【ライブ写真ギャラリー】
私がKID PHENOMENONというグループに惹かれた理由に、音楽性やパフォーマンスのクオリティの高さに加えて、メンバーの人間性と向上心がある。彼らが根本的に音楽を愛していること、そしてより高みを目指して「世界を知りたい」という姿勢は、私が今までたくさんのアーティストと関わってきた中でも類を見ないような刺激的なものだった。今回、オースティンのSXSW(音楽、映画、テクノロジー・ビジネスが融合した世界最大級の複合フェス)で行われたショーケースで彼らのライブパフォーマンスを初めて観たが、その貪欲さと起爆性に、予測不可能な可能性を強く感じた。一人ひとりが全力で前に出て、全力をぶつけることで、普通ならバラバラになるはずのステージが、一つの生命体としてのパワーを増して説得力を持たせる。その不思議なバランスこそが、彼らの最大の魅力であり、同時に進化し続ける点でもある。
元から共通の知人を通して交流を持っていた遠藤翼空以外のメンバーとはアメリカで会うのが初めてだったが、ショーケースの前後での交流、そして後日インタビューの時間を設けてもらって彼らのことをより深く知ることができた。今回のSXSW出演は、多くのメンバーにとっては「初めてのアメリカ」という環境そのものと向き合う経験でもあった。現地で彼らが最初に感じたのは、スケールの違いだったという。「空がでかい。なんかいつもより大きく見える。とにかく何でもでかい」と語る夫松健介の言葉に象徴されるように、都市の広がりや物理的なサイズ感の違いは、平均年齢20歳の彼らにとって刺激的なことばかりだ。また、街を歩いていると見知らぬ人から服装を褒められたり、踊っていれば周囲が一緒に踊り始めるようなフレンドリーさにも驚いたという。
アメリカでは誰もが「自分らしさとは何か」と向き合わなければならず、特にSXSWにおいてはクリエイティブな業界の人が集まる。自分のスタイルを持ち、それを躊躇なく外に出すことでチャンスを掴んでいく、その空気の中では、「どう見られるか」よりも「どう在るか」が優先される。そうした環境に触れたことは、彼ら自身の表現の在り方を確認する契機にもなったという。
SXSWのショーケースで彼らが選んだのは、「守り」ではなく「攻め」の姿勢だ。佐藤峻乃介と遠藤が制作したリミックス音源とメンバー全員で作り上げたダンスブレイクを組み込み、ジャンル的にも強度的にも振り幅の大きいセットリストを構成した。海外の観客に向けて「わかりやすく」調整するのではなく、むしろ現在の自分たちの「限界」に挑戦する。これまでの活動の中で様々な観客の前に立ち続けてきた経験が、明確に生きていると実感した。夫松は、インタビューの中で「日本でも”マジで全然アウェーじゃん”っていうライブをたくさんやってきた」と振り返る。「どこを見たらいいのか分からないくらい白けてる時もあった。でも結局は、自分たちが一番楽しんでいないとダメだなっていう結論になる」と語るその言葉には、場の空気に左右されるのではなく、自ら空気を作るという覚悟が滲む。
さらに彼は、そのパフォーマンスが成立する理由を、メンバー同士の関係性に結びつける。「一緒に過ごす時間が多いこともあって、信頼し合ってる。
今回のショーケースで特筆すべきは、セットリストの構成そのものが、彼らの姿勢をそのまま体現していた点にある。序盤は「Party Over There」「OMW」「Snakebite」といった楽曲とメンバー自らが作り上げたダンス用のリミックスで一気に観客を引き込む。「踊りながら歌うグループ」は、今のアメリカの音楽シーンを見渡してもほとんど存在しないし、ほとんどの人が見慣れていない。「海外からきたアーティスト」を披露する意図のある今回のショーケースの観客は「新しいもの」「知らないもの」に興味を持って来ている人が多かった。アメリカにおいて一般的にボーイズグループといえばK-POPをざっくりと連想する人が多い中で、KID PHENOMENONの「全部詰め」なパフォーマンスを見て驚いた表情を見せていた。ヒップホップをベースとしたロックやポップを踊りながら、観客とのコール&レスポンスを楽しむなど、比較的ステージと客の距離が近いライブハウスならではの環境を確実に味方につけた。
初見の観客に対しても容赦なく高い出力を要求するセットリストの流れの中で挟まれる「ダンストラック」は、いわゆる”つなぎ”ではなく、パフォーマーとしての彼らの「観客を楽しませる」装置として作用した。中盤以降は、「Purple Dawn」「存在証明」「Black Flame」といった楽曲を通して、単なるエネルギーの提示ではなく、表現の幅そのものを提示する構成へと移行する。そして後半では「Trendsetter」「Wheelie」「Unstoppable」と強度を加速させながら、一切の緩急を許さずに駆け抜ける。
オースティンという街は、SXSWの期間中、音楽は単体で存在しているわけではなく、テック企業のネットワーキング、ストリートでの即興的な出会いといった様々な要素と絡み合いながら、都市全体が一つの巨大なプラットフォームとして機能している。そこでは音楽は「聴くもの」である以前に、「関係を生み出す媒体」になる。KID PHENOMENONが出演した「Friends From Elsewhere」というショーケースもまた、そうした都市の文脈の中にあった。大きなホールのように整った音響でも、グループのパフォーマンスのためにコントロールされた環境でもない。ソロアーティスト、バンド、ビートボクサーなど、様々なアーティストが同じステージを分け合う。不確実性が前提となる場で、どこまで自分たちの身体とエネルギーで初見の観客を説得できるか、問われたステージだった。
不確実性が前提となる環境で
アメリカというところは毎日何が起きるかわからないし、カオスなことばかりだ。そんな場所で20歳前後のメンバーたちが、ここまで思い切った挑戦的なパフォーマンスをできること自体、相当な積み重ねと精神的な強さがないと絶対にできないと、ステージを見ながらひしひしと実感した。そのような「生のエネルギー」は、新しいことを求めてショーケースを観にきた多国籍の観客にもリスペクトの念を与えざるを得なかった。
ダンスブレイクに関しても、外部に委ねるのではなく、メンバー自身が振付を組み立てた。そこでは「狙う」よりも「自分たちが楽しいと思うかどうか」が基準になっているという。深夜の制作の中でアイデアを出し合いながら、「これかっこよくない?」という感覚を起点に構成されていったと彼らは語った。
だが、実際のパフォーマンスで印象的だったのは、その緊張を「制御」しようとするのではなく、むしろ増幅させていた点である。後半に向かって意図的にボルテージを上げていく構成、体力配分を無視するかのようなアグレッシブなダンスブレイク、そして何より、全員が常に前に出ようとする圧。そのすべてが、リスクを抑えるのではなく、リスクごと観客にぶつけるような設計になっていた。
彼らのライブの特異性は、この「個」と「全体」の関係にある。センターが変わるたびに空気が変わり、一人ずつが思いっきり輝く時間があって、ありったけの「好き」と「一生懸命」をぶつけてくる。しかし同時に、他のメンバーも決して背景には退かない。それぞれが自分の最大出力を維持したまま共存する。パフォーマンスが終わった後に「目が全然足りない!」とメンバー本人たちに伝えたが、それほど一人一人が音の細かい拾い方、表現の選択を個性豊かにしていることが魅力的だった。
この構造について、夫松はこう言う。「メンバー全員が”自分を見ろ”という意識でパフォーマンスしているので、センターに立っていない時でも、それぞれがしっかり存在感を出していると思います。それが結果的にいい方向に働いていて、もし少しでも気弱になる瞬間があれば逆に目立ってしまう。
ライブ後に観客の感想を聞いてみると、その理由はより具体的に浮かび上がった。まず挙がったのは、メンバーそれぞれのスタイリングの個性と、それによって生まれる視覚的な「違い」の面白さだった。統一されたイメージではなく、あえてばらつきを残したまま成立しているバランスが新鮮に映ったという声が多い。また、トリッキーで強弱の効いた振り付けを、難しさを感じさせずにこなしている点も高く評価する人が多かった。しかし最終的に多くの人が口にしたのは、そうした技術的な要素以上に、「彼ら自身が心から楽しんでいることが伝わってきた」という感覚だった。楽しむ姿そのものが、言語や文化の壁を越えて共有される。そのシンプルで根源的な力こそが、彼らの核にある。
SXSWの期間中は、街中の至る場所で音楽のショーケースが行われる。Don Toliverのライブを鑑賞したメンバーは、隙間時間にDJが流すR&Bやヒップホップの楽曲に乗ってずっと踊り、周りのノリの合う観客に自分たちのショーケースのフライヤーを配っていたという。そのようにKID PHENOMENONの存在をシェアする彼らを見て、異国の地でも仲間を増やせるたくましさを実感した。その自由に音楽を感じ「自分の空間を共有しあえる」環境に、大きな刺激を受けたとメンバーは話していた。
Don Toliver、Lola Young等、様々なライブを鑑賞した経験について、共通して感じたのはアーティスト自身の人間味だとメンバーは話していた。
「自分たちはダンスや音楽など、さまざまなエンターテインメントに触れてきましたが、それらはもともと異なる文化の中で生まれてきたものだと思っています。たとえば海外の楽曲を聴いて練習する時も、ただ歌うだけではなく、その楽曲がどんな背景や意図で作られたのかを考えながら向き合うようにしています。どう伝えるかを考える以上、そのルーツを理解することは欠かせないと思うので。
どんな表現であっても、自分たちは何かを”借りて”表現している立場だと思っているので、そこには必ずリスペクトが必要だと感じています。クランプのように、怒りを表現することから生まれたダンスも、その意味や背景を踏まえた上でどう表現するかを考えていますし、これから世界に出ていく中でも、そうした姿勢は変えずに持ち続けていきたいと思っています」
この視点は、日本発のアーティストが海外に進出する際に見落とされがちな部分でもある。近年、日本のカルチャーは「クールジャパン」という言葉のもとで輸出されてきたが、その多くは(意図せずとも)文脈を剥ぎ取られた状態で消費されてきたと言っても過言ではない。奇抜さや異質さが強調され、「遠くの国の面白いもの」として扱われることも多かった。一方で、アーティスト自身が触れてきた多様なカルチャーを、自分の身体を通して再構成するような表現は、簡単に消耗することができない。その際に必要となるのが「リスペクト」と「学ぶ意欲」という軸だ。
日本の独自ルールや業界の常識は、世界では通用しない。「海外進出」を目標にする際にも、様々な国でライブをしたいのか、世界中でリスナーを増やしたいのか、海外のアーティストと制作をしたいのかなど、細かく目標設定をしなければ、壁にぶつかって挫折を経験してしまうことも何度も目撃してきた。アメリカのように競争の激しい環境においては、「泳ぎ続けなければ沈む」という緊張感も常に走っている。そんな中でも「ハッピーな気持ち」を会話の中で何度も強調したKID PHENOMENONのメンバーの、その純粋な好奇心と音楽に対する憧れの感情は、いつまでも大切にしてほしいと強く願う。
KID PHENOMENONというグループは、未知のポテンシャルを抱えている。それぞれにやってみたいことがまだまだたくさんあって、そのために走り続けるエネルギーを持ち合わせている。完成形が全く見えないこと自体が、彼らの強みになっているだろう。この先、彼らがどのように変化していくのかは分からない。だが少なくとも今回のパフォーマンスは、「海外で通用するかどうか」という問いそのものが、すでに的外れであることを示していた。問題は通用するかではなく、どのように存在を示すかである。そしてその問いに対して、彼らはすでに一つの答えを提示していた。
KID PHENOMENON
7thシングル『Mirror』
配信中
https://KIDPHENOMENON.lnk.to/Mirror_DGAW
KID PHENOMENON
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発売中
・初回生産限定盤 SRCL-13614~5 定価 ¥2,500(税抜価格¥2,273)
・通常盤 SRCL-13616 定価 ¥1,500(税抜価格¥1,364)
<収録内容>
Disc-1 CD
1. Mirror
2. Magic
3. Chosen Ones
Disc-2 DVD ※初回盤のみ付属
NEO EXILE SPECIAL LIVE 2025 at LaLa arena TOKYO-BAY
1. Party Over There
2. Cinderella
3. Unstoppable
4. Sparkle Summer
5. クロスロード
KID PHENOMENON LIVE TOUR 2026 "KIDS00s"
公演詳細:https://www.ldh-liveschedule.jp/sys/tour/40358/


![VVS (初回盤) (BD) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51lAumaB-aL._SL500_.jpg)








