世界水泳、リオ五輪のメダリストとして、世界の強豪たちと戦い続けてきた瀬戸大也。失意の東京五輪を経て、一度は競技人生の幕引きまで考えたトップスイマーが、“戦い続ける”理由を見つけた再起の大会について語る。
競泳選手 瀬戸大也
1994年、埼玉県生まれ。2013年、2015年の世界選手権で日本人初の400m個人メドレー連覇を達成し、2016年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得。2019年には世界選手権2冠に輝き、日本競泳界を牽引。パリ五輪で3大会連続の五輪出場を果たした。
世界選手権における400m個人メドレー日本人初連覇を筆頭に、数々の偉業を成し遂げてきた瀬戸大也。そんな彼のキャリアにおける最大の分岐点は2024年のパリ五輪。その理由を知るには東京五輪まで遡る必要がある。
「東京五輪に向け、人生のすべてをかけていました。命を削るような猛練習を自らに課し、頂点だけを見据えていました。コーチの設定タイムを上回る泳ぎを課すなどして自分を追い込み、休みなく準備をして万全の状態でした。しかしそれがコロナ禍で延期になったことで言葉にならないほどの喪失感に襲われることに。開催されるかどうかもわからない状態で目標を失い、水泳に対する思いが切れてしまった時期がありました」
張り詰めていた気持ちがプツンと切れてしまった瀬戸は自暴自棄にもなり、「水泳をもう辞めてしまいたい」とさえ思う精神状態が長く続いたという。
「東京五輪が延期という形で開催されることになってからもどこか心の底から没頭できない自分がいた。それでも応援してくれる人たちのために歯を食いしばりましたが、200m個人メドレーの結果は4位。出し切れないまま終わってしまった感覚が長く自分を苦しめました」
東京五輪後の3年間も、決して平坦な道のりではなかった。練習拠点を変え、パリ五輪の10カ月前にはオーストラリアの名将、マイケル・ボールに師事。復調の兆しは見えてきていたものの、精神的な鬱状態との闘いが彼を襲った。
「メンタルは強いと思っていましたが、自分の弱さを認めざるを得ませんでした。どんな状況でもどんな壁にぶつかっても闘わなきゃいけない。泥沼の中で、もがいているような状態でした。そこから自分の弱さを認め、カウンセリングを受けながら過ごしていましたが、実はパリ五輪直前に重度の鬱に陥り、身体を起こすことも、練習することもできなくなりました。“このままでは五輪に出られないのではないか”、“何のために競泳を続けてきたのか”と思うときもありました。それでも自分を支えてくれる方々のおかげで何とか前を向き、パリ五輪に出場できる状態まで持ち直すことができたんです」
満身創痍で迎えたパリで彼を待っていたのは、震えるような感動だった。
「極限状態で迎えたパリでしたが、満員の観客の大歓声を聞いて震えるような感動を覚えました。
最高の舞台で、全力で準備してきた選手たちとぶつかり合う。その尊さを再確認できたことが大きな救いになった。
「400m個人メドレーの決勝直後、圧巻の泳ぎで金メダルを獲ったレオン・マルシャン選手がプールサイドで僕のもとへ歩み寄ってハグをしてくれました。新時代の王者が僕に敬意を示してくれた。あの瞬間、苦しかった5年間が報われた気がしました。同時にその瞬間、もっと彼らといいレースをしたい、まだここで戦いたいという気持ちが湧き上がってきたんです。パリ五輪がなければ今頃水泳を辞めていたかもしれません」
パリ五輪後の瀬戸は一度競泳から少し距離を置き、1年間の休養期間を設けた。
「どん底を見て、失敗も成功も経験した今の自分にしかできない挑戦がある。ここで終えるのは自分らしくない。そう思えたのは、休養期間に自分の立ち位置を客観的に見つめ直せたからだと思っています」
そんな瀬戸は、2026年初頭のSNSで「再始動して再び世界で戦えるための準備をする」ことを宣言した。すでにドバイ、オーストラリアでの強化合宿をはじめ、2028年のロサンゼルス五輪を見据えた過酷なトレーニングに励んでいる。
「2026年は第二の人生のスタート。自分らしく泥臭く闘う人生を歩み、ロサンゼルス五輪でこれまでのキャリアのすべてをぶつけた最高の泳ぎを見てもらいたい。それが応援し続けてくれる人たちへの一番の恩返しだと思っています」
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは16万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。Instagram:@dai.tamura
INFORMATION
※『Safari』5月号206~208ページ掲載
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イラスト=田村 大 構成&文=遠藤 匠
illustration : Dai Tamura composition&text : Takumi Endo
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