轟音と繊細さが交錯するライブパフォーマンスが日本でも支持を集め、2024年の初来日公演はソールドアウト。翌年はrockin'on sonicに出演した新世代USインディー・ロック・バンド、ウェンズデイ(Wednesday)がまもなく再来日。
昨年リリースの2ndアルバム『Bleeds』を携えて、1月20日(火)東京・恵比寿LIQUIDROOM、21日(水)大阪・梅田Shangri-Laに登場する。独自のリリシズムを湛える中心人物カーリー・ハーツマンが、ノースカロライナでの生い立ちや、MJ・レンダーマンとの破局に着想を得た同作の収録曲を紐解くインタビュー。ライブの直前予習にもぜひ役立ててほしい。

カーリー・ハーツマンは、行く先々でインスピレーションを見つけてしまうという。「私はいつも、ずっと曲を書き続けているみたいな状態なんだ。ほんの少しでも何かを感じたら書く。自分が体験していること、思い出したことだったり、観ているものや読んでいるものに刺激を受けたときとか。本当に何百万通りもあるから、とにかく止まらないんだよね」

痛みを伴うほどに美しい最新アルバム『Bleeds』で、ハーツマンはノースカロライナで育った記憶や詩集、さらには犯罪ポッドキャストからも着想を得ている(「Carolina Murder Suicide」は、マードー家の死と裁判にインスパイアされた曲だ)。失恋や恋愛関係の余波もまた、本作のトーンを決定づけている。アルバム制作の途中で、ハーツマンは長年のパートナーであり、バンドでギタリストを務めていたMJ・レンダーマンと別れたのだ(彼は最新作のレコーディングには参加しているが、ウェンズデイのツアーには同行しない)。

不安定な時期を映した作品ではあるものの、ハーツマンはこのレコードを誇りに思っているという。彼女とレンダーマンはいまも友人関係を続けている。
「私たちが別れてから1カ月後にアルバムを録ったんだけど、その直前まで(2023年の前作)『Rat Saw God』のツアーで容赦なく回り続けていてね。バンドのダイナミクスという意味ではすごく良かったけれど、私は疲労の面では本当に限界だった」と彼女は語る。「でも、これまで自分たちが作ってきたどんな作品よりも、間違いなく誇れるものになったと思う」

「Wound Up Here (By Holdin On)」

これは、自分がこれまで書いた曲の中でも特にお気に入りのひとつ。ツアー中、友達のエヴァンが、自分とジェイク(MJ・レンダーマン)に彼の詩集の草稿を渡してくれて、短い推薦文を書いてほしいと言ってきたんだ。私は「この一節、拝借させてもらうね」って本人に伝えたんだけど、彼は覚えてもいなくてさ。でも彼はたしか「I wound up here by holding on(こうしてここにたどり着いたのは、しがみついていたから)」みたいなことを書いていた。それを読んだ瞬間、「サビに使うしかない」って思ったんだ。

(前作の人気曲)「Bull Believer」ほどの感情量は、たぶん今後も出せないと思う。あの曲は題材そのものが強烈だから。でも、この曲はその次に近い。8分間を通して感情を積み上げていく「Bull Believer」が到達する情動の量を、もっと短い時間の中で、いちばん近いところまで持っていけたと思う。最近は、トーンや感情をもっと簡潔に伝える練習をしていて、これは自分の中で初めて「うん、できた」ってはっきり思えた曲でもある。


それから、別の友達が話してくれたエピソードも、この曲の中に織り込んだ。彼はウェストバージニアでラフティングガイドをしていて、ある年のハロウィン、レースの前に先回りして、数日前に溺れて亡くなった若い女性の遺体を引き上げなきゃならなかったらしい。遺体が水面に上がってくるのを、ただ待っていたんだって。そして彼がそれを見つけて、小川から引き上げた。私は、溺れた人物の性別を若い女性から男性に変えて、その人生を――たとえばフットボールのスター選手みたいな――自分なりに少し書き上げてみた。亡くなった女性がどんな人だったかは何も知らないし、彼女の物語を勝手に奪いたくはなかった。でも、遺体を発見した瞬間の友達の体験、その話だけは曲にしたかったんだ。

「Elderberry Wine」

カントリーのスタンダード曲が時代を超えて、別のアーティストによって何度も録音され、録り直されていく――私はその慣習や、ナッシュビル的な制作プロセスにずっと惹かれてきた。だから、自分ももう少しタイムレスと言えるものを書いてみたかったの。電気自動車の話を出してしまった時点で、それが達成できているのかはわからないけれどね。でも、ラブソングって、きちんと書けば本質的に普遍的なものになる。その感覚を、この曲で掴みたかったんだ。


ちゃんとしたラブソングって、誰かを愛することの中にある暗い側面――妥協しなければならないことや、自分でも恥ずかしくなるような願望や希望――そういうものも認めたうえで成立すると思う。それらをひとつにまとめあげることが、この曲の目標だった。

スタジオでは、私はただギターと歌詞を持って入っていく。テーマとしては、スタジオに入る段階でかなり強いイメージがあるんだけど、その言葉を支える音の骨格を組み立ててくれるのはバンドメイトたちなんだ。たとえば、サビでザンディ(・ケルムス:ペダルスティール)がペダルを踏むところ――あそこがいちばんわかりやすい例だと思う。彼のフィードバックの使い方も、すごくエモーショナルで。フィードバックって、いろんなジャンルで感情を生むための音としてもっと活用されるべきだと思うんだ。特にカントリーミュージックでは、まだ十分に使われていない気がする。

「Carolina Murder Suicide」

あれはパンデミックの最中だった。私はマードー家の殺人事件にすっかり取り憑かれていた。というのも、とにかく異様なほど引き込まれる話なんだ。彼らの写真を見ると、私が育った環境でよく見かけた、でも別に親しくはなかった”あの手の家族”がたくさん思い浮かぶ。
実際にお金持ちかどうかは別として、南部の「古い金持ち」を匂わせる記号みたいなものが揃っているんだよね。ボートシューズに襟付きのシャツ、サングラスの跡だけ残った日焼け、青白い肌、赤毛。そういう外見。そして何より、ああいう一家があんな恐ろしいことをやれるかもしれない、という事実が衝撃だった。とりわけ地元の行政を仕切っているような”家長”が、というのがね。

だから私は「くそ、もしこのポッドキャストに人生の17時間も捧げるなら、せめて1曲ぐらいは生み出さないと」って思った。それで、あの物語を自分なりに解釈して、通りの向かいに住んでいた女の子の視点から書いたんだ。彼らを、少し離れたところから観察している、みたいな感じで。

「Wasp」

叫びだけで構成された曲を、1曲入れたいと思っていた。まさかそれがこの曲になると最初は思っていなかったけれど、何について書いているのかが自分でわかった瞬間、「うん、これは叫ぶべきことだ」って思ったんだ。疲労のせいで解離しているみたいな感覚、身体から切り離されたようなフィーリングを書いていたから。何も感じられないくらい感覚が麻痺してしまったときに、「castrated in my mental death(死にゆくメンタルヘルスのなかで去勢されている)」って叫ぶのは、セラピーみたいなものだと思う。


そういう感覚を持ち始めたのは、私とジェイクが別れる少し前だった。つまり、曲を書いていた時期の終盤だね。たぶん、私の身体のほうが先に、頭や心よりも先に、その関係が終わることを受け入れていたんだと思う。私は自分を、突き破れない層で何重にも覆って、守ろうとしていた。

別れてから1カ月後にレコーディングをしたんだけど、私たちは今も仲が良くて、友達で、一緒に遊んだりもする。ただ、最初のころはやっぱり変な感じだった。というのも、とにかく”やらなきゃいけない”という状況だったから。アルバムの録音って、思っている以上にずっと方法論的というか、段取りと集中力が必要なんだ。限られた期間でやるべきことが膨大にあるからね。

私は基本的に、とにかく頭を下げて、曲をきちんと形にすることだけを考えていた。彼や他のバンドメイトと一緒に作るのは本当に好きだし、あの状況の中でできる限りのことはしたと思う。でも、正直に言えば、あの文脈はめちゃくちゃ奇妙だったし、同時に停滞しているようでもあった。
私はただ、それを耐え抜こうとしていたんだと思う……なんというか、とても複雑なプロセスだった。それでも、最終的に出来上がったものには心から誇りを持っている。ジェイクと一緒に、あと1000枚はアルバムを作りたい。彼は何をやっても上手いし、私たちは本当に相性がいいから。

「Garys II」

うちの大家だったゲイリーの話をどうしても書きたかったんだ。彼は数年前に亡くなったんだけど、昔ながらのアパラチアの男で、いまではもう存在しない”古いアッシュビル”の話を山ほど持っていた。だから、あの人の物語をちゃんと残しておきたかった。彼はダウンタウンのバーによく行っていてね。身長は5フィート(約152センチ)くらいしかない。見た目は『カールじいさんの空飛ぶ家』のあの人みたいなのに、口から出てくる言葉は最悪っていう(笑)。とにかく悪態がひどい、小柄で汚い言葉を吐く男だった。

あるとき、彼がアッシュビルのダウンタウンのバーに入ろうとしていたか、出ようとしていたかのタイミングで、野球のバットを持った男に追いかけられたことがあったんだ。その男はゲイリーのことを、奥さんと寝た別の男だと勘違いしていたらしい。

ゲイリーは、私とジェイクが住んでいたところまで車で乗りつけて、ただそこに陣取って、私たちが外に出てくるまで待っているんだ。で、出てきたら話しかけてくる。そうすると、結局40分くらい話し込んじゃう。人生の終盤には、酸素マスクをつけたままタバコを吸ってたりしてさ。私たちは「人生でいちばん怖い光景だよ……」ってなってた。でもまあ、ほんと、あの人はぶっ飛んでたよ。でも、彼のことを知れて本当に良かったと思ってる。

From Rolling Stone US.

Wednesdayが語る、USインディーロックの新たな傑作を生んだ失恋・喪失・実録犯罪

WEDNESDAY JAPAN TOUR 2026
2026年1月20日(火)東京・恵比寿LIQUIDROOM
2026年1月21日(水)大阪・梅田Shangri-La
OPEN 18:00 START 19:00
チケット:前売 ¥7,600
公演詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4596

Wednesdayが語る、USインディーロックの新たな傑作を生んだ失恋・喪失・実録犯罪
Bleeds | Wednesday

ウェンズデイ
『Bleeds』
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日本盤ボーナス・トラック2曲収録
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