スター俳優は、それぞれ最大の“当たり役”を持っている。しかしその当たり役が終わった後、次の代表作を得られるかどうかで、キャリアも大きく変わってくる。
『ナイブズ・アウト』シリーズ第1作『名探偵と刃の館の秘密』ではイギリスの資産家の豪邸、第2作の『グラス・オニオン』はギリシャの島が舞台だった。今回の『ウェイク・アップ・デッドマン』は、イギリスの小さな町で描かれるので、1作目のムードに戻った感じ。教会の司祭が説教を行い、説教台の奥の個室に一人で入った直後、死体で見つかるという事件が発生。当日、教会に来ていた人たちと司祭の関係が明らかになり、彼らが容疑者となってしまう。弁護士と息子、医師、SF作家、チェリスト、さらに教会を受け継いできた女性に庭師、新任の司祭……。混乱する現場に探偵のブランが現れるも、今度の事件は彼にとっても最難関のものだった。
謎だらけの殺人に、複数の容疑者、その人間関係、そして凶器にトリックなど、ミステリーファンにとって“大好物”な要素が今回も満点に備わった。このシリーズ、原作は存在せず、監督・脚本のライアン・ジョンソンのオリジナルという点も、つねに高評価を得ている。今回、ブランの相棒的存在になるのが、新任司祭で元ボクサーのジャド。2人のコンビが、シャーロック・ホームズとワトソンを連想させたりしつつ、そのジャドも容疑者の一人であることから、予想外の展開も用意される。そして、この手の作品は最後まで犯人がわからないように、映画ファンにおなじみの実力派スターが共演するのがデフォルトだが、その中で今回の注目は、『アベンジャーズ』シリーズなどで人気のジェレミー・レナー。
『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』12月12日配信
製作・監督・脚本/ライアン・ジョンソン 出演/ダニエル・クレイグ、ジョシュ・オコナー、グレン・クローズ、ジョシュ・ブローリン、ミラ・クニス、ジェレミー・レナー、ケリー・ワシントン 配信/ネットフリックス
2025年/アメリカ/視聴時間146分
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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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