10代にしてカーヴド・エアやロキシー・ミュージックのキーボード&ヴァイオリン奏者となり、その後フランク・ザッパ・バンドに参加、78年にはジョン・ウェットンやビル・ブルフォードらと共に自身が中軸となるU.K.を結成して、70年代英国プログレッシヴ・ロック・シーンで活躍したエディ・ジョブソン(Eddie Jobson)が、10年ぶりに来日。2月に東京(24日・26日)・横浜(25日)・大阪(27日)のビルボードライブで来日公演を行う。
80年代中盤以降は商業シーンとは距離を置き、幅広い創作活動を展開してきた才人が、50年余の歩みと強い思いを丁寧に語る最新インタビュー。

※編注:本記事は、エディがこの10年間で初めて応じた世界独占インタビュー。彼は現時点で、同様の取材に応じる予定はないと明言している。

◆You'll find English version. Here's the link.(英語版はこちら)

復活劇と「U.K. Revisited」の全容

―2017年に怪我をされたりした等の御不幸があり、ツアーからの引退を宣言されましたが、今回ライブ復帰されるまでの経緯をお気持ちも含めて詳しく教えていただけますでしょうか?

エディ:2017年は、私にとって肉体的にも精神的にも本当に厳しい一年でした。U.K.のメンバーであるジョン・ウェットンやアラン・ホールズワースを含む、9人もの友人・同僚・家族を一年のうちに失ったからです。62歳になり、プロのミュージシャンとして46年のキャリアを積み重ねた私は、自分がかなり消耗していることに気づきました。とはいえ、2019年にロキシー・ミュージックのロックの殿堂入り式典で呼ばれ、再びステージに立つことになったので、本当に引退したのはその2年後のことでした。

ジョン・ウェットンとの最後のU.K.公演から、すでに10年以上が経ちました。人前に出ない静かな引退生活を6年楽しんできましたが、ついにもう一度だけコンサートステージに戻ることを考えられるところまで来ました。2015年のU.K.最終公演も東京でしたので2026年に”U.K. Revisited”で最初のショーを行なうのがふさわしいように思いました。

U.K.、2013年来日公演のライブ映像

―2019年のロック殿堂入り式典でのロキシー・ミュージックの殿堂入りを祝うライブ演奏で、久々に旧友たちと楽しそうに演奏されていましたよね。

エディ:自分も式典に招いてもらえたことを光栄に思っています。
私はロキシー・ミュージックのサウンドや音楽性に対する自分の貢献が、これまで十分に評価されてこなかったと感じていました。あれだけ華やかで個性の強いメンバーが揃ったバンドの中では、10代の自分が注目を浴びるのは難しかったのです。だからこそ、今回の殿堂入りは、ようやく立場が対等に認められたような気持ちになりました。ロキシー・ミュージックの歴史の中で、自分がようやく対等な一員として扱われるまで、実に46年もの年月がかかったのです。

―今回の来日公演は、U.K. Revisitedというユニット名で、あなたの長い様々なキャリアの中でも特にこだわってきたと思われるバンド、故ジョン・ウェットンらとのU.K.時代の曲を中軸にして現代的な感覚やアレンジによるステージが展開されるものと予想されますが、あなたの中でのU.K.へのこだわりに関してあらためて少しお話いただけますか?

エディ:あまり知られていないことですが、私のキャリアの大半は、実はプログレッシヴ・ロック以外の分野での活動に費やされてきました。エレクトロニック・ミュージックを制作し、映画やテレビの音楽を作曲・プロデュースし、オーケストラや合唱団とも仕事をしています。また、自分のGlobe Musicレーベルでは、東欧、モンゴル、インドなど、さまざまな地域のミュージシャンとも共同作業を行いました。高度な音楽理論の講義を行ったこともあれば、イギリスのフォーク音楽やジャズの領域を通り抜け、多くの異なるジャンルのミュージシャンとも共演してきました。2000年代初頭には、ディズニー作品で合唱指揮者・音楽監督を務めていた時期さえあります。

しかし、私が10代でロキシー・ミュージックと活動していた頃、そして20代前半でU.K.として創作した作品こそが、結果的に音楽界に最も長く影響を残すものとなりました。U.K.の楽曲はすべて、私が単独で、もしくは共作で書いたものであり、私はその作曲とサウンドに非常に強い思い入れがあります。それらは、私の人生の中でも特に重要な時期に生まれた、深く個人的な音楽的表現そのものなのです。


1979年のU.K.、オランダのテレビ番組「TopPop」出演時の映像

―今回、マーク・ポニーラや、フランク・ザッパのバンドでもよく知られているマイク・ケネリー、そしてザ・アリストクラッツのマルコ・ミンネマンが参加していますが、あなたとの関係を含めて、この3人が参加している理由などを教えてください。

エディ:マルコは、私が2008年にU.K.Zプロジェクトでコンサート・ツアーに復帰した時から、さらにその後のU.K.再結成でも共に活動してきました。彼はU.K.の音楽に完璧に合うテクニカルなドラマーで、私の少々厄介な変拍子も、正確さとパワーの両方をもって見事に演奏します。マーク・ボニーラの声は、グレッグ・レイクやジョン・ウェットンの声質によく似ているため、ELPやU.K.の音楽を再現するうえで非常に適した存在です。加えて、彼自身ギタリストとしてもベーシストとしても優れています。マイク・ケネリーとは今回が初めての共演になりますが、もし彼がザッパの高度なテクニカル曲をこなせるのであれば、私の楽曲にも対応できるだろうと考えました。

マルコ・ミンネマンがドラムを担当、U.K.2013年来日公演より

マーク・ポニーラ、キース・エマーソン・バンドで歌唱

マイク・ケネリー、プログレカバーバンド”ProgJect”でのライブ映像

―実は2009年にU.K.Zで来日された際に、インタビューをさせていただきました。その時にあなたは、「60年代後半から70年代後半あたりまでの英国は、アーティストたちにとって斬新で革新的なことの出来る自由や余地が与えられていたが、その後は金銭的なビジネスが先行して、音楽的に自由な環境が奪われていってしまった。それ故に、本当にやりたいことをやるためには、音楽制作だけでなくデザインからマネージメントまで全て一切を自分自身の手でやるという方法を選択せざるを得ないと思った」と語っていましたが、その後から今日に至るまでのあなたのセルフ・メイド的な様々な活動に関して、あなたご自身は振り返ってみて、今、どう思われているのかお聞かせいただけますか?

エディ:私は、80年代初頭に音楽業界で十分な経験を積んでいたからこそ、当時そうした賢明な選択ができたのだと思っています。1985年以降は、ほぼ完全にメインストリームの音楽ビジネスの外側で活動を続け、最終的には2000年に自分のレーベルを立ち上げました。私のような商業性の低いプログレ系のミュージシャンが創作活動を続けるには、自分自身のビジネスのあらゆる側面を理解し、コントロールすることが不可欠でした。私がそうした姿勢を学び始めたのは、1976年に参加した当時、ちょうどマネージメントやレコード会社から独立しようとしていたフランク・ザッパからの影響が大きかったように思います。


AIへの見解、「最後の来日」への想い

―今現在は、どちらを拠点にして活動されているのですか? スタジオ・ワークや過去のアーカイブ企画等は、続行されていると存じますが、最近の活動や今後の予定などがあれば、お聞かせください。1985年にアンビエント色の濃いソロ・アルバム『Theme Of Secrets』を発表されていますが、新たなソロ作品集を制作するご予定などはございますか?

エディ:2019年の引退以来、私と家族はニューヨーク、イングランド、カリフォルニアの間で生活しています。最近は、息子クリス・ジョブソンのデビュー・アルバム『Wish You Well』のプロデュースを手がけたり、新しい音楽講義「Beyond Music Theory」の仕上げに取り掛かっていました。現在は、2月の日本ツアーに向けて、私のキーボード機材一式の再構築とサウンド・ソフトウェアのアップグレードを進めています。東京・横浜・大阪で行われるビルボードライブでの8公演の後には、マイアミ発着のプログレッシヴ・ロック・フェスティバル「Cruise To The Edge 2026」で共同ヘッドライナーを務める予定です。これらのコンサートがすべてうまくいけば、2026年には世界各地でさらなる公演を行うことも検討したいと思っています。どうなるか楽しみです。

私は今後、新たなソロ作品を出す予定はありません。これからの焦点は、U.K.のレガシーをさらに築いていくことにあります。来年は、1996年のレガシー・レコーディング・セッションから、どの音源が復元・使用可能かを確認するために、録音アーカイブを整理していくつもりです。

息子クリス・ジョブソンのデビュー・アルバム『Wish You Well』より「Home」

―今、あなたが音楽的にご関心のあることをお聞かせいただけますか?  音楽以外でも何か特別にご関心やご興味のあることがありましたら、お聞かせください。

エディ:私の音楽的な関心は幅広いですが、基本的にはベートーヴェンからストラヴィンスキーに至るまでのクラシック音楽の体系に根ざしています。
音楽以外では、世界の政治や宇宙論に強い興味があり、特に量子力学、弦理論、素粒子物理学といった分野に大きな関心を持っています。とはいえ、あくまで趣味レベルの話です。私の専門知識は、音響や音楽の知覚に関する深い理解に限られていますが、量子の世界についてもっと理解を深めたいという思いは常にあります。

―近年、AI技術を使った音楽制作が様々な形で行われていて、それに対しての良し悪しが問われている所がありますが、あなたのご意見なり見解なりがありましたら、お聞かせいただけますか?

エディ:私はキャリアを通じて常に最新のテクノロジーを実験的に取り入れてきました。初期のシンセサイザーやエレクトリック・ヴァイオリンから、メロトロン、サンプリング・コンピューターのシンクラヴィア、その他多くの最先端ツールまで。それらは当時、職業演奏家の仕事を脅かす存在とさえ見なされていました。しかし、世界は常に技術の進歩に適応してきました。

AIについても、私はクリエイティブの世界をより効率的にする新しいツールの一つとして捉えています。仕事が奪われるかといえば、残念ながらそのとおりでしょう。しかしそれは、人間的かつ本質的に創造的な分野においては当てはまりません。AIは、生演奏のヴァイオリン協奏曲で聴衆を涙させることも、次の「春の祭典」を本当の意味で作曲することもできないでしょう。私は、AGI(汎用人工知能)が本当に意識や自我を持つようになるのかどうかについても、まだ確信がありません。
というのも、そうした意識こそが、人間にとって意味のある創造性の前提条件だと思うからです。

ただ一つ確信しているのは、AIが現在の音楽界を支配している紋切り型のポップ・ミュージックを近いうちに引き継ぐであろうということです。それと同時に、AIが生み出す大量のジャンクが、逆に人間が作り、人間が演奏する、より深い音楽体験への関心を再び呼び起こすきっかけになることを期待しています。

プログレ界の才人、エディ・ジョブソンが語るU.K.再訪と「最後の来日」の真意【独占インタビュー】


―最後に、日本のファンの人達に向けてのメッセージがあれば、お聞かせください。
 
エディ:今回の日本ツアーは、私にとってフェアウェル・ツアーとなる可能性が非常に高いです。数ある国の中で日本を選んだのは、1979年のU.K.の『Night After Night』ツアー以来、日本の皆さんがずっと変わらぬ熱いサポートを続けてくださったからです。約50年もの間応援してくださったファンの皆さんに心から感謝しています。そして、U.K.の音楽をもう一度日本で演奏できることを、とても楽しみにしています

プログレ界の才人、エディ・ジョブソンが語るU.K.再訪と「最後の来日」の真意【独占インタビュー】

1979年、中野サンプラザで開催されたU.K.来日公演でのエディ・ジョブソン(Photo by Koh Hasebe/Shinko Music/Getty Images)

Eddie Jobson U.K. Revisited
エディ・ジョブソン来日公演

2026年2月24日(火)ビルボードライブ東京 ※SOLD OUT
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
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2026年2月25日(水)ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
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2026年2月26日(木)ビルボードライブ東京 ※追加公演
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
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2026年2月27日(金)ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
>>>詳細・チケット購入はこちら
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