「今日のためにいろんな準備をしてきました」というsoutaの言葉どおり、特別なライブに向けて入念なこだわりが随所に見受けられた。会場に足を踏み入れると、アメリカのアーティストAnne Heroの手によるフライヤーイラストを用いた等身大パネルがお出迎え。この愛らしいイラストは、セガのアクションゲーム『ジェットセットラジオ』における独自のグラフィック表現「マンガディメンション」へのオマージュでもあるという。
開演前のBGMで、音楽に開眼するきっかけをもたらした『ジェットセットラジオ』や『ソニック ジェネレーションズ』のゲーム音楽をはじめ、RIP SLYME「JOINT」やhide with Spread Beaver「ピンク スパイダー」といった平成の名曲、9mm parabellum bulletやTHE MAD CAPSULE MARKETSのミクスチャーロック、BOOM BOOM SATELLITESのデジタルサウンドなどが流れていたのも印象深い。原点を見つめ直すような選曲であるのと同時に、Tyrkouazの世界観へと招き入れようとする意思も感じられた。
フライヤーイラスト等身大パネル。写真左から兄souta(Vo/Gt)、弟・rent(Dr/Cho)
ワンマン開演前プレイリスト
開演予定の19時を少々過ぎた頃、主役の兄弟がいよいよステージへ。rentがシンバルで第一音を打ち鳴らすと、デジタルロック調のインスト曲「Junk Food」で初っ端からトップギアへと加速。お立ち台に乗ったsoutaが「1st One-Manにようこそ、楽しんでいってね!」と挨拶すると、今年2月リリースのシングル「MEKAKUSHI-ONI」に雪崩れ込む。痛快なギターリフとブレイクビーツ、ラップ調のメロディが渾然一体となり、サビでは早くも客席から無数の手が上がった。
序盤から波状攻撃を仕掛け、フロアを瞬時に掌握してみせた二人。ドラムンベースを基軸にジャンルを混ぜ合わせてきたTyrkouazの強みはここにある。高速BPMがデフォルトであり、なおかつJ-POP譲りのキャッチーさも持ち合わせているため、凡百のバンドであれば伝家の宝刀になりうるアッパーなアンセムを連投可能で、それゆえ熱狂は天井知らずで膨れ上がっていく。おまけに彼らは引き出しも豊富で、DJミックスのような緩急やドラマ性を的確に構築してみせる。この日はセットリストも周到に練られたのだろう、曲の流れも鮮やかだった。
「誰も置いていかないので、みんなで最高に自由な空間を作っていきましょう!」というsoutaのMCを挟んで披露されたのは、未発表の新曲。UKガラージ系のビートに、オルタナティブロックの黄昏れたギターと切なげな兄弟ハーモニーが重なり合う。そのまま「Mellow night bass」でドライブ感を保ちつつメロウパートに突入すると、「Emit Light」ではグランジの焦燥をかき鳴らし、みたけはな&ウエダリュウタ(くゆる)を迎えたバンド編成の「ethergaze」では、儚げな女性ボーカルとともにシューゲイザーの轟音に包まれる。
みたけはな(写真中央)
soutaいわく「やりたい曲が多すぎて」詰め込んだメドレーパートでは、2021年リリースの初期曲「月夜とシタール」でエキゾチックな旋律を奏でると、自身の最速ナンバー「plunge」で観客の声が一斉に重なり合い、フロアの熱量が一気に跳ね上がる。そこから「Snow wave」でスローダウンしたあと、毛色の異なるパワーバラード「a byway tune」を続けざまにパフォーマンス。エモさの頂点に達したところで、「Drive!!!」ではNavvvyのボーカルこと$HUNが殴り込み。
$HUN(写真中央)
怒涛のライブが生んだ初モッシュ
Tyrkouaz流ミクスチャーが咲き乱れた前半戦も濃密だったが、本当の見せ場はこのあと。この日2つめの新曲として初披露されたのが、本公演のあと12月17日にリリースされた最新シングル「PAUSE!!」。観客のハンドクラップとチャントを巻き込みつつ、パワフルなドラムとファズサウンドが炸裂し、曲名どおり”停止”と”再生”のストップ&ゴーを繰り返す。blurの「Song 2」を彷彿とさせる、アンセミックなスケール感に満ちた一曲だ。
Tyrkouazのロック表現における新規軸を提示した「PAUSE!!」に続いて、ダンスミュージック方面の伸びしろを感じさせたのが、今年8月リリースの「MEIQ」。重厚かつ中毒性のあるハードベースが特徴的なこの曲の後半で、soutaが初導入したmicroKORGでアシッドな旋律を注入したあと、rentとの二重奏で電子パッドを乱打するエクステンデッド・バージョンを初実践。ただでさえ踊れる楽曲にフィジカルな躍動感が加わったら盛り上がらないわけがなく、二人にとって初のモッシュが自然発生的に巻き起こった。
初ワンマンにて、
初KORGシンセ、初電子パッド導入で、
”MEIQ extended ver”を披露しました
元ドラマーとしても?二重奏ができて楽しかった
これが真のMEIQです。 https://t.co/ZNVQZaKWio pic.twitter.com/87KztlsL4P— ???????????????????? (Tyrkouaz) (@souta_dnb) December 14, 2025
ここまで来たら誰にも止められない。この日3つめに飛び出した新曲は、ラウドロックのエッセンスもまとったヘドバン必至の高速チューンで、新たなアンセムの誕生を予感させた。
2025.12.12(Fri)
”Tyrkouaz 1st One-Man”
at TOKIO TOKYO
”REBOOOOT ” pic.twitter.com/Et6gDN3Urc— Tyrkouaz(ティルクアーズ) (@Tyrkouaz_dnb) December 13, 2025
アンコールではまず、Arctic Monkeysの「Brianstorm」をカバー。これまでもDaft Punk「One More Time」やOasis「Wonderwall」といった洋楽曲をドラムンベースに再構築してきた彼らだが、もともと疾走感とヘヴィさを兼ね備えたこの曲は、Tyrkouazとも抜群に相性がいい。そこから「みなさんの人生というゲームの最強アイテムになりたいです。仮面ライダーの変身ベルトみたいに、聴いたら無敵になれるようなライブをやっていきたい」とsoutaが力強く語ったあと、最後にプレイされたのは「Future Grooves」。過去の自分を受け入れ、未来への一歩を踏み出すこの曲で、初ワンマンという節目を盛大に締めくくった。
このレポートを通じて何度も”初”と記してきたように、今回のワンマンはとにかく初めて尽くし。80分ものステージも彼らにとっては初体験だったわけだが、その一部始終を見守りながら、ゲームの主人公がレベルアップしていくように、二人が手応えを掴みながら成長している様子がひしひしと伝わってきた。これまでより強力なアイテムを手にし、確固たる自信を身につけることで、今まさに飛躍のときを迎えようとしている──そんな瞬間に立ち会えたことが、何よりスリリングだったとも言えるだろう。
soutaによる終盤のMC、「僕らはこういう音楽性だから、最初にバンドを組んだときはどういう活動をしていけばいいかわからなかったし、道なき道を歩き続けてきた」という言葉には実感が込もっていた。
その個性と柔軟さは、これから国内外の音楽シーンを横断するうえでも、兄弟が愛するゲームやアニメといったカルチャーと結びつくうえでも、きっと大きな支えとなるはず。Tyrkouazは無限の可能性を秘めており、彼らの音楽はより広いフィールドで求められていくに違いない。そうならなければ世の中のほうが間違っている──そう断言したくなるほど最高のライブだったし、もっともっと多くの人に観てほしい。「今日は集大成のつもりでいたけど、むしろスタートだなって」とsoutaは語る。来年4月の東阪ツーマンツアー「MULTI PLAY 3」はもちろん、その先の未来で二人が鳴らすグルーヴにも期待したい。
Photo by Edo Sota
【写真ギャラリー】「Tyrkouaz 1st One-Man」ライブ写真(全18点)
「Tyrkouaz 1st One-Man」セトリプレイリスト
Tyrkouaz
Digital Single 「PAUSE!!」
配信中
再生・購入:https://friendship.lnk.to/PAUSE_Tyrkouaz
東阪ツーマンツアー「MULTI PLAY 3」
2026年4月24日(金)大阪 BRONZE
2026年4月28日(火・祝前日)東京・下北沢SHELTER
※ゲストは後日発表
前売 ¥3,500 (税込/All Standing/1Drink別)
公演詳細 https://www.creativeman.co.jp/event/tyrkouaz_2026/


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