12月12、13日、Suchmosが「Asia Tour Sunburst 2025」のファイナルとなる東京公演をZepp Hanedaで開催した。

【画像】「Asia Tour Sunburst 2025」のファイナル公演(全13枚)

6月に地元・横浜アリーナで行われたライブで本格的に活動を再開したSuchmos。
7月にはEP『Sunburst』を発表し、フジロックをはじめとしたフェスやイベントにも出演してきたが、彼らにはやらなければならないことがあった。それは2020年に予定されていたものの、初日の台北公演のみで中止になってしまったアジアツアーのリベンジ。国内の9会場に加え、ソウル、上海、台北、バンコクを回った今回のツアーは、まさにバンドにとって念願叶ったツアーだったと言っていいだろう。本稿では12日の公演をレポートする。

ライブは横浜アリーナと同様に「Pacific」でスタート。6月のときはSuchmosというバンドの新たな船出を印象付けたが、今回は日本から再びアジアへ、世界への船出を感じさせる幕開けだった。2曲目も横浜アリーナと同様で、『Sunburst』に収録されている「Eye to Eye」。ベースの山本連のアイデアを基に、バンドでジャムって作られた曲であり、この曲でまずその日のバンドの調子を確認するというのも現在のSuchmosならではだ。続いては横浜アリーナでは1曲もセットリストに入っていなかった『THE ANYMAL』から「ROMA」が演奏されて、さらにはYONCEの歌を軸とした新曲の「Ghost」を披露と、この半年での変化を感じさせた。

Suchmos、5年越しのアジアツアーリベンジ、バンドミュージック再生への祝福

YONCE(Photo by 岡田貴之)

Suchmos、5年越しのアジアツアーリベンジ、バンドミュージック再生への祝福

TAIKING(Photo by 岡田貴之)

Suchmos、5年越しのアジアツアーリベンジ、バンドミュージック再生への祝福

山本連(Photo by 岡田貴之)

短いMCを挟み、オーディエンスのテンションが一気に上がったのが4曲目の「DUMBO」。この曲は音源よりもBPMがかなり上がって(原曲は130くらいだが、150はあったと思う)、TAIKINGと山本がステージを自由に動き回り、OKのドラムもかなりアグレッシブ。曲の後半はまるで爆音のガレージロックのような印象を受けた。
バックビートが心地いい「FRUITS」の後のMCでは、「今日初めてライブハウスに来た人?」という質問に手を挙げた人に対し、「おめでとうございます。今日という日を選んでくれてありがとうございます」と感謝を伝える。

Suchmos、5年越しのアジアツアーリベンジ、バンドミュージック再生への祝福

OK(Photo by 岡田貴之)

Suchmos、5年越しのアジアツアーリベンジ、バンドミュージック再生への祝福

TAIHEI(Photo by 岡田貴之)

Suchmos、5年越しのアジアツアーリベンジ、バンドミュージック再生への祝福

Kaiki Ohara(Photo by 岡田貴之)

さらにYONCEが言葉を続け、「ライブハウスって楽しいよとか、バンドってかっこよくない?ってことを、ちょっとでも覚えて帰ってもらえたら嬉しいし、明日は休日ですけど、楽器屋さんは年末商戦の真っ只中ということで、楽器を一つやってみてはいかがでしょうか。すごく人生豊かになると思うんで、楽器とバンドミュージックとライブハウスをよろしくお願いします」というMCにはフロアから大きな拍手が送られた。「我々はバンドマンの代表でも、ライブハウスの代表でもないけど」と言っていたものの、アリーナ規模の大きな会場でもイヤモニを使わず、この日もメンバーの前には転がし(モニタースピーカー)が置かれ、生々しいバンド演奏の魅力をダイレクトに伝えてくれるSuchmosだからこそ、説得力のある言葉だと感じた。

「すごくいいふうなことを言いましたけど、今日はいっぱい稼がせてもらいます」と話し、場内に笑いと歓声が起きる中、OKのドラムから、いつもの「乗り方は自由!」ではなく「自由でどうぞ!」で始まったのは「MINT」。今年はSuchmosの再始動に先んじて再結成を発表していたオアシスの来日公演も大きな話題を呼んだが(いっぱい稼いだことだろう)、「MINT」はオアシスの「Live At City Of Manchester Stadium」のライブ映像に影響され、スケールの大きい楽曲を目指したというエピソードがある。オアシスの再結成はまさにバンドミュージックの復権を世界規模で示すものであり、彼らもまたCigarettes & Alcoholにまみれたライブハウスから飛び立っていった。YONCEが「お前生きているかい?」とがなる新曲の「To You」は、まるで「Live Forever」に対するアンサーであり、ライブミュージックを礼賛しているかのようだ。

Suchmos、5年越しのアジアツアーリベンジ、バンドミュージック再生への祝福

Suchmos(Photo by 岡田貴之)

『THE ANYMAL』からもう一曲、「Hit Me, Thunder」が演奏され、そこからYONCEが友達の結婚式で歌うために作った弾き語りが原型の「Marry」へという流れが、表現力の深みを増した現在のSuchmosを印象付けつつ、「ここから過激な演出が続きます」という言葉からのライブ後半戦は怒涛の盛り上がり。「A.G.I.T.」も「DUMBO」同様にテンポが上がって、BPM130ほどのアッパーなアレンジに生まれ変わり、「STAY TUNE」への大歓声も言わずもがな。「808」もよりトランシーなライブアレンジが高揚感を生み、「VOLT-AGE」もかなりリズムが前のめりで、そのスケール感も含めて非常にロックバンド的だ。
僕は今年いくつかのアーティストの取材で「イヤモニを使わなくなった」「クリックを聴かなくなった」という話を聞いていて、生のバンド演奏に回帰する流れが間違いなくあったように思う。山本のベースをフィーチャーしつつ、Kaiki OharaのスクラッチとTAIHEIのソロで締めくくられた「YMM」に至るまで、この日のSuchmosはそんな2025年のムードを象徴しているように感じた。

アンコールでは本編の「各地のMCでご当地の名物について話してきたけど、東京はなんだろう?」という話を受けて、「東京の名物はライブハウスなんじゃないか。クラブもそうだし、音楽とくっついてる場所が東京はいっぱいあるんじゃないかという結論に一旦なりました」というYONCEの言葉に大きな拍手が送られた。2020年、パンデミックの影響でSuchmosのアジアツアーが中止になった頃は、閉店や営業休止に追い込まれたライブハウスも少なくなかった。しかし、この5年で営業を再開したり、新しくオープンしたライブハウスはたくさんある。そして、今では東京のみならず、日本のみならず、アジアのライブハウスの豊かなネットワークが構築されつつある。「Life Easy」とともに演奏された「Whole of Flower」は、〈時が動き出して 血が巡っていく〉と歌う一曲。再び動き出したSuchmosの未来を照らし出す曲であり、ライブハウスの、バンドミュージックの再生を祝福する曲だと言ってもいいかもしれない。

<リリース情報>

Suchmos
EP『Sunburst』
=収録曲=
1. Eye to Eye
2. Marry
3. Whole of Flower
4. BOY

Streaming https://fcls.lnk.to/wof
CD購入 https://fcls.lnk.to/Sunburst_EP
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