BREIMENのベースボーカル・高木祥太の連載企画「赤裸々SESSIOONe」第13弾。「いろんな生き方」を伝えるべく、肩書きや年齢など関係なく、「今、この人の人生や考えを聞きたい」と高木が思う人を招いてインタビューする連載。
今回は、新井和輝が登場。King GnuとBREIMENというシーンにおいて重要なバンドでベーシストを務める2人は、実は12年の仲。2人の対談は、12年前のセッションシーンから現在に至るまでを紡ぐ、音楽史の貴重な資料と呼べるものになった。2人の1時間の会話をできる限りそのままお届けします。

※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.32」に掲載されたものです。

12年前から「穏やかにかまし合う」
当時のセッションシーンを証言

高木 和輝くんと俺は、10年くらい?

新井 いや、祥太が18のときに会ってるから、12年くらい。そのとき俺は20で。

高木 どこで会ったっけ?

新井 俺は覚えてる。当時1992年生まれのミュージシャンがそこそこいて、みんなで「ゆとりセッション」っていうセッションを新宿のGOLDEN EGGでやっていて。そこに祥太とBREIMEN(当時は「無礼メン」)の前のドラムの田中航が一緒に来た。そのときの2人の感じとか、祥太の格好も覚えてる。

高木 そのときの俺、どんな格好だった?

新井 そんな感じだったよ。
派手だった。ツノみたいなデカピアスしてた(笑)。

高木 ははははは(笑)。

新井 「『ゆとりセッション』がアツいって聞きつけて来ました」みたいな感じで来たのが最初だった。

高木 行ったね、思い出したわ。そこに新井和輝、勢喜遊(King Gnu/Dr)、林あぐり、原ゆうまとかがいたんだよね。遊くんとは、最初にエレクトリック神社で会った記憶がある。92年生まれはめっちゃ多いんだよね。

新井 多いね。石若駿、常田大希(King Gnu、MILLENNIUM PARADE)とか。

高木 そのあと俺の師匠がやっていた六本木のセッションに来て、そこでも会ったり。要はセッションシーンがあって。


新井 俺も祥太もそのセッションシーンの真ん中にずっといて、そこから派生していったというか。

高木 セッションって、そのときはまだ今ほど流行ってなかったかもしれないけど。今、めっちゃ流行ってるもんね。

新井 今、セッション盛り上がってるね。

高木 そのときは、どこのセッション箱に行っても大体いるやつが同じで。だからよく会っていて。ベースとドラムは「コンビ」「ペア」みたいになって、そのときから俺は航とやっていたし、和輝くんはよく遊くんとやってた。しかも20歳の頃から2年間、俺は東高円寺で遊くんと一緒に住んでたから、セッションミュージシャンの中でも和輝くんの情報はけっこう入ってきてた。

新井 しかも俺も高円寺でウッドベースの師匠(河上修)の家に住み込みしているときだったから、チャリで行ける距離だったんだよね。

高木 家が近かったよね。セッション界隈のみんながうちに来たときもあれば、和輝くん家のほうにあぐりくんとかベーシストで行くこともあったり。

ー当時のお互いの印象はどんな感じだったんですか?

新井 祥太から「見られている感」はあって。
「あのフレーズって、どうやって弾いてんの?」とか、ちょこちょこ聞いてきたりしていたから、「やべえ、見られてる。ちゃんとしないと」っていう感じはありました。でもやっぱり祥太は人たらしだし、キャラクターが可愛いから。

高木 和輝くんはジャズとかセッションでやっていることを、俺よりも先にやっている人だっていう。だから「ちょっと上だな」みたいな感じ。ああいう時期って、みんなイキってるじゃん?

新井 まあイキってたかもね。

高木 だから冷静な自分と、「いやでも俺も負けてねえし」みたいな自分がいた。表には出さなかったけど、密かに「上手いな」とは思ってた。でも会ったときはかまし合う、みたいな。

新井 穏やかなかまし合いだよね。リスペクトはあって。それが俺らの世代の色だったような気がする。


高木 そうね。多分、ちょっと上の世代とかはもっとバチバチだけど、俺らは友達・仲間みたいな感じもあった。でもどこかでみんな、どうイチ抜けしようかを考えてた。

新井 そうだね。切磋琢磨って言えばいいんだろうけど、「あいつがこれをやってる」「こいつはこれをやってる」みたいなことは見ていたよね。懐かしいね。セッションの中でもベーシストとしての棲み分けが微妙にあって。俺と祥太とあぐりも同じシーンにはいたけど、タイプが違ったから。俺が一番ジャズ寄りで、祥太がファンク寄りで、あぐりがポップス寄り、みたいなことが微妙にあったからこそ、お互いをリスペクトできた節もあるかな。ガンかぶりしてたら、もうちょっとバチってたかもしれない。

高木 たしかに。

もがいていた2015年頃
バンドを組み始めた流れ

新井 祥太とは、セッションシーンにバンドを組み出す流れがあった時代を一緒に生きたよね。
それこそ俺がKing Gnuの前身のSrv.Vinciに入り始めたのと、祥太が無礼メンを立ち上げる時期が被ってた。

高木 そうそう。無礼メンの結成が2014年で、2015年にスタートした。

新井 俺がSrv.Vinciに入ったのは2015年。

高木 同じだね。

新井 当時みんなセッションはやっているけど、誰もどうにもなってなくて。にっちもさっちも行ってない、みたいな。

高木 みんな基本的に金もなくて。

新井 そう。そういう空気感がセッション界隈全体にあって。とにかくもがいて、何か取っかかりを作ろうとしていた時期だったよね。楽しかったけどね。


高木 サポートに呼ばれている人もいたけど、俺らは宙を漂っていた感じがするよね。

新井 そう、変に尖っていたのもあって。しかもサポートミュージシャンをやるには、ちょっとプレイに色がありすぎて。遊も別に器用なタイプではなかったし。ドラムは派手だけど、サポート的なことに耐えられる器用さはないというか。俺はわりかし器用ではあったけど、それでも我がある方で。祥太も言わずもがな。

高木 そうだね。だから俺らはセッション界隈でもイチ抜けできなかった組(笑)。

新井 ある意味、売れなかった組(笑)。

高木 だからバンドを組んだというわけではないけど、「サポートをやっていくという感じではないのでは」みたいなことを薄々自覚し始めて。俺と遊くんは一緒に住んでたから、お互いそういう話もしてた。そういう中で自然と俺は無礼メンを組んだし、遊くんも大希くんとの出会いがあってSrv.Vinciに入って。俺が大希くんと初めて会ったのは、ロバート・グラスパー・エクスペリメントがオーケストラと一緒にやった公演(2015年6月8日、東京芸術劇場コンサートホールにて)。そこにセッション界隈とかいろんなミュージシャンが押し寄せたよね。

新井 (岩城)直也が公演に絡んでいて、「友達を連れてきていいよ」って言ってくれて。そこにSuchmos、SANABAGUN.の連中もいた。

高木 あそこにいろんな人が集まったよね。

ーロバート・グラスパーやディアンジェロなどの流れを汲んで、2015年以降、Suchmos、SANABAGUN.、King Gnu、BREIMENが日本の音楽シーンを変えてくれたとも言えるので、その一夜は歴史的に見ても大事な日ですね。ちなみに下の世代は、この世代の動きを見て、セッション界隈からバンドを組む人も増えた?

高木・新井 どうなんだろうね?

高木 でも俺、一回考えたことがあって。セッションシーンって、バンドを組むのが流行る時期と、サポートミュージシャンとして活動するのが流行る時期が、交互にきている気がして。

新井 わかる。そういうのあるよね。

高木 俺らのちょっと上の人たちは、今J-POP、J-R&Bシーンのサポートで見ない日はないくらいの勢いで。もちろん自分でバンドをやっている人もいるんだけど、サポートミュージシャンとして活躍している傾向のほうが強い。そのちょっと上の世代が、さかいゆうさん、SOIL&"PIMP"SESSIONSとか。だから、みんな自分のちょい上の先輩を見て「俺はこうはならねえぞ」みたいなことを繰り返している気がするんだよね。これが俺の考察(笑)。

新井 その傾向はあるかも。

高木 俺ら世代は、サポートをやっている人もいるけど、たとえばベーシストのオチ・ザ・ファンク(越智俊介/BE:FIRST、菅田将暉など、多数のサポートを務める)とかもそもそもはバンドマンだし、LAGHEADS(Gt 小川翔、Ba 山本連、Dr 伊吹文裕、Key 宮川純によるバンド)も、みんなあれだけいろんなサポートをやっているけどバンド化したし。そういうムーブはある気がする。

高木がKing Gnuに
新井がTempalayにいた可能性

高木 和輝くんがSrv.Vinciにメンバーとして入る前、遊くんと住んでいたのもあって、俺にサポートの話がきたことがある。

新井 当時ベーシストはサポートで回していて。(前田)竜希くんがメインだったけど、竜希くんができないときに俺に回ってきたのが最初のきっかけだった。

高木 そのときはもうBREIMENを始めていたのもあって、結局スケジュールが合わなくてやったことがないんだけど。

ーもしかしたら、祥太さんがKing Gnuのベーシストになる世界線もあったということですか……?

高木 あったかな……いや、なんか違うよね? 絵面としてハマらないもん。

新井 どうだったんだろうねえ。

高木 想像できないことって、形にならないなと思う。今でこそわかることだけど、やっぱり違ったんじゃないかな。ベースとドラムという組み合わせにおいては相性というものがあって、遊くんのドラムに対しては絶対に和輝くんの懐の深さが必要だと思う。

新井 たしかに振り返ってみても、祥太と遊が一緒に演ってる場面はあまりなかったね。

高木 多分、俺と遊くんがやるとオントップになるというか。King Gnuのよさって、遊くんのドラムがオントップでアッパーな感じに対して、和輝くんがうしろにグーッと引っ張っているところだと思う。それはグルーヴの話もそうだし、音楽の大きい流れとかも。

新井 ライブだと特にそうだね。

高木 犬でたとえるなら、遊くんが勢いよく走るところを、和輝くんが手綱でコントロールしているというか(笑)。これはリズム的に走るとかではなく、バイブスの話ね。仮に俺がKing Gnuに入っていたら、多分遊くんと並走しちゃうと思う。

新井 そこはSoちゃん(So Kanno/BREIMENのDr)とはどういう関係なの?

高木 BREIMENだと俺は歌うから、ちょっとコンプがかかるというか、ベースを弾くだけのときほどアッパーじゃない。だから多分、Soちゃんとちょうど同じくらいなんだよね。2人とも突っ走る感じじゃなくて、たゆたう感じというか。

新井 そんなイメージだわ。並走している感じはあるかもね。

高木 俺がベースだけを弾くときは、ドラマーに限らず誰でもその人がやったことない、見たことないところを引き出せないかという精神性があるから。「行ったことないところまで行こうぜ」みたいなマインドが常に根底にあって、だから煽り系みたいになる。手綱を引っ張るんじゃなくて、俺が走って連れていくというか。君島大空 合奏形態(Vo,Gt 君島大空、Gt 西田修大、Ba 新井和輝、Dr 石若駿)は、King Gnuとはまたバランスが違って面白いよね?

新井 ああ、そうだね。

高木 駿くんも、タイプとしては遊くんと遠からずだと思うけど。

新井 そうかも。たしかに遊と駿は、全然違うように見えて、同じような性質を持っているかも。

高木 だから和輝くんが呼ばれるところとか、相性がいいところって、和輝くんの懐によって成立している感じがする。でも和輝くんの根底にはロック的メンタルを感じるから、ここ(高木と新井)は共鳴する感じがあるんだと思う。

新井 そうだね。パンクスというか、何かに対するアンチテーゼみたいなものは持っている感じがあるかもしれないね。セッション時代にもがいていたのも、何かに対するアンチテーゼやパンクスを持っていたからで。

高木 そこから結局、バンドをやっているのもそうだし。

新井 遊、祥太、俺は、牙みたいなものを持っているタイプかもしれないね。

高木 俺は、天邪鬼すぎるっていうのがあるから。

新井 祥太の天邪鬼感は絶妙だよね。それでよく綾斗(小原綾斗/Tempalay)とやれているなと思うけど。綾斗も天邪鬼じゃん?

高木 天邪鬼の具合が合っているんだと思うけどね。

新井 曲がり方が合ってるってこと?

高木 そうそう。綾斗のほうが牙はあるというか、もはや彼は牙を見せている自分をメタで認識していると思うんだけど。そもそも俺は牙があまりないからアウトプットは違うけど、でも根底にある天邪鬼具合とピュアさは綾斗と近いかもとたまに思う。だからかなり合うなと思う。綾斗もさ、音楽で中指を立てる曲もあるけど、意外と直接的に中指を立てるというよりは逃避の角度から違う島を作っているイメージがあるじゃん?

新井 そこ(高木と小原)は相性いいよね。Tempalayの祥太を、俺はずっと見ていたいもん。俺、Tempalayでベース弾く話が一瞬あったの。

高木 へえ!

新井 でも、嫌だなと思って。それは、祥太のほうが合っているという自覚があるから。Tempalayにおけるベースという意味では、俺は祥太を超えられないかもなと思って。結局、スケジュールが合わなくてできなかったんだけど。

高木 ベースに限らず、全部の楽器がそうだけど、「上手い・下手」みたいな概念を超えたら、噛み合わせとか組み合わせによって相乗効果的に膨れ上がるかそうではないかが出てくるよね。

新井 それは全部に言えることかもしれないけどね、音楽だけじゃなくてね。

高木 突き詰めたら、ちゃんと音楽をやっている人は、人間性が音に出るよね。

新井 そうね。「上手い・下手」の話じゃないというのは、つまりそういうことだから。

高木 ちゃんと自分を表現できている人の楽器やプレイの音は、その人の音がするというか。遊くんとか、ああいうドラムの性格をしているし。

新井 大希とカツシロ(サトウカツシロ/BREIMEN)のギターを比べても、そんな感じがするしね。

高木 これ、普通にシンプルに嬉しかったことだけど、俺がベースを弾いたTempalayの「EDEN」が出たとき、大希くんから直接DMがきて。大希くんは綾斗にも褒めてたんだけど。大希くんとは、ちょくちょく会ってはいたけど、ミュージシャンとしての会話はあまりしてなかったからそのとき嬉しかった。

BREIMEN高木祥太がKing Gnu新井和輝と語る「12年の縁とセッションシーンの変遷」

Photo by Renzo Masuda, Hair and Make-up by Riku Murata, Styling (Shorter Takagi) by Minami Murata

新井のキャッチフレーズが誕生
「懐パンクス」

ー祥太さんから見て、新井さんはどういう性格が音に出てますか?

高木 懐がとにかく深い。「懐」と「パンクス」が共存している人は意外といない。パンクスがある人は、もうちょっと中指立てる感じになるし、懐に振り切ってる人は柔和になるというか。

新井 言われてみたら、たしかにそうかも。

高木 だから和輝くんがやってるワークスも全部理解できる。King Gnuも、MILLENNIUM PARADEも、君島大空 合奏形態も、「だから和輝くんなんだろうな」ってしっくりくる。昔はファンク、R&B、ゴスペル、ジャズとか、とにかくBPM130以上のものはあまりやらないような世界で、ロック的なことはやってなかったじゃん? その中で、早い段階からロック的なことをやり始めたのが多分俺ら(無礼メン)なんだけど。その時代はまだ和輝くんからパンクスを感じ取れていなかったけど、君島大空とかをやり始めたときに「和輝くんってそういう精神があるんだ」みたいに思った。

新井 普通に話しているときでも、King Gnuの中で俺が一番パンクスなパターンもあったりするからね。

高木 わかる。そもそもジャズって、パンクスじゃん?

新井 まあそうなんだよね。精神性としてはね。

高木 未だにジャズ系のセッションとかをやっていても思うけど、結局、ジャズ的な発想って限りなくパンクスでオルタナティブというか。ジャズにも正統派な人たちはいるから、ジャズの界隈にもよるんだけど、俺の好きなジャズ感はほぼパンクス。

新井 姿勢としてパンクという。

高木 だから話を戻すと、和輝くんは「懐パンクス」です。

新井 (笑)。そうかも、たしかに。

高木 そこのバランスが絶妙。

新井 自分を形容する言葉として、初めて腑に落ちた。

高木 これから使って?

新井 言ってくわ、「俺、ベーシストとして『懐パンクス』だから」って(笑)。

バンドとサポートのバランス
生き残る人には「色」がある

ー自分のバンドに専念してサポートプレイヤーとしての活動はやらない、というタイプの人もいますけど、2人はBREIMEN、King Gnuをやりながらいろんなプロジェクトに参加していますよね。今は、「バンド」と「サポート」についてどういった考えで取り組んでいるんですか?

新井 これもまた話がつながってくるけど、人としてやってるというところになってきちゃいますね。

高木 わかる。

新井 「こういうのお願いできますか」っていう話はくるんだけど、いただいたお仕事と自分の佇まいにリンク性があるかないかでしかジャッジしてない。引き受けているものは、リンク性があるという前提になっている感じかな。

高木 「何でもできます」「何でもやります」っていう人は、もちろんいるんだけど、減ってきた気はするよね。若手の頃は「何でもやります」「何でもできます」っていう人が有象無象にいて、でも大体そういう人たちって、どこかでスタジオミュージシャンをやめている印象があって。人から「こういうのをやってください」って言われたものに全部100%で打ち返してたら、「俺は何がしたいんだろう」「自分のプレイスタイルって何だっけ」って自分がわからなくなっちゃうんだと思うんだよね。残る人は、それをやらなかった人、もしくはそれができない人だなとは思う。ちょっと乱暴な言い方だけど、「この人はどういうプレイヤーなんだろう」みたいな人って、いつの間にかいなくなっているなと思ったりもする。スタジオミュージシャンでも、大御所の人はキャラ強いことが多いじゃん? もちろん一概には言えないけど。それが生き残るための技術っていう言い方もできる気はする。

新井 たしかにそうかも。キャリアを重ねていくと、来る仕事もなんとなく限定されてくるしね。限定されてくるものが、いわゆる「色」になってくるじゃん。自然と俺らも、「高木祥太にお願いしたいベース、プロデュース」「新井和輝にお願いしたいベース、プロデュース」みたいな色ができてきていると思う。カースケさん(河村”カースケ”智康)、名越さん(名越由貴夫)とか見ても、やっぱりあの「色」で呼ばれているというか。

高木 やっぱり好きでやっていることだから、そこを突き詰めるほかないなって思う。

新井 ホーン隊とかはまた話が変わってくるかもしれないけど、リズム隊、ギター、ピアノとかはそれが起こりやすいのかなって思うかも。

高木 ホーンセクションは譜面で決められているアレンジをやるのが仕事だから。でもMELRAWくらいから、それを変えたいという意識でやろうとしているのかなと思ったりするけどね。

新井 康平くん(安藤康平/MELRAW)までいくと、もはや孤高の存在だよね。……結局、「人」に集約されていくよね。

今注目しているベーシスト
高木が再びセッションに参加する理由

高木 今、注目しているベーシストいる?

新井 好きなプレイヤーとかはたくさんいるけど、最近「こいつ地味にやべえな」っていう人を見つけて。

高木 おっ。

新井 Noam Tanzer。メイちゃん(Mei Semones)のところで弾いてるベーシスト。めちゃやばい。超上手い。

高木 あ、知ってるかも。

新井 「上手っ」と思ってたら、Mike Sternのバンドでも弾いてた。もともとメイちゃんをInstagramで見て、好きで自分のラジオでもかけたりしたんだけど。フジロックでメイちゃんを観にいって、そこでまずベースのフレーズを聴いて「こいつめっちゃ上手いかも」と思って、その数日後にストーリーズで切り抜きが上がってて、「あ、やばい」ってなってフォローした。

高木 (Instagramを開いて)俺、フォローしてるわ。しかもフォロー返ってきてる。和輝くんのアカウントもフォローされてるよ。

新井 あ、ほんと?

高木 この人、上手いよね。

新井 やっぱり俺はジャズっぽさがあるから、根っからジャズを感じる人がポップスをやっているのにグッとくるというか。

高木 グッとくるよね。自分のプレイスタイルは完全にジャズの文脈ではなかったからこそ、そういうのに惹かれるというか。

新井 そうそう、そこは祥太と一緒だと思う。ジャズコンプレックスもあるからこそ、根っからジャズ上がりで、完全にジャズプレイヤーとしてできあがっている人がポップスをやっていると「いいなあ」と思う。

高木 「ジャズはパンクス」って言ったのと同じくらい、ジャズって権威の世界というか。「ちゃんとジャズできるか」と「どれくらいジャズとしてはみ出られるか」が同時に存在していて。だから俺も和輝くんも、超正当派のジャズメンたちから面白がられるのと同じくらい、なんちゃってだと思われることもあるというか。

新井 師匠に面と向かって、「『ジャズもできる人』と『ジャズしかできない人』のジャズは違うからね」「お前は『ジャズもできる』側の人間だからね」って言われたことがあって。本当にそうだなと思って、自分と向き合ったりしたんだけど。自分はパンクもできるし、実際にロックもやっているし、ジャズもちょっとできるくらいの感じだから。Noam Tanzerは多分、ジャズしかできない人としてキャリアを積み上げてきて、そこからポップスをやり出している人だと思う。

高木 俺らはもうルートチェンジできないもんね。ここまで色々やっていると、もう戻れない。それが「スタイル」になるから、別に悪いわけじゃないんだけど。自分のスタイルが確立されてきた中で、いかに初期衝動的な側面を思い出すかが、最近、俺の中のテーマかな。いかに音楽に対するピュアな感情を自分の中で燃やせるかを考える年齢だなって、自分で思っていて。

新井 それで最近はセッションに行ってるの?

高木 まさにそう。セッションって超能動的だから、考える間もなく、一番感覚でやれる。

新井 祥太がセッションをやっている気持ちだったり、その思考回路はすごく理解できる。

高木 和輝くんは僕の理解者です。

新井 「懐パンクス理解者」?(笑)

高木 (笑)。俺と和輝くんは、一生かけて動きが気になる仲だね。

新井 そうだね。

Edit by Yukako Yajima

Scramble Fes 2025
2025年11月16日(日)東京都 Spotify O-EAST
出演:BREIMEN(ヘッドライナー)
aldo van eyck、Dos Monos、HOME、泉大智、MONO NO AWARE 、S.A.R.
時間:14:00開場 / 14:30開演 / 20:40頃終演
料金:前売 6,000円(全自由・入場整理番号付・ドリンク別・税込)
主催・企画:CEミュージッククリエイティブ株式会社 / 株式会社ナターシャ
制作:ライブマスターズ株式会社
協力:Rolling Stone Japan
お問い合わせ:Spotify O-EAST(03-5458-4681)

チケット販売スケジュール
一般販売(先着)
受付期間:~11月15日(土)23:59
専用URL:
〈イープラス〉https://eplus.jp/scramblefes2025/ 
〈ローソンチケット〉https://l-tike.com/scramblefes2025/
〈チケットぴあ〉https://w.pia.jp/t/scramblefes2025/

BREIMEN
高木祥太(Vo&Ba)、サトウカツシロ(Gt)、いけだゆうた(Key)、ジョージ林(Sax)、So Kanno(Dr)の5人組からなるオルタナティブファンクバンド。その確かな演奏技術と、ジャンルに拘らない型破りのサウンドセンスで熱烈なファンを獲得している。2024年4月、ソニー・ミュージックレーベルズ、アリオラジャパンよりメジャーデビュー。その実力と自由奔放なスタイルが音楽業界に留まらず多方面から注目を集めている。

BREIMEN高木祥太がKing Gnu新井和輝と語る「12年の縁とセッションシーンの変遷」

『銀河 / エイリアンズ』
BREIMEN
https://va.lnk.to/uMpwaf
ソニー・ミュージックレーベルズ
配信中

新井和輝
1992年生まれ、東京都福生市出身。高校でジャズに目覚め、日野”JINO”賢二と河上修に師事。King Gnuのベーシストを務めながら、MILLENNIUM PARADE、君島大空 合奏形態、佐瀬悠輔など多数のバンド/プロジェクトに参加。J-WAVE「SPARK」(毎週火曜24:00-)にてナビゲーターを務める。

BREIMEN高木祥太がKing Gnu新井和輝と語る「12年の縁とセッションシーンの変遷」

『SO BAD』
King Gnu
https://kinggnu.lnk.to/SOBAD
ソニー・ミュージックレーベルズ
配信中
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