11月6日、礼賛が初の日本武道館での単独公演「礼賛と武道館」を開催した。サーヤ、川谷絵音、休日課長、木下哲、GOTOの5人で礼賛が結成され、下北沢ERAで初ライブを行なったのが2022年1月23日。
それから3年半ちょっとで武道館を埋めるバンドに成長したのは、サーヤや川谷の知名度を思えば、それが速いのか遅いのかは人によって印象が異なるだろう。ただ少なくとも、礼賛は階段を飛ばすようなことはせず、ツアーやフェスへの出演を繰り返し、着実に会場のキャパシティを広げ、たどり着くべくして武道館にたどり着いた。この日のライブはその事実を確かに証明する、実に素晴らしいものだった。

開演時刻を過ぎ、SEとともにスクリーンに映像が映し出され、まずは川谷、休日課長、木下、GOTO、サポートのえつこが登場し、礼賛コールの中で最後にサーヤが競り上がりでステージに姿を現すと、場内からは大歓声が起こる。1曲目は「SLUMP」で、〈いつかのスランプから今グランドスラム!〉という歌詞を〈いつかのスランプから今武道館!〉と歌う痛快なオープニングだ。

礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


『WHOPEE』、『PEAK TIME』、『SOME BUDDY』の3作からの曲を次々に披露したライブ前半は、まさにこの3年半で培ったライブバンドとしての礼賛の力を存分に発揮するもの。ゲスの極み乙女でともに活動する川谷と休日課長はもちろん、もともと川谷とはライブハウスで知り合い、それぞれが独自の活動を続けてきた木下とGOTOもプレイヤーとして一流で、シューゲイザーやポストロックといったオルタナなアプローチもあれば、ヒップホップやR&B、ジャージークラブからドリルに至るジャンル横断的なアレンジを高い技量と熱量で演奏していく。

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そして、やはり現在の礼賛は圧倒的にサーヤのバンドになっている。活動当初から歌やラップの上手さには定評があったが、この3年半で大小様々なステージを経験することにより、バンドのボーカリストとしてのステージングがしっかり板につき、とにかく華がある。スクリーンに映し出されたニシダ出演のMVにも歓声が起きた「むちっ」、こちらもMVに登場する2人のダンサーとともに踊った「鏡に恋して」、「今日は礼賛にとってピークタイムでございます。まだまだ更新していくつもりですけどね」と話した「PEAK TIME」などで場内が大盛り上がりになる中、続けて披露されたのが新曲の「超BUSY」。太いベースのループとギターの絡みがミクスチャーロック風のこの曲は、多ジャンルで活躍する超BUSYな日々をセルフボーストしながら、〈Out of my biz=干渉しないで〉と繰り返す、サーヤなりのファイティングポーズを示す一曲だ。


礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


曲調の幅広さを考えると、礼賛を「ヒップホップバンド」と呼ぶのはやや違和感も感じるのだが、やはりサーヤのアイデンティティという意味ではヒップホップの影響が大きく、礼賛の活動が広がりを見せる中で、より自分自身のリアルな生き様を楽曲や活動に反映させるようになってきた。それを明確に示したのが、サブステージでのアコースティックコーナー。ここでサーヤは「今年の上半期は活躍の舞台が広がるとともに、様々な悪意が向けられ、脱毛症になったり、メンタルがすり減るときが初めてきてしまった」と告白。「でも礼賛に戻ってくると、まだまだここからやってやるぞっていう気持ちになるし、みんなが変わらずに観にきてくれたり、偏見なく応援してくれるおかげで、持ち堪えられました。ありがとうございます」と感謝を伝え、「擦り切れそうになったときに、励まされた曲」として、アデルの「Rolling In The Deep」をカバーした。

「Rolling In The Deep」は2011年にリリースされて世界的なヒットを記録した『21』からのリードトラック。アルバムが失恋をテーマにしていたように、「Rolling In The Deep」も恋人への怒りが反映された内容になっていて、〈We coud have had it all/Rolling in the deep=完璧だったのに/ドン底に突き落とされた〉と絶望しながら、それでも〈Theres a fire starting in my heart=心の中で炎が燃え上がる〉と、この先を見据える強い想いがサーヤの心境とリンクする。ライターを模したペンライトやスマホのライトが客席で光り輝く中、素晴らしい歌唱力で歌い上げられた「Rolling In The Deep」はライブ中盤のハイライトになった。

礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


さらにサブステージでは「バイバイ」に続いて、「3年半前に下北沢のERAで初めてステージに立って、芸人が音楽をやるっていうので、向かい風のムードがちょっとあったけど、徐々にツアーも組めるようになって、CDも出せるようになって、音楽番組も出れるようになって、武道館に立つことも今日叶って。こうやってどんどん果てなく、色々やっていきたい願望が出てくるバンドだと思ってます。そういう気持ちを大事にしたいと思って書きました」という紹介から、新曲の「果てない」を披露。スクリーンに歌詞が映し出され、〈果てない まだ果てない 走る横でまた誰かがリタイヤ〉と、走り続けることで直面する孤独とも向き合いながら、〈色褪せない想像は止められないや〉とエモーショナルに歌うこの曲は、子役からキャリアが始まり、芸人として、アーティストとして、役者として、やりたいことを成し遂げてきたサーヤの人生を反映する新たな名曲だ。


礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


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くるま、RIP SLYMEも登場して大団円へ

グッズ紹介のMCを挟み、煌びやかなラメの衣装に着替えたサーヤが登場して、ライブ後半は「Chaos」からスタート……と思いきや、イヤモニのトラブルと、スモークガンから煙が止まらなくなるというハプニング。しかし、動じることなく「こういうのが一番ケイオス!」とさらなる盛り上がりへと転換させるショーマンシップは流石の一言。中盤のセッションパートでは、テクニカルなソロを聴かせる休日課長をはじめ、メンバー全員がアグレッシブなプレイで文字通りのカオスを生み、「オーバーキル」ではオーディエンスがタオルを振り回す。

礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


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そして、この流れのハイライトになったのが「GOLDEN BUDDY feat.くるま」。曲の途中で令和ロマンの高比良くるまがステージ後方から登場すると、客席からは地鳴りのような歓声が起き、場内の中央にあるサブステージに2人が並び立ち、ラップをする姿はとにかく絵になる。その最強BUDDYっぷりはさながらビヨンセとジェイ・Zであり、ともに逆風を乗り越えて走り続ける2人の絆を感じさせるものだった。

礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


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ポップな新曲の「ホレタハレタ」でもう一度場内に一体感を生み出すと、サーヤは最後に「ここからまた確実に、風向きが変わるような気がしてます」「何かを真剣にやってる人とか、全力で楽しんでる人を冷笑するのはやめて、一緒にぶち上がっていけたもん勝ちかなと思ってます」「真剣に何かと向き合ってる人にこの音楽が響いてくれてるのがすごく嬉しいし、そんなみなさんの背中を押せるような曲をもっとたくさん作りたい」と言葉を続け、「またみんなと会える機会を作って、その日にまた弾けられるように、明日からの生活をまたみんなと一緒に頑張りたいと思います。武道館に立てて本当に幸せでした」と感謝を伝えて、メンバーのオフショットを軸にした映像とともに「生活」を披露。礼賛の音楽は、真剣に生きる人たちの日々を礼賛する。

礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


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礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


本編だけでも十分にお腹いっぱいだったが、アンコールにはさらなるパーティーが待っていた。まずはサプライズでRIP SLYMEからDJ FUMIYA、RYO-Z、ILMARIが登場して、音源でもコラボをしている「TRUMAN」を披露。さらにはPESとSUも合流して、遂に礼賛×RIP SLYMEによる「熱帯夜」が現実に! もともと礼賛は活動の初期から「熱帯夜」をカバーし、ライブではすでにお馴染みとなっていたわけだが、RIP SLYMEが今年から5人での活動を再開したことで、この夢のコラボレーションが実現。
ステージ上には計11人が入り乱れ、一夜限りの最高にホットな熱帯夜が作り上げられた。

来年2月から全17本のロングツアー「超超超BUSYツアー」を開催することが発表され、ラストは初ライブから3カ月後の2022年4月に初の正式音源としてリリースされた「take it easy」で大団円。間違いなく、礼賛にとって最初の集大成であり、その音楽性とメッセージ性、サーヤのアイコン性が唯一無二であること、5人が超本気であることを証明する、濃密な一夜となった。

礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


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礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明


Photo by Yosuke Torii, Daiki Miura

【写真ギャラリー】「礼賛と武道館」ライブ写真まとめ(記事未掲載カット多数)

【セットリスト】
1. SLUMP
2. むちっ
3. Damn it!
4. Bless u
5. 鏡に恋して
6. PEAK TIME
7. 曖昧なBEACH
8. Mine
9. 超BUSY
10. Rolling In the Deep(Adeleカバー)
11. バイバイ
12. 果てない
13. Chaos
14. オーバーキル
15. スケベなだけで金がない
16. 愚弄
17. GOLDEN BUDDY feat.くるま
18. ホレタハレタ
19. 生活
En1. TRUMAN feat. RIP SLYME
En2. 熱帯夜 frat. RIP SLYME
En3. take it easy

礼賛、武道館で見せた集大成 令和ロマン・くるま、RIP SLYMEも登場、サーヤとバンドの超本気を証明
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礼賛 日本武道館単独公演
U-NEXT独占見放題ライブ配信
配信:2025年12月26日 20:00~(見逃しあり・見放題)
詳細:t.unext.jp/r/raisan

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ONEMAN TOUR 2026
『超超超BUSYツアー』
詳細・チケット購入:https://eplus.jp/raisan/

【東京】2026年2月21日(土)東京国際フォーラム ホールA
【福岡】2026年2月28日(土)Zepp Fukuoka
【新潟】2026年3月3日(火)新潟LOTS
【大阪】2026年3月6日(金)Zepp Bayside Osaka
【大阪】2026年3月7日(土)Zepp Bayside Osaka
【石川】2026年3月9日(月)金沢REDSUN
【愛知】2026年3月12日(木)Zepp Nagoya
【愛知】2026年3月13日(金)Zepp Nagoya
【広島】2026年3月15日(日)広島CLUB QUATTRO
【東京】2026年3月19日(木)Zepp Haneda(TOKYO)
【東京】2026年3月20日(金)Zepp Haneda(TOKYO)
【仙台】2026年3月22日(日)SENDAI GIGS
【北海道】2026年3月28日(土)Zepp Sapporo
【北海道】2026年3月29日(日)帯広MEGA STONE
【香川】2026年4月5日(日)高松festhalle
【鹿児島】2026年4月8日(水)鹿児島CAPARVO HALL
【沖縄】2026年4月11日(土)ミュージックタウン音市場
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