
フランス語で“ここから”を意味する広尾の〈ディシ(d’ici)〉は、2024年にオープンして以来、ビストロとレストランに分かれていたが、2025年6月3日(火)にフレンチレストランとしてリニューアル。新シェフを迎え、フランス料理の魅力を最大限に楽しめるようになった。

シェフに就任したのは藤原裕太さん。一貫して店の厨房で学び腕を磨いてきた料理人で、オーナーシェフとして父親が腕を振るっていた西麻布〈ル レカミエ〉(現在は大倉山に移転)で調理の基礎を学び、国内外の名店で研鑽を積んできた。そして、2025年3月に〈ディシ〉の料理長に就任し、思う存分に腕をふるっている。
アラカルトやプリフィックスコースも用意されているけれど、藤原さんの料理を存分に味わいたいのなら、ディナー限定の“デギュスタシオンコース”(1万2500円)で決まり! アミューズ、前菜2品、メイン2品、デザート、小菓子、飲み物といった構成でフランス料理のフルコース仕立てになっている。

アミューズは“ポークリエットのカナッペ”。ポークリエットの脂に、グリーンペッパーがよいアクセントで、シャンパーニュとの相性もぴったり。

“天使エビのサラダ ココナッツ風味”は、フランス領ニューカレドニアで養殖されている高級海老“天使海老”を、麗しくプレゼンテーションした冷前菜。パパイヤを重ねて抑揚をつけ、底に敷かれたココナッツとジャスミンライスが、オリエンタルな雰囲気を醸す。

“フォアグラと鰻ととうもろこしのミルフィーユ仕立て ソースペリグー”は、トウモロコシのポレンタ(=トウモロコシ粉の粥)に、口溶けのいいフォアグラのポワレを重ね、さらには鰻のソテーをのせた一品。あしらわれたサマートリュフが軽やかな香味で、濃厚なペリグーソースが乙な味わい。

山口県のイサキを使用した“鮮魚のポワレとピサラディエール ニース風”は、ラタトゥイユソースはトマトと野菜の佳味が詰まっていて、ちょこんと置かれたフェンネルの花が可憐。玉葱とアンチョビを合わせたひよこ豆のピサラディエールは、よい口直し。

“特選牛モモ肉のロティ アーティチョークとジロール茸”では、北海道産交雑種のイチボ肉を、見事な焼き色にロティした。ジュ・ド・ヴィアンド=肉のソースは上味にあふれていて、ジロール茸、詰め物をしたアーティチョークの“バリグール”、サヤインゲンと、付け合わせもバラエティ豊か。

デザートは、シェフパティシエの宮脇修平さんが手掛ける。南仏プロヴァンス地方発祥のヌガーグラッセを、初夏を代表するラベンダー風味にアレンジした。シンプルで軽やかながらも、様々な要素が詰まっていてメリハリがある。
ワインをはじめとしたお酒は、支配人でソムリエの矢島聡さんが、藤原さんの料理にぴったりなものを提案してくれる。全部で26種類と、グラスワインが非常に充実しているのも驚き。

“シャンパーニュ・ロスト オリジーヌ ブリュット”(2400円/グラス、1万4800円/ボトル)はフレッシュな柑橘系のアロマが広がるシャンパーニュ。食事との相性もよく、最初から最後まで通してもいい。白ワインのイチオシは、“ドメーヌ・デュ・パテルネル カシー ブラン・ド・ブラン”(2400円/グラス、1万4000円/ボトル)。豊かではつらつとした香りがあり、複雑でまろやかな味わい。魚料理にしっかりと寄り添ってくれる。
ほかにも、白ワイン4種類、赤ワイン4種類、ロゼワイン1種類、オレンジワイン1種類からチョイスできるワインプリフィックス(4800円/3杯、6400円/4杯)や、中国茶ペアリング(3000円/3杯、4000円/4杯)もおすすめしたい。

外観

昼と夜で雰囲気が異なる店内

昼と夜で雰囲気が異なる店内

昼と夜で雰囲気が異なる店内

昼と夜で雰囲気が異なる店内
店内は雰囲気の異なる2つの空間に分かれており、シチュエーションによって使い分けられるのがいい。“ラウンジ”エリアは、シンプルシックな内装でカジュアルな雰囲気の中で肩ひじ張らずに食事でき、“メゾン”エリアは、ゆったりとテーブルが配されており、会食や記念日の食事にふさわしい落ち着いた雰囲気。居心地のいい空間ながらも、本格的なフランス料理を楽しめるのがいい。リニューアルした〈ディシ〉の本格フレンチをどうぞお試しあれ!
INFORMATION
●ディシ(d’ici)
住所:東京都港区南麻布5-2-40 日興パレス南麻布
営業時間:ブレックファスト 8:00~10:00、ブランチ 10:00~16:00(15:00LO)、ディナー 17:30~22:30(21:30LO)
定休日:月曜
TEL:03-6456-3186
URL:https://dici.tokyo/
※サービス料別(ディナータイムのみ)
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文=東龍 text:Toryu
1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。