3月7日にSpotify「Billions Club Live」シリーズの一環で、日本での初ライブが実現するバッド・バニー(Bad Bunny)。ひと足先に開催されたオーストラリア公演では、記録的な動員数を達成するとともに、現代最高峰のスーパースターとして歴史的な名演を繰り広げてみせた。


バッド・バニーが歴史を塗り替え、記録を更新し続けている。さる2月28日・3月1日、このプエルトリコ出身のスーパースターは、ワールドツアー「Debí Tirar Más Fotos」をオーストラリアのシドニーで開催し、同国での公式ライブデビューを飾った。待ちに待ったその日はついに訪れ、バッド・バニーは2日間のソールドアウト公演で計9万人近い観客をENGIEスタジアムに集めた。ライブネーション・オーストラリアによると、この動員数は同会場の記録を更新するものだという。

チケット販売およびプロモーションを担う同社は、Instagramに「バッド・バニーがオーストラリアで記録を更新」と投稿。そのグラフィックの中で「シドニーのENGIEスタジアムで開催されたコンサートにおける、史上最多の動員数を記録した」と記した。

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Rolling Stoneオーストラリア/ニュージーランド版は、ライブレポートの中で次のように記している。「スペイン語を話すオーストラリア人は人口の約0.7%に過ぎないが、今夜の観客のほとんどが明らかに言葉を理解している様子は心強い。バッド・バニーがスペイン語のみで行うMCに対し、客席からはたびたび爆発的な歓声と拍手が沸き起こっていた」

オーストラリアでの動員記録更新は、世界的な影響力を拡大し続ける彼にとって、新たな勝利となった。2月には、自身初となる全米シングルチャートでの1位を獲得。そして3月7日(土)には、Spotifyの「Billions Club Live」シリーズの一環として、東京で初となる日本公演を行う(これは彼のアジア初上陸でもある)。その後はしばしの休息を挟み、5月から「Debí Tirar Más Fotos」ワールドツアーの欧州レグをスタートさせる予定だ。


以下、Rolling Stoneオーストラリア/ニュージーランド版によるライブレポートを全文掲載する。

バッド・バニー「記録的公演」現地レポート 豪シドニーで約9万人動員、次はいよいよ日本上陸

Photo by DL Webb Smith

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俳優としての顔をもつプエルトリコ出身のラッパー、バッド・バニーことベニート・アントニオ・マルティネス・オカシオ(31歳)は、今まさに喜びを感じるべき理由が山ほどある。トランプ大統領とその支持者(MAGA)たちからの冷笑や露骨な排外主義にさらされながらも、先日行われたスーパーボウルのハーフタイムショーは、世界中で1億3540万人が視聴するという快挙を成し遂げた。さらに、最新アルバム『Debí Tirar Más Fotos』(=もっと写真を撮っておけばよかった)は、第68回グラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞。スペイン語作品として史上初の快挙だ。2月の最初の8日間だけで、これだけの実績を叩き出した。

これに数十億回のストリーミング再生、コンサートチケットの記録的な売り上げ、そして順調な俳優キャリアが加われば、今の彼は周囲のすべてを飲み込むほど巨大な「喜びの超新星」と化しているに違いない。幸運なことに、シドニーのENGIEスタジアムを埋め尽くした4万5000人以上のファン(2日間のソールドアウト公演の初日・2月28日)にとって、まさにその通りの熱狂を彼はステージで体現してくれた。

パリッとした薄色のスーツに、平均的な車1台分はしそうなサングラスをかけてステージに現れたバッド・バニー。観客の咆哮や本名を呼ぶ「ベニート!」の大コールを、彼は当初クールに受け流そうとしていた。しかし、スタジアム中に野火のように広がる熱気を受け、ついにその仮面を脱ぎ、自分に向けられた愛に対して満面の笑みをこぼした。

そこから会場のボルテージは一気に加速する。
彼はまず、プエルトリコの伝統音楽プレナのアンサンブル(バックバンド)であるロス・プレネロス・デ・ラ・クレスタをステージに呼び込み、自身のルーツを前面に押し出した。大勢のミュージシャンやバックコーラスと共に披露された「La Mudanza」の熱狂的な演奏に、観客は踊らずにはいられなかった。

演出に華を添えたのは、観客の首にかけられたカメラ型のグッズから放たれる、コントロールされた色とりどりの光の海だ。

そこからは、コンガやパンデレタ・プレネラ、クアトロ(スペインのギターに近い楽器)といったラテンの伝統楽器が、2022年のアルバム『Un Verano Sin Ti』(=君のいない夏)の人気曲「Callaíta」や、新作『Debí Tirar Más Fotos』のハイライト曲に命を吹き込んでいく、目もくらむようなミックスが続いた。「Pittoro de Coco」、猛烈なサルサ・ナンバー「Baile Inolvidable」、エル・グラン・コンボ・デ・プエルトリコの1975年の名曲「Un Verano En Nueva York」を巧みにサンプリングしたデンボウのパーティー・チューン「Nuevayol」などが披露された。

古き良きものと新しさが融合したこのオープニング・セクションがあまりに強力だったため、ここでライブが終わったとしても誰もが満足して帰路についたことだろう。しかし、バッド・バニーにとってはまだ序の口に過ぎなかった。

一瞬たりとも目が離せない「圧巻の終盤」

中盤、彼が珍しく英語を話すユーモラスな映像が流れた。「コンチョ」と名付けられたCGIのプエルトリコ・ヒキガエルを介して、オーストラリア滞在中に試したベジマイト、ティムタム、チキンパーマ(チキンカツのチーズ焼き)といった現地の味について語った後、舞台はスタジアムの反対側に設置された第2ステージ「La Casita(ラ・カシータ)」へと移る。鮮やかなピンク色に塗られたプエルトリコ様式の民家を模したこのステージは、まるで人々が身体を寄せ合って踊る賑やかなホームパーティーのような設えだ。

この場所で、彼はスーツを脱ぎ捨て、ベースボールキャップにショーツ、アディダスのジャケットというストリートスタイルにチェンジ。本領発揮のラップ・モードに突入した。
1ダース以上のヒット曲を叩き込み、スタジアムを世界最大のナイトクラブへと変貌させ、まばゆいレーザーと花火が夜空を彩った。

ハイライトは、リヴァーブの効いたギターとトラップ、ハウスのビートが交互に繰り出されるトロピカルなカクテルのような「Neverita」、女性への蔑視に抗うアンセム「Yo Perreo Solo」、ボンド映画の劇伴とトラップが融合したような「Monaco」、そしてミッシー・エリオットの「Get Ur Freak On」を中毒性たっぷりにサンプリングしたレゲトン曲「Safaera」だ。

オーストラリアの人口のうちスペイン語を話すのはわずか0.7%程度だが、今夜の観客のほとんどは明らかに言葉を理解していた。バッド・バニーがスペイン語のみで行うMCに対し、その都度、爆発的な歓声と拍手が沸き起こっていたのは心強い光景だった。

バッド・バニー「記録的公演」現地レポート 豪シドニーで約9万人動員、次はいよいよ日本上陸


「Café Con Ron」では再びロス・プレネロス・デ・ラ・クレスタが登場し、圧巻のパンデレタ・プレネラによるドラミング・セッションを披露。その後、舞台はメインステージへと戻る。トレードマークのファー付きアビエイターハットを被ったバッド・バニーは、すでに胸いっぱいの観客に対し、さらなるヒット曲の連射を浴びせた。

ホーンが効いたセクシーなスロウ・ジャム「Ojitos Lindos」や、2019年にJ・バルヴィンと発表したデュエット曲「La Canción」に続き、後半で激しいダンス・レイヴへと爆発する抵抗のアンセム「El Apagón」を披露。そして最後を飾ったのは、ノスタルジックな名曲「DtMF」と、終演の瞬間まで全員を踊らせ続けたレゲトン・チューン「Eoo」だった。

2時間半で30曲以上というセットリストは、一見すると過剰にも思える。しかし、バッド・バニーの手にかかれば、それは視覚的な華やかさとラテン音楽の豊かなフレーバーに満ちた、一瞬たりとも目が離せないエンターテインメント・ショーとなる。スペイン語がわかるかどうかにかかわらず、その完璧なバイブスは、腰を揺らし、心を解放させるのに十分すぎるものだった。


2月1日のグラミー賞授賞式で、トランプ政権のICE(移民・関税執行局)を念頭に「憎しみよりも強力な唯一のものは愛だ」と宣言したバッド・バニー。この忘れられないオーストラリア初公演は、まさにその言葉を体現するものだった。プエルトリコの文化、音楽、歴史、そしてバッド・バニーという真のスーパースターを讃える圧巻のパフォーマンスは、ライブという場で分かち合える、これ以上ないほど贅沢な喜びの贈り物であった。

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From Rolling Stone AU/ NZ.
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