14日に訪日の旅を始めた中国の習近平副主席の妻は、歌手の彭麗媛さん。中国で「民族声楽」という歌唱のジャンルで中国のトップクラスの存在だ。
一方、「音楽好き」で知られていた中国の指導者といえば、江沢民前主席。芸能界の有名人とも親しく交際し、政府高官に「のど」を披露することもあった。

■習近平副主席の妻は、「演歌の大御所」

 彭麗媛さんは1962年生まれ。1980年の『在希望的田野上(希望の田園にて)』の大ヒットで全国的に有名になり、その後も『父老之郷』、『チョモランマ』など、多くの人に親しまれる歌を送り出しつづけている。

 専門は「民族声楽」。民族の伝統音楽を意味する「民楽」や「民族楽」などと混同される場合もあるが、実は違う。民族風の旋律を、西洋楽器や西洋風のアレンジも使った伴奏に乗せて歌う歌曲で、雰囲気は異なるが音楽のカテゴリーとして日本の演歌に相当するジャンルだ。

 習近平氏と彭麗媛さんは1987年に結婚した。

■音楽が「根っから好き」な江沢民前主席

 その後、国家副主席に就任し、次期主席の呼び声も高い習近平氏だが、音楽の造詣のほどについては不明。一方、「根っからの音楽好き」として有名なのが、江沢民前主席だ。視察先の農村で、住民から民族楽器の二胡を借りて演奏したこともある。なかなかの腕前だった。
外遊から帰国する飛行機の中で、政府高官らを相手にマイクを手にして歌声を披露する様子が、中国のテレビで紹介されたこともある。好んで歌ったのは、中国語の歌詞をつけたウイグル民謡だ。

 上海市長時代には、重病になった「国宝クラス」の女性二胡演奏者を助けたとのエピソードもる。乳がんになりかなり長期にわたり消息伝えられなくなったため、「死亡説」を唱える音楽関係者もいるほどだった。江沢民市長は、最高の医療スタッフを集めるよう指示したという。その後、同演奏者は回復し、第1線に返り咲くことができた。

 江沢民氏と深い親交があるとされるのが、女性歌手の宋祖英さん(写真)だ。1966年生まれで、彭麗媛さんと同じ「民族声楽」の歌い手。2008年の北京五輪大会の閉会式では、世界的テノールの歌手プラシド・ドミンゴさんとのデュエットを披露した。

■新旧指導者「趣味は一致」、政治思想は「?」

 彭麗媛さん、宋祖英さんともに、日本の紅白歌合戦に相当する中国の大型年末番組「春節聯歓晩会」の常連出場者。中国の音楽関係者によると「政治的有力者との関係で、チャンスが大いに拡大したことは事実だろう。しかしもともとすばらしい能力があった歌手だ。
また音楽家とは、大きなステージをきっかけに実力をつけていくもの。ふたりがこれまで歌手として成長を続けてきたことは、否定のしようがない事実」という。

 なお、中国の現胡錦濤政権は「経済成長最優先」、「対日強硬姿勢」が目立った江沢民政権の軌道を修正し、格差軽減や環境問題を重視し、対日外交でも協調路線を明確にしている。習副主席はもともと「上海閥に属し、江沢民氏に近い」とみなされていたが、現在は少なくとも表面上、胡錦濤政権のもとで、同政権の方針に従い政治活動を続けている。音楽への「趣味」が、習副主席と江前主席の政治思想とどのような関係があるかは不明。(編集担当:如月隼人)

【関連記事・情報】
五輪閉幕式で「大御所」ドミンゴ・宋祖英がデュエット(2008/08/24)
中国副主席が天皇に感謝…四川地震へのお見舞い・日本の支援などで(2009/12/15)
中国・習近平副主席、“過去の歴史”に触れず「日本に感謝する」(2009/12/15)
中国共産党系サイトが「コメ欄」カットか…副主席の天皇会見問題で(2009/12/14)
中国・習近平副主席が来日時に天皇陛下と会見…香港で速報(2009/12/11)
編集部おすすめ