今週末は、この映画に胸アツ!映画『ボディビルダー』 孤独な自己チュー男が一線を超えていく恐怖に震えが止まらない!

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傑作にもかかわらず、複雑な理由によって世に出るまでの時間が長くかかってしまう。『ボディビルダー』はまさしく、その運命を背負わされた映画だ。
2023年のサンダンス映画祭で大絶賛され、配給が決まるも、一度は公開が中止。2年かけてようやく人々の目に触れ、絶賛を集めることになったのだ。

これは一人のボディビルダーの物語。小さな街で祖父の面倒を看ながら、スーパーマーケットで働く青年キリアン・マドックス。彼が夢中になっているのがボディビルで、部屋には理想の肉体を持ったボディビルダーの写真を貼りまくり、過酷なトレーニングと食事制限を課して、コンテストでの受賞、さらにフィットネス雑誌の表紙を飾ることを目標にしている。キリアンは性格に問題を抱えており、ちょっとしたことで怒りが爆発。それを抑えられずに、過激な行動に出てしまう。女性とデートのチャンスを得ても、ボディビルの話ばかり。自己中心型で、相手をドン引きさせる。そんなキリアンが、周囲への不信感を募らせ、一線を超えていくドラマは、あのマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の名作『タクシードライバー』を彷彿とさせ、冒頭からラストまで観ているこちらの心を強引に鷲づかみ。強烈な映画体験が待ち受ける。
  
このキリアンを演じたのが、ジョナサン・メジャース。
18カ月にもおよぶトレーニング期間で、プロのボディビルダーらしい肉体をゲット。精神をコントロールできないキリアンの側面も、全身全霊で表現し、圧倒されまくる。メジャースは、マーベル作品の最強ヴィラン、カーン役でも注目され、これから公開の『アベンジャーズ』新作でも活躍する予定だった。しかし2023年、元交際相手の女性への暴行容疑で逮捕。真実は今も闇の中だが、『ボディビルダー』の公開はその時点で中止。マーベル作品からも降板が決まった。才能豊かな俳優がスキャンダルでキャリアを潰したわけだが、そんなメジャースの運命を重ねながら観ることで、キリアンの切実さ、狂気ともいえる言動がますます真に迫ってくる。シンプルに作品として強烈なインパクトを放つうえに、“現実”と“映画”が起こす想定外の化学反応が発生し、観終わった後も、しばらく身体の震えが止まらないかもしれない。

『ボディビルダー』2025年12月19日公開
製作総指揮・出演/ジョナサン・メジャース 監督・脚本/イライジャ・バイナム 出演/ヘイリー・ベネット、テイラー・ペイジ、ハリソン・ペイジ、マイク・オハーン 配給/トランスフォーマー
2023年/アメリカ/上映時間123分

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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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