ターンスタイルのシンガー、ブレンダン・イェーツにとって、この1年はまるで夢のような時間だった。
ボルチモアのハードコア・バンドである彼らは、4作目のアルバム『Never Enough』によって、ロック、メタル、オルタナティブの3部門すべてでグラミーにノミネートされるという快挙を成し遂げた。これは、1組のアーティストが同一年にこの3部門すべてに名を連ねた史上初のケースだ。そして、それはこの驚異的な12カ月を彩る”最後の仕上げ”にすぎない。
映画を制作し、地元ボルチモアで大規模なショウを行い、ビルボードのアルバム・チャートでトップ10入りを果たす──。チャーリーxcxが「Turnstile Summer」という言葉を広めた瞬間をはるかに超えて、今年はまさにターンスタイルの年だった。イェーツは、今回のグラミー・ノミネートは、バンドがこれまで吸収してきた幅広い音楽的影響を反映したものだと語る。
「このバンドが存在し始めたときから、ターンスタイルを形作ってきたDNAは、ものすごく多様な音楽の中に散らばっている。僕らの視点からすれば、今回のノミネートは、自分たちをインスパイアし、形作ってきた音楽の集合体なんだ」
イェーツに、アワード、ジャンル、そしてバンドが次に思い描く夢について話を聞いた。
ー『Glow On』のときにも聞いたけれど、今の時代、「ジャンル」って何だと思う?
とても主観的なものだと思う。ジャンルは、ある世界観の中で自分の好きな音を見つけるためのガイドとしては機能する。でもハードコアは、ジャンルというより文化やコミュニティに近い。
僕らはパンクやハードコアのショウに通って育ったし、ロックも、メタルも、オルタナも、R&Bも、ラップも、エレクトロニック・ミュージックも聴いてきた。本当にいろんな音楽を聴いてきたんだ。子どもの頃に親がかけていた音楽も含めて、人生の中で触れてきた音楽的影響を、僕らは一度も否定してこなかった。
人はみんな、自分が惹かれるものを吸収するスポンジみたいな存在だと思う。自然と惹かれるものに、無理やり枠をはめないことが大事なんじゃないかな。
ーこの2枚のアルバムの間で、どんなものに惹かれていった? サウンドはどう進化した?
曲を書いていると、頭の中にずっと残り続けるものがある。何度も繰り返し口ずさむフレーズや、「いつか曲になるかもしれない」と思いながら抱え続けるマントラのようなものだ。
今回のアルバムを形にしていく過程で、僕はシンセとギターとピアノを置いた自分の部屋にこもっていた。シンセは、ただその空間で時間を過ごしていたという理由だけで、アルバムのさまざまなテクスチャーに入り込んでいった。
ある曲はその世界観に留まり、ある曲はまったく別の場所へ向かう。でも、すごくシンプルな出発点から始めることで、アルバム全体の方向性が自然と形作られていくんだ。
ー頭から離れなかったフレーズや感覚には、どんなものがあった?
「Never Enough」という曲は、ずっと前から頭の中にあった。言葉やメロディって、完全な形になる前から、長いあいだ心の中に残り続けることがあるんだ。
この曲は、いろんな人生経験についてのものだ。愛がいつも足りないと感じてしまうこと、あるいは、持続的な影響を残せていないように感じること。何かを追い求め、手を伸ばし続ける感覚。そうしたパターンに囚われると、そこから抜け出すのは本当に難しい。自分自身がそう感じることもあれば、誰かに必死に手を伸ばしても、相手には届いていないと感じることもある。
この曲が形を持った瞬間、このアルバムが進むべき道を示していると、僕らはすぐにわかった。前作以降の数年間の僕らの人生を、そのまま語っているような曲だった。
ー初聴では気づかないかもしれないけれど、曲には強い脆さがある。ピットの中とはまた違う、鼓動のようなものがある。
僕はいつも、その時点の人生で自分が本当に感じていることを、そのまま映し出そうとしている。
友人ともよく話すんだけど、曲を書くという行為は、人生のある瞬間にタイムスタンプを押すようなものでもある。でも5年後、その曲がまったく新しい意味を持つこともあるし、自分と一緒に成長していくこともある。
音楽が人生とともに成長し、時期によって異なる意味を持つ──そのこと自体がとても美しい。だからこそ、ライブで演奏するという行為がすごく重要になる。曲が別の命を得るための、もうひとつの道なんだ。
アルバムの楽曲群に対応する一本の映画を作りたい
ーボルチモアでの凱旋公演は、本当に美しかった。
あの日がどれだけ特別だったのか、まだ全員が噛み締めているところだと思う。地元でショウをできたこと、医療支援やホームレス支援のために資金を集められたこと、そして家族や友人が集まってくれたこと。子どもの頃から一緒に育ってきた人たちもいれば、10年ぶりに再会した人もいた。
正直、夢みたいな時間だった。バンドとしてやってきた中でも、最も重要なライブのひとつだったと思う。
ー最近のターンスタイルの作品制作には、何が込められている? アルバムに合わせて一本の映画(全編映像作品)まで作っていて、没入型のアート作品のようにも感じる。
フル・アルバムに対応する映像作品を作ることは、ずっとやりたいと思っていた。でも同時に、あまりにも遠い夢のようにも感じていた。正直、とてつもなく大変なことだからね。
でも曲を書いていく中で、自然とビジュアルが浮かんでくる。色を感じ、やがて舞台や風景が見えてくる。アルバムが完成する頃には、楽曲群に対応する一本の映画として、どうすれば音楽に新しい命を与えられるか、その輪郭がはっきりしてきた。それは、単に曲を並べるだけではない、別の次元の体験になると思った。
ー美しい草原で「Birds」に合わせてモッシュが起こるシーンが特に印象的だった。
あれは本当に特別だった。正式なライブではなかったけれど、人と音楽を実際に分かち合う、最初の体験だったと思う。音が鳴り、それに人が反応し、その空気がまた音楽に返ってくる――そうしたライブならではの循環の中に、初めて足を踏み入れた感覚があった。
ー映画音楽を手がけたいと思ったことは?
ぜひやってみたい。まだ一度も経験はないけれど、ずっと夢見てきたことだ。いつかその機会が訪れることを願っている。
from Rolling Stone US


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