ハートワームス(Heartworms)の初来日公演が、12月1日に川崎クラブチッタ、12月2日に大阪・Yogibo HOLY MOUNTAINにて開催。川崎公演にはスペシャルゲストとしてNo Busesも出演する。


イギリス南西部・チェルトナム出身。中国系デンマーク人の母とパキスタン系アフガン人の父をもつジョジョ・オームは、「薄氷の上を歩くようだった」と語る苛烈な10代を経て、音楽やカルチャーを貪欲に吸収。彼女の内側に潜む暗闇と強く共鳴することで、ハートワームスという特異な表現者が形づくられていった。

その後、ブラック・ミディ、ブラック・カントリー・ニュー・ロードなどを輩出してきたSpeedy Wundergroundと契約。レーベル主宰でありサウスロンドン・シーンを象徴するプロデューサー、ダン・キャリーとともに完成させた今年発表のデビューアルバム『Glutton For Punishment』では、ゴス/ポストパンクを軸に、テクノやインダストリアルの要素も融合。冷徹さと激情がせめぎ合うサウンドの上に、詩人としての素養と切迫感がにじむ歌声と、自身の生い立ちにも根差したトラウマや痛みが折り重なっていく。

もうひとつ、ハートワームスの表現を特異たらしめているのが、徹底したモノクロームの美学だ。陰影に満ちた白黒の世界はどのように形づくられたのか。彼女の核にある衝動と美学を探るべく、来日直前インタビューをお届けする。

自分の「闇」を見つけるまで

―3年前にシングル「Consistent Dedication」のMVを観たとき、「すごい人が出てきた!」と思いました。ダークで、ミリタリーファッションも目を惹くし、タバコをくゆらせながら踊ってるだけなのにかっこいい。当時どんなものを作ろうとしたのでしょう?

ジョジョ:えーっと、そうだな……「あの頃はああいうモードだった」みたいな。
今の私とは全然違うし、改めて振り返ると「すごいことやってんな!」って自分でも思う(笑)。ああいう衣装を身にまとったりタバコをふかしてるのは、演技とかポーズみたいなもので、自分の中にある普段出てるのとは違う一面にチャネリングして、その人物を自分に降臨させるっていう行為だよね。もともと男性性っていうものに惹かれてた部分もあるし、そういう自分になりきって遊んでたというか。

―ジョジョさんは軍事史に精通していて、かつては軍服を着ながらステージに立ち、軍用機が好きすぎるあまり王立空軍博物館でボランティアをしていたこともあるそうですね。どういう経緯でその方面のマニアになったんですか?

ジョジョ:大学時代にドラマーと付き合ってて……現在のドラマーじゃなくて、当時のドラマーが元カレだったの。その元カレのお父さんがゲイリーっていうんだけど、第二次世界大戦マニアみたいな人で。フランスとかで戦争の跡地を巡るツアーガイドみたいな仕事を、たぶん今もやってるんじゃないかな。それで話を聞かせてもらったら、メチャクチャ面白いなと思って。昔から歴史には興味があったんだよね。それで元カレと別れて、人生を見つめ直してる時期に、サイモン・シンの『暗号解読』を読んだらハマっちゃって。(古代から未来まで)いろんな歴史における暗号の使われ方が紹介されてる本で、すごく面白かったの。

そこから知ったブレッチリー・パーク(第二次大戦中のイギリスにおける暗号解読の拠点、現在は博物館)がきっかけで、スピットファイアや戦争っぽいコスチュームにもハマっていったんだよね。
ただ、それは当時の話。今は自分の趣味もだいぶ変わって、もう軍服姿で街を歩いたりもしてない。あの時期の自分のモードに、ああいう衣装がハマった。それを自分なりの表現に活用してたって感じ。

―モノクロの映像もあいまって、あのMVからはゴスの要素を強く感じたので、キリング・ジョークやシスターズ・オブ・マーシーがお好きだと知って腑に落ちました。

ジョジョ:さっき話したゲイリーが、80年代にバンドをやってたんだよね。彼の興味は完全にそっち系で、そこからキリング・ジョークやシスターズ・オブ・マーシーも知ったの。自分の中でつながったというか「これだ!」って思った。

ゴスとかポストパンクって、「こうでなければならない」っていう明確な型がないじゃない? 自分から「こういうアーティストである」と決めつけるのって、わざわざ自分の可能性を狭めるみたいで危うい行為だと思う。私自身、自分がやってることをポストパンクやゴスだとは思わないし、単なるマインドセットというか。なんというか自分の中では、表に見えてるのとは別の顔、裏の顔みたいな?(笑)……根底にある怖さとか、闇みたいなもの。そういうものを自分なりに昇華した形が今みたいな表現になってるんだと思う。


シスターズ・オブ・マーシー「Dominion」のカバー映像

ジョジョ・オーム作成のプレイリスト

―ダークな音楽にどうして惹かれたんだと思います?

ジョジョ:いい質問_幼い頃からダークなものに惹かれがちで、ジョニー・デップの『スウィーニー・トッド』が大好きで、憑りつかれたように夢中だった。あのダークな雰囲気に強烈に惹かれて……子どもの頃、家でちょっとしんどかったのもあってね。だから、若干アブノーマルなものに昔から親近感を抱いてた気がする。自分の中にあるダークサイドと共鳴し合ったというか……自分の中にも同じ種類の怒りが存在してることを自覚した瞬間というか。ただ、子どもの頃は「怒りを表に出してはいけない」っていう家庭で育ってきたから、そうなると別のところに捌け口を見い出すしかないよね。そこから、自分はただひたすらダークな音楽を作りたいんだって欲求に気づいたんだと思う。それまでは普通にハッピーな曲を作ってたけど、暗い曲を書くようになってから「あ、完全にこっち側の人間だ」って気づいたの。居心地の悪い不穏な空気のほうが、むしろ自分は落ち着くんだろうね(笑)。人生には苦しみがつきものだから……闇がなかったら、何が光かなのかも判別できないわけで。

Heartworms「私は闇のほうが落ち着く」ゴスの継承者が語るモノクロの美学、反戦を歌う理由

Photo by Giuseppe Paolo

―そういった感性がどのように育まれてきたのか気になります。どうやら厳しい家庭環境で育ったようですが。

ジョジョ:まあ、そうとも言えるのかもね。
母のことは大好きだし尊敬してる。でも、すべての親に親の才能があるわけじゃないっていうか……とはいえ、住む家を与えてくれて、食べさせてくれて、それだけでも十分恵まれていたわけで、そこは心から感謝してるよ。ただ、子どもの頃しんどかったのも事実で、母親と感情的に繋がってるっていう実感があんまり持てなくて。いつだって地雷を踏まないように気をつけて歩いてるみたいな感じ。母親の声や顔色をチラチラ窺いながら気を張って……マジでキツかった。

でも、誰だってそれぞれトラウマを抱えていて、それを乗り越えつつ生きてるわけじゃない? クリエイティブなことをする人間にとっては、尚更そういう経験って重要だと思う。それがなかったら、何について歌えばいいの?って話だし(笑)。少なくとも自分はそう。もちろん、愛とか幸せを歌ったっていいんだよ。それも素敵なことだと思う。でも、全部が全部ハッピーで、この世からダークな部分が消え去ったとしたら、それはそれで空虚に感じられる気がするけどな。

さらなる音楽ルーツと「痛み」

―10代の頃の音楽遍歴についても聞かせてください。
ポップパンクやスクリーモにハマってた時期もあれば、路上で弾き語りしながら生計を立てていた時期もあったそうですね。

ジョジョ:正直、今となっては微妙って音楽にハマってた時期もあったけど(笑)。別にいいんだよ。どんなジャンルでも、それぞれに存在意義や素晴らしさがあると思うから。だから、どういう音楽が好きな人とも共感し合える自信がある。「あ、自分もブリング・ミー・ザ・ホライズン聴いてたよ!」「ユー・ミー・アット・シックス好きだった!」みたいなときもあれば、ショパンとかクラシックの話でも盛り上がれるし。とりあえず琴線に引っかかるものがあれば、本当に何でもいいんだよね。

バスキングに関しては、自分の声に合う曲を見つけてカバーしてただけ。ぶっちゃけ、アコースティック・ギターを弾くのは好きでも得意でもない(笑)。単に生活費を稼ぐための術みたいな。だから、ファースト・エイド・キット、ベン・ハワード、ジェフ・バックリィのお三方には感謝だよ。おかげで家賃を払うことができたから(笑)。


Heartworms「私は闇のほうが落ち着く」ゴスの継承者が語るモノクロの美学、反戦を歌う理由

Photo by Giovanni Cantamessa

―ここまで名前が出た以外で、ハートワームスの音楽や表現に大きな影響を与えたアーティストを挙げるとしたら?

ジョジョ:本とか詩人の方が思い浮かぶかな。『ゴドーを待ちながら』とか、昔から大好きな舞台の一つ。ああいう動きのあるものを観てると、文字通り自分も動かされるっていうか。誰かの動きを見て「めっちゃ素敵じゃん!」と思って、自分に応用したものがまた別の表現につながっていったりして。

音楽ってなると……そうだなあ……インターポールは昔からかなり影響を受けてるね。あの曖昧さを残した感じとか、どんな音楽に影響を受けてるのかあからさますぎるところとか、それをあえて隠そうとしないところも好き。あとはマイケル・ジャクソン! マイケル的な要素をほんの少しでも取り入れるだけで、ものすごく自信が持てる。キング・オブ・ポップっていうくらいだからね(笑)。あとは……PJハーヴェイ、パティ・スミスとか。ボブ・ディランの詩にも間違いなくインスピレーションを受けてるよ。私の中でディランは、ミュージシャンっていうより詩人って位置づけなんだよね。

今年の春にPJハーヴェイの来日公演を観ましたが、今考えるとハートワームスのライブにも通じるものがあったように思います。

ジョジョ:初めてポリーの曲を聴いたときの衝撃は、今でも強烈に覚えてる。スタジオにいるとき音楽を流してたんだけど、そのとき誰かが「Working for the Man」をかけた瞬間、秒でやられたっていうか。あの「♪ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥ~」っていうドスの効いたメロディが流れてきた瞬間、背筋がゾクッとなったんだよね。「今まで聴いた中で最強の曲かも!」となって、そこからもう何年も虜だよ。アーティストとしての彼女の表現って、どこまでも掛け値なしに素の自分じゃない? そこに一切の妥協も罪悪感もない。「あー、自分も好きにしちゃっていいんだね」って気づかせてくれたっていうか。人からああだこうだ指図されたら、むしろ真逆のことをやるぐらいの気概だよね(笑)。超絶クールな女性の代表格だと思う。

―ちなみに「ハートワームス」という名義は、ザ・シンズの同名アルバムに由来しているそうですね。

ジョジョ:私って昔から名前を決めるのが苦手でさ。作品づくりにおいて、一番苦戦しているのはそこかもしれない。だって、名前って一生残るわけじゃない? 変な感じで誤解されて解釈されたらどうしようとか、色々気を遣うことが多いから。「ハートワームス」って名前も、博打みたいに勢いだけで決めた感じ。ただ、昔からザ・シンズのファンだったし、ジェイムズ・マーサーは私の中で史上最高の作詞家の一人だから、おかしなことにはならないだろうと(笑)。

「ハートワームス」って名前は、ポップで楽しい感じと、不穏でダークな感じを兼ね備えてるところが好き……と言いつつ、そう思うようになったのは最近の話なんだよね。名前ってそれを名乗ってる本人の生きざま次第で、だんだん意味が与えられていくものなんだなって。まあ、現時点での私でいうと、やっぱりダーク寄りなのかな……っていうよりは、痛みかな。だって、心臓(heart)の中に虫(worms)がいるわけだよ?(笑)そんなの痛すぎるに決まってるし、音からもその痛みが滲み出てると思う。だってリアルだから。

モノクロは「頼もしい相棒」

―大学時代は音楽制作やパフォーマンスについて学んだそうですね。そういう道に進学したということは、早い段階からアーティストになろうと決心していた?

ジョジョ:いや、その時点ではプロデューサーになりたかったんだよね。女性のプロデューサーって、当時はそんなに多くなかったから。 ただそのうち、すべてをコントロールするよりは、自然のなりゆきに任せるのが好きだと気づいて。そこからパフォーマンスを志すようになったの。ちなみに、専攻していたのはプロダクション・パフォーマンス。Logic Proによる音楽制作だったり、バンドをやりたい人だったら、バンドを募って曲をカバーしたり、曲を一緒に作って学年の終わりに発表する、みたいな。そういうのは楽しい思い出だよね。まあ、決してバラ色ではなかったしキツい時もあったけど、先生もよかったし、自分の作品に対して良い反応をもらえたりして。少なくとも自分は表現者として、何かしら人に見せられるものがあるって自信をつけることはできた 。そこには感謝してる。

―ハートワームスとしての活動を始めたのは在学中から?

ジョジョ:いいとこに目をつけたね。在学中にスタートしたと言っていいのかな……その前にどういうネーミングで活動してたのかは恥ずかしいから言いたくない。これは墓まで持っていくぐらいのレベル(笑)。

Heartworms「私は闇のほうが落ち着く」ゴスの継承者が語るモノクロの美学、反戦を歌う理由

Photo by Camilla Mazza

―ハートワームスの作風は、2020年の初期シングル「What Can I Do」の時点で、すでに完成されていたように思います。モノクロームな世界観も含めて。

ジョジョ:自分にとって大事なのは、音楽とか詩とか中身のほうだから。見た目ばっかりに意識が向いちゃうと、途端に楽しくなくなっちゃうんだよね……でも、我ながら名案だったと思うよ。だって、モノクロだったら色がないぶん、ムードやトーンといったものに注目せざるを得なくなるから。あと、自分は手の動きをよく使って表現するんだけど、モノクロだとそれがすごく映える。だから自分にとって、モノクロは頼もしい相棒みたいなツールだね。しかも、その影に自分が隠れることもできる。カラーだと、何もかもさらしてるような気がして落ち着かないっていうか……なんなんだろうね、この心理(笑)。ただ、この先もずっとモノクロで貫き通すと決めてるわけでもなくて。そのあたりは自由。

―2022年にSpeedy Wundergroundと契約して、その頃ダン・キャリーの家の近くに引っ越したそうですね。今もご近所どうしなんですか?

ジョジョ:いや、もう引っ越しちゃったんだけど、何年かしばらく近くに住んでてすごくよかったよ。(サウス・ロンドンの)ストリーサムに引っ越したときは、ダンもそこに住んでることを知らなくて。「え、自分もあの辺に住んでるけど!」みたいな(笑)。そこから一緒に散歩したり、家族や友達みたいな感じになっていったんだよね。ダンとの出会いは最高にラッキーな出来事だった。単なるプロデューサー以上の存在だね。彼が制作に関わると、現場のワクワク度が倍増するの。「今から一緒に曲作ろうよ」「いいよ」みたいに気軽に声をかけ合える関係。人に与えるものをたくさん持ってる人。そして、めちゃくちゃ忙しい人(笑)。なかなか捕まえられないんだけど、周りのみんなにとっての友達って感じかな。

デビューアルバムと「罰、貪欲さ、反戦」

―デビューアルバム『Glutton for Punishment』を今年2月に発表。タイトルも印象深いです。

ジョジョ:そう……「罰(Punishment)」って、それこそ太古の時代から社会とか人間に関わってきたもので……何千年も前から人類は自分に対して、あるいは他人に対して「罰」を与えたり、与えられたりしてきたわけだよね。最近ローマに行って、コロッセオを見学してきたんだけど、ものすごく美しい場所で。でも、かつてはこの場所で、娯楽として人が殺されるのを見物してたって考えると狂気の沙汰でしょ。その現場に立ってみると、全体的に崩れかけてて、ほぼ瓦礫みたいな状態になってて……そこから目を閉じて映画『グラディエーター』の場面を思い出すと、頭の中であのテーマ曲が流れだして……ああ、昔の人はこういうのに熱狂してたんだなあって。

そういう人間の狂気って、形を変えて現代にも存在してるはず。そこが「Glutton(貪欲さ)」の部分だよね。スマホとかSNSに夢中になって、ひたすら画面をスクロールし続けるのって、人間の飽くなき貪欲さそのものだし、自分で自分の魂を罰してるみたいなもんだよね。そんなことしても、自分の魂に何も与えないで餓死させてるようなものなのに……今の時代って、無自覚に自分で自分を罰してる人間が多いと思う。私も前は毎晩のように遊び歩いてたし、「そうしなきゃいけない」っていう妙な思い込みに憑りつかれてた。自分一人になるのが怖くて、常に誰かと一緒にいないとダメだって。そこから酔っ払って騒いだり……それが自分にとって必要なことだと思ってた。でも、それが自分の魂を浸食してるってことに気づいて……日常の何気ない行動の一つ一つが、自分では気づかないくらい少しずつ、心と身体を蝕んでることってあるよね。その事実に気づいたら気づいたで、逆にもっと苦しくなるケースもあるんだけど。

で、そこは神に手を引いてもらったというか。人間の弱さとか、そういうものを自分が理解するうえで……あるいは、そういう落とし穴に注意していくことについて……そのすべてが「罰」っていうテーマに集約されてるし、それがアルバムのテーマにも重なってる。戦争、家族とのこと、そこに登場する人々の物語……ごめん、話が長くなりすぎた(笑)。

―「Warplane」は疾走感のあるシンセ・サウンドと聖歌隊のようなコーラスが印象的で、ライブでも盛り上がりそうですよね。

ジョジョ:疾走感っていうのは、まさしく一番のポイントだった。最初に書いたのが「♪ドゥルルルルルル」っていうベース・ラインだったから。起点としてドライヴ感っていうのがあって、「じゃあドライヴ感があるものってって何だろう?」って考えたときに、頭の中で飛行機のプロペラがクルクル回転しだして。そこから「戦闘機の空中戦のストーリーとかよくない?」「うん、いける!」と閃いて。芋づる式にアイデアが浮かんで、メッサーシュミットBf109とスピットファイアの空中戦のストーリーになっていったの。

しかも、その曲を書いてる真っ只中に、たまたまインスタでメッセージが送られてきて。私にお勧めしたいエピソードがあるって……それがウィリアム・ヒュー・ギブソン・ゴードンっていう(第二次大戦時の)空中戦で亡くなったスピットファイアのパイロットの話で、自分が思い描いてたストーリーとまったく同じだったの! まるで未来に出会うはずのストーリーを先行して書いたような感覚だった。

そのあと「Extraordinary Wings」っていう曲ができて、そこでもまたつながったんだよね。あの曲のMVは、彼が墜落した場面を描いてる。亡くなって天国に行ったのか、それとも現世との中間で宙ぶらりん状態になってるのかってストーリー。

―その「Extraordinary Wings」には、〈殺人なんて犯したくない、そもそも自分にそんな権利はない〉という一節がありますね。

ジョジョ:そうそう、要するに反戦ソングだよね。自分は宗教的な人間で、人間としてやっちゃいけないことがあると思ってて……「人を殺す」っていうのもそのひとつ。どんなに極悪人でも殺しちゃいけない。生も死も人間が判断を下すべき案件ではなく、神に委ねるべきだと思うから。それなのに今の世界では、戦争だのジェノサイドだのが横行してて、それは昔っからずっと続いてる……だからこそ反戦ソングを書くっていうのは必要なことだと思う。人の命を奪う資格なんて誰にもない。そりゃまあ、「あいつ、マジで死んでくれないかな」って思うこともあるよ(笑)。誰かにひどいことされたら腹が立つに決まってる。とはいえ、そのあたりは自己を律するべきだとも思う。

―最近のライブで、ボブ・ディランの「Masters of War」(戦争の親玉)をカバーしているのも、同様の意図が含まれているのでしょうか?

ジョジョ:まさにそう。昔から大好きな名曲だけど、自分のバージョンは最後の歌詞を変えていて。オリジナル版は〈お前が死ぬことを願う/その死がすぐに訪れることを願う〉と歌ってるけど、自分はそれに賛同するわけにはいかないから、〈誰も死ぬべきじゃない/たとえお前みたいな人間でも〉に変えたんだ。さらに〈死体が多すぎる/薄暗い午後ばかり/死の床に横たわる彼らの姿を眺めながら/あなたが忘れ去られてしまうことを/そして死者を思い出すことを願う〉と言葉を変えて……だって、こんなに美しい曲なんだもん。まあ、ボブ・ディランは怒りに任せて歌っちゃったのかもね(笑)。

憑依型のライブ、初来日への思い

―デビューアルバムの増補版「Glutton For Punishment (The Poetry Edition)」に追加収録された「Beat Poem」も興味深いです。スポークンワードの楽曲で、ライブではアカペラで披露していて見せ場になってるようですね。歌詞の面ではどんなことを伝えようとしているのでしょう?

ジョジョ:それがわかんないんだよね。あの詩は歌詞とか言葉よりビートがきっかけで生まれたもので、映画『いまを生きる』にインスパイアされてる。洞窟の中に生徒が集まって、そこで詩の朗読が始まって、それに合わせてみんなが自然にビートを叩き出していくシーンを見て「めっちゃいい!」と思ってさ。だから、自分が編み出したアイデアみたいな言い方はしたくないんだよね。自分の意志で書いたというより、神に書かされてるみたいな。パフォーマンスするときも何かが降りてくる感じ……完全に憑依されてる状態。自分がそこに存在してるはずなのに、存在してないような感じ(笑)。

―ハートワームスのライブでは、ジョジョさんの歌やギターだけでなく、ダンスも大きな見どころだと思います。踊ることは自分の表現においてどういう役割を果たしていますか?

ジョジョ:今言ってくれたことがそのまま答えだよ(笑)。踊りは私にとってのアート表現そのもので、自分としてはただチャネリングしてるだけ。スピリチュアルなもの、上の方にある大きな何かと繋がってる。

―12月の来日公演では、どんなライブが期待できそうでしょうか?

ジョジョ:そんなの秘密に決まってるじゃん(笑)。お客さんが想像する楽しみを奪いたくないからね。もしかして想像通りのパフォーマンスかもしれないし、想像してたのとは全然違うものになるかもしれない。私自身、あんまり計画とか立てない人間だし。唯一準備してるものがあるとすれば曲だけ。それ以外はその場でパッと湧き起こるものだから、答えようがない。せっかくの質問だけど残念でした!(笑)

Heartworms「私は闇のほうが落ち着く」ゴスの継承者が語るモノクロの美学、反戦を歌う理由

Photo by Camilla Mazza

―来日公演のスペシャルゲストを務めるNo Busesは、ハートワームス側からも「ぜひ共演したい」と名前が挙がったそうですね。

ジョジョ:うん、常に新しい音楽との出会いを求めてるからね。曲を聴きながら「ライブで観たら絶対に面白いんだろうな!」ってビビッときたの。 今からすごく楽しみ。

※No Busesの最新インタビューはこちら

―ほかにも日本の音楽やカルチャーに興味はありますか?

ジョジョ:正直、日本のことはそこまで詳しくなくて。まだ行ったこともないしね。ただ子どもの頃に、母が留学生の受け入れをしてて、その中で一番好きだったのがナツコっていう日本人の学生だった。ほら、これ見て(紙切れを出して)。私が4歳のとき、彼女に向けて書いた手紙なんだけど、結局送らなかったんだよね。でも日本に行くことになったから、彼女と会う予定なんだ。そのときにこの手紙を渡そうと思って! 彼女がよく送ってくれてたお菓子が大好きでさ……きのこの形をしたチョコレートのお菓子とか、ストローで膨らませる風船みたいなオモチャも好きだったなあ……だから私のなかでは、子供の頃の思い出と日本のカルチャーが結びついてる。ナツコとの再会がとにかく楽しみだし、今回のライブで日本との距離が近づいた。本当にワクワクしてるよ。

Heartworms「私は闇のほうが落ち着く」ゴスの継承者が語るモノクロの美学、反戦を歌う理由

CLUB CITTA Presents
HEARTWORMS Japan 1st Tour 2025 - Glutton For Punishment -
2025年12月1日(月)神奈川・川崎 CLUB CITTA ※Special Guest:No Buses
2025年12月2日(火)大阪・なんば Yogibo HOLY MOUNTAIN ※ワンマン公演
開演/開場:18:00/19:00
チケット前売り:8,000円(税込) 当日券:9,000円(税込)

公演ページ
川崎公演:https://clubcitta.co.jp/schedule/792
大阪公演:https://clubcitta.co.jp/schedule/793

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