
基本的に“ありえない”シチュエーションが、アクション映画を面白くする条件。しかし、そこにリアルな要素をうまく盛り込むことで“ありえなさ”が身近になる。
主人公となるのは、イギリス首相のサム・クラークと、アメリカ大統領ウィル・デリンジャー。明らかに性格やリーダーシップぶりも真逆の2人は、犬猿の仲。そのせいで両国の関係も悪化している。そこを何とかしようと会談が行われ、そのまま彼らはアメリカ大統領の専用機エアフォース・ワンに乗り込むのだが、恐るべき刺客を率いる武器商人によって信じがたい危機に見舞われることに……。ここまで書くと超シリアスな展開を予感させるが、作品のノリは快調で明るい。基本的に仲違いしている両首脳のやりとりが笑えるし、冒頭の武器商人グループが起こす事件から、ポイントとなるアクション場面のスケール感、臨場感、そして“ありえなさ”の度合いがスーパー級なので、そのメリハリで飽きさせない。そこにエアフォース・ワンの内部や、大統領専用車の機能など(おそらく)リアルな描写が挿入されるので、見どころが途切れない作りなのだ。
最大のポイントは、デリンジャー大統領が元アクションスターという設定。代表作は『ウォーター・コブラ』という一本で、決めゼリフが人気を呼んでいたりと、あからさまにアーノルド・シュワルツェネッガーをパロっている。堅実なクラーク首相が、そんな“俳優上がり”のデリンジャーを小馬鹿にする態度が楽しいし、映画ファンのテンションを上げるセリフも次々出てくる。クラーク首相のイドリス・エルバと、デリンジャー大統領のジョン・シナというのも超ハマリ役。すべてにおいて反発し、足を引っ張り合う2人が、敵の標的となることで結託していく流れにも説得力があり、要所でピンチを救う“陰のヒーロー”的キャラクターたちが、これまた胸アツの活躍を見せたりもする。
『ヘッド・オブ・ステイト』
製作総指揮・出演/イドリス・エルバ、ジョン・シナ 監督/イリヤ・ナイシュラー 脚本/ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック、ハリソン・クエリー 出演/プリヤンカー・チョープラー・ジョナス、カーラ・グギーノ、ジャック・クエイド 配信/アマゾン・プライムビデオ
2025年/アメリカ/視聴時間116分
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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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