ウェスリー・シュルツ(Vo, Gt)とジェレマイア・フレイテス(Dr, Piano)がバンドを結成したのは2005年。
2012年の大ヒット曲「Ho Hey」は、同年に躍進を遂げたマムフォード&サンズと並び、フォーク・リバイバルの一大ムーブメントを決定づけた。テイラー・スウィフトは翌年のツアーでこの曲をカバー。同時期のEDMとも共鳴する昂揚感に満ちたサウンドは、のちに「Folk-Stomp」や「Stomp & Holler」と呼ばれるマイクロジャンルとして定着していった。その影響は世代を越えて広がり、2024年最大のヒット曲「Tipsy (Bar Song)」で知られるシャブージーをはじめ、ノア・カーンやザック・ブライアンといった現代アメリカのスーパースター、さらにはUKの新星マイルズ・スミスにまで及んでいる。
一方で、ウェスリー・シュルツ本人もこのあとのインタビューで語っているように、ルミニアーズは「Folk-Stomp」的サウンドに固執することなく、表現のレンジを着実に広げてきた。結成20周年の節目を迎えた昨年には、最新アルバム『Automatic』をリリース。これまで以上に親密で内省的な作風へと踏み込み、ビタースウィートな深みをたたえた佇まいは、R.E.M.のキャリアで言うところの『Automatic for the People』を想起させる。
2014年の初来日公演や2度のフジロック出演などで、日本でも圧巻のステージを披露してきたルミニアーズ。ライブバンドとしての実力は折り紙付きで、本国アメリカでは数万人規模のスタジアムを埋め尽くすほどの人気を誇る。海外での規模感を思えば、一夜限りとなる今回のライブハウス公演は奇跡と言っても過言ではない。
左からジェレマイア・フレイテス、ウェスリー・シュルツ
結成20年で向き合った「喜びと悲しみ」
ーザ・ルミニアーズは2025年で結成20周年。ニューアルバムを発表し、精力的にツアーを回るなど特別な一年になったかと思います。この節目の年をどのように総括しますか?
ウェスリー:2025年は、本当に感情のジェットコースターみたいな一年だった。キャリアの中でも最大級のライブをいくつもやったし、アメリカではスタジアムを9公演、アリーナもたくさん回った。その前にはヨーロッパ、特にUKで初めてのアリーナ・ツアーもやって、それも自分たちにとっては新しい経験だった。20年間、ジェレマイアと一緒に曲を書き続けてきて、ああいう規模のツアーができたというのは、本当にこれ以上ないご褒美だったと思う。
ただ、その一方で……ヨーロッパ・ツアーの途中、そしてUSツアーの最中に、弟が亡くなったことを知った。まだ39歳だった。心臓発作だったんだけど、普段はすごく健康で、遺伝的な不運としか言いようがなかった。だから、あのツアーはすごく……なんて言えばいいんだろう、相反するものが同時に存在していたというか。
象徴的だったのは、土曜日にデンバーで、僕たち史上最大規模のライブをフットボールスタジアムでやったあと、翌日の日曜日に弟の葬儀に出たことだと思う。感情がムチ打ち状態で、どう感じればいいのか分からなくなる瞬間も多かった。でも不思議なことに、こういうのって人生そのものなんだと思う。映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』みたいに、いろんなことが一気に押し寄せてくる感じ。妻がよく言うんだけど、「人生って、消防ホースから水を飲もうとしているみたいなもの」なんだって。最高の瞬間をちゃんと味わおうとしながら、同時に、ちゃんと悲しむことも必要なんだと思う。そうやってきちんと受け止めていかないと、ずっと一つの瞬間に縛られたままになってしまうから。前に進むためには、ちゃんと時間をかけて消化していく必要があるんだと思う。
昨年8月に行われた、コロラド州デンバー公演の模様。会場は8万人以上を収容するスタジアム・Empower Field at Mile High
ーニューアルバム『Automatic』には、現代社会への違和感と同時に、あなたとジェレマイアの関係性も反映されているそうですね。今作のテーマを聞かせてください。
ウェスリー:正直、ひとことで言い切るのは結構難しいね。このアルバムは、その時々の自分の感情がそのまま投影される、ロールシャッハテストみたいな存在になった気がしているから。例えば、僕たちが作ったミュージックビデオを見てもらうと分かると思うけど、そこにはAIと、すべてをワンテイクで撮るという(アナログな)手法が混ざり合っている。「Same Old Song」では、僕たちが一つの部屋にいて、スクリーンにはAIの映像が投影されていて、カメラは一度も止まらず、ずっと動き続けている。全部が連続した一つの流れなんだ。あれは生々しくてリアルなものと、AIのように議論を呼ぶ存在とを、あえて衝突させて見せようとした試みだったと思う。AIが悪いわけじゃなくて、どう使うか次第なんだけどね。ただ、今のところAIそのものには、まだ強い「視点」はないと思っている。基本的には、これまでにあったものをものすごく精巧に模倣している段階だから。そういう意味で、アーティストやミュージシャンにはアドバンテージがある。自分なりの視点を持って何かを生み出している限り、簡単にはコピーできないから。そこは大きいと思っている。
それともう一つは、ジェレマイアと僕が一緒に音楽を作ってきて20年という節目を迎えたこと。20年も一緒にやっていれば、どんな関係でも山も谷もあるし、ケンカもあれば、ハイタッチしたくなるような最高の瞬間もある。それでも今もなお、彼と音楽を作りたいと思えていることに感謝している。お互い心から楽しんでいるんだ。正直、この年月を経て、音楽以外に何を共有しているのか分からないくらいだけど(笑)。でも、その「音楽」という一点がものすごく強くて、まるで磁力みたいに僕たちを引き寄せている。彼の音楽に対する考え方は、僕とはまったく違うし、だからこそいい関係なんだと思う。相手と同じことをやろうとするんじゃなくて、お互いを補い合う。自分と比べて嫉妬したり、「あいつのほうがうまくやった」とか気にし始めると、関係はすぐに毒を帯びてしまうけど、僕たちは幸運なことに、興味の方向性が違っているんだ。
ー音楽的なコンセプトについてはいかがでしょう?
ウェスリー:正直に言うと、最初から明確に「こういうことをやろう」と分かっていたほど、僕たちは賢くなかったと思う。今回はかなり直感に従って進めていった感覚が強くて、もしテーマがあるとしたら、それ自体が「直感」だったのかもしれない。このアルバムでは、いわゆるデモ音源をほとんど作っていないんだ。
ドラムも同じで、ジェレマイアがやっていることの多くは、ただ「いじっている」だけなんだけど、その”いじり”こそが最良の部分だったりする。なんというか、友だちの写真を撮ったときに、本人は「この角度は嫌だ」って言うけど、こっちからすると「すごく素敵に写ってるよ」と思う、あの感じに近い。だから今回は、作り込んだというより、ふとした瞬間をそのまま切り取ったような録音が多いんだと思う。そういう意味では、どこかでバンドを始めた頃に立ち返っている感覚もある。ここ最近の作品よりも、かなり削ぎ落とされていて、生々しい。でも同時に、今のほうが「自分たちらしさ」をちゃんと分かっているからこそ、できたことだと思っている。100テイクも重ねるんじゃなくて、1回か2回やって、次に進む。その結果、何より正直な音楽になったんだと思う。
ー〈僕らは同じ古い歌を歌う〉と繰り返されるサビも印象的な「Same Old Song」は、まさしく自己言及的というか、ジェレマイアとの20年を振り返る曲にも聞こえました。
ウェスリー:この曲は、僕たちの人生のいろんな場面を、断片的に散りばめたものだと思う。例えば2011年にLAで強盗に遭って、楽器を盗まれたことがあった。あのときは、母のギターも盗まれてしまってね。たくさんの曲を書いてきた、僕の大切なギターだった。そういう過去の出来事もあれば、もっと現在のシーンも含まれている。信号待ちをしていたときに、息子が「誰かが天国に行ったって言ってたけど、天国ってなに?」って聞いてきたことがあった。大人になっても、答えられない質問ってあるんだよね(笑)。全体としては、次から次へと記憶の中に突っ込んでいくような感覚というか、いくつもの思い出のうえをものすごいスピードで飛び回っている感じがする。
そして最後に、それら全部をつなぎ止めているのが「Same Old Song」という存在だと気づくんだ。それはよくある、ちょっと悲しい曲なんだけど、なぜか僕にとっては慰めになる。孤独な歌なのに、不思議と「自分は一人じゃない」と感じさせてくれる。ジェレマイアと僕は長い間一緒にやってきたけど、何度も同じテーマに立ち返っているんだ。それはまるで、寒い夜に焚き火に手をかざすような感覚で、「ああ、これだ」って思えるもの。そういう存在があるから、前に進み続けられる。この曲は、まさにそんな感覚を形にしたものなんだと思う。
代表曲「Ho Hey」への想い、日本が特別な理由
ー初期のルミニアーズの音楽は、「Folk-Stomp」という言葉と結びつけて語られてきました。現在もツアーでは「Ho Hey」が高い人気を保っていますし、たとえばシャブージーのような新世代も影響を公言しています。一方で、現在のあなたたちは、そうした「Folk-Stomp」的なスタイルと距離を取っているようにも感じられますが、今も「Ho Hey」を演奏すること、そして「Folk-Stomp」について、どんな思いを抱いていますか?
ウェスリー:最初のアルバムにはいろんな要素が詰まっていたと思うけど、特に「Ho Hey」は時代の空気と強く結びついていて、結果的に、ある時代そのものを象徴する曲になったんだと思う。僕たちにとっても、あれは大きな瞬間だった。正直に言うと、あれだけで自分たちが定義されてしまわないといいな、という気持ちはずっとあった。今はもう「そうじゃない」と胸を張って言えるけど、そこに辿り着くまでには時間がかかったよ(笑)。あの曲が大きな影を落としていて、そこから一歩外に出る必要があった、という感じかな。
実際、その後はいろんな曲を作ってきた。同じアルバムにも「Stubborn Love」みたいな曲があったし、「Ophelia」とか、もっと最近だと「A.M. Radio」や「Gloria」もそう。少しずつ違う方向に進んでいく中で、オーディエンスがちゃんと一緒についてきてくれた。そこは本当にラッキーだと思っている。「あの一曲だけのバンド」みたいなレッテルを貼られて、そこから抜け出せないケースもたくさん見てきたから。僕たちは、もっといろんなものを作りたかったし、それを楽しんできたんだ。
そして、今はまた別の楽しさを見つけているところだと思う。そもそも僕自身、昔から好きなアルバムの音をヒントにしながら、ジェレマイアと一緒に自分たちなりのやり方で音楽を作ってきた。だから、もし他のアーティストが、僕たちの音楽を”出発点”として何かを作っているなら、それはすごく光栄なことだと思っている。僕も同じことをしてきたからね。好きな音楽があって、それをきっかけに自分の表現を見つけてきた。例えば、ビヨンセだって曲の中で「Ho」とか「Hey」みたいな掛け声を使っているし、僕たちだけの話じゃない。ラモーンズだって「Hey! Ho! (Lets Go)」ってずっとやってきたし、音楽の中には昔からあちこちにある要素なんだ。僕が初めて手にしたテープの一つは、ノーティ・バイ・ネイチャーだった。「Hip Hop Hooray」って曲があるよね。ああいう掛け声は、ずっと音楽の中に存在してきた。もし僕たちが、その系譜のほんの一部にでもなれているとしたら、すごくクールなことだと思う。誰かがそれを聴いて、「いいな」と思って、そこから何か新しいものを作ろうとしてくれたということだから。それ以上うれしいことはないよ。
現在のツアーでもハイライトとなっている初期の名曲「Ho Hey」「Stubborn Love」「Ophelia」
ー最後に、今回のライブはどういったものになりそうか。日本のオーディエンスへのメッセージとともにお聞かせください。
ウェスリー:もちろん。まず、僕たちはよく「一番好きな国はどこ?」と、友だちや家族からも含めて聞かれるんだけど、その答えはいつだって日本だ。だいたい日本と南アフリカがトップ2で、日本に行くたびに全力で楽しもうとしている。僕は食べることが大好きで、人生の中で出会ってきた大切な人たちの中にはシェフもたくさんいるから、日本に来るとFaceTimeで連絡して、包丁屋さんに行って「これはいいぞ」という一本を探してプレゼントしたりする。それ自体がちょっとした神聖な儀式みたいなもので、それくらい日本に行くことを心から楽しみにしているんだ。その気持ちは、きっと僕たちの表情やパフォーマンスを見れば伝わると思う。日本でのライブは、僕たちにとって決して「ただの一本」ではなく、本当に特別なものなんだ。人にも文化にも心から魅了されているし、日本ではほとんどすべてのことが、他のどこよりも丁寧に、しかも高いレベルで行われているように感じる。そこにある完璧主義的な美学に、いつも感心させられるんだ。
それから、実は、デンバーに引っ越して僕が最初に就いた仕事は日本食レストランで、「Sushi Den」という店だったんだ。ボスのトシさんは、ある日いろいろ質問をしてきて、僕なりに一生懸命答えていたら、翌日スタッフの前で「ウェスさん」と呼んでくれて、みんな驚いていたのを覚えている。その後、彼は人生で初めてのコンサートとして僕たちのライブを観に来てくれて、当時60代だったけど、デンバーの会場で「うちのバスボーイが1万7千人の前で演奏している」と誇らしそうに話してくれた。そうした理由もあって、日本は僕たちにとって本当に大切な場所なんだ。さらに言うと、今7歳になる息子がいるんだけど、彼が1歳半のときに京都で初めて歩いたこともあって、ホテルで立ち上がって僕たちのほうに歩いてくる姿を撮った動画は、今でも大切な思い出として残っている。
そんな理由がいくつも重なって、日本ではきっと、いつも以上に特別なルミニアーズを観てもらえると思う。僕たち全員が、日本に行けることそのものにワクワクしていて、その体験を心から楽しんでいるからね。
THE LUMINEERS JAPAN TOUR 2026
2026年1月29日(木)Zepp Haneda (TOKYO)
開場18:00/開演19:00
チケット:
1Fスタンディング(前売):¥12,000
2F指定席(前売):¥15,000
公演詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4528
昨年8月に行われた、コロラド州デンバー公演の模様。会場は8万人以上を収容するスタジアム・Empower Field at Mile High
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