フジロック'26出演も決定しているアーロ・パークス(Arlo Parks)が、通算3作目となるニューアルバム『Ambiguous Desire』を発表した。そこで彼女はニューヨークのクラブシーンへと踏み出し、ナイトライフ・カルチャーを通じて自分自身を再発見している。


アーロ・パークスは、今もなお好奇心に溢れている。25歳の彼女は、4月3日にリリースされた3rdアルバム『Ambiguous Desire』を(取材日の時点で)すでに提出し終えており、その意識はレコードの先にある未来へと釘付けになっている。「すごくクリエイティブな気分なんです」と彼女は熱っぽく語る。「ふとした瞬間にメロディが頭に浮かんできたり、ただひたすら本を読んだり、素材を集めては少しずつ形にしたり……。そういうことを始めたところ」ロサンゼルスは午前11時。カメラをオンにしたパークスを太陽の光が照らし、対話を始める彼女の鮮やかな赤髪はより一層の輝きを放っている。「この気候に感謝ですね」と彼女は笑う。

研ぎ澄まされた、聴く者を魅了するボーカルで世界的に知られるパークスは、自身の好奇心を刺激するあらゆる表現の道を熱心に探求する、多角的なアーティストとして活動している。彼女はキャリアの初期に詩人や作家として活動していた頃から、すでにこうした芸術的な機微を見せていた。「そもそも、私が書くことにのめり込んだきっかけもそこにあって」と彼女は説明する。それゆえ、この創作意欲の高まりにおいて、パークスの関心が音楽以外にも向けられているのは驚くべきことではない。事実、彼女の時間の多くはスタジオの外で、映画について思考を巡らせることに費やされている。


「ずっと書きたいと思っていた脚本について考えているんです。ゆっくりと形になりつつありますね」今回の新たな挑戦の原動力となっているThe Criterion Collection社(古典映画の最高峰ライブラリーとして知られる米NYのソフト会社)の映画アーカイブを丹念に紐解くなかで、彼女はシェリル・デュニエやジャン・コクトーの作品に救いを見出した。「今の私にとってしっくりくるのは、シュルレアリスムの映画なんです」と彼女は明かしてくれた。

パークスにとって、映画の脚本とソングライティングの違いは「語らずに語る(Show, dont tell)」ことにある。「脚本は『語られないこと』が重要なんです。でも、歌の場合は自分の感情や、まさに今起きていることが中心になりますから」と彼女は説明する。ウォン・カーウァイとクリストファー・ドイルによるクィア・ロマンティック・ドラマ『ブエノスアイレス(原題:Happy Together)』は、こうした知識の隔たりを埋める手助けとなり、感情や表情、対話をいかに観客に見せるかを彼女に教えてくれている。1997年に公開されたこの映画が持つ、観客の心を動かす力にパークスは多大な影響を受けてきた。「個人的に(ウォン・カーウァイの)物語の紡ぎ方が本当に大好きで、何度も心を動かされてきました。今もちょうど本棚を眺めているところなんですけど、『The Sensuous Cinema of Wong Kar-Wai』という本があって、彼のテクニックや表現言語について詳しく書かれているんですよ」と彼女は語る。

クラブカルチャーという別世界との出会い

これまでの作品と同様に、『Ambiguous Desire』を突き動かしているのは、人々の心を捉えて離さないエモーショナルな歌詞の世界だ。アルバムの幕開けを飾る「Blue Disco」で、彼女は朝6時の帰路につく前の、過ぎ去った夜を惜しむ。
フライドポテトにジン、傷だらけの壁、そして嘔吐といった描写は、クラブやハウスパーティーを梯子したことのある者なら誰もが痛いほど身に覚えのあるものばかりだ。その哀愁は、まるで月に吠える狼のように、繊細なエレキギターのリフで彩られた、現実に引き戻されるようなドラムシーケンスと結びついている。「二面性が好きなんです」とパークスは振り返る。「ここには、人生の鏡のように機能するほろ苦さがあるんですよ。人生って、時にあらゆる感情を一度に味わうものですから。私にとって『Ambiguous Desire』はコントラストのアルバムなんです。だから、コードが少し憂いを帯びる瞬間も、ただ生きているとはどういうことかを描くこの曲の一部になっていると感じますし、そこに緊張感を与えてくれているんです」

「Blue Disco」に見られる夜への執着は、一過性のものではない。ナイトタイムのパーティーカルチャーは、本作に収録された他の11曲を通じても探求されているテーマだ。それは、パークスがこの2年間、自らに課していたガードレールを外したことで辿り着いた道だった。2024年4月にブルックリン・スティールで前作『My Soft Machine』のツアーを終えた後、彼女はニューヨークの広大なナイトライフへと没入する時間を過ごした。「アーティストとしての活動を離れて、一人の人間としてこの街を探索したことは今までなかったんです」と彼女は語る。「遊び心を感じさせてくれて、ある程度の自発性や匿名性を保てる場所を見つける必要があったんですよ」

それは、過剰な注目を浴びることのない日常的な体験への切望を語ってきたチャペル・ローンといった同世代のアーティストたちとも共通する思いだ。
「暗闇には、視覚的な面でも魔法のような力があるんです。本当に自分を解放できる気がしますし、自意識を少しだけ抑えられるような気がするんですよね」とパークスは言う。

アーロ・パークスが語る「夜への目覚め」音楽観を一変させたクラブカルチャーとの出会い


彼女はロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンを行き来していた。その後、ニューヨークに長期滞在し、ストロボライトの下で速いBPMに合わせて踊りながら、自分自身の新たな一面を発見していった。「わあ、私、こういうのが本当に大好きなんだ」と彼女は自問自答した。「Nowadays」から「BASEMENT」、そして「Under The K Bridge」まで、訪れたベニューの名前を挙げながら、パークスはメインストリームで活動する音楽アーティストに課せられる厳しい規律や重い要求から解放される喜びを見出していた。アメリカのDJセオ・パリッシュらが、彼女の現実逃避のサウンドトラックとなっていた。

しかし、パークスのこの別世界での生活が、すんなりと手に入ったわけではない。むしろその逆だった。最初、これまでのルーティーンから抜け出すことは、ある種の手強さを伴うものだった。「自分の身体感覚を取り戻して、本当に『今、この瞬間』に集中するための練習が必要だったんです」と、彼女は言葉を選びながら慎重に振り返る。DJ兼プロデューサーのMadgavsことマディ・ギャヴィンのような親しい友人が、慣れない土地へと踏み出す彼女をサポートしてくれた。
「マディはLAのクラブカルチャーにすごく精通しているんです。『Aunties』のようなイベントも知っていて、彼女の方が詳しかったですから。彼女みたいな自由で自発的な人たちと一緒に過ごしたことで、考えすぎる癖から抜け出すことができました」

ダンスフロアでの直感的な反応と並行して、彼女はその活動に対して学術的なアプローチも深めていった。自分を取り巻く世界を体系化したいという欲求に突き動かされたのだ。彼女はニューヨークとその周辺、そしてイギリスのクラブムーブメントを研究した。ポスト・ダブステップ期のロンドンのサブカルチャーに魅了され、マンチェスターの「The Warehouse Project」からも強い印象を受けた。「トッド・テリーやラリー・レヴァンによるリミックス、あるいはマーセラス・ピットマンの作品に恋をして、『なるほど、ここには私が理解したいと思うような深い何かが流れているんだ』と感じたんです」とパークスは語る。

知識への渇望は、ボルチモア出身のプロデューサーであるベアードとの深みのある議論へと繋がり、最終的に2024年末に向けた『Ambiguous Desire』制作の原動力となった。BROCKHAMPTONやケヴィン・アブストラクトとの仕事で見せた、エレクトロニックとヒップホップを織り交ぜた高揚感のあるプロダクションで知られるベアードは、両ジャンルの交差点に位置する存在だ。元BROCKHAMPTONのロミル・ヘムナニを通じて正式に出会った二人は、当初パークスの2ndアルバム『My Soft Machine』で共に作業し、「Pegasus」を誕生させた。しかし、パークスの中で何かがカチッとはまったのは、3rdアルバムのためにベアードと「Senses」「Heaven」「Blue Disco」を作り上げた時だった。「なんて言うか、化学反応なんです」と彼女は話し始める。
「ある種、恋に落ちる感覚に近いかもしれません。説明するのは難しいんですけど、お互いに親和性を感じるというか、まさにそんな感じでした。それから私たちは冒険に乗り出したんです。数年間にわたって、一年おきに1曲作るようなペースで制作を続けました」

サンファからの学び、DJへの好奇心

『Ambiguous Desire』は、その音のパレットが自由であるのと同様に、人々や場所、感情の分析においても鮮烈だ。エレクトロ・ポップ、ダブステップ、ガラージ、ハウス、さらに広くエレクトロニック・ミュージックを横断しながら、パークスは最新の心酔の対象の間を軽やかに漂う。場所によっては彼女の声そのものが楽器として機能しているが、これは本作唯一のデュエット相手であるサンファから学んだ教訓だ。

オルタナティブ、エレクトロニック、ポップが融合した「Senses」の上で、二人は危機に瀕した愛の痛みを打ち明ける。〈たぶん私は、あなたに元気になってほしいと頼んだんだと思う/もし私がごめんねと言ったら〉とパークスは歌う。彼女は、同じイギリス出身のシンガーであるサンファへの賞賛を惜しまない。「彼は感受性の重要さを教えてくれますし、それは私たち二人の作品にとって不可欠なものなんです。サンファは、ただその感覚に身を委ねるように背中を押してくれるんですよ」。長年彼のパフォーマンスを見守る中で、彼女は自分の声をより楽器のように配置することを学んだ。
アルバム収録曲の「Heaven」ではまさにそれを実践しており、彼女の声はドラムの中に織り込まれている。「すごく静かなので、ほとんど潜在意識に訴えかけるようなレベルですけど、そこに感情を添えてくれるんです」。デビューアルバム『Collapsed in Sunbeams』以来、時間の経過だけでなく、創作経験に伴う自然な成熟が見て取れる。例えば新曲「Nightswimming」でのボーカルのレイヤリングは、経験を積んだアーティストだけが醸し出せる自信と確信を響かせている。

アーロ・パークスが語る「夜への目覚め」音楽観を一変させたクラブカルチャーとの出会い


サンファだけでなく、パークスは「Get Go」といったアルバムの収録曲を通じて、自身のルーツであるロンドンへの敬意も忘れていない。1984年から1993年のロンドンの海賊放送の広告やアイデントを集めたコレクション(全2巻のうちの第1巻)から、当時のヴィンテージな広告をサンプルとして取り入れた。西ロンドン育ちの彼女は、60年代に産声を上げたイギリスの海賊放送史における極めて重要な時代にオマージュを捧げたかったのだ。「ちょうどロンドンのフリーマーケットに行った時に、そのテープを見つけて買ったんです。それで、中に入っている広告を一つひとつチェックしていきました」と彼女は言う。「自分の彼女に戻ってきてほしいって呼びかける広告を流すために、お金を払う男の人たちがいたんですよ」この海賊放送プロジェクトに収録されている「Ravers Dateline」という広告には、80年代後半から90年代のレイヴァーたちが交流するためのホットラインまで含まれている。この時代、ジャングルやドラムンベース、そして初期のガラージといった、紛れもなくイギリス独自の表現がロンドンや英国内に浸透し、若者たちは当時の文化創造に熱中していた。パークスは、この3rdアルバム全体で、明快かつ催眠的なブレイクビーツの形を作り上げることで、その時代に敬意を表している。「そう、手放したくない(Yeah, I dont wanna let go)」と彼女は歌い、ダンスフロアでの快楽主義はその絶頂を迎える。

クラブシーンへの進出を経て、アーロ・パークスは、近年のリトル・シムズやチャーリーXCX、スケプタらのように自らDJとして夜をプロデュースしたいと考えているだけでなく、自身のツアーにも夜の体験を組み込みたいと考えている。「人々に何かを感じさせたり、体験を提供できたりするのって、すごく特別なことだと思うんです。だから今、練習しているんですよ」と彼女は明かしてくれた。「こんなにそのことばかり話していますし、もうやるしかないですね」。また、パークスは夜のベニューは保護されるべきだとも主張している。それらは人間性や人間としての経験を形作る基盤であると、彼女が固く信じているからだ。

とはいえ、ナイトライフ・カルチャーに本格的に貢献し始める前に、彼女はDJとしてのステージネームを決めなければならない。今の彼女にとって、それが悩みの種となっている。「名前については、まだ夢想しているところなんです」と彼女ははにかみながら言う。「何か格好いいものを見つけなきゃ。私、ネーミングがあまり得意じゃないんですけど……でも、『Ambiguous Desire』と同じように、何かがふっと降りてくるはずです」

From Rolling Stone UK

アーロ・パークスが語る「夜への目覚め」音楽観を一変させたクラブカルチャーとの出会い
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アーロ・パークス
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FUJI ROCK FESTIVAL '26
2026年7月24日(金)~26日(日)新潟・苗場スキー場
※アーロ・パークスは7月24日(金)出演
公式サイト:https://fujirockfestival.com/
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