国立映画アーカイブでは、 企画上映「1980年代日本映画――試行と新生」を、 2月16日(火)より約2か月半にわたり開催する。 日本が経済大国となり、 消費社会が到来した1980年代。
映画にもさまざまな変化が訪れた。 1970年代に始まる大作化の流れが一層顕著になる一方、 若年観客向けのアイドル映画やアニメーションがヒットし、 新たな企業やプロダクションが映画作りに参加、 何よりも新しい才能が続々とデビューを飾った。 映画界のこうした構造変化は、 現在にまで影響を及ぼす重大なものだったと言えるだろう。 本企画は、 当館が近年開催している「現代日本の映画監督」シリーズや佐々木史朗、 黒澤満といった映画プロデューサーの特集をふまえ、 時代の新しい流れを示した作品や、 社会的に話題となった作品など計44本(42プログラム)によって、 1980年代の日本映画を回顧する試み。 バラエティに富んだ映画を通じて、 時代が浮かび上がってくるラインナップとなっている。 現代日本映画の起源であるこの時期の作品を、 是非チェックしよう。

企画の見どころ

日本映画史に残るヒット作品、 社会現象になった話題作 当時の日本映画の配収記録を更新した大ヒット作『南極物語』(1983、 蔵原惟繕)や、 国税査察官と脱税者との対決を描いて流行現象を巻き起こした『マルサの女』(1987、 伊丹十三)、 スキーブームを先導した『私をスキーに連れてって』(1987、 馬場康夫)、 ベストセラー小説を映画化して大正時代の銀座をオープンセットで再現した伝奇ファンタジー『帝都物語』(1988、 実相寺昭雄)、 テレビドラマでの共演でホットな話題となっていた明石家さんまと大竹しのぶが主演した『いこかもどろか』(1988、 生野慈朗)などを上映。 巨匠たちの若き日の作品に注目 1980年代には新しい世代の監督がデビューし日本映画を活性化した。 相米慎二『翔んだカップル』(1980)、 森田芳光『の・ようなもの』(1981)、 黒沢清『神田川淫乱戦争』(1983)、 阪本順治『どついたるねん』(1989)、 周防正行『ファンシイダンス』(1989)など、 その後の日本映画をリードした巨匠たちの若々しい初期の作品に注目。 時代を魅了した俳優・アイドルたち 松田優作『陽炎座』(1981、 鈴木清順)、 夏目雅子『鬼龍院花子の生涯』(1982、 五社英雄)、 田中裕子『天城越え』(1983、 三村晴彦)など、 俳優の魅力を引き出した文芸作品を取り上げます。 また、 1980年代に「角川三人娘」と呼ばれた薬師丸ひろ子『翔んだカップル』(1980、 相米慎二)、 渡辺典子『晴れ、 ときどき殺人』(1984、 井筒和幸)、 原田知世『早春物語』(1985、 澤井信一郎) を上映。 さらに、 1985年結成のおニャン子クラブの人気が高まるなか製作された『おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!』(1986、 原田真人)、 批評的にも高く評価された、 男闘呼組主演『ロックよ、 静かに流れよ』(1988、 長崎俊一)も上映。
アニメーション映画の新展開 1980年代は、 現在も続く劇場用アニメーション人気が定着するとともに、 作家性が強く打ち出されて新境地が拓かれた。 『じゃりン子チエ』(1981、 高畑勲)、 『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984、 石黒昇・河森正治)、 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988、 富野由悠季)、 『魔女の宅急便』(1989、 宮崎駿)などを35mmフィルムでご覧いただける。 名匠たちの意欲作 大手の映画会社でプログラムピクチャーを製作していた監督たちも、 時代の新たな展開に反応し、 インディペンデントな環境で斬新な作品を生み出していく 『ミスター・ミセス・ミス・ロンリー』(1980、 神代辰巳)、 『陽炎座』(1981、 鈴木清順)、 『怪異談 生きてゐる小平次』(1982、 中川信夫)、 『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』(1985、 森崎東)など、 熟練の監督たちの実験精神に満ちた作品をチェック。
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