BREIMENとは、2018年より現体制で活動している5人組バンド。数々のミュージシャンを輩出している早稲田大学の音楽サークル・THE NALEIOやセッションシーンで出会ったメンバーで結成された。同世代で古くから付き合いのある仲間といえば、King Gnu、Tempalay、Kroiなどが挙げられる。メンバーは、高木祥太(Vo&Ba)、サトウカツシロ(Gt)、いけだゆうた(Key)、ジョージ林(Sax)、So Kanno(Dr)で、それぞれがプレイヤーとしてChara、Tempalay、Vaundy、.ENDRECHERI.、KIRINJI、なとり、Eve、Aile The Shotaなどのサポートを務めている。ミュージシャンたちからリスペクトを受ける、問答無用の実力派プレイヤー5人が集まったバンドである。
上段(左から):So Kanno、高木祥太、ジョージ林 下段(左から):いけだゆうた、サトウカツシロ
インディーズ時代から高い評価を受け、2021年5月のコロナ禍に発表した2ndアルバム『Play time isn't over』は、ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文主宰の音楽賞「APPLE VINEGAR -Music Award- 2022」で特別賞を受賞。福岡晃子(チャットモンチー済)は「2021年で一番聴いたアルバム。(中略)こんなアレンジ可能なんやっていう驚きと同時に、体に吸収しやすいメロディーとかコード進行の存在もあって、そのバランスが最高」と評した。2022年5月9日にリリースされた岡野昭仁(ポルノグラフィティ)×井口理(King Gnu)「MELODY」では、2人からラブコールを受けて、高木が作詞・作曲、メンバー全員が編曲・演奏で参加。THE FIRST TAKEに出演した際には、一発録りの緊張感の中にもかかわらず即興でジャムを繰り広げるライブアレンジを披露し、ポルノグラフィティ・岡野に「わし的にFIRST TAKEの中でもぶっちぎりでカッコええと思った。あんな余裕しゃくしゃくで、あんな高度な曲を、何より楽しそうに出来る奴らなんてなかなかおらんじゃろ」とまで言わしめた。筆者が行ったインタビューでKIRINJIの堀込高樹は、「若い人の音源を聴いていると、”ここ、濁ってるな”とか”このハモはいらないのにな”と思うことがわりとあるんですよ。
わし的にFIRST TAKEの中でもぶっちぎりでカッコええと思った。
あんな余裕しゃくしゃくで、あんな高度な曲を、何より楽しそうに出来る奴らなんてなかなかおらんじゃろ。
ほんまに興奮したわ。
岡野昭仁— 岡野昭仁 ポルノグラフィティ (@OkanoAkihito_pg) October 5, 2022
2024年4月、ソニー・ミュージックよりメジャーデビューを果たし、昨今BREIMENの周りに集まるのはミュージシャンだけでない。令和ロマンと本誌のバックカバーを務めて以降、高比良くるま(令和ロマン)とヨネダ2000のバンドに高木が誘われたり、その後Fender主催のイベントにて令和ロマンと高木、いけだがバンドを結成するなど、芸人界隈でも交流を深めている。2025年にはテレビアニメ『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』4期最終シーズン第1クールのエンディングテーマ担当に抜擢されたが、そのきっかけは、アニメの監督を務めた松下周平がもともとBREIMENの「展開が読めない面白さ」などを気に入っていたからだった。あらゆるカルチャー方面のクリエイターたちから面白がられる存在、それがBREIMENだ。
『ハイスクール!奇面組』のファンであれば、「なぜそんな実力派の人気者たちが”奇面組”の主題歌に?」と思うかもしれない。
BREIMENと奇面組の共通点
そもそも『ハイスクール!奇面組』とは、1980年より『週刊少年ジャンプ』にて「3年奇面組」として連載が始まり、1985年からテレビアニメが放送された、原作・新沢基栄によるマンガ作品。約40年の時を超えて再アニメ化されることが決定し、その監督を務めるのはJ-POPシーンの重要人物とも言える、Perfume、星野源、藤井 風、Vaundyなどのアーティストのミュージックビデオを手掛ける関和亮だ。Snow Manの佐久間大介が、声優として切出翔(きれいでしょう)役を務めることでも大きな話題を呼んでいる。
奇面組製作委員会 / KIMENGUMI Committee ©新沢基栄/集英社・奇面組
「目一杯普通じゃないイカした連中」(作中セリフより引用)である奇面組は、たとえ「奇面」であっても、勉強や運動が苦手でも、その愛らしい個性でヒロイン・河川唯や視聴者を惹きつけていく。はっきり言ってBREIMENの5人も、音楽面では抜群に秀でている一方で、その他の面においては不器用な人間たちだ。スマートにかっこよく弱みを見せずに生きられる人とは真逆のタイプ。それでいて誰に対してもオープンで、壁を作ることも拒絶することもない。サポートミュージシャンとして引っ張りだこになるには演奏面の実力だけでなく人間性も大切であるが、5人ともがオファーが絶えない状況にあるのは、プレイヤーとしてだけでなく人間的な個性も愛されている証拠だ。
そもそもBREIMENは年齢も性格も音楽以外の趣味嗜好も違う5人が集まった集団であり、「個性バラバラの5人」という点も、奇面組との共通点だと言える。
そして重要なのは、『ハイスクール!奇面組』で展開されるメッセージと、BREIMENが表現しているメッセージが、かなり一緒であるという点。このアニメが伝えてくれるのは、「人と同じであろうとしなくていい、個性を大切にしよう」「学校や社会の”王道”を生きようとしなくても、そこに無理に自分をはめなくとも、他に生きる道はある」という優しいメッセージだ。そしてBREIMENの音楽の中心にあるのも、この通りなのである。メジャーデビュー曲「ブレイクスルー」には〈革命って訳じゃない/解放したいだけ〉という歌詞があるが、これについてボーカル&ソングライターの高木はこう語っている。
「俺は、社会に対するアプローチとして、社会にコミットしてひっくり返すよりかは、別に社会がひっくり返らずとも、自分自身の気持ちを社会の中で解放したら、それが波動のように広がってガードとなり、この社会で生きていけるのではないか、というふうに思っていて(中略)俺はどちらかというと社会の混沌としたところではなく好き勝手に生きられる解放地区にいる人間な気がする」(Rolling Stone Japan vol.26より引用)
BREIMENは、社会のど真ん中とは違うところに立って、「こんな居場所もあるよ」「こんな生き方もあるよ」と手招いてくれているようなバンドだ。今いる場所や日常が苦しいとき、考え方や見る方向を変えれば他に選択肢はあるのだと教えてくれて、雁字搦めになっている状態から解放させてくれる。また、権力や強い者に対してファイティングポーズを取って戦うのではなく、笑いで壁を壊し、スルリと抜け道を行く感じも、奇面組とBREIMENの重なるところだと言える。
本誌の連載「赤裸々SESSIOONe」でも、「目一杯普通じゃない」生き方=社会で”王道”とされているものではない生き方を選びながらも、幸せそうに伸び伸びと生きている人たちをゲストに招いて人生の哲学について話を聞いてきた。それは、BREIMENの音楽と同様に、「いろんな生き方があっていい」「意外とこんな暮らし方もあるかもよ」ということが人々に少しでも伝わったらいい、という思いからだ。
「赤裸々SESSIOONe」より。ゲストは、30歳でサラリーマンから大道芸人に転身した風船太郎(Photo:Goku Noguchi)
「赤裸々SESSIOONe」より。
BREIMENが書き下ろした主題歌のタイトルは「ファンキースパイス feat.TOMOO」。5人の中に、彼らと10代からの友人であるTOMOOがヒロイン的なポジションで参加している。楽曲解禁前のため詳細は伏せるが、一足先に聴かせてもらった印象を少しだけ述べると、「世の中の歯車となるより、世の中を味付けする調味料になろう」という一堂零のセリフでありアニメのモットーであるこの言葉と、BREIMENのアイデンティティやメッセージがバチッと重なった一曲が仕上がっている。また、そこには「大人になっても真面目に遊ぶ、本気でふざける」を大切にするBREIMENらしく、音や言葉の遊びもふんだんに取り入れられている。
今は「安定した道から外れないように」「人に迷惑をかけないように」「時代遅れの行動を取ってしまわないように」などの細心の注意や、正しさと誠実さを求められすぎるくらいの雁字搦め時代だと言える。そんな時代に『ハイスクール!奇面組』とBREIMENが、世の中に深みと刺激を与えるスパイスを降り注いでくれるのではないかと思う。
<リリース情報>
奇面組製作委員会 / KIMENGUMI Committee ©新沢基栄/集英社・奇面組
BREIMEN
『ファンキースパイス feat.TOMOO』
2026年1月9日(金)配信開始
2026年2月18日(水)CD発売
【初仕様限定盤】(アニメ絵柄スリーブ仕様)
品番:BVCL-1518
税抜価格:1,500円
税込価格:1,650円
※特別ブックレット付
=収録楽曲=
1. ファンキースパイス feat.TOMOO
2. ソングライター feat.TOMOO
3. ファンキースパイス feat.TOMOO(Anime Version)
4. ファンキースパイス feat.TOMOO(Instrumental)
5. ソングライター feat.TOMOO (Instrumental)
<ライブ情報>
「AVEANTING 2026」
2026年3月6日(金)大阪・梅田BANANA HALL
2026年3月7日(土)名古屋・JAMMIN
2026年3月13日(金)福岡・DRUM Be-1
2026年3月14日(土)広島・Reed
2026年3月26日(木)東京・渋谷CLUB QUATTRO
https://eplus.jp/breimen/


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