4月にソロ来日公演を控えるパール・ジャム(Pearl Jam)のエディ・ヴェダー(Eddie Vedder)が、最新Netflixドキュメンタリー『マター・オブ・タイム:希望を歌にのせて』について語った独占インタビュー。本作は、単なるロックスターの軌跡を追ったものではない。
エディが長年、共同設立者として心血を注いできた難病「表皮水疱症(EB)」の研究支援団〈EBリサーチ・パートナーシップ〉の活動と、過酷な病と闘う人々の姿を追った記録映画だ。

セレブリティによる慈善活動は、たとえどれほど善意によるものであっても、通常は問題を真に解決する段階にまで至ることはない。しかし、エディと妻ジル・ヴェダーによる〈EBリサーチ・パートナーシップ(以下、EBRP)〉は、希少で壊滅的な遺伝性皮膚疾患を治療するための15年間にわたる疾走の中で、その目標に向けて着実な進展を見せている。2010年にヴェダー夫妻がこの団体を立ち上げた当時、表皮水疱症(以下、EB)の治療法はゼロであり、進行中の臨床試験もわずか2件しかなかった。それが現在では、FDA(米国食品医薬品局)が承認した治療法が3つ存在しており、これは想像を絶する苦しみに直面している親や子供たちにとっての新たな希望を意味している。「これまでの進歩を誇りに思うけど、我々が求めているのは完治だ」と、エディはローリングストーン誌とのZoomインタビューで語る。「これは、科学的に解決可能な問題なんだ」

Netflixで配信が始まったばかりの、ヴェダー夫妻の探求を記録した新作ドキュメンタリー『Matter of Time』によれば、現在EBに関しては40件以上の臨床試験が進行中であり、彼らの団体はこれまでに8,000万ドル(約120億円)以上を集め、180の研究プロジェクトに資金を提供してきた。マット・フィンリンが監督し、ブロークン・ソーシャル・シーンが音楽を担当したこの映画は、2023年にシアトルのベナロヤ・ホールで行われたエディのソロ公演の映像を中心に構成されており、会場にはEBの患者とその親たちも足を運んでいる。

映画はまた、EBと共に生きる家族の日常的な葛藤──何時間にも及ぶ包帯の交換、ブリーチ・バス(殺菌のための塩素浴)、そして絶え間ない不安──を追いかけている。しかし、この物語の中心にあるのは、ただ友達と遊び、親を抱きしめ、未来を夢見たいと願う、この疾患を抱える子供たちの純粋で、胸が張り裂けるようなヒューマニティだ。「この作品が世に出たことは素晴らしいと感じている」と、エディはこの映画について語る。「人々はここから多くのものを受け取ることができると思う。
このコミュニティについてだけではなく、同じ人間として、お互いについて知るためのより多くの手助けになるはずだ」

ヴェダー夫妻がEBについて知ったのは、ジルの幼なじみの親友の甥であるマイキー・フルマーが診断を受けた時だった。「彼は本当に繊細だった」とジルは言う。「私にも同じ年頃の小さな子供がいたけれど、あのときは心底考えさせられた……強く抱きしめすぎたら、その子を傷つけてしまうなんて。外で一緒に遊ぶことも危険。本当に怪我をさせてしまう可能性がある。あまりにも多くのことが、うまくいかなくなる可能性があるの。そこからいろんな家族に会い始めて、子供たちの勇気や、親たちの姿を目の当たりにした。毎日が闘いなの。自分の子供が痛み、例えようのないほどの激しい痛みに耐えているのを見るのは、本当に辛いこと。助けたいと思ったの」

「僕たちはすぐに多くを学ぶことになった」とエディは言う。「活動の初期段階でコミュニティの人々と出会ったことが、僕たちの心を動かしたんだ。彼らの精神は周囲に伝播する。
この子たちはとてつもない勇気を持っているんだ。僕たちの誰も、痛みや困難を歓迎したりはしない。だが、痛みと困難こそが知恵を育む場所だと言うこともできる。あの子たちは、実年齢を遥かに超えた思慮深さを持っている。そして、彼らと接することで、僕たちが当たり前だと思っていること──これほどの困難に毎日直面せずに済んでいる自分たちがどれほど恵まれているかということを、潜在意識レベルで教えられる。そして、彼らのためにポジティブな変化をもたらそうと、自分にできることをしたくなるんだ」

最も深刻な型のEBを持って生まれた患者は、皮膚の層を繋ぎ止めるタンパク質であるVII型コラーゲンを欠いている。そのため、わずかな摩擦でさえ治りにくい傷の原因となる。この疾患は皮膚だけでなく、食道から腸に至るまで内臓も攻撃する。成人まで生き延びた患者も、侵襲性の高い皮膚がんを発症するリスクが非常に高い。「極めて苦痛で、ある意味では悪魔のような疾患だ」とエディは語る。「単に皮膚だけの問題ではないと考えると、特にね。以前は『誰も聞いたことがない、最も残酷な病』と呼ばれていたが、今はもう違う。
それはEBコミュニティがすでに達成した成果の一つだ」

支援活動に取り組むヴェダー夫妻の「深い献身」

ヴェダー夫妻は、最初から今ほど深く関わるつもりだったわけではない。「エドがいるから、人々が注目してくれる」とジルは言う。「少額の寄付が集まり、小さなイベントを開いた。そのうちに、より多くの資金を集めれば、科学者たちが本当にこれを治せると考えているところまで来たの。私たちは、自分たちにできる限りのものを彼らに注ぎ込みたいと思った。私は彼らを信じている。それは現実に起きていることだから」

エディは、この活動を「ウエスト・メンフィス3(90年代に疑わしい証拠で殺人罪に問われ、長年の支援活動を経て2011年に釈放された3人)」のための活動になぞらえている。「ウエスト・メンフィス3に関わり始めた時は、いくらか資金を集めれば1、2年で解決できるだろうと思っていた。だが、素晴らしい仲間たちと共に取り組んだものの、解決までに15年もかかったんだ」と彼は言う。「今回も同じだ。時間はかかっている。だが、僕の好きな言葉がある。
『なぜ英仏海峡を半分まで泳いでおいて、引き返すんだ?(Why swim halfway across the English Channel and turn back?)』」

彼は、高額寄付者になり得る候補者たちへの「口説き文句」にも磨きをかけてきた。「あなたが成し遂げてきたあらゆること、そして今持っている巨額の銀行口座の中で──『希少疾患を完治させた』という経歴を、自分のレジュメに加えたくない人はいないだろう?」

彼らのチャリティは「ベンチャー・フィランソロピー」というモデルで運営されている。彼らが資金提供した研究が商業的な治療法に結びついた場合、EBRPはその利益の一部を受け取り、それをさらなる研究に再投資する仕組みだ。運営費はエンジェル投資家がすべて負担しているため、寄付金の100%が直接研究に充てられる。「私たちは財団をビジネスのように運営しています」とCEOのマイケル・ハント氏は語る。「それが持続可能な慈善活動をもたらしているんです」

直近の成功は2025年4月、EBRPが資金援助したスタンフォード大学の研究に基づく、最も重症な型のEBに対する細胞性遺伝子治療薬「Zevaskyn(ゼバスキン)」がFDAの承認を受けたことだ。ドキュメンタリーに登場するスタンフォード大学の皮膚科医ジーン・タン博士は、この画期的な成果をもたらした研究者の一人だが、彼女が医学部時代ずっとパール・ジャムを聴いていたと知り、エディは胸を熱くした。「これこそ、自分が貢献できたと感じさせてくれる瞬間だ」と彼は言う。

映画の中でのヴェダーのパフォーマンスには独特の激しさがあり、「Just Breathe」や「Wishlist」の歌詞は特別な重みを帯びて響く。「曲に新しい意味を見出し始めるんだ」とエディは語る。彼はステージ上で感情に溺れないよう必死だった。「映画ならシンガーが歌いながら泣く劇的なシーンは、最高にエモーショナルな表現になるよね。
でも現実の世界で、それを『言葉が詰まる(choked up)』と言うのには理由がある。涙が出始めれば、まともに歌って音を当てることなんて不可能だから」

「エドが毎回のショーの前に、セットリストにどれほど思考と労力を注いでいるか知っているわ」とジルは付け加える。「私は口を出さない。それが決まりなの! ショーを観ているその瞬間は、いつものショーを観ているのと同じで、『ああ、こういう曲順なのね』という感じだった。でも、この映画を観た時、『なんてこと』と思ったわ。曲たちが、完全に(子供たちの)ためのものになっていた。あまりにも重みがあったの」

映画の中で私たちが知ることになる年長の患者の一人、ディアナは、コンサートの直後にEBの合併症で亡くなる。「このコミュニティの一員でいることは、気が弱い人には務まらない」とエディは言う。ヴェダー夫妻は、EBを患う幼い子供たちの葬儀に何度も参列してきた。「精神的にこたえることもある。でも誰かを失うたびに、さらに懸命に活動しようという意欲が湧いてくるんだ」

「家族たちには、味方になってくれる誰かが必要なの」とジルは言う。「彼らは毎日、懸命に戦っている。
だから私たちも一緒に戦える。エドと私はファイターなの」

CEOのハント氏は、EBRPに加わる前、ポール・ニューマンとジョアン・ウッドワードの高く評価されている慈善活動に10年携わっていたが、その夫妻の献身をヴェダー夫妻になぞらえている。「有名人が主導する団体の多くは、創設者が小切手の贈呈式に顔を出すか、ガラ(祝宴)やレッドカーペットに現れるだけだと思われがちです」と彼は言う。だが、ヴェダー夫妻は違うと彼は付け加える。「彼らは理事会に出席し、クリニックに足を運び、何百もの家族に会い、戦略の一部を担い、科学者たちと対話している。苦しんでいる家族の最前線から、葬儀、研究所、治療センターに至るまで、あらゆるところに参加しています」

「私はほとんど毎日ジルと話していますよ」とハント氏は付け加える。

「一日に何度もね」とジルが口を挟む。「正直に言いましょうよ」

音楽は魔法──希望を歌にのせて

ほとんどの視聴者は、このドキュメンタリーを観て「何か助けたい」と思うだろう。ヴェダー夫妻によれば、支援するための最も直接的な方法は寄付だ。さらに、ハント氏は「チームに加わってほしい」と語る。「誰もが寄付をできるわけではありません。もちろん、もし寄付をしていただけるなら、それは素晴らしいことです。多額であれば大変ありがたいですし、たとえ少額であっても、同じように素晴らしいことです。ですが、それ以外にもできることはあります。たとえばこの活動を20人の知人に伝えたり、お子さんの学校で何かイベントを企画したりすることもできるのです。ジルがシアトルで行っている寒中水泳のようなものから、ボウリング大会や野球の試合まで、形は問いません。自分にできることなら、どんなことでもいいのです。どんなに些細な行動でも、大きな力になります。私たちの一番の願いは、皆さんにチームの一員となっていただき、ご自身に合った関わり方を見つけていただくことなのです」

政府高官でさえ医療研究に懐疑的な見方を広めている今の時代において、『マター・オブ・タイム』は科学の力を思い出させてくれる作品だ。「カート・ヴォネガットが確かこんなことを言っていたと思う。『科学とは、実際に機能する魔法だ』とね」とエディは語る。

目の当たりにしてきたあらゆる痛みの中にあっても、エディは音楽もまた魔法だと信じている。映画の中では、EBの子供たちが彼のコンサートで希望や逃避の瞬間を見出している様子が描かれている。「それを些細なこととして片付けるつもりはまったくない」と彼は言う。「感情の伝達手段や、お互いを理解する手段を見つけられたのは、なんて幸運なことだろう。音楽を聴くことで、聴く前よりも孤独を感じなくなることができるんだから」

それでも、彼は笑いながらこう認める。「今のところ、EBに関しては、そうだね──より勇敢で価値のある職業は、(音楽家よりも)遺伝子研究の方だと言わざるを得ないな」

From Rolling Stone US.

パール・ジャムのエディ・ヴェダーが語る、難病の子供たちを救うための闘い【独占インタビュー】

『マター・オブ・タイム: 希望を歌にのせて』
Netflix作品公式ページ
https://www.netflix.com/jp/title/82184383

パール・ジャムのエディ・ヴェダーが語る、難病の子供たちを救うための闘い【独占インタビュー】

エディ・ヴェダー来日公演
2026年4月14日(火)愛知・Niterra 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2026年4月16日(木)大阪・フェスティバルホール
2026年4月17日(金)京都・ロームシアター京都 メインホール
2026年4月20日(月)東京・東京ガーデンシアター
公演HP:https://www.creativeman.co.jp/artist/2026/04eddievedder/
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