ネイキッドロフトは場所が悪すぎる!

──『ヤバい生き霊』を読ませていただいて、すごく読みやすくてとても面白かったです。

はやとも:ありがとうございます。編集さんのおかげです!

──霊が見える、見えないはスイッチで切り替えているそうですが、どのように切り替えをしているんですか。

パッと切り替わりますか?

はやとも:はい、現状はそうです。最初に切り替えをしたのは楽屋でダイタクさんがいろんな先輩に僕を紹介してくださったときだったんですが、それ終わりでひっちゃかめっちゃかになってしまったんです。芸人1年目だったということもあって、先輩と社員さんとお化けの違いがつかなくて。僕、劇場で頭がおかしい奴認定になったんですよ。まあ、もともと頭はおかしいんですけど(笑)。でも挨拶しても返してもらえなくなるのは良くないじゃないですか。なので伊達メガネを買ってきて、切り替えるときに使うようにして今は何となくやり過ごす感じなんですけど、何にも見ていないオフの状態でも全く見えてないわけではないくらいの感じなんですよね。

──ちょっとはぼんやり見えてしまうものなんですね。どのくらい実態として見えてしまうものなんですか。生身の人間と変わらないくらいくっきり見えてしまうとか?

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はやとも:
ものによると言ったら向こうの人に失礼ですが(笑)、人によりますね。僕と同じように見える先輩が2人いるんですけど、その人たちとよく話す言葉は「鮮度」ですね。言い方は悪いですが、死にたてホヤホヤだと結構はっきりと見えるんですけど、時間が経ちすぎているとホワ~ンとしていたり、透けるっていうよりは昔のフィルムの写真が白茶けてくるようにフワーッと白くなっちゃっている感じに近いですね。
最終的に無色透明みたいになっているのは分かるけど、性別も年齢も分からないくらいになって最終的には無になっているみたいな感じもあって、それが成仏なのかどうかは自分が死んでみないと分かりません(笑)。

──会話ができないと本にも書いてありましたもんね。ただただ霊が話していることを聞き続けるしかない。

はやとも:そうです。

──私はネイキッドロフトで働いているんですけど、ネイキッドにもヤバいと言われている場所が2カ所あって(笑)。入口と楽屋口なんですが、会場によってこの場所はかなりヤバいとかピンポイントで感じたりしますか。

はやとも:ネイキッドロフトは僕も何回か出させてもらってますけど…まあ、場所が悪すぎますからね(笑)。場所が悪いのは商いに向いてないってわけじゃないんですけど、土地が新宿の一番ヤバい街を抜けた先の新大久保にあるので(笑)。ネイキッドロフトに関しては、ヤバいのは出入口と楽屋口だけではないと思いますよ(笑)。

──他もいろいろヤバいと(笑)。

はやとも:先輩で元デスペラードの武井(志門)さんが住んではいけない土地にすごい詳しいんですけど、東京のほとんどは忌み地と言って手繰ると何かがある場所ばかりらしいんですね。その中でランクがあって、本当にすごくヤバい所とちょっとヤバい所があるそうです。
何にもない所って成城学園前くらいしかないらしいんですよ。

──成城学園前はなぜそんなにクリーンなんですか?

はやとも:あそこはもともと人が住む土地として使われてなかったらしいんですね。人が住み始めてからいきなり高級住宅地にしちゃったので極端に事故物件が少ないらしいんです。事故物件サイトで見ると、東京中が燃えているのに1カ所だけ鎮火されてて僕もびっくりしました(笑)。

──それだけクリーンな所なんですね。

はやとも:それ以外の土地には良し悪しがあるだけで、たとえるなら筋トレと同じような耐性があれば何とかなるというか。

──筋トレ?

はやとも:たとえば生まれた所がちょっとヤバい所で、次に結構ヤバい所、最後にマジでヤバい所…と順番に暮らしていった人はだんだん人に恨まれたり、重い気みたいなものが乗っかるけど、筋トレができているからヤバい所にいきなりドーンと突っ込まれた人よりも大丈夫なんですよ。新宿だろうが新大久保だろうが池袋だろうが赤羽だろうが関係なく、その人にもともと耐性があった状態だったかどうかなんですよね。『仄暗い水の底から』って映画があるじゃないですか。僕は日本のホラー映画で一番好きな作品なんですけど、その何が面白いって主人公の黒木瞳さん以外全員がクズなんですよ(笑)。子ども以外、全部クズ男なんです。弁護士で1人良い人が出てくるけど、良い人ぶるのも仕事上の建前だもんなって僕は思っちゃうし。
唯一、優しさに溢れている黒木瞳さんが最後に呪い殺されるんですけど、イヤミを言うようになったりしぶとくなったり、イヤな奴になるというのは大人になるってことなんですよ、多分。黒木瞳さんだけ子どもの頃のフラッシュバックが何回も入るんですけど、そういう耐性の低い人は幽霊やお化けに限らず、死んでない人からも嫌われたり、「あいつウゼェ!」って思われやすいと僕は思っています。そういうのに負けない人は大人になっているということで、客観的に見ると「なんだこいつ!?」って感じるところが出てくると思うんですよね。それを良いと取るか、悪いと取るかは分かりませんけど、ただ良い人、ただ優しさと愛に満ち溢れているだけの人は他人から恨まれたり弱みにつけ込まれやすいので、少なくとも新大久保には住まないほうが良いと思います(笑)。

優しい人は霊につけ込まれやすい

──この本には「周囲から良い人と言われる人は憑かれやすい」と書かれていますが、幽霊も人の善意につけ込みやすいということですか。

はやとも:そうです。このあいだケータイがコロナに感染しているから消毒のためにお金を払ってくださいっていう事件がありましたけど、あんなのになんで騙されるの!? って思いません? でもあんなことで簡単に騙されちゃう人はリアルに存在していて、その理由の一つは優しいから。何事も良いほうに考えて優しくなってしまう。もう一つの理由は情報弱者であること。情報弱者というのは自己責任なんですけど、優しいというのは一見すると長所なんですよね。だけど優しい人は生きている人からも死んでいる人からもつけ込まれやすいし、勝手にどんどん悪い方向に行ってしまったりとか、不幸な目に遭っている人が意外と多いんですよね。

──優しい人は騙されやすいと。

はやとも:はい。

こんなに良い人でこんなに愛情にも溢れているのになぜ悪い方向にしか転がらないのか? っていう人が多いですけど、ちょっと息抜きさえすればそういう人でも最終的に死ぬときに一人ぼっちにはならないと思うんですよ。人を裏切り続けて大金持ちにはなったけど最後は一人ぼっちで死ぬか、優しさに溢れ良い方向に進んでいって人生死ぬまでしんどいけど死ぬときにたくさんの人に囲まれて死ぬか。もしくはその中間を取るか。大概の人は中間を取りますけど、そのどっちかの人もいて、優しさに溢れた人たちはこの本にも書いてある通りつけ込まれたり、トラブルに巻き込まれることが多いと思います。

──優しくしていると霊にもつけ込まれちゃうんですね。

はやとも:まあ、優しさの定義も難しいですけどね。ちょっと話がそれちゃいますけど、「どんな男の人が好きですか?」と訊かれて「優しい人が好き」と答える女の人が僕は大嫌いなんですよ。本当にこの世で一番嫌い!(笑)

──(笑)何でですか?

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はやとも:
「優しい人が好き」って要は自分にとって都合の良い人が好きって言っているだけだし、それなら「自分が好き」って言いなよって思っちゃうんです。「まず自分が一番好きだから自分に従ってくれる男性が好きです」って言う人なら僕は好きですけど(笑)。それをオブラートに包んで「優しい人が好き」ってなに言ってんだ!? って思いますね(笑)。

──なるほど(笑)。

はやとも:たとえば「お前しっかりしろよ!」って叱るのも優しさですし、「この子は一人ぼっちにさせなきゃダメだ」と思ってそっと立ち去るのも優しさですし、「大丈夫? 大丈夫?」って言ってお金をあげたりご飯を食べさせたりするのも優しさですし、全部優しさなんですよ。
だから優しいって人によって違うんですよね。どれを優しさと取るかなんて一括りにはできないし、相手の気持ちや感情を汲み取って相手に合わせ続けてしまうのを人につけ込まれる優しさだと僕は言っているんです。ほとんどの人が求める優しさというのは自分に対しての優しさだし、他者の立場になって優しさを与えてしまう人というのはいろんな人につけ込まれたり騙されたりする可能性があるんじゃないかなと思います。

──なんだか哲学的な話になってきましたね。

はやとも:口調が乱暴な哲学になってきてますね(笑)。

「友達は永遠に友達だ」という発想が嫌い

──自分に自信満々の人には自分の霊がついているという話が本の中にありましたけど、見ず知らずのうちに自分の分身を発しているイメージですか?

はやとも:その場合もあるんですけど、本当にたまに生き霊なのに姿形があるときがあるんですよ。たとえば本の中では僕のファンだった女の子が実は生きていたという話を載せましたが、あれは生き霊なのに姿形があったんです。でもほとんどの場合、芸能人の方とかをお仕事で見たりするとすごく小さい砂鉄みたいなものがスーっと動いているだけで、それがくっついたり離れたりその辺にボワンとしていたりというだけなので、お化けがドンと来るみたいなことはあんまりないんですよ。それと同じで、自分に自分の霊がついているのは結構すごいことで、人間は主観を逸脱することができないと僕は思っているんです。

──また哲学的な話に(笑)。

はやとも:人間はどれだけ考えても主観でしかないと思っているんですけど、自分のことが好きで自分自身に生き霊をつけることができている人は自分のことを客観視できているんですよね。自分は好きなように生きている、やりたいようにやっている、そんな自分は周りから見られたときにどんな人間かと俯瞰している。トータルで考えて、「自分はこんな人間だ。

客観的に見てこんなにイイ男を嫌いになる奴はいないだろう」とか思いながら客観的に見た自分が好きだとグルグル回っているみたいな感じになっていて、それは純粋にすごいことだと僕は思っているんです。ただただ自己中な人に自分の霊はつかないので。自信満々で自分に対して霊がついている人っていうのは小さい気持ちの砂鉄みたいなものが外に出て浮遊した後に自分に返ってきてくっつくみたいな感じになっていて、そんな人を僕はすごいなと思います。自分には一生かけてもできないことなので格好いいですね。

──本の中で「お笑いはチームプレーだ」と書いてありましたが、私もそう思うんです。全員で作り上げて、楽屋のノリなどを持ってきてお客さんの前で出すときなどに霊が見えていると仲が良い、悪いなどを考慮してやれるというのがとてもすごいと思いました。

はやとも:そのチームプレーもその時々のものですけどね。また哲学的な話になりますが、「友達は永遠に友達だ」みたいな発想が僕はすごく嫌いなんですよ。そんなの来年どうなるか分からないだろって思うし。いろんな人と出会ったり、いろんな人と仕事したりしても、人間って1年後にはほぼ違う人になっているし、それは相手も同じじゃないですか。だからウマの合った人同士がまた仲良くなれるなんて分かりませんよね。仲良くなる可能性もあるし、もう全然気が合わなくなっている可能性もあるし、「友達=永遠」みたいな考えが枷としてあるから友達ができづらいと思うんですよ。僕はそのとき一緒に楽しめている人がそのときの友達ってことでいいんじゃないかと思っているし、それは芸人のチームプレイも同じで、その時々でその人の思考や考え方や生き方が自分に合うことがあるんです。なので、その人のこの部分を繋ぎ合わせるといい感じになるだろうとか、そんなことを考えながらチームプレーをしています。これはお笑いに限らず、どんな仕事でもそうだと思うんですけど、コンサルみたいなことですよね。精神的なコンサルみたいな。「今はお互いにこの部分で相性がいいと思いますよ」とは伝えますけど、それが一生ものかどうかは分からないですし、だからこそ何十年も芸歴を重ねてコンビとしてずっと面白いままであり続けている人たちはやっぱりすごいし、奇跡に近いですよね。裏ではもちろん相当な努力をしているんでしょうけど。

──オフとオンの切り替えができる以前はずっと霊が見えたままの生活をしていたのがすごいですよね。すごく疲れそうじゃないですか。

はやとも:相当疲れましたね。今はもう慣れましたけど、芸人になってからも人間としての感情が死んでいました。ドアを開けたら突然誰かがいたり、家のお風呂やトイレにも誰かがいたり、車を運転していたら突然人が現れたり、バスや電車に乗っていてもそんな状態だったので。学校で授業を受けたりとか身動きを取らないときはラクなんですけど、動かなきゃいけないときはストレスフルな状態で、それに対して僕は切り替えるというより慣れようと思っちゃったので、人間としての喜怒哀楽をほぼ殺した状態だったんですよ。笑うのも泣くのも怒るのも全部演技になっちゃって。だから僕は人との距離が縮まりにくいんですよね。ずっと一定距離のままになっちゃうのがほとんどで、仕事の人でも友人でもあまり距離感が変わらないんです。それは全面的に僕の責任で、自分がどういう人間なのかが分からなかったからなんですよ。感情を全部閉じた状態じゃないとストレスに耐えられなかったので。

──今はどうですか。

はやとも:言葉の信憑性が上がっている気はしますね。一つ遠い距離感で喋っているので。霊が見えるだなんて、そんなの本当か嘘か分からないじゃないですか? もちろん本当のことを話していますし、自分が見たことそのまましか言ってませんし、本にも本当のことしか書いていませんけど、客観的に考えると本当のことなのかどうか分からないと思うんですね。だけどある一定層の人たちがそれを信じて面白く見てくれているのは、僕自身が見えるものに対して一拍距離を置いているからだと思うんです。良くも悪くも対象と距離を置いているから。

笑いを交えながら心霊のことを語っていきたい

──お父様も見える方なんですよね。血筋なんでしょうか?

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はやとも:血筋らしいです。僕は全然覚えてないんですけど、ひいおばあちゃんがユタだったらしいんですよ。うちのおばあちゃんは沖縄生まれで多人数兄弟で、その中でお父さんが生まれて、兄弟同士みんなで面倒を見るくらい一生懸命生きてきたらしくて。僕が見えるようになってから聞いたんですけど、おばあちゃんもお化けが見えたらしいんですよ。僕はおばあちゃんとそんな話をした思い出があまりないので意外だったんですけど。ちなみにお父さんが見えるようになったのが32歳のときなんです。

──途中から見えるケースもあるんですね。

はやとも:両親が結婚してすぐくらいのときに恵比寿の結構良い家に引っ越したら、夜にずっと怪奇現象が起きたりしたそうです。女の人がノックして全部屋を回っている音がして、自分の部屋の前に来たときに中に入ってきたらしくて。それが血みどろのお化けって感じじゃなくて、明らかに人が1人ズーンと自分の中へ入ってきてビックリしたらしいんですけど、それがきっかけで見えるようになったと言っていましたね。

──とういうことは、はやともさんがご結婚されて子どもが生まれたら、そのお子さんも見える可能性が高そうですね。

はやとも:そうですね、あるかもしれません。僕は今付き合っている人と結婚したいと思っているんですけど、彼女も若干見えるようになっていますし。全部僕のせいなんですけどね。

──はやともさんのお母様も見えるようになったんですか?

はやとも:いや、見えるようにはなってないですね。お母さんの家系は霊感がないんですよ。そんなこと知るか! みたいな感じで(笑)。ただ僕と父親と一緒に住んでいることによって否が応にも怪奇現象が起こるし、ラップ現象が起きたり、地震速報も鳴っていないのに部屋が揺れたり、そういうことが平気で起こるんですけど、母親はすっかり慣れましたね。部屋で何か起きてもゲラゲラ笑って韓国ドラマを見ているので(笑)。

──先ほど話に出た筋トレに近いですね(笑)。

はやとも:そうです(笑)。今付き合ってる相手はもともとちょっと体験していた人なんですよ。たとえば何回買っても時計が壊れたりして。朝早い仕事だったので目覚ましをかけて、1時間に5分おきにセットしたのに全部鳴らなかったり、寝ぼけているだけなのかと思ったらそんなことなかったんですよ。僕が部屋に行ったときにも鳴らなかったので。それと誰もいない部屋なのにゴンという音がしたり、そんなことが小さい頃から何回もあったので、僕と付き合ったことによって余計に見えるようになっちゃって(笑)。

──他人との距離が縮まりにくいから結婚に踏み込めないところはありますか。

はやとも:結婚したいと思ったのは今の彼女が初めてなんです。本に書いた子もすごく素敵な人で、ずっと幸せな思い出ばかり作らせてもらって本当に感謝しかないんですけど、結婚したいとは一度も思わなかったんですよ。結婚したいなと気持ちの距離をいつか縮められるだろうなって感じが全くしなかった。ヘンな話ですけど、僕はその子の前で一回も泣いたことがなかったんですよ。泣いたことも怒ったこともなかったし、ずっと普通の状態でした。おかげさまで霊視芸人としてちょっとお金も入りましたし、美味しいご飯に連れていったり、良いホテルに泊まりに行ったり、ちょっと良いプレゼントをしてみたりしたんですけど、相手の顔を見ていると昔に戻りたくなっちゃったんですよ。それは向こうもそうだったんですけどね。お互いバイトして休みを合わせてどこかに出かけていた頃に戻りたいなあとか思っちゃって、それがすごいイヤだったんです。僕は仕事が一番したいはずだと思って、そのまま別れて…っていう感じで。不思議なことに、今の彼女は初めて会ったときからこの人と結婚したいと思ったんですよ。向こうは初対面だから何言ってんの? って感じだったんですけど、結局、地方から東京に越してきて一緒に暮らせることになりました。

──前の彼女は一緒にいると芸人として後退するような感じだったけど、今の彼女ははやともさんが芸人でいることを第一に考えていると?

はやとも:そうなんですけど、客観的に見ると自分が芸人とは言いづらくなってきてますからね。宮崎駿さんの言葉に「自分の才能に気づいたときが人生の呪いの始まりだ」というのがあって、僕はその言葉が昔から好きで、いつか僕も自分に合ったお笑いをやっていくときにやりたいお笑いじゃなくなるのかなと思っていたんです。でも今の状況はそれよりも茨の道なんですよね。芸ではなく霊視に注目されているわけだから。なるほど、これは芸人じゃなくなるってことなのか…とも思ったけど、それでも霊視体験を語ることはこれからもやり続けたいことですし、できればよしもとで一緒に苦楽を共にした芸人たちと笑いを交えながら心霊のことを語っていきたいんです。今は誰も正解を知らない道を歩もうとしているので、それに対して乗っかってくれる人かどうかがパートナーとしては大事だったのかなと思いますね。

舞台裏や階段の踊り場に霊が集まりやすい理由

──霊が見えるということは研ぎ澄まされたセンスをお持ちだと思うんですけど、たとえば人生の岐路に立たされたときなどに第六感が冴えたりするんでしょうか。

はやとも:霊感のあるなしに関係なく直感がはたらく人がいますけど、そういう人たちより自分の感覚が優れているかどうかは分からないです。ただ一つ言えるのは、しっかり準備して仕事に行くよりも準備しないで行ったほうがうまくいくことが多いですね。収録とかもそうで、以前、すごく出たかった番組がありまして。演者も会ったことのある味方ばかりだし、尋常じゃないシミュレーションと準備を整えて収録に臨んだ結果、一つも笑いを取れなかったんです(笑)。思いきり激滑りしてしまって。想定していたことと想定外のことがあって、想定外のことが起こることを考えられなかった僕が悪いんですけど、そのときの直感で動いたほうがうまくいったんですよね。なので、勘は良いほうなのかなと思います。

──準備をしすぎず、その場の流れに身を任せたほうが良い方向になると?

はやとも:ざっくりは準備するんですよ。たとえばYouTube(『シークエンスはやともチャンネル~1人で見えるもん。~』)でも台本を用意するんですけど、箇条書きにしてあるんです。言いたいことが4つあれば4つだけ箇条書きにして、それだけ言えればいいやくらいの感じで喋るほうがちゃんとした台本を用意したときよりもうまくいきますし、再生回数も伸びたんですよね。だからその場で考えをまとめながら喋るほうがいいのかなと思っていて、多分その場で考えて喋る言葉のほうが伝えたいという気持ちが乗っかるので、聞いているほうも聞く耳を持てるんじゃないですかね。

──そのぶん言葉も強いですもんね。

はやとも:はい。朗読みたいになると、そのぶん気持ちが乗っかってこないので。本当は朗読にも気持ちを乗せられる声優さんみたいなやり方がベストなんでしょうけど、僕にはその技術がないので今のところは感情優先でやっていますね。

──自分に合ったやり方を見つけられたんですね。生き霊が見えることによって芸人さんになって暗かった自分を明るいほうへ持っていくことができたり、怖い話でも最後は面白く終わっていたり、はやともさんはポジティブですよね。

はやとも:今回の本はずっとやっている連載の中から選んだんですけど、すごく暗い回もあったんですよ。でもそういう話はあえて選ばず、明るい話を中心に集めました。

──本の中に舞台裏や階段の踊り場などに霊が密集すると書いてありましたが、霊が集まりやすい場所ってあるのでしょうか。

はやとも:確かに特徴はある気がしますね、人が必ず通る場所とか。先輩であるスマイルシーサーのヤースーさんから聞いてなるほどと思ったんですけど、生きているときにお化けが見える人は自分が死んだ後も亡くなった人が見えるんですよ。でもほとんどの人はお化けが見えずに死んでいくし、死んだ後もお化けは見えないですよね。つまりほとんどの人が一人ぼっちだし、誰かに気づいてほしいんですよ。だから人通りが多かったり、1日に一度は必ず誰かが来る場所に集まったりするんだろうなと思うんです。霊が舞台袖や踊り場にいやすいのはそういう理由でしょうね。

──本の中で霊に取り憑かれたら楽しいことをすれば良いというアドバイスがありましたけど、たとえば好きな映画を観たり美味しいものを食べたり、自分仕様にカスタマイズして良いのですか。

シークエンスはやとも - いま注目の霊視芸人が語る霊とのポップな付き合い方
はやとも:そうです。一番手っ取り早く、一瞬でできるお祓いがエロビデオを見ることです。僕の場合は払拭できないレベルになっているんですけど、大概の人は怖いという感情が乗っかっているから見えてしまうんですよ。たとえば心霊スポットなんて、逆の立場ならあんな所に住みたくないじゃないですか。でもそういう所へ行くと霊が見えたって人がいっぱいいる。それは怖いという環境が整っているので見えやすくなっているんです。たとえば自宅に一人でいたらラップ音が鳴ったりする。なんか怖いと感じたら、まずはお気に入りのエロビデオを見る。それでメンタルが回復したら、あとは好きな映画でもドラマでもお笑いでも良いので感情いっぱいに面白いと思えるものを見れば大抵はお化けなんて気にならなくなりますね。

──なるほど。今日は良い話がたくさん聞けました! どうもありがとうございました!

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