話をしましたね。それよりはいきなり世界観が変わった方が驚きがあるかなと。確かに早い段階から大枠が決まっていて、スタッフさんもアドバイスはくれるけどすごく協力的にサポートしてくださったので、すごく早くレコーディングが終わりました。

零:零を始める時点で、事務所にもレコード会社の方にも”零でやりたいこと”をしっかり伝えていたので、すごく良い環境でやらせてもらっていますね。

零が語る「Crisis」 YAMASHOと共に掴んだ“絶望の先の光”

Photo by Mitsuru Nishimura

THE RAMPAGEの中から生まれる、新しい表現のかたち

―YAMASHOさんは今年から零が始動して、どんな風に見てらっしゃったんですか?

YAMSHO:「壱馬の好きなようにやってくれ!」って思ってます(笑)。零はソロプロジェクトですが、THE RAMPAGEの代弁者的なリリックの強さがあるし、何にも縛られずに壱馬だからできることを突き詰めてほしいなって思いますね。壱馬も目先の数字とかウケの良さとかは度外視してやっていくだろうなと思っていたら、実際に「普通に考えたらこうするんだろうな」みたいなところからとことん外れていくような活動をしているので本当気持ち良いです。すごく多彩だし、リアルだなって。THE RAMPAGEよりもスピーディーにやりたいことをアウトプットできるプロジェクトだと思うので、どんどん好きにやっていってほしいし、「Crisis」のMV撮影の時も次にやりたいことの話とかも聞いて。例えば「蜘蛛の糸」みたいなぶっ飛んでるようなラップも零でやってほしいし。他にもいろんな話をして「そうなるともう何曲も必要じゃん」って言って(笑)。

川村:(笑)。

―YAMASHOさんのMA55IVEも2ndアルバム『EMPIRE CODE』がリリースされましたが、例えばTHE RAMPAGEの「24karats GOLD GENESIS」とかでは川村さんとMA55IVEの面々がラップで絡むような座組もできてきています。川村さんはMA55IVEのことはどう思っていますか?

零:今ランぺ一忙しい人たちなので単純に「すごいな」と思いつつ、『EMPIRE CODE』のツアーでZeppを周っていて、MA55IVEの音楽が映えるだろうし、僕自身見るのが楽しみだなって思いました。零もいずれツアーをやりたいと思っているんですが、ホールやアリーナではなく、ヒップホップが映えるZeppのような会場に惹かれますね。MA55IVEの音楽の伝え方は好きですし、YAMASHOさんとは特にいろんなことを話しますが、媚びてないような特性が近いと思ってます。

― 『EMPIRE CODE』も全曲ゲストを招いて好きにやっていてすごく楽しそうだなと思いました。

YAMSHO:バレないように(笑)。

零:バレバレですよ(笑)。

YAMSHO:好きなことやるためには説得することが大事なので(笑)。壱馬は『EMPIRE CODE』の宣伝もしてくれて嬉しかったです。

零:MA55IVEの前身ユニットのホールツアーには僕も参加したんですけど、MA55IVEとして『EMPIRE CODE』みたいなアルバムができてなんかもうエモいです。

YAMSHO:エモいよね。

―エミネム主演の『8 Mile』をはじめ、YAMASHOさんが川村さんにいろいろとヒップホップのことを教えたという背景もありますし。

零:そうですね。零のルーツとなっているものはYAMASHOさんから教えてもらったものが大きいですね。

YAMSHO:壱馬は多分ヒップホップがめっちゃ好きだと思ったので、いろいろ話したらどんどんハマっていったので嬉しいですね。

零:2~3日前もAK(-69)さんとJin Doggさんの「Bill Fake$」を「この曲喰らいました!」ってYAMASHOさんに送って。

―AKさんは『EMPIRE CODE』にも参加してますよね。

YAMSHO:「EMPIRE CODE (Produced by AK-69)」ですね。「Crisis」はシリアスな曲だけど、壱馬とは「EMPIRE CODE」みたいな方向性のマジでかっこいい系の曲もやりたいなと思ってて。

―零やMA55IVEをはじめ、THE RAMPAGEはどんどん個々の活動が活発化していますが、とても風通しが良い状態に見えます。

零:そうですね。みんなどんどん好きなことをやっていってほしいなって思います。

―THE RAMPAGEの「PRIMAL SPIDER」ツアーは11月まで続いていますが、個々の活動もあって充実感はありますか?

零:僕はオフはちょうどいい感じにあってめっちゃ充実した感じなんですが、YAMASHOさんはこれほどカツカツだとどうなんですか?

YAMSHO:(笑)。THE RAMPAGEは忙しいと「ヤバい!」って思うんですけど、他は結構分担できたりするんですよね。11月からはEXILEのツアーにも参加しますが、EXILEにはAKIRAさんはじめEXILEメンバーさんがいるし、MA55IVEはまた別の感じだし。今はこうやって壱馬と取材してるけど、毎日割と違う環境でのらりくらりとやっているタイプなのであまりカツカツって感じはしないんですよね。でも、みんながいろんな活動を活発化させてて、ある程度それぞれのスタイルが固まってきたら、THE RAMPAGEだけでフェスができるようになったりしたらめっちゃおもしろいなって思ってます。グループ内でコラボしまくってるけど慣れ合いじゃなくて、それぞれの色がちゃんと前に出てるとか。MA55IVEと零のツーマンライブとかもいいですよね。それぞれのパフォーマンスの間にコラボ曲をやったと思ったら、どっちかの世界観に一気に突入していくとか。そういうライブができるとしたら会場にもかなりこだわりたいですね。聖地みたいなところとか。壱馬とはMA55IVEの前身の時から一緒にやってるから、こうやってMA55IVEが生まれて、零が生まれて、満を持しての時にそういうことがやりたいですね。考えれば考えるほどめっちゃ楽しみです。

零:ほんまに楽しみすぎます。絶対に満を持してのタイミングがあると思うので。

YAMSHO:満を持したいよね(笑)。

零が語る「Crisis」 YAMASHOと共に掴んだ“絶望の先の光”

「Crisis」
零×YAMASHO
配信中
https://lnk.to/LZC-3274
編集部おすすめ