これまで配信した記事の中からブラッド・ピット出演作をまとめてご紹介!
『リバー・ランズ・スルー・イット』
製作年/1992年 製作・監督/ロバート・レッドフォード 共演/クレイグ・シェイファー、トム・スケリット
光る川面の反射で、キラキラと輝くブラピ!
ブラッド・ピットという名が映画ファンに知られるようになった作品といえば、1991年の『テルマ&ルイーズ』。年上女性を夢中にさせる役どころで、ハリウッドの正統派イケメンスターの出現が話題になった。
雰囲気から「ロバート・レッドフォードの再来」とも言われたブラピ。そのレッドフォード監督の下、主演を飾ったことで、人気が世界レベルで爆発したのが、この作品。ブラッド・ピットの“原点”として今作を記憶している人も多いはず!
ブラピが演じたのは、牧師を父にもつポール。何事にも真面目で勉強も優秀な兄に対し、やんちゃで行動的な弟だが、兄弟の共通点はフライ・フィッシングが大好きなことだった。故郷を離れ、仕事に就くなど大人へと成長していく兄弟だが、やがて胸を締めつけられるような運命に直面することになる。
その運命と、モンタナ州の川でフライ・フィッシングを楽しむ兄弟の姿が重ねられ、熱い感動が届けられる一作。光る川面の反射で、ブラピのイケメン度が倍増され、理想のスターの輝きが立ち現れることを、観た人すべてが認めることだろう。
『カリフォルニア』
製作年/1993年 監督/ドミニク・セナ 共演/デビッド・ドゥカブニー、ジュリエット・ルイス
タフで危険な香りがするブラピ!
『リバー・ランズ・スルー・イット』で多くのファンを獲得したブラピだが、その直後、早くもそのイメージを裏切るような作品が公開された。現在に至るブラピのキャリアを振り返ると、要所で危険なまでにぶっとんだ役を演じている。
今作と同年の『トゥルー・ロマンス』で、彼のそんな志向が続けざまに表れ、アイドル的スターではない魅力が早くも映画ファンを虜にした。画面に出てくるだけで、怪しい香りが漂い、まるで鋭利にとがったナイフのように、いつ襲ってくるかわからない静かな狂気もたたえるのが、この『カリフォルニア』だ。
この作品でブラピが演じるアーリーは、恋人アデールとともに、作家と写真家という初対面のカップルの旅に同行する男。
2組のクルマの旅が進むうち、アーリーとアデールの本性がじわじわ明らかになっていく。冒頭では、ぶっきらぼうだが、どこにでもいそうな若者というムードを出しつつ、時折、危うさを漂わせるブラピ。演技にはまだ荒削りな部分も感じるが、つかみどころのない魅力がむしろ役にハマっている。
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』
製作年/1994年 監督/ニール・ジョーダン 出演/トム・クルーズ、キルスティン・ダンスト、クリスチャン・スレーター、スティーブン・レイ
悲しみに湛えた瞳が、胸締め付ける!
物語のはじまりは、現代のサンフランシスコ。ジャーナリストの前に現れたルイと名乗る怪しげな男(ブラッド・ピット)は、自らが200年前、カリスマ性あふれるレスタト(トム・クルーズ)によって吸血鬼の仲間入りをさせられた半生を語りはじめるが……。
当初、トムのキャスティングに原作者アン・ライスが「イメージと違う!」と不満を表明するなど、撮影前から何かと物々しい立ち上がり方をした本作。しかしいざ完成すると、豪華キャスト、耽美的な美術、名匠ジョーダンの流麗な演出が冴え渡り世界的で大ヒットし、本編を観たライスも一転してトムの演技の激賞に回ったとか。対するブラピは、本作の”語り手”役を美しく、かつ悲しげに演じ切った。ただし、夜間の撮影が続いたこと、長時間に及ぶメーキャップ、撮影の雰囲気などに極度なストレスを感じていたそうでーーー。その辺りを考慮に入れて観ると、運命に翻弄される役柄と相まって、よりブラピへの思い入れが深まる作品だ。
『12モンキーズ』
製作年/1995年 監督:テリー・ギリアム 出演:ブルース・ウィリス、マデリーン・ストウ、クリストファー・プラマー、デヴィッド・キース
エキセントリック&ハイテンションぶりに驚愕!
ウィルス・テロによって人類の大半が死滅した未来。
本作をめぐってはウィリスとブラピがそれぞれ「自分のイメージからの脱却」を求めてギリアムに出演を直談判したことでも有名。特にブラピの役柄は謎の組織のリーダー格であり、精神科病棟で見せるケツ丸出し(ブラピのアイデアだとか)のエキセントリック&ハイテンションぶりは今や伝説として語り継がれるほど。役の習得のためボイスコーチに付いて舌と唇の動かし方を徹底的に鍛え上げたというから、その覚悟も相当なものだったようだ。本作の演技で彼は人生初のオスカー(助演男優賞)候補入りと、ゴールデン・グローブ賞受賞を果たしている。
『セブン』
製作年/1995年 監督/デヴィッド・フィンチャー 共演/モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロー
ワイルドさと美しさが同居!
“GLUTTONY=暴食”として殺された肥満の男、“GREED=強欲”として殺された悪徳弁護士……。キリスト教の“七つの大罪”をモチーフにした猟奇連続殺人事件を追うことになった退職間近の刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と、若手刑事のミルズ(ブラッド・ピット)。ジョン・ドゥ(ケヴィン・スペイシー。日本で言うところの“名無しの権兵衛”“山田太郎”的な偽名、匿名)を名乗る犯人が自首してきたが、“七つの大罪”の残るふたつ“ENVY=嫉妬”と“WRATH=憤怒”の死体はまだ発見できていない。取引を持ちかけたジョンは、サマセットとミルズをある場所に連れて行き……。
予測不可能な意外すぎる展開、彩度の低い映像で感じさせる不穏な空気、カイル・クーパーが担当した斬新なタイトルバックとエンドロール。
『デビル』
製作年/1997年 監督/アラン・J・パクラ 共演/ハリソン・フォード、マーガレット・コリン
若者らしい過激な情熱!
IRAの活動家フランキー(ブラッド・ピット)と引退間近の警察官トム(ハリソン・フォード)。立場は異なれど、同じアイルランド系というルーツを持つふたりの奇妙な友情と対峙を描いたサスペンス・アクション。武器調達のためにNYにやってきたフランキーは仲介者の紹介で準備が整うまでトムの家に居候することになる。ごく普通の家庭で束の間の穏やかさを感じるフランキーと、若いフランキーに親身になるトムの温かな描写と、銃撃戦などの激しいアクションシーンの対比に引き込まれる。
特にブラッド・ピットの、ハードでかっこいい役柄の中に時折見せる、庇護欲を駆り立てる子犬のような瞳と、お父さん然としたハリソン・フォードの渋みがいい。アイルランド独立運動を率いた武装組織IRAや、アメリカにはアイリッシュ系移民が多いことなど、背景もわかっているとより興味深いかも。もちろん何も知らずに見ても面白い!
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』
製作年/1997年 監督/ジャン=ジャック・アノー 出演/デヴィッド・シューリス、B・D・ウォン、マコ岩松、ダニー・デンゾンパ
スケールを増した存在感に圧倒される!
第二次世界大戦の勃発期。ヒマラヤ登頂に挑む登山家ハインリヒ・ハラーは連合軍によって身柄を拘束されながらも収容所から脱走し、過酷な自然を生き抜いてチベットへ到着する。そこで西洋文化に関心を寄せる若きダライ・ラマ14世の目に留まり、家庭教師となって親交を温めていくのだが……。フランスのジャン=ジャック・アノー監督がアンデス山脈の麓にセット建造して撮影したことでも話題を集めた壮大なヒューマンドラマ。
序盤のハラーは功名心に焦るあまり、仲間との協調性に欠け、妻と生まれてくる子供を省みることもない。だが、髪と髭がボーボーに伸びきった状態で命からがらチベットにたどり着き、さらにはダライ・ラマとの最初の出会いで金色の髪を無邪気にくしゃっと鷲掴みにされてからは、身も心もどんどん変わっていく。厳しくも美しい自然とチベット文化の精神性を背景に、すっかり一皮剥けたブラッド・ピットの人間的なスケール感を心ゆくまで堪能したい。
『ファイト・クラブ』
製作年/1999年 監督/デビッド・フィンチャー 共演/エドワード・ノートン、ミートローフ
野心的な作品で、光るダークでワルなブラピ!
アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『12モンキーズ』や、連続殺人犯を追う『セブン』など、ダークで過激な役が目立つようになったブラピにとって、その方向性の極致と言っていいのが『ファイト・クラブ』だ。ブラピが演じるのは、石鹸のセールスマンだと言って、主人公の“僕”に接近するタイラー。
本気で殴り合う喜びを教えるタイラーは、“ファイト・クラブ”を組織し、犯罪行為にも手を広げるようになる。タイラーは主人公の“鏡”のような存在。演じるブラピも、妙な親しみやすさと、ミステリアスな雰囲気を醸している。明らかにほかの作品と違う彼が、ここにいる。
役作りのためにボクシングやテコンドーのトレーニングを積んだというブラピ。ファイターとしての理想的な肉体美を作り上げたのには、ひたすら感心。タイラーは話芸も巧みで、人生や映画に対する“うんちく”も面白い。
『セブン』に続いてのデヴィッド・フィンチャー監督作品で、サブリミナルの画像が挟み込まれるなど、大胆な演出がぎっしり。衝撃のクライマックスまで、1999年の作品ながら、いま観ても“新しさ”を実感できる野心作だ。
『ザ・メキシカン』
製作年/2001年 監督/ゴア・ヴァービンスキー 製作総指揮・脚本/J・H・ワイマン 出演/ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、J・K・シモンズ
伝説の銃を手にするのはいったい誰だ!?
はじまりは一本の奇想天外な脚本だった。これに心底惚れ込んだプロデューサーは知名度の低い俳優を起用して低予算で映画化するつもりだったのだが、どこからかブラピとロバーツが脚本の噂を聞きつけ「ぜひやりたい!」と名乗りを上げ、事態はトントン拍子で進み出すことに。かくも多くの映画人を虜にした本作は、”メキシカン”と呼ばれる曰く付きのアンティーク銃をめぐって争奪戦が繰り広げられるクライム・コメディ。ブラピはギャングの命令でこの銃を回収するためにメキシコへ飛び、恋人役のロバーツは全く別行動でラスベガスへと車を走らせる中、この銃をめぐる二重三重の陰謀に巻き込まれてしまう。
人気絶頂期の二人の共演ゆえ、彼らのやりとりも大きな見どころなのだが、それ以上に、殺し屋役のジェームズ・ガンドルフィーニが添える絶妙な存在感が素晴らしい。ロバーツと行動を共にする中で愛の指南役となり、守護天使にもなって彼女を守るその姿。ラストで思いがけない名優が登場するなど、隠し球をいろいろ秘めた快作である。
『トロイ』
製作年/2004年 監督/ウォルフガング・ペーターゼン 共演/エリック・バナ、オーランド・ブルーム
勇敢で強靭、そして肉体美!
古代ギリシアのトロイア戦争をモチーフにした歴史アクションスペクタクル。よく知られているホメロスの叙事詩『イリアス』のように神々が登場するわけではなく、人間ドラマとして描いている。トロイの王子パリス(オーランド・ブルーム)が、恋に落ちたスパルタの王妃ヘレン(ダイアン・クルーガー)を連れ帰ってしまったことから、トロイVSスパルタをはじめとするギリシア連合軍の戦争が勃発。
勇敢、強靭、ヒロイック、肉体美。ブラッド・ピットの英雄ぶりが際立つ。『トロイの木馬』のシーンや、アキレス腱の語源にもなっている弱点である踵を射抜かれるシーンなど有名なエピソードや、古代ギリシアの作り込まれた世界観も見どころ。ちなみに出演作の中で死んでしまう確率が高いことで知られるショーン・ビーンは本作ではオデュッセイア役なので最後まで生き延びます。
『Mr.&Mrs.スミス』
製作年/2005年 監督/ダグ・リーマン 共演/アンジェリーナ・ジョリー、ヴィンス・ヴォーン、アダム・ブロディ
ブラピと恋に落ちた作品!
建築設計事務所を経営するジョンと、サーバの管理会社を経営するジェーンは、コロンビアのボゴタで出会い、わずか6週間で結婚。NYで暮らしている。しかし結婚から6年が経ち、お互い忙しくすれ違うことも増え、それぞれ隠し事をしていることが発覚。改めてカウンセリングを受けることになるが、実はふたりはそれぞれプロの暗殺者という裏の顔を持っていた……。
クルマをぶつけ合い、ナイフを振り回し、家中に隠してあった武器で銃撃戦をするという、激しすぎる夫婦喧嘩が楽しい本作。アクションだけでなく軽妙な掛け合いも見どころ。この撮影でアンジーと出会い、恋に落ちたといわれている。『ボーン・アイデンティティ』のダグ・リーマン監督によるテンポのよい演出が際立つ。
『ベンジャミン・バトン 数奇な運命』
製作年/2008年 監督/デビッド・フィンチャー 共演/ケイト・ブランシェット、タラジ・P・ヘンソン
ブラピのイケメンの変遷が一気に観られる!
若い時代から、中年になった現在まで、それぞれの年代でカッコいい男のトップに君臨し続けたブラピ。その“変貌”を一気に再現してくれるのが、この作品だ。
主人公のベンジャミン・バトンは、生まれたときに80歳の肉体で、時間とともに若返っていくという、“逆行人生”を歩む。背景となるのは、第一次世界大戦の終わりからの激動の歴史。かなり壮大で突飛なシチュエーションだが、軸になるのはベンジャミンのラブストーリー。
監督は、ブラピの起用が今回で3度めとなる鬼才、デヴィッド・フィンチャー。新たなビジュアルへの挑戦が大好きな監督ということで、特殊メイクや、顔の演技をキャプチャーしたCGなど、最大限に駆使される特殊効果が見どころ。
戦争アクションから、恋人デイジーの踊るバレエといった幻想的シーンの数々、エモーショナルな人間ドラマ……。あらゆる映画のジャンルが詰め込まれたぜいたくな内容でもある。
『オーシャンズ11』
製作年/2001年 監督/スティーヴン・ソダーバーグ 共演/ジョージ・クルーニー、マット・デイモン
凄腕の詐欺テクニックを知れば、対処すべきセキュリティ方法がわかる!
どんな警備も突破する凄腕たちを前にすると、その安全神話も崩壊気味だが、シンプルに普段と違う出来事や人がいたら怪しむことが第一と思わせるのが本作。
凄腕の詐欺師ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)が犯罪スペシャリストの仲間たちとともに、ラスベガスのカジノの金庫破りに挑む。金庫破りと一口に言っても、ダニーらが狙うのはセキュリティ万全の巨大金庫。実行当日、ベガス3大カジノの金が集まる金庫には1億6000万ドル以上の金が眠っているらしく、プロジェクトは壮大さを極めていく。
リーダーのダニーをはじめ、カジノのディーラー、事情通の資産家、爆破の専門家、中国雑技団の曲芸師、通信技師、スリなど、揃った面々は全員その道のプロフェッショナル。いわば、総力戦のため彼らの計画を見破るのはプロでもなかなか難しいうえに、そもそもカジノ経営者でもない限り気にする必要はなし?
とはいえ、カジノの防犯カメラをハッキングする際のテクニックや変装のハウツー、時間ごとに変わる暗証番号にどう対応するか、街を停電させたいときはどうすればいいのかなど、その詐欺のやり口は知っておいて損はない。要するに、どんなにセキュリティが万全でも、破られない金庫などないということ。そう考えると、ホテルの部屋の小型金庫を過信するなんてのは大間違いかも……。
『マネーボール』
製作年/2011年 製作・出演/ブラッド・ピット 監督/ベネット・ミラー 共演/ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン
ブラピを一番身近に感じられる!
数あるブラピの出演作の中で、最も共感しやすいのは、この『マネーボール』のキャラクターかもしれない。メジャーリーガー時代は派手な成績を残せなかったビリー・ビーンは、スカウトに転身してその才能を発揮。オークランド・アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)に就任する。
ビリーがGMとして取り入れたのが、データ重視で選手を評価する“セイバーメトリクス”。ほかの球団とは違う独自なアプローチだった。予算の少ない球団が、この方法で改革され、快進撃につながる物語が、軽快なエンタメ的ノリで描かれる。
ビリー・ビーンの奮闘が見ものである今作。頭の固い球団の古参たちとのバトルや、成績は目立たないがポテンシャルを秘めた選手への励まし。熱さと、きめ細やかさという“理想の上司”の姿が、ブラピのまっすぐな演技と化学反応を起こし、チームの変貌にぐいぐい引き込まれる感じだ。
辣腕をふるいながらも、あるジンクスを信じて重要なゲームではひとりで時間を過ごすビリー・ビーン。その孤独なシーンのブラピは、キャリアでも最高の演技をみせてくれる。
『ワールド・ウォーZ』
製作年/2013年 監督/マーク・フォースター 共演/ミレイユ・イーノス、ダニエラ・ケルテス
クールかつハードボイルド!
謎のウイルスが世界中で蔓延している中、ウイルスに感染したゾンビと人類の戦いを描いたパニック映画。ブラッド・ピットは元国連職員のジェリー・レイン役で、妻と娘を安全な空母に避難させ、自らはワクチン開発と情報収集のために、人類滅亡まであと90日と言われる終末世界へと旅立つ。
死者が蘇ったのではなく、“人間の感染症”という設定なので、本作のゾンビはめちゃくちゃ走る! 攻撃性の高いゾンビが群衆で押し寄せてくる描写は呆気にとられるほどの大迫力! 特にイスラエル‐パレスチナ間にある壁をゾンビが何十万と重なって超えてくるシーンは、民族間で分離している現実問題を彷彿とさせる。
ブラッド・ピットは何があっても妻と娘を守ろうとする父としての頼りがいや安心感、妻を優しくハグ&キスする際の夫としての愛情深さ、命を懸けた戦いに身を投じていく際のクールかつハードボイルドを体現していてかっこいい。
『フューリー』
製作年/2014年 監督/デヴィッド・エアー 共演/シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン
統率力のあるタフガイ!
第二次世界末期、ナチス・ドイツ内で戦う連合軍所属の戦車“フューリー”。クルーには歴戦の猛者が集まる中、“手違い”で配属されてしまった入隊2ヵ月で実戦経験のない若者ノーマン(ローガン・ラーマン)の目を通して戦争の残酷な実態を容赦なく描く。戦闘シーンはかなりリアルで生々しい描写もあり。
ブラッド・ピットは全身に激戦を潜り抜けてきたことを表す傷のある、リーダー的存在のドンを演じる。ナチス・ドイツをとことん憎み、白旗を振ってきたドイツ兵でも情け容赦なく殺す男だ。
一瞬の判断の遅れが味方陣地に多大な被害をもたらせることを知っていて、無言でも威圧感がある佇まいや鋭い眼光のみでほかのクルーを制するような、死すらも恐れていないような。それでいて戦地においてはこの男についていけば間違いないと思わせるような。そんなドンをブラッド・ピットが好演している。
『マリアンヌ』
製作年/2016年 監督:ロバート・ゼメキス 出演/ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール
諜報員同士の成りすまし夫婦がむかえる結末とは!?
その”出逢い”は、スリリングで情熱的だった。第二次大戦下のカサブランカで二人は諜報員として出会い、仲睦まじい夫婦に成り済ましたまま、現地のドイツ大使の暗殺に打って出る。初めてのミッションはこれ以上ないほど大成功。やがて彼らは猛烈に愛し合い、ロンドンで新婚生活を始め、やがて子宝に恵まれるなど未来は輝かしいものに見えた。しかし……。
序盤は、名作『カサブランカ』(42)にも似た空気感を織り交ぜながら男女の駆け引きを描き、かと思えば後半、事態は予想を遥かに超えた心理戦の様相を呈しはじめる。主演のブラピはかつてアンジェリーナ・ジョリーと『Mr.&Mrs.スミス』(05)に主演したが、本作に少なからず重なり合うテーマとエッセンスを感じ取る人もきっと多いはず。ゼメキス作品ならではの特殊効果も健在で、砂嵐が吹き荒れる中、クルマの座席で愛し合う二人を映すカメラが、窓ガラスをすり抜けて遠ざかっていく場面など、クラシカル&マジカルな映像そのものがまるで一人のスパイの如く介在しているのが印象的。
『アド・アストラ』
製作年/2019年 製作・出演/ブラッド・ピット 製作・監督・脚本/ジェームズ・グレイ 共演/トミー・リー・ジョーンズ、リヴ・タイラー、ジョン・オーティス
近未来の宇宙描写にワクワクする!
冒頭の大事故にはじまり、月や火星に建設された宇宙基地など、これまでのSFアクション映画では観たことのないビジュアルが展開。しかも、地球から月への移動が、まるで旅行のような手軽さになっているなど、近未来の風景に驚かされる。あまりのリアルさに、ついついスクリーンの端まで注意深く見てしまうほどだ。一方で月面でのカーチェイスなど、かなり思い切った描写も用意されているから面白い。特に、救難信号を出している宇宙船を救いに行く場面は、衝撃的なのでお見逃しなく!
地球から43億㎞もの旅を描く本作は、マクブライドの複雑な心理面にもフォーカスしている。SFアドベンチャーの興奮する映像に見入っているように思えるが、実は主人公の深~い人間ドラマが作品世界へ引きこんでいるのだ。そう、これがまさにブラピマジック。彼の集大成といえる理由でもある。ちなみに、この映画をたとえるなら、クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』に近いムードかも。なので、それにハマった人には生涯最高の作品になるかも!
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
製作年/2019年 製作・監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 共演/レオナルド・ディカプリオ、マーゴット・ロビー、エミール・ハーシュ
ブルース・リーと戦うブラピ!
タランティーノがハリウッドへの果てしない愛を捧げた映画なので、オタク要素は満載。けれども、映画マニアでなくても入りこみやすい内容。ただ、ひとつだけ観る前に押さえておきたいのが、シャロン・テート殺害事件。当時、気鋭の監督だったロマン・ポランスキーの妻で新進女優だったシャロンが、カルト集団によって惨殺されてしまう。それにより、ハリウッドのムードが一変。果たしてタランティーノはそれをどう描くのか? 本作ではシャロンも登場し、その隣人がディカプリオ演じるスター俳優リック(架空の人物)。そんな設定になっている。
CGやセットを極力使わずに再現した1969年のLAの街並みやカルチャーは必見。さらにブルース・リーとブラピが闘うなど、見どころの連続だ。なかでも最大のポイントは、やはり2大俳優の輝きだろう。ピークをすぎた俳優リック役を味のある演技で表現するディカプリオもいいが、とにかくかっこいいのがブラピ。武骨なキャラ、クリフ・ブース役は彼のキャリアでも最高といってもおかしくない。スタントマンとしての身体能力や怖いもの知らずなタフガイぶり、はたまた愛犬とのやりとりなど、実に男らしくてチャーミングなのだ。この役でオスカーを獲得した。
『ザ・ロストシティ』
製作年/2022年 製作・出演/サンドラ・ブロック 監督/アダム・ニー&アーロン・ニー 出演/チャニング・テイタム、ブラッド・ピット、チャニング・テイタム、ダニエル・ラドクリフ
ブラピが意外性を発揮!
ハリウッド大作といえば、スターたちがどこまで魅力をアピールしていそうかで“観たい指数”も大きく変わってくる。期待どおりの活躍をしているか? あるいは期待を裏切る暴走で楽しませるか? このあたりの条件をクリアするという意味で、『ザ・ロストシティ』は必見の一本だ。
主演はサンドラ・ブロック。それを聞いて、心に少しでも引っかかる人なら、冒頭から楽しめることは間違いない。人気のアドベンチャー小説を次々と執筆する作家が、自ら空前の大冒険を強いられるというストーリー。小説家のロレッタは、自作のイメージキャラクターでもあるモデルのアランとともに、新作発刊に合わせてプロモーションのツアーを開始。ファンイベントなどで盛り上がるなか、ロレッタは何者かの手によって誘拐され、南の島へ連れて行かれてしまう。とある金持ちが、伝説の古代都市の場所を発見するため、ロレッタの知識を利用しようとするのだが……。モデルのアランもロレッタ救出に向かうが、島では思わぬハプニングも続き、予想不能のアドベンチャーへとなだれ込んでいく。
宣伝ツアーのためのゴージャスな衣装のまま、島での大冒険でズタボロ状態になるロレッタは、サンドラ・ブロックが演じるからこそ豪快で笑える。そして筋肉自慢だが、どこか頼りなさ満点のアランは、チャニング・テイタムがその出世作『マジック・マイク』も思い出させ、こちらも水を得た魚のごとくノリノリだ。意外性を発揮するのは、ブラッド・ピット。古代都市が眠るとされる島での重要なキーパーソン役ながら、まさか、まさかの運命に! さらにハリポタ時代は遥か昔となったダニエル・ラドクリフの危うすぎる演技も味わい深し。俳優たちの振り切った怪演と、南の島での過激なアクションが見事なケミストリーを生んで、余計なツッコミも忘れさせる勢いが全編に充満。
『ブレット・トレイン』
製作年/2022年 原作/伊坂幸太郎 製作・監督/デヴィッド・リーチ 脚本/ザック・オルケウィッツ 出演/ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、真田広之、サンドラ・ブロック
キレキレの動きに注目!
伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』を、ハリウッドが映画化した本作。日本のコミックやアニメのハリウッド実写化はこれまで何度もあったが、小説からというパターンは珍しい。原作では東京発/盛岡行の新幹線で、プロの殺し屋やワケありの面々が激しい攻防を繰り広げるが、この映画版は東京発/京都行の超高速列車が舞台。ブラピが演じるレディバグ(てんとう虫)が、列車内のブリーフケースを奪ってくるように指令を受ける。しかし車内には何人もの殺し屋や、恨みを晴らそうとする者、罠の仕掛け人が乗り合わせており、簡単に終わると思ったレディバグの仕事は、とんでもない闘いへと発展していく。とにかくキャラが濃い殺し屋たちが、激闘アリ、騙し合いアリ、何でもアリ(!?)で、走る列車と同じくノンストップで入り乱れ、痛快そのもの。
『バビロン』
製作年/2022年 製作総指揮・出演/トビー・マグワイア 監督・脚本/デイミアン・チャゼル 出演/ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、オリヴィア・ワイルド、ジーン・スマート
別次元のかっこよさ!
監督を務めたのは、デイミアン・チャゼル。あの『ラ・ラ・ランド』で史上最年少のアカデミー賞監督賞に輝いた天才。『ラ・ラ・ランド』でも映画の世界をロマンチックに切なく取り入れていた彼が、今回の『バビロン』では強烈なエピソードもぎっしり詰め込んだ。いい意味での“どぎつい”センスも炸裂する。背景は1920年代のハリウッド。映画がサイレントからトーキーに移る過渡期に、映画製作やスターを夢みる若者たち、大物俳優や監督、プロデューサーが、超濃厚な人間ドラマを繰り広げる。CGが使えない戦争アクション大作はどう撮影されたのか。華やかさを競ったパーティでは、どんな乱痴気騒ぎが起こっていたのか。観ているこちらを当時のハリウッドのド真ん中に放り込む作り。“超強烈”な描写ではじまるオープニングから、ただならぬ作品であることを予感させてくれる。
『ウルフズ』
製作年/2024年 製作・監督・脚本/ジョン・ワッツ 出演/ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、エイミー・ライアン、オースティン・エイブラムス 配信/アップルTV+
ジョージ・クルーニーと16年ぶりの共演!
ジョージとブラピの過去の共演といえば、2001年から2007年までの『オーシャンズ』シリーズが有名。その後、2008年のコーエン兄弟監督の『バーン・アフター・リーディング』でも共演しており、『ウルフズ』はそれ以来のタッグとなる。今回2人が演じたのは、ベテランの“フィクサー”。世の中に知られてはいけない事件や事故を、すべてなかったことにする裏社会のプロフェッショナル。しかも単独で処理することから、一匹狼=ウルフというイメージだ。そんな彼らが、ある現場で鉢合わせしてしまう。ニューヨークの高級ホテルのスイートルームで、ある著名人がスキャンダル的な事件に巻き込まれ、すぐさま処理が必要だったことから、2人が別ルートで呼ばれたのだ。いわゆるダブルブッキング。両者にとっても予想外の事態によって、危険な一夜がスタートすることに……。
『F1®/エフワン』
製作年/2025年 製作・監督/ジョセフ・コシンスキー 製作・出演/ブラッド・ピット 脚本/アーレン・クルーガー 出演/ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデム
2025年を代表する作品!
スターのオーラが何年経っても失われない俳優が何人かいるが、その一人がブラッド・ピットなのは間違いない。俳優としてはもちろん、プロデューサー業でも野心的プロジェクトを送り出す大活躍。そんなブラピの、今も衰えない“カッコよさ”を凝縮させたのが、このF1レーサー、ソニー役だろう。かつて天才ドライバーの名を欲しいままにした彼が、最弱チーム“APX”にスカウトされる。チーム期待の新進ドライバーのジョシュアは、30年間も第一線から退いていたソニーに反発するも、やがてチームは快進撃の兆しを見せはじめ……。ソニーのレース人生は自由奔放でワイルドそのもの。ドライバーとして雇われても長期契約はせず、運転手のバイトをしたりもする。しかし自身の培ったテクニックと勘は、次世代の才能に引き継ぎたい。誰もが憧れる生きざまに、ブラピのキャリアが重なり、自然と胸が熱くなってしまうのだ。
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