2月19日(木)東京・EX THEATER ROPPONGI、2月20日(金)大阪・梅田CLUB QUATTROにジャパン・ツアーを開催するアレックス・G(Alex G)の来日直前インタビューが実現した。

〈死はあらゆる場所にある。
それははるか背後にいる、丘の上の車のヘッドライトかもしれない。少しの間だけ見えて、あたかも掬い上げられたかのように暗闇に消えていくが、別の丘の上に現れ、また消えていく。それは死のヘッドライトなのだ。〉(カルロス・カスタネダ『呪術の体験 - 分離したリアリティ』)

観客からのリクエストも含め、25曲にも及ぶ熱演を繰り広げた初来日公演から2年、フィラデルフィアのシンガー・ソングライター、アレックス・Gが再び日本にやってくる。前作『God Save The Animals』のリリース後、パートナーであるヴァイオリン奏者モリー・ガーマーとの間に息子が生まれ、人生の新たなステージを迎えたアレックス。10代から作品をリリースしてきた彼の通算10作目にして、メジャー移籍第1弾となる最新作の『Headlights』では、 〈なんとか4月まで切り抜けられればいいけど/このレーベルで稼いだお金でね〉(「Real Thing」)や、〈愛のためにやることもある/お金のためにやることもある/望んでないってわけじゃないし/自分は関係ないってわけじゃない〉(「Beam Me Up」)と歌い、父親となったことで芽生えた責任と、少しの不安を吐露している。

そんなアレックスがスコアを手掛けたのが、昨年日本でも公開されたジェーン・シェーンブルン監督の映画『テレビの中に入りたい』だ。スネイル・メイルことリンジー・ジョーダンが劇中で重要なキャラクターを演じ、フィービー・ブリジャーズやキャロライン・ポラチェックが楽曲提供したことも話題となったこの作品で、テレビドラマを通じて繋がったふたりのティーンエイジャーのうち、ひとりは本当の自分になるために姿を消すが、もうひとりは本当の自分を偽り、年老いていくことになる。そんな映画と、『Headlights』からのリード・シングルであり、〈光が差し込み/大きく明るく輝いたとき/僕は新たな人生を歩み始めた〉と歌う「Afterlife」はどこか重なるようにも思えるが、実際はどうだったのだろう。

この夏に全米公開されるシェーンブルン監督の新作でもブルー・ナイルのポール・ブキャナンと共にスコアを手掛けることを発表し、オーストラリアのレーンウェイ・フェスティバルへの出演を終えたばかりのアレックスが、創作と仕事の関係や、2月19日から始まるジャパン・ツアーへの意気込みをメールで語ってくれた。

—昨年、あなたが音楽を手掛けたジェーン・シェーンブルン監督の映画『テレビの中に入りたい』が日本でも公開されましたが、あの映画とあなたのニュー・アルバム『Headlights』、特にリード・シングルだった「Afterlife」は、テーマ的にも重なる部分が多い気がしました。ご自身ではどう思いますか? 実際に制作期間が重なっていたりしたのでしょうか?

アレックス・G(以下、A):僕は意識的に他の作品を思い浮かべて曲を書いたわけじゃなかったから、『テレビの中に入りたい』と『Headlights』の繋がりについて語るのは難しい。
他のものが自分の曲作りに影響を与えないっていうわけじゃないけど、無意識の場所からアイデアがやってくるようにするのが好きなんだ。ジェーンの映画のイメージが自分の曲作りに入り込んでいたとしても不思議ではないし、『テレビの中に入りたい』のスコアを制作する中で学んだ音響的なテクニックで、『Headlights』のプロダクションに活かしたものもある。『テレビの中に入りたい』のスコアは、『Headlights』の曲作りを始めるよりも前、『God Save The Animals』のリリース直後に完成したんだ。

—これまでの作品同様、アルバムのアートワークはあなたのお姉さんのレイチェルが手掛けていますが、見開きの内側に描かれたアルバムの収録曲数と同じ12人のキャラクターは、テレビドラマの登場人物と現実の自分自身の境界が曖昧になっていく『テレビの中に入りたい』のストーリーも想起させます。お姉さんには何か具体的なリクエストをしたのでしょうか? それとも、彼女のほうからコンセプトの説明があったのですか?

A:ジャケットと見開きの内側のアイデアは、レイチェルが見て、僕に説明してくれた夢から生まれたんだ。彼女はその夢の中で、似たようなアートワークとキャラクターが見開きの内側に描かれたレコードを見つけたらしい。僕らはそのことを電話で話して、夢の中のアートを彼女に再現してもらうことにしたんだ。

Alex G来日直前インタビュー 現代最高峰シンガーソングライターが明かす創作の裏側

『Headlights』見開きアートワーク(Discogsより引用)

—お姉さんのインタビューによると、バックカバーに使われた車の写真は、母方の祖母が亡くなった日に偶然撮られたものだそうですね。そのときあなたも一緒にいたのですか? その写真と楽曲「Headlights」、そしてアルバム・タイトルとの関係は?

A:僕らは祖母が亡くなった日には一緒にはいなかった。『Headlights』というタイトルは、カルロス・カスタネダの小説に出てくるアイデアに言及してるんだ。語り手が夜の高速道路を運転していると、同乗者がバックミラーに映る遠くのヘッドライトは”死の目”で、ヘッドライトが見えなくなったとしても、死は常に後ろをついてきているんだと説明する。僕にとって『Headlights』に収められた多くの曲(タイトル曲も含めて)は死の中へ、あるいはその周縁へと向かう旅について歌ったものなんだ。
夜の車が光に包まれているあの写真は、そうした文脈の中で、どこか恐れを知らない、あるいは祝祭的ですらある雰囲気を湛えているように思えた。

Alex G来日直前インタビュー 現代最高峰シンガーソングライターが明かす創作の裏側

『Headlights』バックカバー(Discogsより引用)

—「Afterlife」ではマンドリン、「June Guitar」ではアコーディオンという少しイレギュラーな楽器がフィーチャーされています。個人的にはアイリッシュ・フォーク・ミュージックを連想したのですが、どうしてこういった楽器を使おうと思ったのでしょう? 何か意識したアーティストや曲はありましたか?

A:子どもの頃のノスタルジーの感覚を呼び起こそうとしていたんだと思う。たとえばダイアー・ストレイツの「Walk of Life」や、ジョン・ハイアットの「Cry Love」のような曲から来ている感覚かもしれない。

—ちなみに、どうして「June Guitar」という曲名にしたのでしょう?

A:2023年6月にデモを録音して、そのファイル名を「June Guitar」にしたんだ。曲が発展していくなかで、なぜかこのタイトルがしっくりきた。うまく説明するのは難しいけれど。

創作と仕事の関係、ジャパン・ツアーへの想い

—「Real Thing」や「Beam Me Up」といった曲では創作活動と仕事の関係や、お金のために音楽を作ることの葛藤について歌われているような気がするのですが、実際に本作でメジャー・レーベルと契約してみて、何か変化はありましたか?

A:メジャーと契約してからも、仕事の本質は変わっていないよ。創作面で干渉を受けたこともない。年齢を重ねるにつれて、創作と労働の関係から生じる問いはより切実になっている。自分のアイデンティティは書くことと結びついている一方で、養わなければならない人たちもいるからね。

—「Beam Me Up」に出てくる〈あのフットボールを空高く飛ばしたい〉、〈あのロケットを空高く飛ばしたい〉という歌詞は、アメフトの選手が描かれた過去作『DSU』のアートワークや、『Rocket』のタイトルに言及しているのでしょうか?

A:それは意図的じゃなかったんだ。
あのイメージで捉えようとしたのは、幻想の中にしか存在しない、ある種の抽象的な勝利や、自己消滅へと向かっていく感覚だった。もしかすると同じイメージを繰り返し使っているのかもしれないけれど、そういうイメージは自分にとって、昔から似たようなものを象徴してきたんだと思う。

—「Spinning」と「Far and Wide」はヴァイオリン奏者のモリー・ガーマーによるストリングス・アレンジ、「Is It Still You In There?」では彼女を含む女性3人のボーカルが印象的ですが、あなたから彼女に何かイメージを伝えたりしましたか?

A:僕らは一緒に『哀れなるものたち』という映画を観ていて、「Far and Wide」のストリングスはあの映画のスコアのように、ロマンティックでありながら不穏な響きにできないか、とお願いしたんだ。

—前作のタイミングのインタビューで、「モリーと一緒にいることがあなたの作品に影響を与えているか」と尋ねたら、「まだわからない。数年後に答えたい」と話していました。あれから数年が経ちましたが、何か変化を感じますか?

A:どうして前作のときにそんな風に言ったのか、自分でもよくわからないよ。特定の影響をはっきり指摘するのは難しい。ただ、僕たちは2人の人間としてこれ以上ないほど近い関係にあるから、モリーが自分の作品に影響を与えるのは避けられないことだと思う。

—「Far and Wide」では普段と少し声色を変えていますが、どのような狙いがあったのでしょう? 誰か意識した歌手はいましたか?

A:あの曲では、いわゆるクルーナーのような、洗練されたボーカルを思い描いていた。でもその歌い方がうまくできなくて、いっそ正反対に振り切って、こっぴどいボーカル・トラックにしてみようと思ったんだ。特定の誰かを思い浮かべていたわけではないけれど、振り返ってみると、ダニエル・ジョンストンや(『マペット・ショー』の)カーミット・ザ・フロッグに少し似ているかもしれない。

—ラスト曲「Logan Hotel」は、フィラデルフィアにある同名のホテルで、ツアー・バンドのメンバーとピアノを囲んでライブ録音されたそうですね。
このセッションのためだけに場所を押さえたんですか?

A:そう、このセッションのためだけにスペースを借りた。レコーディングは本当に楽しかったよ。僕らのツアーで客席エンジニアを担当しているハリソンがそのセッションでもエンジニアを務めてくれて、彼を含めたみんなが素晴らしいアイデアを持ち寄ってくれた。5日間ほどあの部屋にこもって、気に入るテイクが録れるまで何十回も演奏を重ねたんだ。

—前回の初来日公演では、あなたとギタリストのサミュエル・アッチオーネの仲の良さや、ドラマーのトム・ケリーのシンバルの位置の高さが印象に残りました。改めてバンドメンバーを紹介してもらえますか? 今回の来日公演への意気込みや、楽しみにしていることがあれば教えてください。

サム・アッチオーネとは長い付き合いで、出会ったのはお互い11歳か12歳の頃。もう20年になるね。中学では同じランチ・テーブルに座っていて、音楽への愛で意気投合した。サムは素晴らしいギタリストであり音楽家で、プロデューサーとしても活動してるんだ。彼の技術と、音楽作りへのひたむきさにはいつも刺激を受けているよ。僕とサムがティーンエイジャーだった頃、トム・ケリーのバンド、スヌーザーのライブによく通っていた。
トムは兄のマイクとそのバンドで演奏してるんだ。彼のドラミングはずっと憧れだったし、一緒にいて本当に素晴らしい人。今でもできる限りスヌーザーのライブを観に行くようにしてる。トムはシンバルを高い位置に置くのが好きで、僕はそれが大好きなんだ。そしてベースはジョン・ヘイウッド。初めてソロ公演をブッキングされた時、サムにドラムを、ジョンにベースを頼んだ。ジョンは長いあいだ一緒にやってきた仲間で、音楽をしっかり支えるという意味でも、揺るがない忍耐強さと穏やかな人柄という意味でも、まさに”岩”のような存在だ。

僕たちはみんな日本に戻れることを楽しみにしているよ。日本で演奏したのは一度きりだけれど、とても素晴らしい時間を過ごした。みんな温かく迎えてくれたし、観客もとても好意的だったからね。

Alex G来日直前インタビュー 現代最高峰シンガーソングライターが明かす創作の裏側

Alex G JAPAN TOUR 2026
2月19日(木)東京・EX THEATER ROPPONGI
OPEN 18:00 START 19:00
スタンディング 前売り:¥8,000
スタンド指定席 前売り:¥9,000

2月20日(金)大阪・梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 19:00
スタンディング 前売り:¥8,000

詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4552

Alex G来日直前インタビュー 現代最高峰シンガーソングライターが明かす創作の裏側

アレックス・G
『Headlights』
発売中
再生・購入:https://AlexGJP.lnk.to/Headlights
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