さる11月27日(金)、LOFT9 Shibuyaにて映画『音響ハウス Melody-Go-Round』公開記念トークイベントが行なわれた。 登壇者は、映画監督であり作曲家としても活躍する岩井俊二と本作監督・相原裕美。
30数年来の付き合いがあるというこのお二方。90年代は一時毎日顔を合わせていた時もあったとか。そんな二人の出会いについて相原は、
「最初は87年くらいだったと思うんです。岩井監督がまだオレンジハウスというイベント会社にいた頃。当時、自主映画が多く作られていて、岩井監督の作品を何本か観たりして面白いねって。それでPV制作を岩井さんにお願いして共にしたのがきっかけ」と話した。
トークは本映画『音響ハウス Melody-Go-Round』についての話から岩井自身の作曲家活動から本業である監督業の話、そして相原と共に関わったMVの現場話まで。 今の映画音楽について効果音のような音楽が増えている気がすると相原から聞いた岩井は、
「そっちの良さもすごいわかるんだけど、なんかもったいないですよね。単音で聴かせるというのがトレンドになってきてる。逆にそうではなく、クラシカルな感じの音表現でメロディアスの世界感を捉えられたらなというのが自分の中にはあるかも。『リップヴァンウィンクルの花嫁』は全部クラシックなんですけど、良いわけですよ。メロディアスな音楽もまた戻ってくるんじゃないかなと思ってます」と答えた。
そして、これまで自身の映画でも数多く音楽を担当している岩井、その中でも今回『花とアリス』『市川崑物語』『ヴァンパイア』『チィファの手紙』の4作品をとりあげ、その理由について
「岩井俊二名義でサントラをしっかりと作っているのが、この4作品なんです。実は昔は偽名(ペンネーム)なども使用していて、一人で音楽を作っているのに二人でやっているようにみせたり」と、驚きのエピソードも。 また今年9月に日本でも公開をした岩井俊二監督の『チィファの手紙』について、この作品は1月に公開された『ラストレター』の中国バージョンとのことだが、『ラストレター』では音楽は
小林武史、一方『チィファの手紙』は岩井俊二自身が音楽を手掛けている。その理由について
「中国版の音楽はどうしようかなと思っていたんですけど、いざプロデューサーたちと話していたら音楽は岩井だよね、って相談とかすることもなく決まったんですよ」と岩井監督がもともと音楽制作もしていたからこそ、海外でもそのように認識されていることを改めて実感した。 また、トークの終盤には会場に来てくださった観客の方より煮詰まったりした時にすることを尋ねられると、岩井は
「ひとまず寝ますかね。365日の中の9割は小説や脚本を書いているのでただただ考え続けます。夢にネタを求めたり。どっちかって言うと、本当に煮詰まって自分のやりたいことを図形化していくと危ないですね」と自身との闘いの一面を見せてくださった。 またその話に対して、相原監督からは自身も数多くの楽曲制作の現場に携わってきた観点から
「まさにこの『音響ハウス Melody-Go-Round』のテーマですね。自分が行けないところまで追求するにはセッションしかない」と話した。(イベント写真:北島元朗)