2025年12月25日に、結成15年目を迎えるDISH//。様々な紆余曲折を経て、自分たちの信じ続ける道を歩み続けてきた彼らにとって、この1年はひとつの総括に向けて軌跡をたどった年になったのではないだろうか。


矢部昌暉の活動再開後初ライブとなった『DISH// ARENA TOUR 2024-2025「群青飛行」』、初の「皿組GOLD」会員限定ツアーとなった『DISH// FC TOUR 2025 「愛してるぜベイベー//」』、3年ぶりにコニファーフォレストでの野外ライブとなった『DISH// SUMMER AMUSEMENT 25 – GAME –』。11月8日(土)に東京ガーデンシアターで開催された『皿祭 -sarafes- 前夜祭ワンマン ~早めの忘年会~』は、そのすべてをひっくるめた一夜だった。各イベントのセットリストを反映させて再構築し、いいことばかりではなかったであろう各々の2025年を凛々しく受け止めたのである。

【ライブ写真ギャラリー】皿祭 -sarafes- 前夜祭ワンマン ~早めの忘年会~

場内BGMがBEGIN「笑顔のまんま」に移り変わると、すでにスラッシャー(DISH//ファンの総称)は準備万端といった様子。音楽に合わせてクラップが刻まれるたびに、色とりどりのライトバングルも揺れ、暗闇を鮮やかに彩っていく。暗転した舞台上に光が灯ると、いよいよ真打ちDISH//のお出ましだ。

冒頭の「皿に走れ!!!!」から、すでにメンバーはフルスロットル。体力配分を度外視した全身全霊のロックサウンドが東京ガーデンシアターに響き渡った。《On the Winding Road 皿に走れ!!!!》と突き上げられる拳のなんと力強いことか。彼らの熱にほだされたのか、スラッシャーも全力のヘドバンとシンガロングで応答し、フロアの熱が瞬く間に上がっていった。

北村匠海が「さあ、踊りなさい」と焚きつけ、ダンスロックバンドたるDISH//を堪能できる「万々歳」へ。間奏では橘柊生(DJ/Key)がショルダーキーボードを担ぎ、北村匠海(Vo/Gt)・矢部昌暉(Gt/Cho)と共に息の合ったステップを披露。
続く「FLAME」になると《歌え 歌え 吠えろ 吠えろ》のフレーズがエネルギッシュに鳴り響いた。ポップスターたるキャッチーさも、ロックバンドたるエモーショナルも両立させてしまうスタイルは、まさに唯一無二。パワフルにオープニングを駆け抜けながらも、”DISH//とはなんたるか”を鮮烈に刻んでいく。それでいて、目の前の一人ひとりと心を通わせることだって忘れない。「This Wonderful World」で作り上げられる一体感の素晴らしさよ。確信めいて放たれた《君と僕との素晴らしい一日にしよう》のフレーズは、ライブの大成功を早々に予感させていた。

DISH//、15周年目前の総決算 “皿祭”前夜祭ワンマンで刻んだバンドの軌跡

Photo by Ray Otabe

未来への希望を「SING-A-LONG」で高らかに叫ぶと、『DISH// SUMMER AMUSEMENT 25 – GAME –』での思い出をなぞっていくゾーンへと突入。HIPHOPのグルーヴが心地よい「B-BOY」、自分らしく生きていこうという前向きなメッセージが印象的な「KICK-START」、『DISH// SUMMER AMUSEMENT 25 – GAME –』へ向けて制作された「踊りゃんせ」と、異なるリズムでオーディエンスを躍らせていく。泉大智(Dr)の生み出す安定感のあるビートを感じながら、カリスマ性溢れる演奏や佇まいで、観る者の心をつかんでいった。

北村が「ちょっとしっとりした曲をやります」と宣言し、導かれたのは「ウェディングソング」。大切な人の幸せを願う言葉が紡がれるたび、観客はその声にうっとりと吸い込まれていく。愛の温度が漂う自然体で柔らかなムードが、温かく場内を満たしていった。
その直後には空気を一変させて、R&B調の「Loop.」、妖艶な世界観がクセになる「THE PHANTOM」とメロウなナンバーで魅せるターンへ。フェイクを入れてみたり、レイドバックぎみに歌ってみたりといったアプローチひとつひとつに、北村のボーカリストとしてのスキルが香っていた。

インストゥルメンタルの繋ぎを越えると、あっという間にライブは折り返し。「ついて来れるか、お前ら!」と北村が煽り、メンバー全員で作詞作曲を行った「rock'n'roller」が投入された。バシバシと激しく切り替わる照明、ヘビーなバンドサウンド、感情をぶつける歌唱。単なる熱量だけでは言い表せない何かが、巨大なエネルギーの波となって飛びかかってくる。続く「Newフェイス」ではクラップやヘドバンを巻き起こし、ロックのパワーをまざまざと魅せつける。「ウェディングソング」からの5曲を通して、『DISH// FC TOUR 2025 「愛してるぜベイベー//」』の記憶を鮮やかに蘇らせた。

MCでは、橘が今回の選曲について「忘年会ということで、コニファーを思い出せたりとか、ファンクラブツアーを思い出せるようなセットリストになっております」と説明。「この後も、今年をフィーチャーしたような曲がいろいろ出てくるんじゃないかなと思います」と話し、場内を盛り上げた。

その流れを引き継いだまま、橘が「ちゃんと”忘年”をしていきたい」と口火を切り、会場にいる全員で空想のグラスを掲げながら、大きな声で「カンパーイ」と叫んだのを合図に「乾杯」へ。各メンバーへバトンが渡されていくボーカルと温かな音作りも相まって、まるで本当の忘年会かのようにフランクな空気が広がる。
メンバーの表情も柔らかく、リラックスした状態で音楽を奏でているのが伝わってきた。豊潤な多幸感を生み出したのも束の間、泉の生み出すビートによって、一瞬にしてモードチェンジ。「後半戦に参りますが、聞かせてください。幸せですか!」と北村が投げかけ、「HAPPY」へと雪崩れこんだ。颯爽と走り抜けていくバンドの音は、まさに正統派ギターロック。スラッシャーが《Wow…》と合唱すると、北村はイヤモニを外してその声に耳を傾ける。「rock'n'roller」からの4曲で『DISH// ARENA TOUR 2024-2025「群青飛行」』の流れを再現し、最終ギアを一気に踏み込んだ。

DISH//、15周年目前の総決算 “皿祭”前夜祭ワンマンで刻んだバンドの軌跡

Photo by Ray Otabe

コニファーver.でのソロ回しを経て、いよいよ本公演もラストスパート。「サイショの恋~モテたくて~」と「ピーターパンシンドローム」をパフォーマンスして勢いよく畳みかけていく。その後も、タオルがクルクルと天を舞う「東京VIBRATION」、フロアが上下左右に揺れる「JUMPer」と展開。すでに終盤だというのに、彼らの爆発力はとどまるところを知らない。

最後のMCは北村が、丁寧に言葉を選びながら真っすぐな想いを口にしていった。
「今年は僕らの一番近いところにいてくれるみんなのことを、ライブで思う時間がすごく多かったのかなって思ってます。自分たちにとっても懐かしい思い出とかも全部こみで、今年1年はいろんなライブをやってきたなって。今日は自分がみんなを肯定できる日であってほしいし、(この1年で)絶対に良いこと悪いことあったと思います。僕も本当に良いこと悪いこと、50%・50%くらいあった1年でした。でも、全部をポジティブに変えるんじゃなくて。時には、やっぱりネガティブも必要だし。そんな浮き沈み、一喜一憂に立ち止まったり振り返ったり、また歩きだしたり。そうやって迷ったりしてる自分も、音楽を聴いてるときとかライブに来てる瞬間とかに、ぜひとも肯定してあげてください。ライブっていいなって、みんなにずっと思っていてほしいし、僕らもそれを届けますので。まずは、今年おつかれさん」と。そして、「ラスト1曲、今年を象徴する曲だったかな、なんて思ってます」と告げ、「ファッション★スター」へ。ラストソングを迎えた4人の表情には充足感が滲む。
会場一体となって《愛したい!》のフレーズを轟かせ、DISH//とスラッシャーの愛が交差する空間を創り上げたのだった。

盛大な「おかわり!」コールに呼び戻されてアンコールに転じると、最新シングルの「ごはん」をドロップ。日常に潜む幸せを掬いとり、醜さも愚かさも抱きしめながら、情景を描いていく。大トリには「沈丁花」を投下して、この日一番の大合唱を巻き起こし、晴れやかに忘年会を締めくくったのだった。

DISH//、15周年目前の総決算 “皿祭”前夜祭ワンマンで刻んだバンドの軌跡
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Photo by Ray Otabe
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