「Gnarly」の衝撃
BTS、TOMORROW X TOGETHER、LE SSERAFIMらグローバルに愛されるK-POPアーティストを送り出してきたHYBEと、ユニバーサルミュージックグループ傘下であるアメリカの名門レーベル・Geffen Recordsがタッグを組んで世に送り出したKATSEYE。サバイバル番組『The Debut: Dream Academy』を経て、約12万人の応募者の中からメンバーが選抜された。キューバ系/ベネズエラ系アメリカ人でアメリカ出身のDANIELA、インド人でアメリカ出身のLARA、ガーナ系イタリア人でスイス出身のMANON、中国系アメリカ人でアメリカ出身のMEGAN、フィリピン人のSOPHIA、韓国人のYOONCHAEという全く異なる地域から集まった6人によって構成されており、”グローバルガールグループ”という表現がこれほどしっくりくるグループは他にないだろう。HYBEによる厳格なK-POP育成メソッドを経て誕生したKATSEYEは、あらゆる文化や境界を突き破ることを目標に活動している。
2024年6月にデビューすると、すぐに音楽シーンへ鮮烈な印象を残したKATSEYE。デビュー曲「Debut」はRolling Stoneによる「Songs You Need to Know(知っておくべき楽曲)」プレイリストに選出され、続いて7月にリリースしたポップソング「Touch」がバイラルヒット。小指と親指を合わせるキャッチーな振付がSNSで大きなバズを起こし、2024年の米TikTok年間人気アーティストランキングにおいて、KATSEYEは8位にランクインした。
2025年に入ると、KATSEYEはさらなる快進撃を繰り広げていく。4月30日にリリースされた「Gnarly」は地鳴りのような808の重低音とザラザラとしたレイヴ・シンセが響くクラブバンガーで、キュートな雰囲気の「Touch」とは真逆の世界観。デジタル時代における成長の過程と脚光を浴びることについて掘り下げ、「自分たちは最高」という姿勢を大胆に打ち出した。「Gnarly」はポジティブにもネガティブにも使われる、〈ヤバい〉というニュアンスのスラングだ。
リリース直後には性的要素のある音声のサンプリングやセクシーな振付が一部で物議を醸したが、DANIELAが「『Gnarly』はステージで完成する曲。
大躍進をもたらした『BEAUTIFUL CHAOS』
KATSEYEの物語がここから真に始まることを高らかに宣言したようでもあった「Gnarly」に続き、6月20日には「Gabriela」、そして「Gnarly」「Gabriela」も収録された2nd EP『BEAUTIFUL CHAOS』を6月27日にリリース。「Gabriela」はアコースティックギターの音色が印象に残るラテンビートの楽曲で、ビョークやFKAツイッグスの作品で知られるトーマス・ホワンが監督したMVでは、スペイン語圏のテレビドラマジャンル「テレノヴェラ」がレトロな雰囲気でオマージュされた。6人は俳優のジェシカ・アルバと共演し、表情豊かな演技を披露。キューバ系/ベネズエラ系アメリカ人のDANIELAが、スペイン語で歌うヴァースも話題を集めた。
「Gnarly」はビルボード「Hot100」に92位で初チャートイン。そして「Gabriela」は同チャートに94位で初登場して以降、最高31位を記録し、本稿を執筆している12月上旬時点で19週連続チャートインするという驚異的な成績を残している。イギリスのオフィシャルチャートを含むグローバルチャートでも次々に好成績を残し、KATSEYEの世界的な人気の高まりを証明した。なお2025年12月現在、Spotifyの月間リスナー数が3300万人超と、KATSEYEは”世界で最も聴かれているガールグループ”の座に君臨している。
5曲が収録された『BEAUTIFUL CHAOS』は、急速に変化する現代社会の中で人々が繋がりを育むこと、未知を受け入れることの重要性をテーマとした作品だ。
EPの最後を飾った「M.I.A.」はメンバーが一番のお気に入りだと話す楽曲であり、人気ゲーム「VALORANT」とコラボしたバージョン「M.I.A (VALORANT Game Changers Version)」が11月にリリースされた。ライブでもシンガロングで盛り上がりが生まれそうなアンセム的ナンバーだが、「VALORANT」の女性チームの世界王者を決める国際大会『VALORANT Game Changers Championship 2025』の公式テーマ曲として起用され、限界に挑戦する選手を讃える応援歌として響いた。
世界中のフェスを席巻、マライア・キャリーとのコラボも
夏は大型フェスで存在感を放ち、8月3日にはアメリカ・シカゴでロラパルーザに初出演。午後の早い時間帯にもかかわらずKATSEYEは8万5000人もの観客を集め、ロラパルーザの昼公演として史上最多となる動員を記録した。「Gabriela」のパフォーマンスではメンバーがフラメンコ衣装のようなロングスカートを着用し、大人数のダンサーとともにラテン風のダンスブレイクを披露するなど、特別な演出を多数交えて観客を熱狂させた。
ロラパルーザにて、「Gabriela」のパフォーマンス
その直後、KATSEYEはサマーソニックに出演し、日本で初のステージを披露。メンバーの体調不良により大阪公演はキャンセル、東京公演は5人体制での出演という逆境を迎えてしまうも、エネルギッシュなステージを見せて観客から終始大歓声が起こった。その後に恵比寿のザ・ガーデンホールで開催された初のショーケースはソールドアウトとなり、6人が日本のEYEKONS(ファンの呼称)と思いを通わせた。『ELLE Japan』の動画コンテンツでは、メンバーが抹茶を点てたりポラロイド写真をデコったりして、日本への愛情を表現。抹茶フリークのSOPHIAは、豊富な知識で視聴者を唸らせていた。
9月には「2025 MTV Video Music Awards」にて、「Touch」でMTV PUSHパフォーマンス賞を受賞。
2025 MTV Video Music Awardsプレショーにて「Gnarly」をパフォーマンス
10月末にはハロウィンコンテンツとして、マライア・キャリーとコラボした映像をYouTubeで公開。メンバーがそれぞれにマライアの代表的なミュージックビデオの衣装を再現したほか、マライアのアルバム『RAINBOW』(1999年)のジャケットを再現したレインボー衣装に身を包み、「Gabriela」を踊る様子を披露した。実はこれは、「2025 MTV Video Music Awards」のレッドカーペットで「好きなマライア・キャリーのミュージック・ビデオは?」と質問されたKATSEYEが、回答に詰まってしまったことを自虐的にパロディしたもの。動画の終盤にはマライア本人が登場して「とても愛らしいわ。うちの娘はKATSEYEが大好きなの」と語るというサプライズも盛り込まれ、大きな話題を集めた。
なおKATSEYEが10月にロンドンで開催したイベントでは、スパイス・ガールズのメルCが司会を担当し、話題を集めていた。このハロウィン動画もまた、 ”ポップの女王”であるマライアから思いを継承し、KATSEYEが新時代のポップガールグループとしての矜持を改めて示す機会になったといえるだろう。
マライア・キャリーとのコラボが実現したハロウィン動画
多様性を輝かせる6人、2026年に向けて
KATSEYEというグループ名は、見る角度によって様々な色や輝きを見せる宝石「キャッツアイ(猫目石)」に由来しており、「メンバー1人ひとりの多様な魅力と才能が合わさってひとつの輝きを放つ」ことを意味する。様々な文化的ルーツを持つガールグループという、先人のいない道を進む彼女たちのパワーの源となっているのは、お互いへの愛情とグループの連帯だ。
そしてメンバーのLARAは3月に自身のジェンダーアイデンティティを告白し、MEGANは6月に、自身がバイセクシャルであることをカミングアウトした。LGBTQ+コミュニティなどマイノリティのコミュニティからも高い支持を集めているKATSEYEだが、ありのままの自己を肯定しながら歩んでいく彼女たちの存在は、これからも間違いなく多くの人の光となることだろう。
11・12月に13都市で行われた初の単独北米ツアーは、チケット約7万枚が72時間でソールドアウト。各地を沸かせたばかりのKATSEYEだが、2026年もすでにビッグなトピックが控えている。まずは第68回グラミー賞へのノミネート。年間最優秀新人賞、そして「Gabriela」で最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)の2部門に名を連ね、音楽業界最高峰の賞であるグラミーにデビューからわずか約1年5カ月でノミネートするという快挙を成し遂げた。2月1日の授賞式で彼女たちがどのような姿を見せるのか、期待が高まっている。
そして4月には、アメリカ最大規模のフェス、コーチェラへの出演が決定している。KATSEYEがロラパルーザ以上の渾身のステージを見せて、さらなる衝撃を残すことに期待したい。
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KATSEYE
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