毎年、年末のこの時期に多く作られるのが、クリスマスにまつわる映画。基本的にクリスマス映画といえば、誰でも楽しめるコメディやアクション系がメインのせいか、本作のように静かに深く感動を誘う作品は新鮮。
監督を務めたのは、ケイト・ウィンスレット。『タイタニック』のヒロインなどでトップスターとなり、『愛を読むひと』ではアカデミー賞主演女優賞を受賞。申し分ないキャリアを築いてきた彼女が、満を持して監督デビューした。ある一家の、クリスマスまでの数日間の物語。しかし彼らにとって今年のクリスマスは“来てほしくない”状況となった。ガンが進行した母親が倒れ、その余命が2週間後のクリスマスあたりと宣告されたからだ。老いた父も心と身体が不安定で、3人の娘と1人の息子は、母親との最後の時間をどう過ごすか悩む。結局、母親の意思で自宅や娘の家には行かず、病室に留まることにするのだが……。ストーリーだけ紹介すると、切なく悲しい作品のようだし、もちろん家族の最後ということでリアルなエピソードもある。ただ全体としては、家族の微妙な関係に共感ポイントがたくさん発見できるし、軽いユーモアや、ほっこりする感動も詰まっており、とても観やすい作り。初監督とは思えないウィンスレットの安定の演出力に拍手を贈りたい。
娘の一人をウィンスレット自身が演じているほか、イギリス人俳優を中心にキャストがみな好演。
『グッバイ、ジューン:幸せな人生の終い方』配信中
製作・監督・出演/ケイト・ウィンスレット 脚本/ジョー・アンダース 出演/ヘレン・ミレン、トニ・コレット、アンドレア・ライズボロー、ティモシー・スポール、ジョニー・フリン 配信/ネットフリックス
2025年/イギリス/視聴時間1時間56分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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