中国では近年、社会の変化とともに過酷な競争から離脱する若者が増えているようだ。「寝そべり族」と呼ばれるこうした若者は、これまで皆が必死に求めてきた、住宅や車の購入、結婚、出産を早々にあきらめ、質素にのんびりと暮らそうとするのが特徴だ。
記事はまず、すでに低欲望社会に入っている日本について、若者たちは家や車の購入にあまり興味を示さず、シンプルライフを楽しみ、趣味に熱心な人が多いとの特徴があると伝えた。
記事によると、中国の「寝そべり族」にも共通するところがあるそうだ。これまでは、無限の可能性があるように見えた大都市にやる気のある若者が集まっていたが、今の中国人の若者には現実が見えていると指摘している。どんなに野心があっても高校までには人生が決まっているのが現実で、「120%の努力を払っても、それに応じた結果が付いてこないなら、80%の努力で良いと思うようになっている」そうだ。
また、「寝そべり族」を輩出している中国社会にも、日本との類似点があると指摘している。それによると、産業が成長して社会が安定してきたため、若者が「寝そべる」余裕が生まれたそうだ。日本もバブル崩壊後、大儲けするのは難しくなったが安定期に入り、中国の場合も高度経済成長期を経て「小康社会」の実現を宣言している。
しかし今後の見通しについて、少子化が進み競争が弱まればまた生きやすい社会が戻るはずで、日本のように30年間産業が発展しないような国になっても困るので、いつまでも寝ているわけにはいかない、と若者の尻を叩いて締めくくっている。
「共同富裕」を打ち出した中国としては、若者にいつまでも「寝そべって」もらっては困るという考えなのだろう。ただ、日本の低欲望社会と中国の寝そべり族との間には、シンプルライフを楽しみたいのか、それとも過酷な競争からやむなく離脱したのかという違いもあると言えるだろう。その意味では、中国の寝そべり族の方が問題は深刻なのかもしれない。