弁護士法人咲くやこの花法律事務所は10月23日、個人情報漏えいの損害賠償の金額についての解説記事を発表した。同事務所 代表弁護士の西川暢春氏が執筆している。


 同記事によると、個人情報漏えいの損害賠償は、顧客の個人情報が企業外部に漏えいした場合に企業が顧客に対して負担する損害賠償責任を言い、顧客ではなく従業員の個人情報を企業外部に漏えいしたことで従業員とトラブルになり、損害賠償を求められるケースも存在する。

 同記事では、個人情報漏えい時に問題となる損害賠償について、判例の状況や、契約書での損害賠償の上限設定の方法について説明を行っている。

 顧客の個人情報を漏えいした場合の慰謝料の金額について、判例上、下記の3点を主に考慮して金額が決められているとのこと。

1.漏えいした情報の項目
氏名や住所、電話番号、メールアドレスなど一般的な連絡先情報が漏えいしたにとどまる場合は賠償額が低額にとどまる理由となるが、一方で病歴や信用情報など人に通常伝えることのないセンシティブな情報まで含まれる場合は、賠償額が高額化する理由となる。

2.二次被害の有無
漏えいした個人情報が第三者に悪用され、迷惑メールやダイレクトメールが届くなどの実際の被害が出ている場合は、賠償額が高額化する理由となる。

3.情報漏えい後の会社の対応
会社から事故後、被害者にすみやかに連絡し、謝罪している場合や、謝罪の品を送付している場合は、賠償額が低額にとどまる理由となる。

 上記3点を踏まえ、漏えいした情報の項目がセンシティブなものを含まず一般的な連絡先情報にとどまり、二次被害もない場合は、慰謝料額は1人あたりおおむね「3000円~5000円」が相場となる。一方で、漏えいした項目がセンシティブな情報を含み、かつ、二次被害が出ているケースでは1人あたり「35,000円」の損害賠償を認めた判例も存在する。

 同記事では、実際の判例の損害賠償・慰謝料額として下記を紹介している。

1.ベネッセコーポレーション事件(東京地方裁判所平成30年12月27日判決)
1人あたりの損害賠償額3,300円(慰謝料3,000円、弁護士費用相当損害金300円)

2.Yahoo!BB顧客情報漏えい事件(大阪高等裁判所平成19年6月21日判決)
1人あたりの損害賠償額5,500円

3.TBC顧客アンケート漏えい事件(東京地方裁判所平成19年2月8日判決)
1人あたりの損害賠償額を35,000円(迷惑メールが送られるなどの二次被害がない被害者については22,000円)

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