誰かの名前がトレンドにあがるとき、「もしかして…」と思ってしまう
自分自身に、ショックをうけたことはありますか? こんにちは、朗読詩人の成宮アイコです。 事件のことはツイッターのトレンドで知りました。 誰かの名前がトレンドにあがるとき、つい、「もしかして…」と思うようになってしまったのはいつからでしょうか。それは、わたしがいちばん聞きたくない言葉でした。
そんなの、わたしが知りたい
それほど仲が良かったのにという意味で言ってくれたことは空気感でわかるのですが、そのたびに、「あの子にとってわたしが存在している意味は全然なかった」と認知を歪めました。そんなのは、わたしがいちばん知りたいことです。
でも、なにも言わなかったのです。
わたしは、全然なにも言われなかったのです。 ふたりの間には、死についての話題が出ることはたびたびありました。ただ、たびたびすぎてお互いにすっかり麻痺してしまっていたのかもしれません。わたしたちはそれぞれが口癖のように、「もういなくなりたいね」「ぜんぶやめたいね」と言い合っていたからです。そして、言い合うことで、お互いがそれをひとりで選ばないように牽制していたと感じます。 それぞれの日常が忙しくなり、連絡はときどき言葉を投げかけては、数通やりとりをしては終わるようになったころのこと。連絡の頻度に変化があると関係性はすこし変化し、前のように連絡をしてもいいのかな、と探り合いに変わりした。 だけどそれを言うことはできませんでした。自分でも認めたくなかったからです。自分が特別と思いたい、だから距離ができていてもふたりの間には関係のないこと。
子どもがいたのになぜ、赤ちゃんが生まれたばかりなのにいたのになぜ。
それはつまり「アイコちゃんがいるのになぜ…」と同じこと。わたしが言われた言葉と同じことでした。
「なぜ、わたしと死ななかったんだろう。」の、正解がなくても
その言葉は、言われるまえから本人がすでに思っていることです。しかも、わたしは笑って受け流すしかないくらい思い知っていたはずです。相手を責めたり、ときには自分を責めたり、ぶつけるあてのない気持ちを抱えていたはず。 それでも、わたしは同じことを思った。その事実は、嘘にしてなかったことにしたいくらいショックでした。(だから書くまでに時間をあけてしまいました。
わたしたちは、つい、もういない人の側にひっぱられてしまう癖があるから。
Aico Narumiya Profile 朗読詩人。「生きづらさ」や「メンタルヘルス」をテーマに文章を書いている。朗読ライブが『スーパーニュース』や『朝日新聞』に取り上げられ、新潟・東京・大阪を中心に全国で興行。書籍『あなたとわたしのドキュメンタリー』(書肆侃侃房)、詩集『伝説にならないで ─ハロー言葉、あなたがひとりで打ち込んだ文字はわたしたちの目に見えている』(皓星社)。