【写真を見る】棚橋弘至×LOW IQ 01
一方、その曲を作ったLOW IQ 01は、「プロレスラーになりたい。でも無理だったら東スポの記者になりたい」と小学校の卒業アルバムに書くほどの筋金入りのプロレスファンだった。
2023年12月23日より棚橋弘至は選手兼社長として新たな責務を背負い、2026年1月4日の東京ドームで現役を引退する。チケットは完売し緊急増席が決定。さらに実に24年ぶりとなる全国ネット・プライム帯での地上波放送も決定した。
さらに、棚橋の引退に向けて、Base Ball Bearの堀之内大介が旗振り役となり、綾小路翔(氣志團)、磯部正文(HUSKING BEE)、井上鉄平(BAZRA)、河本あす香(打首獄門同好会)、TAKUMA(10-FEET)、トミタ栞、もも(チャラン・ポ・ランタン)、そして、LOW IQ 01という棚橋と新日本プロレスを愛し、縁のあるアーティストたちが「IT'S THE 愛 BAND」を結成し、楽曲を制作した。
棚橋弘至とLOW IQ 01。音楽とプロレスを愛する同世代の二人が語る、エンターテイメントの本質、引退の意味、二つのカルチャーが交わる祝祭の未来、そして、「100年に一人の逸材」の最終章について。
LOW IQ 01:タナくん(棚橋)、お久しぶりです。
棚橋:お久しぶりです。
─あらためて、まずはお二人の出会いからお聞きしたいんですけど、棚橋さんが古着屋でSUPER STUPIDの「DO IT MY SELF」を聴いて衝撃を受けたことに端を発してるんですよね。
棚橋:そうです。場所は京都でした。18、9歳のころですね。大学生の時に京都の四条烏丸にあった古着屋さんで、SUPER STUPIDの「DO IT MY SELF」が流れてたんです。聴いた瞬間に「あ、かっけえ!」ってなって(笑)。すぐ「これ、なんてバンドですか?」って店員さんに訊いたら、「SUPER STUPIDです」って教えてくれて。そこからどハマりしていって、その流れでLOW IQ 01さんがSUPER STUPIDというバンドを組んでいたことを知って。やがて「DO IT MY SELF」を自分の入場テーマ曲としても使わせていただきました。
初対面の日、プロレスと音楽がつながった瞬間
─「DO IT MY SELF」のどこに一番、心を撃ち抜かれたんですか?
棚橋:まず、ドラムで始まるあのイントロのカッコよさ。それから、サビの「Do it, Do it」と繰り返されるあの感じに、「自分でやれよ!」って言われているようなメッセージとエネルギーを受け取りました。
─テーマ曲ごとにリングの記憶が刻まれている、という感じですよね。
棚橋:そうですね。時代ごとにテーマ曲が変わっていったので、その曲を聴くと、その頃の空気や景色がバーッと戻ってきます。
─お二人が実際に初めて対面した時のことは憶えてますか?
LOW IQ 01:覚えてます。DEVILOCKの展示会ですね。事務所の階段のところで2人で話したんですよね。「はじめまして」って。
棚橋:僕はもう、ど緊張でした(笑)。
─イチさんは、もともとかなりのプロレスファンですよね。
LOW IQ 01:一つ、夢が叶ったなって思いましたね。自分が音楽にハマったきっかけのひとつにプロレスの入場曲があるんです。子どもの頃、入場曲を聴いて「なんだこのカッコいい音楽は!」って思うことが多くて。まさか、自分の曲をレスラーに使ってもらえるとは思ってなかった。しかも新日本プロレスの選手に。
僕、子どもの頃から昭和の新日本プロレスにどハマりしてたんですよ。「将来はプロレスラーかジャッキー・チェンか」っていうくらい(笑)。でも体が小さいから、小学校の卒業アルバムには「プロレスラーになりたい。でも無理だったら東スポの記者になりたい」って書いてました。毎日プロレスに関わっていられる仕事に憧れていて。当時、うちのじいちゃんが毎日、東スポを読んでいて。
棚橋:素晴らしいおじいちゃんです(笑)。
LOW IQ 01:子どもながらに「東スポの記者は毎日プロレスの結果が知れるなんて羨ましい」と思って、駅まで買いに行かされるのも全然苦じゃなかった。あとは渋谷駅まで行って、タブロイド紙を買ったりね。コンビニでは売ってなくて、渋谷の駅じゃないと買えなかったから、200円を握りしめて(笑)。そうやってプロレス情報ばかり追いかけてましたね。
でも、音楽にどっぷり浸かるようになってからは、一度プロレスから離れてしまうんですよ。それでも、そのあと俳優の井浦新くんや、DEVILOCKのプロデューサーの遠藤(憲昭)とか、プロレス好きな友達が周りに増えて。彼らと一緒にまた新日本プロレスを観に行くようになって、「やっぱプロレス、熱いな」って再燃していきました。ミュージシャンでプロレス好きって本当に多いですよね。みんな、めちゃくちゃ詳しい。
─エンターテインメント性においても通じるものがあるんでしょうね。
LOW IQ 01:ありますね。魅せる意識という意味ではライブもプロレスも同じ。
棚橋:ライブ感、ですよね。どうお客さんを巻き込むか、どこで一気に火をつけるか。常にそこを考えているのは、僕らプロレスラーもミュージシャンも同じだと思います。
棚橋弘至(Photo by Mitsuru Nishimura)
ベビーフェイスでありながら”ナチュラルヒール”だった日々
─イチさんから見て、選手としての棚橋弘至はどんな存在ですか?
LOW IQ 01:やっぱりプロレスの盛り上がりをもう一回グッと引き上げた立役者ですよね。昭和のプロレスのお客さんは、おじさんと小学生の男の子が多かったイメージなんです。もちろん藤波(辰爾)さんみたいに女性人気の高い選手もいたけど、それでも観客のメインは男性だった。そこに、タナくんの世代が現れて、女性を巻き込んだ。
音楽で言うと、「AIR JAM世代」とも言われる僕らの世代と同じで、マイノリティだったものをマジョリティに押し上げた感覚がある。2000年代に入った瞬間、格闘技ブームになってK-1やPRIDEがバーッと盛り上がって、プロレスが埋もれそうになった時代があるじゃないですか。その中で、永田(裕志)さんや中西(学)さんたちの第三世代は本当に大変だったと思うし、そこから次の世代としてタナくんたちがプロレスの魅力をもう一度立て直してくれた。僕からすると、本当にプロレスの火を灯し直した立役者です。
棚橋:たしかに、あのころに思っていたのは「プロレスはプロレスのよさを追求しないとダメだ」ということでしたね。音楽のようにジャンルがあって、それぞれのよさがあるのと同じで、プロレスにもプロレスのよさがある。格闘技と混ぜたところで、いいことばかりじゃない。混ぜることで失われるものもあるな、ってすごく感じていました。
─時代の逆風に飲み込まれず「プロレスラー・棚橋弘至」を貫いた。その原動力は何だったんでしょうか?
棚橋:初期衝動がずっと続いているんですよね。僕は小中高とずっと野球ばかりやっていて、高校生のときに弟と一緒にプロレス観戦をするようになって、そこから人生がガラッと変わった。「世の中にこんなに面白いジャンルがあるのか!」って。プロレスにハマって生活そのものが楽しくなったんですよ。
そして、新日本プロレスに入ったあとも「あのころの自分のように、まだプロレスの面白さを知らない人が全国にいっぱいいるはずだ」と思った。それで、僕はいかにプロレスを知らない人に届けるかという意識に全振りしたんです。ビジュアルを強化したり、自分の好きな仮面ライダーや音楽、ファッションのカルチャーと繋げたり。実はやっていることの本質は、新日本プロレスの創設者であるアントニオ猪木さんの異種格闘技戦と一緒かもしれないです。ただ、やり方が違うだけで。
─ただ、そういった棚橋選手のアクションに、いわゆる猪木信者的な、昔ながらのストロングスタイルのファンからの反発も相当あったと思います。
棚橋:ありました。ブーイングは、新日本プロレスの歴代のプロレスラーの中で一番長かったと思います。チャンピオンになってから6年くらいの間、ずっとブーイング。
─スター選手が通る宿命のように、オカダ・カズチカ選手や内藤哲也選手もブーイングを浴びていた時期もありましたが、棚橋選手のブーイング期間は比ではなかった。
棚橋:そうですね。昔ながらのファンの方たちは「黒タイツのストロングスタイル」というイメージを持っている。でも、そのスタイルでビジネスが落ちているんだったら、何かを変えないと上がるはずがない。そう思って、僕は僕ならではのやり方に全振りしたんです。
ただ、「ストロングスタイル」という言葉のイメージが先行しているだけで、中身はそんなに変わっていないんですよ。猪木さんに直接会う機会があったとき、「ストロングスタイルって何ですか?」って訊いたことがあるんです。そしたら、「そんなの知らねえよ」って(笑)。
─猪木問答の番外編のような(笑)。
棚橋:たしかに(笑)。でも、そこで僕は「あ、そういうもんか」と思って、すごく心が楽になりましたね。
─棚橋さんって一度もヒールターンしてないんですよね。棚橋さんの師匠的存在である武藤敬司さんも現役時代はグレート・ムタ以外でもヒールターンしたことがあるし、オカダ選手も、内藤選手もヒール的な立ち位置になって大ブレイクした。そんななかで、ずっとベビーフェイスのままスターであり続けたのって、かなりレアだと思います。
棚橋:立場的にはずっとベビーフェイスなんですけど、やっぱりブーイングを一番浴びたのは僕ですからね(笑)。最初にIWGPヘビー級のチャンピオンになってからの5年くらいは、実質「ナチュラルヒール」だったと思います。試合の構図としては、相手に声援が集中して、自分にはブーイングが飛んでくる。「だったら、キャラクターを徹底的に振り切ったほうが試合は盛り上がる」と思って、ロン毛にして、エクステつけて、ナルシストな方向に振り切ったんですよ。ストロングスタイル信者からは反発も大きかったですけど、「何かを変えなきゃ上がらない」という信念は揺らがなかったですね。
LOW IQ 01:周りが求めることに従うことって楽なんですよね。でも、従わないで、自分で逆を行くっていうのが僕はすごく好きで。みんながそっち行くなら僕はこっち行きたいなっていう、昔からそういう考え方がある。マイノリティ、マジョリティとなった時に、マジョリティだけが正解じゃないとずっと思ってる。
例えば、野球だって昔は白いユニフォームじゃなきゃダメ、みたいな。でも最近スタイルが変わってきてる。モチベーションを上げるっていうのは、時代によって変わっていくものだから。今のタナくんのナルシスト的な要素などは、アメリカのプロレスにも繋がっていくと思うんです。今はメジャーリーグのように、日本の選手が海外で活躍することもあたりまえになっている。昭和のプロレスなら武者修行のためにアメリカに行くけど、今はスター選手としてアメリカの団体に所属する時代。そこにはストーリー性もしっかりあって。タナくんがやってきたことは、そのイメージを現代につなげてきたんだと思います。
棚橋:そうですね。僕がやったのはそこだけなんですよ。もともと新日本プロレスは伝統があって、伝統のスタイルがあって、しっかり練習をして、強さが練習量に裏打ちされていて。ただ、外見とか、時代に柔軟に対応するところだけができてなかったんで、僕がやったのはその部分だけです。時代に柔軟に対応する。そこだけです。
─イチさんは、最近の新日本プロレスをどう見ていますか? 2019年のG1 CLIMAXのテーマソングをやられて、その後も含めて、どう見られてますか?
LOW IQ 01:若いスターが育ってきてるなって。僕は辻陽太選手が、すごいポテンシャルがあると思うんですよ。華もあるし、体も恵まれてるし、運動能力も高い。
棚橋:辻は学生の時に自由が丘の駅で僕とツーショットを撮ったことから僕との物語が始まってるんです。その時、「君、ガタイいいね。プロレスラーにならないの?」って言ったんですよ。そしたら、その後の入門テストをすぐに受けて入門してきたんですよ。なので、僕はスカウト能力が高い(笑)。
─入場テーマ曲の話に戻りますが、イチさんが柴田勝頼選手のテーマ「Takeover」を書き下ろした時に棚橋選手はものすごく嫉妬していたということですが(笑)。
棚橋:はい、嫉妬で頭おかしくなりそうでした(笑)。
LOW IQ 01:そこまで俺のこと好きでいてくれたんだ(笑)。あのタイミングは、本当に劇的だったんですよ。勝頼が新日本プロレスを離れて総合格闘技に行くというタイミングで、「入場曲を作ってほしい」と頼まれて。僕としても、プロレスの入場曲を依頼されて作るのは、また新しい夢が叶った感じで。
しかも、2006年の1.4東京ドームでタナくんと勝頼がシングルで戦ったときに、ちょうど勝頼のテーマ曲が「Takeover」に切り替わった。あの瞬間は、「うわ、ストーリーだな」と思いましたね。
棚橋:僕はそのジェラシーを、柴田さんとの戦いに全部乗せました(笑)。柴田さんとは何度もシングルで当たっているんですけど、「Takeover」のイントロのギターが鳴るたびに「うわ、かっけえ……」って思ってました(笑)。僕の嫉妬も含めて、戦いの相乗効果になったと思います。
LOW IQ 01(Photo by Mitsuru Nishimura)
棚橋弘至、引退を決断した本当の理由
─棚橋選手が2026年の1.4東京ドームで引退を決めた理由と経緯をあらためて聞かせてください。
棚橋:引退を発表したのは、2024年の10月の両国大会です。2023年に新日本プロレスの親会社であるブシロードの木谷会長に呼ばれまして。「今日もなんか美味いもの食えるのかな」くらいの感覚で行ったら(笑)、「来年から新日本プロレスの社長をやってくれないか」と。
僕、2016年くらいのインタビューで「将来的には新日本プロレスの社長になりたい」と言っていたらしいんですよ。自分ではすっかり忘れてたんですけど(笑)、その言霊が実現した形ですね。木谷会長からは「ちゃんと人も動かして、数字も見られる職業としての社長になってほしい」と言われて、引退の話にもなり、僕が「すみません、あと2年プロレスラーをやらせてください」とお願いしました。日本全国のファンのみなさんに感謝を伝えながら、きちんとリングを降りるには、2年必要だと思ったからです。
─社長就任のオファーは、やはり驚きのほうが大きかったですか?
棚橋:めちゃくちゃ驚きました。それまでは、選手としてキャリアを全うするつもりでいたので、引退が具体的に見えるのはまだ先だと思っていたんです。もし社長の話がなかったら、おそらく引退を決めるのはもっと難しかったと思います。選手としてだけやっていたら、還暦までやる可能性も普通にあったと思うので(笑)。
─社長業とプロレスラーの両立は、現在進行系で想像以上に過酷な面があると思います。今、睡眠時間はどれくらいなんですか?
棚橋:僕、ショートスリーパーで。寝る時間がない日でも3~4時間くらい眠れば、なんとかなるように生活リズムができてしまって。夜12時くらいに寝ても、朝4時くらいにパチっと目が覚めます。そこから朝ご飯を食べて、散歩したり。出社して18時に退社して、試合がない日はそのままジムへ。東京で試合がある日は夕方には会社を出て、後楽園ホールに行って、そのまま試合に臨みます。なので、「朝から大会が終わるまでずっと仕事」という日もあります。
責任は、チャンピオン時代の倍以上になりましたね。チャンピオンのころは「所属選手の家族まで食わせるんだ」という気持ちでやっていましたけど、社長になると選手、社員、その家族まで含めて背負うことになる。
LOW IQ 01:藤波さんとか、天龍(源一郎)さんとか、(ジャイアント)馬場さんだってそうだったし、長く現役をやれてたじゃないですか。だからタナくんも、社長にならなければ、現場にもいながら現役を続けるのかなって思ってた。でも、今までにいないタイプのレスラーでもある。タナくんはクレバーなんだと思う。やっぱりインテリなところもあるし。だから社長を任される。結果的にそれが一番適任だったなと思うし。
もし昭和のイケイケのレスラーだけだったら、今の時代では会社を潰しちゃう可能性もあると思うんですよ。勢いだけじゃ、理想だけじゃ、やっていけない部分もある。タナくんの話を聞いてると、現代的な社長業ができる人なんだなって思う。
─イチさんにとって「引退」という言葉は、どんな響きですか? ミュージシャンは生涯現役というイメージも強いですが。
LOW IQ 01:求められている限りはやりたいですね。ただ、求められていないのに続けてしまうと、それはもう自分のエゴになると思うんです。プロとしては、自分の作ったものを好きでいてくれる人、感動してくれる人がいるから成立する。それが完全になくなったら、そのときはまた考えなきゃいけないけど、「いいときも悪いときもある」というのは、音楽も一緒です。
若い頃は「音楽は80歳までできる」「ブルースマンみたいに一生やれる」と思ってたけど、劣化はするんですよ。1週間楽器に触らなかっただけで「あれ?」ってなる。そこはトレーニングとまったく一緒で、「続けていないとダメなんだ」と最近はより強く思うようになりました。
そういう意味では、タナくんと似てる部分もあるんですよ。社長をやりながらレスラーもやる、みたいなマルチタスク。僕も、ギターを弾きながら歌って、ベースも弾いて、曲も作って──一つに絞らずにやっている。どれも続けていないと、すぐ鈍るし、置いていかれる。そこには、ある種アスリート的な感覚もありますね。
─棚橋選手、ここまで続いてきた引退ロード、手応えとしてはいかがですか。印象に残っている試合や光景は?
棚橋:本当に充実しています。特に、海野翔太、辻陽太、上村優也──新世代との試合は、強く記憶に残ってますね。彼らにバトンを渡す感覚もあるし、「ここから先を頼んだぞ」という思いでリングに立っています。
─WWEのジョン・シナもAJスタイルズも、棚橋選手と同世代のスーパースターが次々と引退に向かっていますよね。
棚橋:そうですね。AJは新日本プロレスのリングで激闘を繰り広げましたけど、シナには触れたことがなくて。昔は「シナかタナか」みたいに言われたこともあって(笑)。シナも、なかなか人気が出なかった時期があるんですよ。肉体もいい、試合もいい、でも、なかなか突き抜けない時期があって。そこからボーンと突き抜けて、WWEの顔になっていった。同世代として、シンパシーはすごく感じますし、自分の試合を通して彼らへのメッセージもどこかで届けたいなと思っています。
─今回、1.4東京ドームでの引退試合の相手がオカダ・カズチカ選手に決まりました。その経緯を、言える範囲で教えていただけますか。
棚橋:引退試合の相手の理想は、「戦ってきたライバル」か、「深い接点のある相手」ですよね。トップどころでいうと、中邑(真輔)、オカダ、内藤(哲也)──そのあたりが候補になる。そんななかで、オカダが名乗りを上げてくれた。「自分がやります」と言ってくれたことが、何より嬉しかったです。内藤も「まだやれる可能性があるならやりたい」というニュアンスのことを言ってくれていて。内藤のデビュー戦の相手は僕なんですよね。社長としては、内藤がもし新日本プロレスのリングに戻りたくなったら、いつでも戻ってこられる距離感でいてあげたいと思っています。
─グッとくる発言です。本当に、プロレスだけは最後まで何が起こるかわからないですしね。
棚橋:そうですね。武藤さんの引退試合だって、内藤との試合のあとに蝶野さんが出てきたじゃないですか。ああいうことが起きるのが、プロレスの面白さでもあるので。あと2カ月ですけど、「最後の最後まで何が起こるかわからない」のが理想だと思っています。
Photo by Mitsuru Nishimura
豪華メンバー集結「IT'S THE 愛 BAND」が生まれた理由
─では、今回のプロジェクトで制作された新曲についても少し教えてください。堀之内大介さん(Base Ball Bear)主導で、イチさんを含め豪華メンバーが集まったわけですが、どんな曲になったんでしょう?
LOW IQ 01:ざっくり言うと、「We Are The World」的な、タナくんの応援ソングですね。もちろん引退に向けた曲ではあるんだけど、それだけじゃなくて、新日本プロレスの社長としてこれからも戦い続けるタナくんを応援する曲でもある。タナくんが毎日聴けるような、前向きな曲になっていると思います。ホリ(堀之内)なりのメッセージ性やギミックも入っていて。
ホリがここに呼んでくれなかったら、さっきのタナくんじゃないけど、俺、嫉妬で頭おかしくなっちゃう(笑)。本当に参加できてよかった。
棚橋:僕はまだ曲を聴けてないんです。だから、すごく楽しみで。参加メンバーの顔ぶれを聞いたとき、「音楽好きでよかった!」って心から思いました。どのアーティストも、自分が普段から聴いている人たちばかりで。
─棚橋選手は、1.4東京ドーム当日、その曲を聴いたら泣いちゃいそうですよね。
棚橋:ドームまでに曲を聴くと泣く体になっちゃうかもしれないですね(笑)。前日に聴きすぎると、ドーム当日、目がパンパンになっちゃうので気をつけます。今、ファンのみなさんの間では「棚橋はどのタイミングで泣くのか」が一つのテーマになっているみたいで。入場から泣いてたら、応援しにくいじゃないですか(笑)。だから、僕としては、できるだけ笑顔で最後のゴングを迎えたい。
でも、実際リングに立ってみないと、その日の感情は本当に想像できないです。ここまでイメージできない試合は、初めてかもしれない。
─イチさんは、1.4にどんな試合を期待していますか?
LOW IQ 01:記憶に残る試合になってほしいですね。「うわぁ、すげえもの見たな」と、何年経っても思い出せるような。きっと、感動する試合になると思っています。
─最後に、これからの「音楽とプロレスの関係」についてお聞きしたいです。棚橋さんが社長に専念していく中で、音楽との接点はますます期待されていると思います。
棚橋:大阪の音楽フェス「FM802 RADIO CRAZY」で試合をやらせてもらったり、北海道の「JOIN ALIVE」でも試合をやらせてもらったんですけど、音楽ファンの方って最初から「騒げる準備」ができている人たちなんですよ。だから、むちゃくちゃ盛り上がる。楽しみ方を知っている人たちにとって、プロレスはすごく相性がいいんだと思います。
アメリカの団体では、アーティストの生演奏で入場したりするのも当たり前になってきているので、日本でももっとそういうことをやっていきたいですね。好きなものと好きなものが繋がると、やっぱり嬉しいんですよ。フェスとプロレスは、祝祭感という意味でも相性がいいと思うので、経営者としても、そこは今後どんどん仕掛けていきたいです。
LOW IQ 01:僕もアメリカ団体の映像で生演奏付きの入場とかを観て、「これはアツいな」と思いました。タナくんが言うように、音楽ファンってもともと騒ぎたい人たちだから、フェス会場でプロレスをやったら、1発目から大盛り上がりになると思う。今ではお笑い芸人もロックフェスに出るし、いろんなカルチャーが混ざり合う土壌ができている。今のほうが、音楽とプロレスが交わる準備は、はるかに整っていると感じますね。
棚橋:社長として、プロレスラーとして、音楽好きとして。これからより、プロレスと音楽の新しい”祝祭”を作っていけたらいいなと思ってます。
Photo by Mitsuru Nishimura
WRESTLE KINGDOM 20 in 東京ドーム
2026年1月4日(日)14:30開場 16:00開始
■東京ドーム
■特設サイト:https://wrestlekingdom.njpw.co.jp/
”イッテンヨン”として知られる、新日本プロレス年間最大のビッグマッチ「WRESTLE KINGDOM」。”100年に一人の逸材”棚橋弘至の引退試合、そして元東京オリンピック柔道男子100kg級金メダリストであるウルフアロンのデビュー戦が行われるメモリアルな大会。棚橋弘至の引退試合の相手は、AEW所属のオカダ・カズチカに決定。今大会は1月4日(日)夜10時15分より、テレビ朝日系列地上波にて全国ネット放送される。


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