ハリウッドのトップスターの中でも、演じる役によって“豹変”する俳優といえば、クリスチャン・ベール。一般的にはバットマン役などで有名だが、『マシニスト』では不眠症の主人公を演じるために30kgも減量。
そんなベールの新たなチャレンジが『ザ・ブライド!』。あの有名なモンスターキャラ、フランケンシュタイン役を任されたのだ。舞台は1930年代のシカゴ。博士によって肉体が創造され、孤独な日々を送っていたフランク(フランケンシュタイン)のために、亡くなった女性の遺体が“ブライド(花嫁)”として再生される。フランクとブライドの破滅的な愛の逃避行を描いた本作で、ベールは特殊メイクも駆使して“怪物”に命を与えた。またも想像を超える演技を披露した彼に、単独インタビューで役作りのプロセスなどを聞いた。
ーー毎日、撮影のために特殊メイクをほどこされるのは、どんな気分なのですか?
「そんなに辛くはありません。なんと言うか、ただその場の空気に自分の肉体が溶け込むよう、集中してるだけです」
ーーそうは言っても今回のフランク役の特殊メイクには、6時間もかかったというニュースが流れています。
「そのニュース、じつは大げさなんです(笑)。
ーーメイク中にストレスを発散させるために大声で叫んだりしたとか……。
「叫んだ理由のひとつは、しゃがれ気味の声でフランクを演じたかったから。そしてもうひとつの理由が、アーティストたちが僕の周りを動き回り、細かい部分にもこだわって作業をしていたので、僕自身は背中が固まって痛くなっていたからです。それで叫ばざるをえなかった。最後はチーム全員で叫ぶのがルーティーンになりました(笑)。あの瞬間は、楽しかったですね。つまりフランク役は、僕だけの成果ではなく、彼らの才能の結晶ということです」
ーーあなたは役に対してつねに肉体的なアプローチを課しますが、今回は?
「最初は肉体を改造しようかと考えたんですけど、途中で不可能だと思って諦めました。だってフランクの肉体はあまりに巨大ですから、どんな肉体改造をしても達成できないんです。代わりにトライしたのは、肩のあたりを大きく見せるための“人工肩甲骨”。さらに身長を高くする靴を履き、手や頭も普段の自分より大きくなっているから、そのあたりを歩くとヨロヨロしたりもして、あの動きが完成しました。
ーーフランクの動きについて、見本にした人がいたそうですね。
「はい。セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスです。フランクは肉体が大きく、超人的パワーも持っているけれど、同時にやつれた感じを出すことが重要でした。そのイメージの最適モデルに、僕自身がシド・ヴィシャスを選んだのです」
ーー人間よりも長く生き続け、心を許し合える相手もいないフランクは、孤独感に苛まれています。その孤独をどう表現しようと思いましたか?
「フランクは父親に見捨てられた人物です。たとえば幼い頃に自分に何が起こったのかわからなかったり、ものすごい後悔を抱えて生きてきたり、あるいは恐ろしい犯罪に手を染めたりするのは、多くの場合、孤独な人物です。自分の暴力性や、それが引き起こすかもしれない事件を怖れ、まわりの人を遠ざけてしまうんですよ。そんな風に考えれば、孤独なキャラクターの気持ちは意外なほど深く理解できると思います。そしてフランクは、他人との繋がりを見つけた時、再び生きている実感を得ます。彼の人生の終わりは、それほど孤独でないかも……などと想像して演じました」
ーーあなた自身が、人生でフランクのような孤独を抱えたことはありますか?
「僕には家族も子供もいますから、幸いなことに彼ほどの孤独を感じたことはありません。でも誰もが時として孤独に悩むわけで、だからこそフランクにも共感できました」
ーースティーヴン・スピルバーグ監督の『太陽の帝国』の主役で映画デビューし(公開時13歳)、現在52歳になりました。
「世の中では何かと“年長者の方が賢い”と言われがちですが、ちょっと勘違いという気もします。実際に歳を重ねるうちに、“賢く振る舞ってるだけ”と実感したからです。もちろん中には本当に賢い人もいますが、だいたいの人が賢いフリをしてるだけで、がっかりさせられるんですよ。そういう人に限って“年長者の言うことには従え”なんて言う(笑)。もちろん、このフランク役を僕が20歳の時に演じていたら、まったく違う解釈になっていたでしょう。そして20歳の演技の方が、もしかしたら今の50代の演技より面白くなったかもしれない。まぁそれは永遠にわからない謎ですけどね」
ーーぜひ、また日本にも来てください。
「もちろん! その時に皆さんに会うのを楽しみにしています」
『ザ・ブライド!』4月3日(金)全国ロードショー
配給/東和ピクチャーズ・東宝
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取材・文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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