カリフォルニア州オークランドで結成された極上のファンク&ソウルバンド、タワー・オブ・パワー(Tower of Power)がビルボードライブに帰ってくる。昨年もブルーノート東京などに来日していたが、ビルボードライブへの出演は2年ぶりだ。


彼らは2024年、レジェンド・ドラマーであるデヴィッド・ガリバルディの脱退という重要な局面に立たされたが、そのピンチにも臆することなくツアーを続ける道を選んだ。他にもボーカルのジョーダン・ジョン、トランペット&トロンボーンのデイブ・リチャーズの加入、マイク・ジェレルがボーカルではなくキーボードで復帰したことなど、メンバーの入れ替えはここ数年でも多かったが、それでも現在のバンドの演奏は非常に充実しており、衰えるどころか、むしろ今まさに上り坂にあると言える。

結成58年目を迎え、多くのメンバー交代を経ながらも、なぜ彼らは進化を続けていられるのか? 今回はその秘訣や、彼らのグルーヴの真髄、過去から現在に至る話などを、リーダーのエミリオ・カスティーヨとジョーダン・ジョンに訊いた。

◎タワー・オブ・パワー来日公演
4月20日(月)・21日(火)ビルポードライブ大阪
4月22日(水)・23日(木)・24日(金)ビルボードライブ横浜
4月27日(月)・28日(火)ビルボードライブ東京
※詳細は記事末尾にて

熟練のバンドと新しいエネルギー

―タワー・オブ・パワーは去年も来日してくれましたね。間を置かずに再来日してくれて本当に嬉しいです。日本で演奏することは、あなたたちにとってどんな意味があるのでしょうか?

ジョーダン:日本にはソウルやファンクをよく知っているファンがたくさんいて、世界中でも特に大好きな国のひとつなんです。マネージャーから「いいニュースだ、また日本に行くぞ」と言われると、僕たちはもう大喜びで、100%乗り気になる。こうして定期的に日本に戻ってこられることは、本当に素晴らしいです。長年僕たちを支えてくれる、そして僕たちの音楽を愛してくれる人たちの前で演奏できるのは、とても嬉しいですね。

―またこれまでのキャリアで、日本でのライブについて、思い出深いことなどあれば聞かせてください。

エミリオ:先週ちょうど、ある人と日本のお客さんの話をしていたんだ。初めて日本に行ったときのことをね。


あれは確か中野サンプラザでの演奏だった。そこでプロモーターが僕たちを呼んでこう言った。「日本の観客はとてもおとなしい。拍手もしないし、叫んだりもしないから、がっかりしないように」って。そういうつもりで心構えをしておいてほしい、っていう話だった。

僕たちはOK、と答えてステージに出て、演奏を始めた。そうしたらなんと、僕たちが演奏し始めた瞬間に、みんな一斉に立ち上がって前へ走ってきて、叫んで踊り始めたんだ(笑)。完全に、彼が言っていたことと真逆だった。僕たちにとって、日本でのライブはいつもそんな感じなんだ。日本のファンのみんなは本当に素晴らしいよ。

Tower of Powerが語るファンク精神とグルーヴの源泉、結成60周年に向けてさらなる高みへ

エミリオ・カスティーヨ

―では、最近加入したメンバーについて聞かせてください。まずボーカルのジョーダンさん。
あなたのお父さん、プラカシュ・ジョンはPファンクのメンバーでもあり、ジェームス・ブラウンなどとも共演したレジェンドベーシストですね。あなたの加入の経緯を教えていただけませんか?

ジョーダン:最初はタワー・オブ・パワーのInstagramで、「新しいボーカルを探している」という投稿をたまたま見たのがきっかけでした。でも、最初は本当かどうか分からなかった。タワー・オブ・パワーがそんな投稿をするなんて信じられないし、らしくないと感じたんです。

だから、父に「これって本当?」って聞いたら、父は「本当かどうかはともかく、応募するべきだ」って言ってくれました。父はエミリオやドック(サックス担当のスティーブン・ドック・クプカ)など、ほかのメンバーとも交流があって、彼らが僕の故郷であるトロントに来るときに会ったりしていたんです。だから僕が応募したとき、エミリオはすでに僕のことを知っていました。

それで彼らがツアーでカナダを回るタイミングで、サウンドチェックに誘ってもらったんです。でも僕としては、サウンドチェックで少し歌って、あとはライブを見て、バンドのみんなと楽しく過ごして、それで帰る、くらいのつもりでした。

でもサウンドチェックで5曲ほど歌い終えたところで、エミリオがみんなの方を向いて「どう思う?」って聞いたんです。すると、なんと全員が親指を立てた。そしてエミリオが「おめでとう、君に決まりだ」って言ったんです。


本当にびっくりしました。もう嬉しくて嬉しくて。僕は昔からタワー・オブ・パワーが大好きで、子供の頃からずっと聴いて育ってきました。それに家庭的な繋がりもある。だからあらゆる意味で、自分が本当にいたい場所にいる、という感覚があります。彼らはミュージシャンとしてだけじゃなく、人としても本当に素晴らしい。

エミリオやドックから学べる環境にいられることも嬉しいです。バンドのリーダーシップ、アレンジ、パフォーマンス、世界中を回ること。このバンドに参加し、そこから学べることは本当に名誉であり、ギフトだと思っています。

Tower of Powerが語るファンク精神とグルーヴの源泉、結成60周年に向けてさらなる高みへ

ジョーダン・ジョン

―また新ドラマー、ピート・アントゥネスのプレイもとても素敵ですね。デヴィッド・ガリバルディの後任ということでドラマーを選ぶのは難しかったと思いますが、どのように採用が決まったのですか?

エミリオ:そうだね、難しかったよ。デヴィッド・ガリバルディのようなドラマーの後を簡単に継げる人なんていない。
彼は唯一無二で、タワー・オブ・パワーにとってとても大きな存在だった。だから僕たちも不安はあった。

でもいろんなドラマーを見た後で、ピートが僕たちの曲を叩いている動画を見て驚いた。彼は曲を完璧に演奏していただけでなく、素晴らしく満面の笑みを浮かべながら叩いていたんだ! それはまさに僕が求めていた通りのプレイだった。

するとその動画を見ている時に、横で妻が「この人は誰?」と聞いてきた。「ピートだよ」と答えたら、「この人、いいわね」と言うんだ。

もちろん他にも多くのドラマー候補がいたし、別の人を推す声もあったけれど、僕は何度も何度もピートの動画に戻ってしまった。彼のプレイには本物の熱意があって、すごく僕をワクワクさせてくれた。

そして実際に彼が来て、最初のオーディションをした。正直その時点で、これ以上探す必要はないと思ったよ。たしかもう一人だけオーディションしたと思うけど、ピートの後だとその人にすることはできなかった。だからピートにしよう、って決めたんだよ。


―そんな現メンバーが揃って、私はバンドとしてまた上り坂にいるのではないかと思います。活動58年目で上り坂というのは素晴らしいことだと思いますが、ご自身では、現在のバンドを言葉で言い表すならどのような表現になりますか?

エミリオ:そうだね。確かに今、僕たちは上向いていると思う。新しいエネルギーがあって、いろんなところで話題になっているしね。インターネットでも噂が広がっていて「動画を見たよ、ライブに行くね」って連絡してくる人も多い。

新しいラインナップでエネルギーがすごい、という評判が広まっているんだ。実際にステージでも、演奏していてとても気持ちがいい。まさにハイテンションなエネルギーと、極めて精密なサウンドが融合している。それこそが、僕たちが長年追求してきたものなんだ。キャリアの終盤に、そんな素晴らしい要素をバンドに持ち込める若い人たちに出会えたのは、本当に嬉しいことだね。

―ジョーダンさんはどうでしょう?

ジョーダン:エミリオに完全に同感です。そして若い僕たちにとっては、バンドのベテランたちが持つ知恵や経験が必要なんです。


ベテランのメンバーは、エネルギーを扱う方法を心得ている。若い僕たちはエネルギーが有り余ってしまう日もあります。でもツアーで常に演奏し続ける中で、どうすればそのエネルギーをうまく扱っていけるか、またどうすればそれぞれのステージに適切なエネルギーを注入できるか……そういうことを彼らから学ぶことができます。

今のバンドは本当に理想的なバランスなんです。経験豊かなメンバーと、新しいエネルギーを持ったメンバーがうまく混ざり合っている。ステージ上でも、みんなそれを感じています。

僕はこのバンドに入ってもうすぐ3年目になりますが、それでもまだすごく新鮮で、ワクワクするんです。クリエイティブな面でも、エネルギーの面でも、まだやれていない事がたくさん残っていると思います。どんなに長く活動しているバンドでも、こういう感覚を持てることは本当に珍しいことでしょう。だからこそこの状況にいられることがとても嬉しいし、その一員であることを誇りに思っています。

―また、今のバンドはタワー・オブ・パワーらしいサウンド、グルーヴをとても強く表現できていると思います。大きくメンバーが変わっていった中で、それを実現し続けているのはどのようなマジックがあるのでしょう?

エミリオ:これはもう、神様から授かった才能みたいなものなんだ。90年代初頭にトム・ボウズっていうシンガーがバンドにいたんだけど、彼が言った言葉が忘れられない。「君たちはイエローページ(電話帳)を演奏したってタワー・オブ・パワーのサウンドになる」ってね。

実際、僕たちのキャリアはずっとその通りだった。何をやっても、ちゃんとタワー・オブ・パワーのサウンドになるんだ。

それはきっと、同じ感覚を持った人間が集まっているからだと思う。僕たちはリズムの捉え方も、サウンドの作り方も、ボーカルも、ホーン・アレンジも、ライブでの見せ方も、他のバンドとは少し違う。僕たちには独自のシグネチャーがある。それは僕にとって、神様からの祝福みたいなものなんだ。

受け継がれていった「ファンクの革新」

―ジョーダンさんにお聞きしたいのですが、タワー・オブ・パワーで特に好きな曲、歌っていて楽しい曲はどれでしょう?

ジョーダン:僕は「So Very Hard to Go」「You're Still a Young Man」のような、昔の曲を歌うのが大好きなんです。それからオーケストラと一緒に演奏するときに、僕が特に楽しみにしているのは「Below Us, All the City Lights」ですね。

もちろん「Soul Vaccination」のような、エネルギッシュな曲も楽しいですよ。あと最近「Only So Much Oil in the Ground」がどんどん好きになってきました。とにかくバンドのエネルギーが素晴らしいんです。

それから最近、しばらくセットリストに入っていなかった「As Surely as I Stand Here」を歌うようになりましたね。これはまさに今自分の中で掴んでいっているところで、それもすごく楽しい。結局のところ、どの曲も全て好きなんです。僕が愛してきたバンドの、長年聞いてきた曲たちだから、すごく自分とつながっている感じがあります。

―エミリオさん、少し昔の話も聞かせてください。1960年代、ジェームス・ブラウンの音楽をきっかけに新しい音楽、ファンクが生まれたと思います。彼から受けた影響について聞かせてくれませんか?

エミリオ:ジェームス・ブラウンは最初に登場した瞬間から、そしてその後何十年にもわたって多くの人に影響を与え続けている。彼を聴いたことがある人なら、誰でも彼が唯一無二の存在だったことが分かるはずだよ。

彼はただ叫んで踊っているだけ、みたいに思う人もいるかもしれない。でも彼がスローなラブソングを歌うときの表現は、本当に素晴らしかった。「Prisoner of Love」や「Bewildered」、それに「Try Me」みたいなバラードでの歌いまわしやリックは驚異的だったね。

それに彼は、シンコペーションの効いたリズムというものを僕に初めて強烈に意識させた存在でもあるし、ライブ・エンターテインメントの興奮を教えてくれた人でもある。世の中にはいろんなタイプのバンドがいるけど、僕は彼のバンドみたいに、ライブを観たあと興奮して汗だくになって帰るようなバンドが好きなんだ。

―そのファンクのグルーヴをタワー・オブ・パワーは独自の形で取り入れ、今聴いてもまったく色あせないサウンドを生み出してきました。さまざまな影響があったと思いますが、振り返ってみて、タワー・オブ・パワーならではのグルーヴやスタイルは、どのようなプロセスで形作られていったのでしょうか?

エミリオ:そうだね。ジェームス・ブラウンの影響は大きいけど、影響源は彼だけじゃなかった。僕が挙げたいのは、ダイク&ザ・ブレイザーズ。「Funky Broadway」っていう曲があるんだ。

あの曲を聴くと、最後にフェードアウトしていくところで、ドラムがすごくシンコペーションしたビート(16ビート)を叩いている。僕が住んでいたベイエリアでは、みんなそのフェードアウトの部分ばかりを聴いて「ここでドラムは何をやってるんだ!?」って夢中になっていたんだ。あれはとにかくファンキーで、新しかった。みんなそれを真似しようとしていたんだよ。

そしてちょうど同じ頃に、スライ&ザ・ファミリーストーンが現れた。ドラムはグレッグ・エリコでね。僕たちは毎週末、フレンチーズっていうナイトクラブに彼らを観に行っていたんだ。

そういったファンクの革新者たちによる、魂のこもったライブパフォーマンスや刺激的なサウンドに触れることで、自分たちが目指す姿が大きく形作られていった。彼らそのものになろうとしたわけじゃない。ただ、自分たちの表現の中にその要素を取り入れたかったんだ。

Tower of Powerが語るファンク精神とグルーヴの源泉、結成60周年に向けてさらなる高みへ


結成60周年に向けて

―現在のファンク・シーンについても聞かせてください。先日、ヴルフペックのジョー・ダートがインタビューで、自分のスタイルは「What Is Hip?」のベースや、タワー・オブ・パワーのキレのあるグルーヴから強い影響を受けたと話していました。そうした若い世代のミュージシャンたちの動きを含めて、今のファンク・シーンについて、何か印象に残っていることはありますか?

エミリオ:正直言うと、これについて素晴らしい答えができるほど、僕が詳しいかどうかは分からないな。でもヴルフペックは好きだし、コリー・ウォンのバンドも好きだよ。あと、僕はダンプスタファンクの大ファンなんだ。

それぞれのバンドに僕が好きな要素があるけど、中でもダンプスタファンクは特に素晴らしいと思う。ファンク・ロックのような要素もあるけど、あのバンドにはネヴィル家(アイヴァン・ネヴィルとイアン・ネヴィル)がいるし、とてもソウルフルだ。しかも彼ら独自のサウンドがある。

それから、アレン・ストーンも大好きだね。彼は本当にソウルフルなシンガーで、素晴らしいソングライターでもある。しかも彼はドラムやベースのリズムだけじゃなく、コーラスやメロディの歌いまわしでも新しいことをやっているんだ。彼なりのやり方でソウルとファンクを再解釈している。

ジョーダン:そうですね。インターネットやSNSのおかげで、ソウルやファンク、R&Bというジャンルにおいて新しい解釈やスタイルが次々に生まれていると思います。UKのヤング・ガン・シルヴァー・フォックスのようなアーティストもいるし、アメリカだけでなくヨーロッパやアジアなど、世界中にそういった動きがありますよね。

タワー・オブ・パワーやスライ&ザ・ファミリーストーン、ジェームス・ブラウンの音楽で育った僕にとって、僕の世代やもっと若い世代のミュージシャンが世界中でソウルやファンクに情熱を注いでいるのを見るのは、本当に嬉しいことです。

「What Is Hip?」1973年のライブ映像

―活動58年目ということで、もう60周年が目前に迫っています。これまでも10周年刻みでお祝いとなる大きなライブやアルバムなどがありましたが、今回はもう何か計画をしているのでしょうか?

エミリオ:今のところ具体的な計画はないんだ。ただ、マネージャーやメンバーとは少し話をしている。僕としては、これまでと違うことをやるなら「タワー・オブ・パワーとオーケストラの共演」が面白いんじゃないかと思っているんだ。

それがベイエリア、オークランドで実現したら最高だね。僕たちは全米各地でオーケストラとの共演をたくさんやっているけど、ベイエリアで素晴らしいオーケストラと一緒にやれたら特別な記念になるんじゃないかと思う。

―では最後に、日本のファンにメッセージをお願い致します。

エミリオ:僕たちタワー・オブ・パワーのメンバーは、また日本に戻れることを本当に楽しみにしている。こんなに早くまた呼んでもらえるということは、日本のみなさんが僕たちの音楽を気に入ってくれているということだと思う。それが本当に嬉しいんだ。

ビルボードライブで演奏できることも楽しみにしているし、また日本の友人のみなさんに会えるのも楽しみにしているよ。

タワー・オブ・パワー来日公演

2026年4月20日(月)・21日(火)ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
>>>詳細・チケット購入はこちら

2026年4月22日(水)・23日(木)・24日(金)ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
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2026年4月27日(月)・28日(火)ビルボードライブ東京
1stステージ 開場/開演:16:30/17:30
2ndステージ 開場/開演:19:30/20:30
>>>詳細・チケット購入はこちら
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