その歌声は、突然シーンに現れた。その名はRol3ert(ロバート)。
2005年生まれ、20歳のシンガーソングライターだ。儚さと強さが同居したようなその声の存在感と、ボーダレスな嗜好と洋楽的なルーツのなかに日本人的な繊細な感性も感じさせるメロディ。その音楽はグローバルな同時代性とエヴァーグリーンな普遍性の両方の魅力を放ちながら、今もリスナーを拡大し続けている。

Rol3ert(ロバート)、Instagramから世界へ広がったキャリア

彼の存在が世に知られるようになったきっかけは、Instagramにアップされたカバー動画。自宅のテレビの前に座ってSean KingstonやAdeleなどジャンルもさまざまな楽曲を、ただ歌うだけの飾り気のない動画が彼のキャリアの入り口となった。その歌声が注目を集め、彼のアカウントには世界中からフォロワーが集まるなか、2024年8月にはTuneCoreでオリジナル曲「sweet tear」を発表、翌2025年1月に配信シングル「meaning」で活動を本格化する。その後コンスタントにリリースされてきた楽曲はどれも国内外から支持を集め、海外のプレイリストに取り上げられるように。そのプレイリストがさらに新たなリスナーを呼ぶというポジティブなサイクルのなかで、Rol3ertの名はじわじわと広まっていった。これを書いている時点で、YouTubeに上がっている「meaning」のミュージックビデオは約53万回の再生数を記録し、その数字は今も上昇を続けている。もちろん、グラスルーツ的にリスナーが集まっていく一方で、音楽業界も彼に熱視線を送っている。その注目度の高さは、本格始動からわずか半年あまりでFUJI ROCK FESTIVALやSWEET LOVE SHOWERといった大型フェスにフックアップされたという事実からもわかる。

Rol3ert(ロバート)の音楽性:洋楽でも邦楽でもない個性

SNSにアップしたカバー曲のチョイスや、その後のオリジナル曲たちの海外からの熱い支持を見ればわかる通り、彼のベースにあるのは海外のオルタナティヴ/インディ・ミュージックだ。
実際Rol3ertは幼い頃から洋楽に親しんできたらしく、どこか1980年代的なノスタルジーも感じさせるサウンドデザインも、コード感やメロディラインも、一見メインストリームのJ-POPとは遠い印象がある。歌詞も英語がメインだし、何も知らずに彼の楽曲に触れて、それが日本人によるものだとすぐに判断できる人は少ないだろう。だがそれはどちらかといえば結果論なのではないかと思う。Rol3ertの音楽が海外のムーヴメントやトレンドをトレースした「洋楽的邦楽」に過ぎないのかといわれれば、それは間違いなくノーだ。もちろんそうした外形的な「今っぽさ」が彼の音楽に注目が集まるためのフックになっていることは否定しないが、本質的にはむしろ、「洋楽」にも「邦楽」にも染まりきらない、アンビヴァレントな存在感こそが彼の音楽表現のアイデンティティであり、唯一無二の個性だ。もちろんそこには彼自身や家族の音楽的嗜好も大きく影響しているだろうし、アメリカで生まれ、2歳で日本に帰ってきたという出自もおそらく関与しているはずだ。

そうしたもろもろの背景を背負って暮らしてくるなかで育まれたパーソナリティが、どこにも属さずに漂いながら自分の居場所を探すような、彼の音楽のあり方を生んでいる。英語のなかに唐突に日本語が挟まってくる歌詞の作法も、常に哀しみや孤独を帯びたような歌の内容も一貫して不定形な自分自身を見定めるプロセスのように見えて、そのいわば「危うさ」のようなものがどうしようもなくリスナーを惹きつけているのである。英語を主にしながら唐突に入ってくる日本語の歌詞も、明るさや軽さを帯びたサウンドと刹那げなヴォーカルの対比も、そんな彼自身という存在を象徴している。

Rol3ert(ロバート)が示す、唯一無二の音楽世界 突如シーンに現れた20歳の才能


Rol3ert(ロバート)が英語で歌う理由:「素直になれる」言葉の選択

彼は以前筆者が行ったインタビューで、英語で歌詞を書く理由を「英語のほうが素直になれる」からだと語っていた。確かに彼の楽曲を聴くと、言葉の意味を理解できるか否かとは別に、そこに込められた震えるような感情がダイレクトに飛び込んでくるような感覚を覚えることがある。「say my name」の切なさや「frozen」の物悲しさは、英語を解するかどうかにかかわらず、聴いた人全員が感じ取れるはずだ。
何が好きとか、音楽家としてどこを目指したいかという以前に、自分に近い言葉を選び取っていった結果が、今のRol3ertの表現となっているということだろう。だから、彼の音楽を語る上で「英語だから」とか「洋楽っぽいから」とか「今っぽいから」という理由をつけることは意味がない。彼自身がそうであるように、もっとニュートラルにその音楽を受け取ってほしいし、実際に今彼の音楽に反応しているリスナーは、あらゆるボーダーを超えたところでその魅力に気づいている。

2025年6月にリリースされた「Nerd」という楽曲は、こんなフレーズから始まる。〈Midnight / Trying to forget the pain in me / It seems like a fight I always lose and fall alone〉(真夜中 / 自分のなかにある痛みを忘れようとしている / いつも敗れて孤独になってしまう戦いみたいだ)。決して人に理解されないと感じる自分自身の「Nerd」な部分にあえて目を向け、そんな自分と向き合うことで、彼はアイデンティティの置き場所を探す。ちなみにRol3ertはこの楽曲に込めた想いを綴ったセルフライナーノーツで、こんなふうに書いている。「19年間生きてきて、たくさんのことを見て、感じて、吸収してきたはずなのに、人生において正解ってなんだろうと思う瞬間があります。まるで世界に一人きりになったような、そんな孤独を感じること、誰にでもあるんじゃないでしょうか」。そんな想いは、この曲の日本語の部分、〈自分の色を消したの / もうそれでいいの / そう、もうこれでよかったと / 洒落た仕方に消えた / それでも終わりが怖かった〉という数行を読むだけでも、はっきりと伝わってくるだろう。そしていうまでもなく、そうした感性は決して彼だけのなかで閉じたものではない。ライナーノーツに「誰にでもあるんじゃないでしょうか」とあるように、そこに込められた想いは、常に誰かとリンクする可能性を探しているのだ。


Rol3ert(ロバート)のサウンドデザイン:内省とポップネスの融合

だからこそ、彼の生み出す音楽は常にポップだ。MONJOEやYuto Uchino(The fin.)など何人ものサウンド・プロデューサーが楽曲制作に参加してきたが、そもそもRol3ertは自身でトラックメイクも行うアーティストであり、現在もデモの時点でほぼ完成形が作られているという。歌詞に自身の思いがストレートに込められているのと同様に、そのサウンドデザインにも彼の意思が色濃く反映されているのである。たとえば現時点での最新曲である「(how could i be)honest?」。ここでRol3ertは〈how could i be honest / when i dont know myself? / overthinkings making me so helpless〉(どうすれば正直でいられる? / 自分さえわからないのに / 考えすぎて 息もできない)と歌っている。この曲はこれまでの彼のレパートリーのなかでも一際アッパーで軽快なダンス・ポップ・チューンだが、そういうサウンドに乗る彼の思索はよりディープに自分の内面へと潜っていくように思える。というよりも逆で、ここまで内省的な心象を歌うには、これくらいオープンでキャッチーなサウンドが必要だったのかもしれない。そうやってドアを開け、多くの人に届くポップミュージックとしての強度を保つことで、彼の想いは外の世界と連帯していくことができるからだ。

Rol3ert(ロバート)が示す「形」:2月のワンマンライブへ

孤独や哀しみと向き合う一方で、Rol3ertはその葛藤や苦悩のなかに閉じこもらない。歌詞はいつも必ずどこかに希望や願いを残して終わっていくし、自分だけの想いが誰かと繋がっていく予感のなかで綴られている。そしてそれを世界に放つツールとしてのメロディとサウンドは、リスナーの心も体も突き動かすようなポップさに満ちている。それがよくわかるのが彼のライブだろう。
ワンマンやイベントも含めまだステージ経験は数えられるほどだが、筆者が観たライブでも、彼は積極的にオーディエンスとコミュニケーションを取り、ウェルカムな姿勢を取り続けていた。2月27日には渋谷・WWWXで「katachi」と題されたワンマンライブが行われる。これは昨年7月に開催された初のワンマンライブ「3mpty」に続くもので、「空っぽ」だったRol3ertが自らの「形」を示すという意思を込めたものだ。始動以来、自分自身のありかを探し続けてきた彼の音楽が、いよいよ次のフェーズに向かおうとしている。そのスタートを、ぜひ皆さん自身の目で目撃してほしい。

Rol3ert(ロバート)が示す、唯一無二の音楽世界 突如シーンに現れた20歳の才能

Digital Single
Rol3ert「(how could i be)honest?」
Exciter Records
配信中
配信リンク:https://rol3ert.lnk.to/howcouldibehonest

Rol3ert Live ”katachi”
日程:2026年2月27日(金)
会場:渋谷 WWW X
OPEN / START:18:30 / 19:30
チケット:¥4,000(税込)+ドリンク代¥600
特設サイト:https://rol3ert.com/popup
お問い合わせ:ライブエグザム
https://www.liveexsam.co.jp/contact

Rol3ert Official Site
https://rol3ert.com
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