俵万智『サラダ記念日』から33年、7年ぶりの第6短歌集『未来のサイズ』が発売となる。 愛おしい石垣の自然、 石垣島から宮崎への移住、 中学生になり寮生活を始めた息子の成長、 親の老い、 大切な人との別れ、 想像膨らむ恋の歌、 そしていまのコロナ禍。
2013~2020年、 足かけ8年間の日常を紡いだ400首。 子を育てることは時代と社会に直面していくことだった。 研ぎすまされた言葉と、 深まる歌境。 定型の短歌だからこそ獲得できた、 三十一文字の箴言集ともいえる本書は、 「私たちはどう生きるか」を問う歌集でもあります。 現代社会への危機感をあらわにしながら、 未来への希望をつかんで離さない、 俵万智の真髄がここに凝縮されている。
俵万智『サラダ記念日』から33年、7年ぶりの第6短歌集『未来のサイズ』発売!

掲載歌 抄録

トランプの絵札のように集まって我ら画面に密を楽しむ むらさきに染まる雲あり「紫陽花」はこんな空から生まれた漢字 にんにくを牛乳で煮る優しさに子の反論は受けとめるべし 最後とは知らぬ最後が過ぎてゆくその連続と思う子育て クッキーのように焼かれている心みんな「いいね」に型抜きされて 別れ来し男たちとの人生の「もし」どれもよし我が「ラ・ラ・ランド」

あとがきより(抜粋)

コロナ禍の収束は見えておらず、 日常は、 まだぐらぐらしたままだ。 たぶん、 ぐらぐらしていることを意識しながら過ごすのが日常、 ということになっていくのだろう。だからなおさら、 ありふれたことが、 実は奇跡的なバランスの上にあることを、 忘れないでいたい。 そこから、 大切に歌を紡いでいきたい。 短歌は、 日記よりも手紙に似ている。 読んでくれる人の心に届くことを願って、 いま、 そっと封をします。
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