株式会社KADOKAWAは、人気ミステリ作家・貫井徳郎氏の最新小説『悪の芽』を発売。 格差社会、 いじめ、 家族、 SNSなど、 現代を生きる私たち自身に迫る問題に切り込んだ本作。
個人の話が「社会派」に
――『悪の芽』は、 『乱反射』『愚行録』など貫井さんの代表作を彷彿とさせるシリアスなミステリです。 格差社会、 いじめ、 家族、 SNSなどの問題を描いた、 私たち一人ひとりに向けた物語でもあると感じました。 着想はどこから? 貫井:社会派テーマで、 と編集者から依頼を受けて考えたんですが、 何も思い浮かばなかったんです。 「いま書きたいのは個人の物語。 個人の話を書かせてください」と言って書いたのがこれなんです。 ――意外ですね。 アニメの大きなイベントで入場待ちをしていた人たちが巻き込まれる無差別大量殺人が起こり、 犯人の斎木が自殺。 斎木と関わりのあった人たちを通して、 現代社会の負の側面が明らかになっていきます。 貫井:半分以上書いてから「あれ? これ社会派じゃない?」と気づいたくらいで、 自分では意図していなかったんですよ。 僕としては、 大事件の犯人と小学校で同じクラスだった安達という主人公が、 かつて自分が斎木にしたことが事件につながったのではないかと苦悩する、 安達個人の話のつもりで書いたんです。 ――安達は四十代前半のエリート銀行員。
