納得いく形でアレンジも出来ました
──まずは近況から、最近はどう過ごされてましたか?
米澤:音楽ばかりで、音楽以外は何もやっていない感じでしたね。音楽してるか休んでるか(笑)、休んでる時は本を読んでいます。前はフットサルをやったりしていたんですけど、怪我をしたらという思いもあって今はやっていないですね。
──今夏、オリンピック開催の頃は米澤さんのサッカーツイートをたびたび目にしていた記憶があります(笑)。
米澤:そうですね、サッカーは本当に見るのも好きなので見られる試合は見ています。日本の代表戦はちゃんと見て、あと一番好きなのはイングランドのプレミアリーグで、レスターシティが好きですね。日本代表の岡崎選手が2015年に移籍したのをきっかけに見るようになって、今もレスターシティをずっと応援してる感じです。
──いつかプレミアリーグを現地観戦できたら良いですね。
米澤:いや~、本当に見てみたいです! 海外でサッカーの試合を見ながら曲を作ったり出来たら最高ですね(一同笑)。
──その夢はいつか叶うと願って。では、新曲「冬のはじめ」ですが、これまでライブでも披露している良曲です。今、この曲をリリースしようと思ったのは?
米澤:前作「ラストシーン」がピアノ弾き語りで今までやったことのないスタイルだったので、次の曲はポップな感じが良いなというのは頭の中にありました。候補の曲を作ったりしつつ、「冬のはじめ」も含めて前に作った曲とも比較した中で、やっぱり「冬のはじめ」がポップだなと思いましたし、前のバージョンのアレンジにしっくり来ていなかった部分もあったのでその辺を作り直してリリースをしよう、という感じで今回、納得いく形でアレンジも出来ました。
──ベルの音も入ったりして華やかなアレンジの1曲ですがそもそも、いつ頃に作った楽曲でしょう?
米澤:僕が19歳ぐらいの頃です。コードを弾きながら“冬のはじめ”っていうフレーズが出てきて、確かサビのメロディと歌詞が同時に出来て。
改めて前向きな気持ちに
──冬はイベント事も多いし気分が高揚するシーズンですものね。“下りホーム”とか“急行が過ぎていく”といった歌詞には日常を感じつつ、2番の歌詞で“駐輪場で手ぶくろを 忘れたと気づいた”のあたりからは、すごくリアルに描写がなされているなと感じます。
米澤:これ、僕が手袋とか物とかを結構忘れちゃうんですよ(笑)。ひどい時には持っていたトートバックを気づいたら持ってなくて。慌てて友達と戻ったら普通に道端に落ちてたりとか。そういう忘れ癖がたま~にあるので(笑)。
──それは気をつけてくださいね(笑)。今回、改めてこの楽曲を録り直してみて、感じたことはありましたか?
米澤:普段の何気ない出来事を描きながら自分の忘れ癖を(歌詞に)取り入れる、“(手ぶくろを)忘れ”てしまったことで手が凍える、でもそれを曲の中では、君への期待感というプラスに転じられている内容で、あの頃、これから音楽で頑張るぞ、みたいな…色んなことをプラスに変えていくぞっていう、あの時の意識を思い出しましたね。ポップスのアレンジを今回やりながら、改めて前向きな気持ちにさせてくれた感じがします。
──なるほど、米澤さんにとってこの曲は10代で抱いた音楽への情熱も呼び覚ます楽曲でしたか。曲の後半では米澤さんのコーラスから曲が終わっていくまでがまたドラマチックな展開で、歌詞がないメロディだけでも聴き手にドラマを想像させる部分があると感じます。
米澤:ララララ~というのだけを聴かせるのではなくてベースラインもちゃんと聴かせたいなとかバランスを考えましたし、ギターソロを今回初めて入れてみたんですけど自分の曲で他の人にギターを弾いてもらうのも初めてのことで色々弾いてもらいながら、これだな! という、自分の気分を表現してくれるソロを選びました。アレンジを進めていく中で何となくの形が出来上がった時に、リズム感とか疾走感みたいなものがもう少し欲しいなと思ってギターのカッティングを入れてもらおうと思ったんですね。ピアノソロでも良かったと思うんですけど、でも何か、ギターなんだよなぁ、と思って。
──米澤さん楽曲なら確かに鍵盤で行っても良いのにギターサウンドなのは新鮮ですよね。
米澤:あと今回、ブラスを入れたのも新しいところでした。今まで自分の楽曲で、他のアレンジのお仕事も含めてブラスの音色を自分で打ち込んで入れるのはやったことがなかったんですよ。ベースとエレピ、あとドラムがある状態でプラス何かが必要だなというのはずっと考えていたタイミングで、ブラスを入れようと瞬発的に思ったと言いますか。ブラスの打ち込みは難しいなというのが何となく自分の中であって避けていたところがあったんですけど、でもバーンとやってみたら結構良くて、“あぁ、これじゃん!”ってなったのは良いひらめきでしたね。音楽活動を始める前にEarth, Wind&Fireを好きになったんですけど、それまではあまりブラスというものが好きではなくて。
──良い顔でお話しする姿を見ながら、今作での新しいトライが米澤さんの世界をさらに広げてくれそうな気がしますね。
米澤:そうですね。本当にそういうきっかけになるような気がします。
自分が考えていることをポップスに出来たら良いな
──ちなみに今、米澤さんが音楽的な部分での勉強と言いますか、どのような形で吸収することが多いですか?
米澤:サウンド的には洋楽からが一番多いかもしれないんですけど、そういうのを敏感に取り入れてやっている日本のアーティストも結構いますし、あとは身の回りのトラックメイカーの友達とも話したりする中でこれはアリかな? と思ったものを自分でも取り入れてみたりしてますね。割と自分はポップス志向で作ってますけど、トラックを聞かせるタイプの音楽をやっている友達も結構いるので、そういう人たちが考えていることを聞きながら、これはポップスにも昇華できるなと思ったものを自然に取り入れてやっているかな、という感じがします。
──お友達からも良い影響を受けながら今の米澤さんが、19歳の時に作った楽曲を自ら昇華させた1曲なんですね。ライブで聴ける機会も楽しみになりますが、今後の予定は?
米澤:新宿ロフトで12/27に行われる年末大感謝祭ではピアノ弾き語り一本でやろうと思っています。最近はバンドセットでライブをやることが多いんですけど、普段とはまた違うライブになると思うので楽しみにしていてほしいですね。
──素敵なゲストというのはまさに、米澤さんに良い影響を与えているお友達?
米澤:そうです。それこそアレンジ面だったり、普段からすごく相談させてもらっている人なので、すごく楽しみにしていてほしいですね。
──楽しみにしています。今日は話しながら、ポップスというワードが度々出て来たように思いますが最後に、米澤さんが描いていきたいポップスとはどんなものでしょうか?
米澤:やっぱりポップスというものが一番好きだし、自分が考えていることをポップスに出来たら良いなという気はしていて。でもポップスは自分のためだけに書くものではないと言うか。自分だけが分かる世界でいいやって作ってしまうとそれはポップスにはならない。例えば、自分が悩んでいることを描いて、聴いてもらう人にも“少し楽になれたかも”と思ってもらえたり、ポップスって他の人にも広げられる役割があると思うんです。自分としてはこれからも、そういう曲・そういうポップスというものを作っていきたいです。