『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』
やっぱり『アバター』は凄い。舐めたらアカンと改めて痛感させられる興行展開だ。
2025年12月19日に公開されたシリーズ第3作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は、2026年1月中旬の時点で全世界興行収入が13億ドル(約2000億円!)を突破。ちなみに日本でも20億円越えのヒットにはなっているのだが、まだ『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(52.8億円)や『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(49億円)などに大きく負けており、これは諸外国に比べて例外的に地味な展開。地球から4.37光年離れた衛星パンドラの先住民ナヴィ――彼ら“青いキャラクター”への賛否が世間ではいまだに呟かれたりするが、しかし世界規模で見ると、我ら地球人たちの多くは熱狂してIMAX3Dのパンドラ世界に詰めかけているのである。
言うまでもなく、オールタイムの世界興収ランキングで堂々歴代トップに輝くのが、ご存じ2009年の『アバター』第1作(約29億ドル)だ。第2位の『アベンジャーズ/エンドゲーム』(約28億ドル)を挟んで、歴代第3位が2022年のシリーズ第2作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(約23億ドル)。今回の最新作も同様に頂点レベルのメガヒットを狙えるロングランの期待がかかっている。
すなわち『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は、ジェームズ・キャメロン(1954年生まれ)という現在71歳の映画監督が、いまなお映画技術の最前線で“実験”を続けていることを改めて示す作品となった。物語のスケールや新部族“灰の民”アッシュ族の造形などももちろん話題だが、むしろ注目すべきは、キャメロンがこのシリーズを通じて映画技術の歴史そのものに刻み続けているツメアトである。
『アビス』
キャメロンが自らの名を映画史に刻んだ瞬間はいくつもある。初期の『ターミネーター』(1984年)や『エイリアン2』(1986年)といったSFアクション映画の金字塔で頭角を現した彼は、1989年の『アビス』以降、作品ごとに映画技術の限界を押し広げるという明確なテーマを掲げるようになる。以後のキャリアは、VFXの進化そのものを牽引する歴史と重なっていく。
特に『アビス』で登場した、液体が自在に形を変える“ウォーター・テンタクル”のシーンは、当時の観客にとってほとんど魔法のような映像だった。
この技術は、1991年の『ターミネーター2』で『T-1000』(シュワちゃんの敵となる新型ターミネーター)の液体金属表現として飛躍的に発展する。T-1000の変形シーンは、ハリウッドにおけるデジタルVFXの可能性を一気に押し広げ、以後の映画表現の方向性を決定づけた。『ターミネーター2』はアカデミー賞で視覚効果賞を含む4部門を受賞し、VFX映画の新時代を象徴する作品となる。
さらに1997年の『タイタニック』では、巨大な実物大セットと精密なCGを組み合わせることで、歴史的大作のリアリティを極限まで高めた。船体のデジタルモデル、群衆シミュレーション、ミニチュア撮影の融合など、当時の技術を総動員した手法は、映画制作のスケールと精度を根本から変えていく。
こうしてキャメロンは、作品ごとに新たな技術的挑戦を積み重ねながら、映画の未来を切り開いてきた。彼のフィルモグラフィーは、単なるヒット作の連続ではなく、映画技術の進化そのものを記録した“歴史の年表”として読み解くことができる。
『アバター』
そんな彼の(おそらく)最大の夢のプロジェクトが、(とりあえず)全5部作として予定されている『アバター』シリーズというわけだ。まず2009年の『アバター』第1作がもたらした“デジタル3D革命”は、21世紀の映画産業を大きく揺さぶった。3D上映自体は古くから存在するもので、端緒は1950年代から。あの懐かしい1983年の『ジョーズ3』(監督:ジョー・アルヴス)を、赤と青のセロハンを使ったチャチなメガネ(アナグリフ式3Dメガネ)で観た筆者と同世代の諸兄も多いことだろう。
※後編に続く
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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