
GWがいよいよ目前に。今年の連休は巣ごもり傾向にあるとのニュースも。
『LION/ライオン 25年目のただいま』
製作年/2016年 原作/サルー・ブライアリー 監督/ガース・デイビス 出演/デブ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、デビッド・ウェンハム
迷子になった5歳の少年の過酷な運命!
映画で感動する理由に、フィクションか、実話かは関係ない。ただし、実話と聞くと「こんなことが本当にあったのか?」という驚きが、感動にプラス作用を起こすのも事実。『LION/ライオン 25年目のただいま』は、まさにそんな一作。5歳で迷子になったインドの少年が、オーストラリア人夫婦に養子として迎え入れられ、サルーという名で成長。25年後、大人になった彼が、インドの家族への思いをよみがえらせ、何とか探せないか考えた末に、助けを借りたのはGoogle Earth(グーグルアース)! わずかな記憶を頼りに、サルーは自分が生まれた町を特定しようとする。
この『LION~』は、いくつもの段階で感動がもたらされるスタイルになっている。まず前半は、インドの町で兄と離ればなれになったサルーの、過酷な運命に胸を締めつけられる。5歳の少年が数々の危険な瞬間に見舞われつつ、命が救われ、新しい家族が見つかるプロセスに引きこまれる。オーストラリアの大人のパートでは、サルーが過去にさいなまれながら、恋人との関係に悩む姿が、これまた切ない。そして、インドの家族との再会がどう実現するのか。そこで涙腺が崩壊するのは確実。

『ドリーム』
製作年/2016年 原作/マーゴット・リー・シェッタリー 監督/セオドア・メルフィ 出演/タラジ・P・ヘンソン、オクタビア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー
有人宇宙飛行を影で支えた3人の黒人女性!
アカデミー賞でも作品賞にノミネートされた本作は、原題が『Hidden Figures』。直訳すれが“隠された人物たち”。つまり歴史に埋もれた重要な人たちということで、そこにスポットを当て、知られざる事実で感動させる。その流れがじつにうまく機能した一作だ。アメリカとソ連が宇宙開発を競い合っていた1961年。NASA(アメリカ航空宇宙局)のラングレー研究所で有人宇宙飛行のために、さまざまなデータの数値を計算するエキスパートたちがいた。そこで優秀な能力を発揮した3人の黒人女性にスポットを当て、彼女たちの奮闘をドラマチックに描いていく。
いくら先進的なNASAとはいえ、1961年は人種およびジェンダー差別への意識は発展途上。有色人種用のトイレが仕事場から歩いて5分以上かかるなど、当時の境遇には驚くべき事実がいっぱい。3人の主人公は、あちこちで反発を受けながら、それでも果敢に立ち向かっていく姿が清々しい。

『遠い空の向こうに』
製作年/1999年 原作/ホーマー・ヒッカム・Jr. 監督/ジョー・ジョンストン 出演/ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパー、ローラ・ダーン
仲間や父親との絆に涙する!
『ドリーム』と同じく、宇宙開発につながる物語からの感動作。こちらは人工衛星の打ち上げに興奮した高校生たちの実話だ。1957年、ウエストヴァージニア州の炭鉱町で、ホーマーを中心とした4人の仲間が『ロケット・ボーイズ』を結成。自宅の地下室や、自分たちで作った山小屋でロケット作りにいそしみ、何度も打ち上げに失敗しながらも試作を重ねていく。主人公のホーマーを演じるのはジェイク・ギレンホール。現在、演技派のトップスターとなった彼の、これは最初の代表作。ホーマーは後にNASAのエンジニアになり、彼の回想録が原作になっている。
最大の感動はラストに用意された『遠い空の向こうに』だが、そこに至るまでの過程で多くのポイントがあり、その描かれ方が真摯なので、観ているこちらの感情がじわじわ高ぶっていく。まず重要なのは、仲間との絆。

『グリーンブック』
製作年/2018年 監督・脚本/ピーター・ファレリー 出演/ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリニ
真逆な2人のロードムービー!
実話の映画化と聞くと、すべて正確に再現されているかと思われるが、あくまでも映画は“作り物”。実際の出来事にインスパイアされ、かなり脚色された作品も多数。『グリーンブック』はその代表例だ。1960年代、人種差別の意識が色濃いアメリカ南部を、黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーがツアーで巡る物語。ピアニストのドライバー兼ボディガードとして雇われたのが、イタリア系のトニー。天才アーティストで裕福、知的で育ちの良さも感じさせるシャーリーに対し、トニーは気が短く、相手に遠慮しないタイプ。何もかも真逆な2人のロードムービーは、予想どおり彼らに育まれる絆にフォーカスしていく。
『グリーンブック』は基本、コメディ。

『ソウル・サーファー』
製作年/2011年 原案・製作・監督・脚本/ショーン・マクナマラ 出演/アナソフィア・ロブ、ヘレン・ハント、デニス・クエイド
左腕を失ったヒロインの復活劇に感動!
不運に巻きこまれても、強い意志さえあれば人生は自分で前に進ませることができる……。そんな事実を教えてくれるのが、実在の人物の再起ストーリー。『ソウル・サーファー』のモデルとなったのは、ハワイのサーファー、ベサニー・ハミルトン。子供時代からサーフィンに親しみ、コンテストでも優勝を重ねた彼女が、13歳の時にサメに襲われて左腕切断という大ケガを負ってしまう。退院して間もなくサーフィンを再開するという不屈の闘志をみせるベサニーだが、かつてのような実力は取り戻せない。しかしタイの津波の被災地でボランティアを行うなど、多くの経験を通して彼女はプロサーファーとして復活する。
青春映画として素直に感動させる本作。
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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
photo by AFLO