2020年、 YouTubeチャンネルでは初となるギャラクシー賞テレビ部門・フロンティア賞を受賞し話題をさらった「神田伯山ティービィー」では、 松之丞の名による最後の連続読みとなった『畔倉重四郎』全19席を紹介する前代未聞の試みを実施し、 現在、 その総再生回数は420万回を超えている。そして2021年、 伯山襲名後初の連続読み完全通し公演に『寛永宮本武蔵伝』をともなって、 あうるすぽっとに帰ってくる。
情熱的でドラマチックな迫真の語り、 芸の真髄が詰まった5日間、 講談界を牽引し歴史に名を刻む "伯山のいま" を、 ぜひお見逃しなくご堪能あれ。 2020年2月11日、 真打昇進とともに大名跡を襲名した 神田松之丞、 改め、 六代目神田伯山は、 東京都豊島区出身であることから「あうるすぽっと」とも縁がある。 あうるすぽっとへの初出演は、 2018年、 当劇場の人気企画“みんなのシリーズ”で、 日本の伝統語り芸を代表する旬の実力派を集めた『みんなの演芸』だった。 伯山は「講談を集中してじっくりと聴くには、 あうるすぽっとのような300席規模のブラックボックスの劇場空間が大変優れている」と感じたそうです。 自身の活動のなかで最も重きを置いている“連続物”の上演に当劇場が適した環境であるとして、 2019年1月に『慶安太平記』全19席、 2020年1月には『畔倉重四郎』全19席の“連続読み完全通し公演”に挑んだ。 いずれも前売りチケットは5日間の通し券のみであったにもかかわらず、 即日完売。 伯山の「連続物の楽しさを伝えたい」という強い思いに応えるかのように、 多くのお客様が、 緊密した贅沢な空間で気鋭の講談師の一言一句を堪能しようと、 連日足を運び大盛況となった。
『畔倉重四郎』完全通し公演2020より 撮影:橘 蓮二 伯山と、 彼が敬愛する師匠の神田松鯉が“講談の醍醐味”として強くこだわり続けている“連続物”は、 時代の変化にともない上演の機会が少なくなっている。 あうるすぽっとは、 演劇専用ならではの劇場の特性を活かして客席との一体感や高揚感、 加えて5日間をともに完走する充実感を最良のかたちで演出し、 伯山のパフォーマンスをよりいっそう輝かせる。 『寛永宮本武蔵伝』は伯山が初めて覚えた連続物で、 あうるすぽっとに初登場したときの読み物も本作の一席「狼退治」(『武蔵』第4話 )。 「狼退治」は一席物としても人気ですが、 連続読みの中で聴く機会は少ないため、 その点もファンにとっては楽しみのひとつとなるだろう。 伯山自身も「初心に立ち返って、 徐々にですが“真打の武芸物”を模索する第一歩にしたい」と意気込みを語っている。
緩急自在な語り口と巧みな張り扇のリズムで物語を引っ張り、 演劇的とも言える演技性の高い会話表現によって登場人物に息を吹き込む様が魅力で、 客席は情熱的でドラマチックな迫真の語りに息をのみ、 物語にのめり込んでいく。 真打として、 伯山の名では最初の連続物の通し公演となる本作では、 どのような舞台を見せてくれるだろうか。 講談人気の復活のために先陣を切り、 歴史に名を刻む“伯山のいま”を、 是非、 お見逃しなく。
『畔倉重四郎』完全通し公演2020より 撮影:橘 蓮二 今回は東京だけでなく、 あうるすぽっとと似た環境をもつ名古屋の西文化小劇場と福岡の福岡市科学館6Fサイエンスホールでも上演。伯山は本作について、 「宮本武蔵は、 江戸から東海を通って九州に向かう旅の話。 物語も西へ西へと旅するので、 各地のお客様には、 武蔵が近づいてくる感じも皮膚感覚で楽しんでいただけるものと思います」と話している。 また、 「連日、 同じところに通って話を聴くというのは、 この忙しい世の中では大変なこと。 でも、 特殊な会に参加するのはワクワクするもので、 生涯に一度あるかないかという方もいらっしゃるだろう。 お客様に通ってよかったと思っていただける大団円を迎えられるよう努力したいです」と意気込みを語っている。
神田 伯山 メッセージ
今回の連続読みは、 初心に立ち返って挑戦しようと思います。 稽古をし直すつもりで、 改めて言葉を大事にして、 一言一言に何か発見があると良いと思います。 全編を読み返すと発見がいっぱいあります。
途中、 これは必要がないのでは、 と感じるエピソードなども、 最終話で「あの話があるからこそ、 最後がこんなにもドラマチックになるんだ」ということがわかります。 お客様のなかには、 5日間にわたって連続物の会に通うことなんて生涯に一度の経験となる方もいるかもしれません。 僕も全力で一生懸命にがんばろうと思います。 伯山の名を継いだ今、 このライフワークについては、 お客様にも連続物の会だけは特別というか、 「連続物の時の伯山はちょっと違う。 鬼気迫るものがあるね」と思っていただけるよう、 “真打としての芸”を突き詰めていきたいと思っています。 [談](2020年10月)