人間臭いキャラクターだなと思います
──まずは、ワイズ役オーディションの際のお話を伺えますか。
手塚(ヒロミチ):今回のワイズはテープオーディションだけだったんです。それもあって、受けてから結果をいただくまでがいつも以上に長く感じました。
──相手の求めるキャラクターイメージが分からないなかだとさらに緊張の気持ちは増しますね。
手塚:スタジオオーディションでもドキドキなので、緊張は変わらないです。でも、全く手探りというのは不安でしたね。
──手塚さんはワイズをどういうキャラクターだと思い描いていましたか。
手塚:読者として読んでいた時は、凄いカッコいいキャラだと思っていました。演じるにあたって役者目線で改めて読んでいくとメインキャラクターたちの中では特に人間臭いキャラクターだと感じました。勧善懲悪で悪に立ち向かうという感じでもなく人間臭い。お金に汚い一面もありますが、そこも全て合わせてカッコよく、実際の心根は優しい。ギャップがある所が魅力的だなと感じています。
──ワイズが人間臭いというのは私も感じていました。その人間臭さが読者目線に近いのかもしれないですね。『EDENS ZERO』はSF(スペースファンタジー)作品と言こともあって知らない世界を描いているので、そういった作品で人間臭さがあるワイズが居てくれるのは、心の面では繋がることが出来るので『EDENS ZERO』の世界をより身近に感じることが出来ます。
手塚:そういっていただけると嬉しいです。
──真島先生はコミックのあとがきで、ワイズは「主人公側のクズ」と書かれていますね。
手塚:そうですね(笑)。ワイズは不良ですし、やりたくないことはやりたくないと言ったり、その時々の欲望に素直なので、それを表現したのんでしょうね。
──そうですね。不良やアウトサイダーという事を真島先生なりの表現で表した言い方なんでしょうね。
手塚:そうだと思います。人間の本音の面ではそう思っているところはあるでしょうから、やっぱり人間臭いキャラクターだなと思います。
──私はワイズが作品の中で一番演技のふり幅が必要なキャラクターだなと感じています。もちろん、他のキャラクターを演じるにあたっても演技力が確かでないといけないのは言うまでもないですが、ワイズは不良とヒーロー、コメディとシリアス、そして50年の年齢差を同じキャラクターとして演じなければいけない。人間味があるからこそ複雑という事もあると思いますが、実際に演じる際に意識されていることを伺えますか。
手塚:この作品は時間軸が関係ない作品で、作中でもありますが同じ人間でも過ごした時間は違うんです。これからの歩みによっては違う未来をたどって違う人になるかもしれない、そういう意味では老人ワイズと青年ワイズは別の人間だと思って演じています。
──そうなんですね。
手塚:ただ、根底にある部分は同じ人間だという事も意識しています。実は優しいという部分や女好きといったところなど変わらない部分がです。年を取って丸くなるなど見た目が変化する部分はありますが、変わらないものがあるというのは作中でも見て取れます。老人ワイズと青年ワイズで共通している部分・違っている部分をそれぞれの年代でどう合わせるか意識して演じさせていただきました。
──青年ワイズならではの特徴はどこですか。
手塚:青年ワイズに関して言うと基本的にツッコミが多いところです。
──確かに。シキはボケですもんね。
手塚:レベッカも普段はツッコミなんですけど、レベッカも一緒にボケるときにツッコムのがワイズなんです。
──確かに。そこも演じ分けが必要になる訳なんですね。
手塚:基本的にワイズは本音で話すことが多い思うので、ストレートに演じるように心がけています。ワイズもあまり裏で計算をするという事をしないので。ホムラを怪しんでいたりとかはしていましたけど、結局そこも受け入れていましたし。この表現が正しいかは分からないですけど、あまり思慮深くなりすぎないキャラかなと思います(笑)。
──わかります(笑)。あとはお兄さん的な立ち位置なのかなとも思っています。
手塚:もしかしたらメンバーの中で一番常識人なのかもしれないですね。

今はよりリアルに感じることができています
──実際のアフレコ現場で石平(信司)総監督や鈴木(勇士)監督などにディレクションされたことなどありましたか。
手塚:原作を読んでいたがゆえに最初シキたちの事を敵視していたと時でも、ふいに優しくなってしまったり、親しさが出てしまうのをご指摘頂きました。ツッコミにも知っている人にするような親しさが出てしまったんです。そこを削いでニュートラルにシキたちと初めて会ったように演じる、ピーノに関しても気を使いすぎたりしないとか、出会ってあまり時間がたっていないワイズを表現するのは難しかったです。
──難しいところですね。人によってはそういうことが出ないように原作を読まないという選択をされる方もいらっしゃるそうですね。でも、キャラクターのバックボーンを知るという意味で、原作を読むことで解ることもあるのでどちらを取るかという事ですね。
手塚:そうですね。真島先生のファンで元々原作を読んでいたんですけど、そのファンとしての部分が最初演じる中で出てしまいました。
──実際、TV放送の初登場シーンは私も原作を読んでいて知っていましたけど、ドキッとしてしまう演技で素晴らしかったです。
手塚:ありがとうございます。今はコロナの影響もあって一斉に収録するのが難しい状況なのですが、そんな中でも制作さんがお芝居で絡みのある人をなるべく集めてくださって、ご配慮頂き収録しています。
──まだそんなに制限があるんですね。
手塚:毎回先に収録された方の音声も流していただけるんですけど、こういう熱量で演じているんだなという事が伝わってくるのでやっぱり一緒に演じることは凄く大切だと感じでています。家で台本を読んでいる時などにももちろん想像はしますが、実際に生で一緒に演じさせて頂くことでよりリアルな気持ちでお芝居に取り組むことができます。
──生と録音ではやっぱりそれだけ違うんですね。
手塚:声もそうでが、生だと演じている姿・表情も実際に見ることが出来ますから。

──ほかにアフレコで印象に残っていることなどはありますか。
手塚:演技という部分では少し違っていますが、12話目のアフレコでようやくシキとレベッカ役のお二人に今作品のアフレコで会えたんです。その時にお二方もおっしゃっていましたが、お互い「本当にちゃんと存在している」と思いました。僕も本物だとなって(笑)。僕たちもいまは放送にならないと全てが入っている状態が分からないので、あの時はようやく一緒に演じることが出来て嬉しかったですね。
──主人公チームでもそうなんですね。
手塚:早くこの状況が解消されたらと思います。ご挨拶くらいは入れ替わりのタイミングではあるのですが、隣でマイクの前で演じられている姿を見ることができると、やっぱり全然違いますから。
──放送されて1クール立ちますが、完成したアニメを観られていかがですか。
手塚:第1話を観たときは、なんて絵が綺麗なんだろうと思いました。第1話はまだワイズが居ないので、単純に視聴者として観ていましたね。エピソードを知っていても泣けたし、凄くいい作品だなと思いました。西川(貴教)さんのOP「Eden through the rough」も凄く熱いし、CHiCO with HoneyWorksの「冒険のVLOG」可愛くて、全編通して素敵な作品です。原作コミックも素敵なんですけど、アニメもアニメで凄くて、改めて素敵な作品なんだなと思いました。
──本当にみなさんの作品に対する愛を感じるアニメで、観ていて嬉しくなる作品でした。ワイズを演じられて作品に携わられたことで感じる『EDENS ZERO』の魅力を改めてお伺いできますか。
手塚:SF(スペースファンタジー)というベースの中に、時間という軸もある。青年ワイズとシキたちが出会うには時間軸がズレていないといけないわけじゃないですか。そういった広大な物語、作品のスケール感が魅力的でまだまだ広がりが出てくると思っています。キャラクターたちも沢山いて、そのキャラクターたちが敵も味方も含めてみんな立っている。観ながら一緒に冒険できて、旅先で出会う人々がいて、この話ではこういう人が居て…など様々な楽しみ方が出来る作品です。アニメに関しては真島先生の過去作品のキャラがカメオ出演しているので、そういうのを見つける楽しみもあります。あと、アクションがカッコいい!そのカッコいいアクションとSF(スペースファンタジー)の世界観、キャラの魅力、アニメではさらに音楽も素敵。爽快でとても楽しめる作品です。
──『EDENS ZERO』ならではの時間軸の複雑さ・要素が考察・想像を掻き立てられる作品で、これからの展開が楽しみです。
手塚:今までも十分面白いのですが、これからもっともっと楽しくなります。これからどんどん魅力的な仲間も増えていき、今まで以上に楽しめるのは間違いないので、是非これからも楽しんで一緒に冒険をしていただけたらありがたいなと思います。
